門 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520569

作品紹介・あらすじ

親友・安井の妻であった御米と一緒になった宗助は、罪悪感から身を潜めるように暮らしていた。安井の消息が届き、心乱れた宗助は、救いを求め禅寺の門をくぐるが…。(解説/関川夏央 鑑賞/姜尚中)

感想・レビュー・書評

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  • 読んでみた。が、今ひとつ。
    略奪婚の果てに、ひっそりと消極的に生きる夫婦。その夫が主人公。奪った妻の元夫の消息を聴き、悩みを覚え、禅の門を叩くが。。。
    生活の描写がされているものの、何となく平板で退屈を覚える。後半、徐々に盛り上がるも、劇的な展開には至らず。日常とは、そういうもので、その中の葛藤を描写するとこういう物語になるのかも知れない。

    容易には悟れぬこと、生活上の流転する悩みを悟りによって解消しようとしても、悟りを開く方がもっと難しいよ、というお話の様に映る。

    『彼は門を通る人ではなかった。又門を通らないで済む人でもなかった。要するに、彼は門の下に立ち竦んで、日の暮れるのを待つべき不幸な人であった。』

    座禅での主人公の経験の描写の部分を、禅僧に解説して貰うと、面白いかと思った。

    また、座禅が、『今の世に』と主人公がかつて思っていた描写があり、明治の世でも、一部の人達からは、座禅が古いと思われていたという事実があったことに面白いと思った。

    禅の功徳に縋りつつも、門を潜れない苦しさのあるところがリアル。ただ、我々がマインドフルネスとかの瞑想に勤しむことと、変わりはなく、こうした生活上の憂鬱というのは明治の世も現在も変わらぬ人間の共通性なのかも知れない。主人公の略奪愛という原因はちと特殊だが。。

    其れにしても、漱石は何故こうも略奪愛をテーマに描くのか?心も確か、そうだったし、他にもあった様な。それ程普遍的とも思えぬが、何故其れをテーマにしたのか、其々の作品の評価はどうなのか、少しく調べてみたいと思う。と、ここまで書いてきて、そう言えば三四郎も、虞美人草も明治の世の学問を収めた自立した女性の出現と、恋愛について描かれていたし、明治に入って現れた、家や門閥に寄らない自由恋愛が一つのテーマだったのかも。

    本書は佐藤優が、日本的な無常の文化と西洋の目的論的な生き方の葛藤や対比を描き、我々の指針にもなると紹介していたので興味を持って読んでみた。しかし、そういう形の対比や指針を読み解くことはできなかった。彼はどの様に本書を読んだのだろうか。書物の読み解き方は、その人の着眼点と経験に大いに影響されるということを改めて認識する。そして、その読み解き方は、果たして作者が意図したものなのかどうか、ということにも興味がつきない。


  • いわゆる前期三部作(三四郎・それから・門)を読んで一つわかったことがあります。
    内容で括ると『それから』『門』『こころ』こそが実は〈三角関係〉の三部作だったのです。

    ------
    『それから』・・・親友の妻を奪い炎上
    『門』・・・・・・略奪婚後も悩む生活
    『こころ』・・・・親友を裏切り破滅
    ------
    漱石は余程三角関係にトラウマがあったのでしょうか??
    登場人物や設定も似ており、
    働かない・煮え切らない主人公、一見夫に尽くすタイプだが結構自分をしっかり持っている妻、真面目な親友、そしてお金の問題…。

    クライマックスもそっくりで、妻に本当のことを言わずひとり参禅する宗助は、Kのことを打ち明けず自死する先生と驚くほど重なります。
    ◇◆◇
    それでも『門』のラストに救いが見えるのは三部作で唯一主人公が〈働いている人〉だからでしょうか。
    特に事件も何も起こらないこの物語は一見退屈です(何度か読むの止めかけました…)。しかし、最後まで読んでみると、このような枯れた世界観はもしかしたら漱石流<究極の夫婦>のあり方なのかも知れないと思うようになりました。

    つまり、物凄~く穿った見方をすれば、これは宗助の壮大な〈ノロケ〉だったのです。

  • 再読。わたしは漱石だと圧倒的に「こころ」と「それから」が好きで、この「門」は「それから」のあまりの素晴らしさに興奮して勢いこんで読んだ、という覚えしかなかったのですが。読み返してみても、やっぱり前半はそんなに好きじゃないんだけど。でも後半から一気に面白くてたまらなくて、好みでしょうがなくなって、退屈してた前半すらそのたわいもないエピソードにどんどん思いを巡らせてしまう、っていう漱石マジック。新聞小説という形式が生んだ娯楽性と、紛れもない純文学の深みが見事に融合していて、ああほんとうになんて近代文学は豊かなものだったんだろう、とか、おもいます。

  • 夏目漱石ハマり中。
    相変わらず表現が美しい。
    誰もが何かを抱えて生きているわけだけど、その葛藤と生き様がありありと描かれています

  • 本作を読もうと思ったきっかけは、長尾剛の「漱石の言葉」という本のなかに、「門」の引用文があり、それに興味をもったから。

    読む前は、内容が難しいのかなと思ったが、全くそんなことはなかった。むしろ、明治に書かれたものなのに、情景が頭に浮かびやすかった。
    宗助が満員電車に揺られて通勤している場面や、居間で宗助とお米がランプの明かりの下で話す場面。鮮明に想像することができた。
    文章表現には秀逸さを感じた。
    例えば、頭の中に次々と浮かぶ心配事を「徘徊」といったり、頭の中の思考を「ページをめくる」といったり。
    文章にイキイキした印象があるのだ。

    漱石の他の作品も読んでみようと思う。

  • 心を思い出す話。解説まで読んで意図が少しわかったような気もする。誰もが癒えない傷を負っていて、その闇を抱えながらも日常は続くことが描きたかったのかな。
    (20231006)

  • 宗介が安井から御米を奪った後の話。鎌倉に禅をしに行くくだりはつまらん。

  • 3部作の最後。三四郎、それから、門。どれが一番良かったかと考えると、私の好みはこれ。三四郎のような青春もそれからのような情熱もなく、たんたんと続くなんとなく不安な(?)日々が逆に落ち着きます

  • 淡々と進む話。主人公の過去の激しさは敢えて描写せず。年齢を重ねればより深く感じ取ることが出来るかもしれない。

  • 漱石の中で一番好きかも

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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