- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087606393
作品紹介・あらすじ
シアトルの航空会社を早期退職し病の妻を看取ったヘンリーは、絶望の淵にいた。そんなとき、戦時中収容所に移送されることになった日系人が密かに運び込んだ荷物が地下から40年ぶりに発見され、騒然としているホテル横を通りかかる。目に飛び込んできた鯉の絵の傘…ケイコのだ!脳裡には、戦争のため離ればなれになった初恋の日系少女の面影が鮮やかに蘇り…。全米110万部のベストセラー。2010年アジア・太平洋文学賞受賞。
感想・レビュー・書評
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「移民」「アメリカ」「日系人」
超久々の読書は前々から気になっていたテーマを取り扱ったアメリカ人作家による小説。
フィクションで塗り固められたものではなく登場人物(ただし一部を除く)以外は全て実在。
史実やシアトルの街、収容所までしっかり忠実に描いているから驚き。
読者は少し想像するだけで当時の空気を体験できる。
著者が親日家なのもやっぱり嬉しい笑
中国系、日系二世の小学生男女の目線で当時の世相や自分の環境を観察したものが中心だが、それぞれの両親がアメリカに行き着いた経緯にはほぼノータッチ。
伝統に固執するヘンリーの両親、アメリカ人よりよっぽどアメリカ人らしいケイコの父親、気さくな黒人サックス奏者シェルドン。
アメリカ本土において「よそ者」(今月はこれをテーマにした作品に多く触れている気がする)と見なされている彼らが戦時色の強い環境でどう生きたのか、なかなか興味深い。
他にも私達が日本史の授業で学んだ出来事(無条件降伏等)が現地ではこんな風に捉えられていたのかと、ちょっとした新鮮さもちらほら。
秀作。
原本も読みたくなったし、自分たちの同胞があの頃「自由の国」でどんな生活を強いられていたのかもっと知っときたくなった。
現地で生まれ育った「アメリカ人」なのに国からはジャップと憎まれる。一方で自分たちの起源がある日本と戦争をしなくてはならない。
こんな感じで一筋縄ではいかん近現代史やけど今だからこそ見直しときたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ぐいぐい一気読み。泣ける。青春に入り込める。
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WW2で引き裂かれた日系アメリカ人と
中国系アメリカ人の初恋のお話。
最後の結末はあんまり好きじゃなかったけど
ずっと心に残る話。
シアトルのパナマホテル実際いってこれた!
入り口まで。
学校で唯一アジア系でいじめられてた
2人が友達になれたのに
太平洋戦争がはじまる事で
急にお別れ。
強制収容所は砂漠の中で
壁がないからプライバシーなくて
財産全部奪われて
ドイツ人とイタリア人は強制収容されなかったのに
日本人だけ。
2人の初恋物語はフィクションみたいだけど、日系アメリカ人の強制収容や舞台は実際のもので、本当に2人がいたんじゃないかと思いたい。 -
太平洋戦争中の日系人強制収容をテーマにした、二人の中学生の恋愛の物語。
真珠湾攻撃の翌年に、シアトルの白人向け私立中学で出会った中国系二世のヘンリーと日系二世のケイコ。自分の力ではどうしようもない環境にありながら、一途に気高く生きる二人の姿には心を打たれるだけでなく、心を洗われる。
フィクションではあるものの、強制収容は実際に行われたことであるし、この物語に出てくるパナマホテルやレコードショップも実在するもの。ヘンリーとケイコは実在したんじゃないか、と思えるようなリアリティが胸にせまる。 -
物語は戦時中強制収容にあった日本・日系人の荷物が
戦後40年ぶりに日系ホテルの地下室で見つかったところから始まる。
ずっと蓋をしてきた苦くて甘い思い出が、その日から溢れ出してくるようになる。
読んだ居る間中、当時の大きな社会情勢に巻き込まれ、翻弄された沢山の人の運命を思うと涙が出た。
シアトルには今もたくさんの移民の名残が現在進行形で残っている。
それは日系だけじゃなく、中国、フィリピン、韓国、ベトナム含めた様々。
けれど、それぞれの苦くて甘い記憶を思い出す縁(よすが)が無くならずに居てほしい。
そう願わずには居られなくなる本だった。 -
学生の頃、夏休みを利用して1ヶ月ほど滞在したシアトルが舞台とあって興味深く読んだ。
チャイナタウンには何度か食事に出かけた。もう遠い記憶なので街並みなど覚えていないが、中国人の若いウエイターが帰りに数人出てきて、私たちを見て騒いでいたことを思い出す。
あの街が舞台なのか。
そして同じようにジャパンタウンがあったとは知らなかった。
週末になるとベインブリッジアイランドに渡り、民家に宿泊した。
在住日本人は会わなかったけれど、あの島にはかつてたくさんの日本人が住んでいたとは!
片岡義男さんのエッセイなどで日系2世に興味のあった私、先生がコーディネイトしてくれて話を聞きに行ったことがある。
親世代が2世、その当時わたしと同じ世代が3世だった。
2世の方は日本語は少し分かる話せる程度で、3世はもうネイティブ。
収容所の話も写真を見せてくれながら話してくれた。
普通に暮らしてたよ、と言ってた気がする。酷い仕打ちをされた話はひとつも出て来ず、ただ行動が制限されて篭の中の鳥だったと。
中国系移民二世の目で語られる物語は初めてで、そうかそうなのかと新鮮な気持ちで読んでいた。第二次世界大戦中のアメリカ、中国系移民からは日系移民ってこんな風に思われていたのか。そりゃそうか。。
主人公のヘイリーという少年の心が真っ直ぐというか、曇りのない目で真実を見ようとする意識。魂の徳がそもそも高いのかな。
わたしだったら周りに流されてしまいそうだ。
ケイコとの友情がやがて淡い恋へ変わっていく、その純粋さも良い。
そして唐突に終わってしまう二人の仲。
ヘイリーの父親と後に妻となる女性が彼とケイコにした仕打ちには猛烈に腹が立ったし、わたしだったら許せない。よくもそんな女と結婚出来たなと思う。
過去と向き合うことに決め、行動を起こしたことで、息子との距離が縮まり、新たな家族が始まる。
余韻の残る終わり方が良かった。 -
・ナショナリティとか国籍とかに縛られる価値観はもうダサいこれからは個の時代
・時代が悪かったとか言わせないようにしていかなければならないね人類
・初恋の人と結婚相手、どちらも誠実に愛しているという感覚、わからないけどわかってつらい どうしようもない -
自分の中で大事な本。
この物語を読み終えたく無くて、ゆっくり読みました。 -
【推薦者】
保健医療学部救急医療学科教員 中澤 真弓
【学生へのメッセージ】
救急医療学科・救急災害医療学研究科では米国シアトルで研修を行っています。シアトルの日本人街にあるパナマホテルには何度も訪れていますが、そこには悲しい戦争の歴史がありました。救急医療の最先端を学ぶことも大切ですが、その地の歴史を知ることはもっと大切だと思っています。
▼配架・貸出状況
https://opac.nittai.ac.jp/carinopaclink.htm?OAL=SB00531528