- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087468731
作品紹介・あらすじ
「あたし今度、自分で店、開くんだ」。海外出張先への国際電話で娘に告げられ、宍倉勲は絶句した。就職したばかりの大手企業をすぐ辞めてしまったと思ったら、今度は何を言い出すのか-(「マスターと呼ばれた男」)。時に社長として、時にヒラ社員として、誠実に働き続けてきた男。彼と娘との関係、家族の歴史を時をさかのぼりながら描く連作長編。文庫化に際し書き下ろし短編を特別収録。
感想・レビュー・書評
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70代の宍倉勲が孫と一緒に自分たちの入る霊園の下見に行く所から物語は始まる。9話(最後の1話は書き下ろし)からなり、物語は少しずつ遡っていく。8話目の表題作は涙涙だった。
娘が結婚相手を連れてきた日、海外出張に行った先、かつて親の後を継ぎ社長でいたあの頃…。いつもそばには床屋さんがあった。昭和の懐かしい香りのする風景。今の洒落た美容院にはない朴訥で不器用な感じが家族の為に一生懸命働く昭和の父親と重なる。
表紙に惹かれ購入したのだが大当たりだった。年明け早々いい本に出会えて嬉しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
題名が気になり買った一冊。
ある家族の歴史を遡って書かれている連作長編の小説
どの短編の話も髪の事が絡んできていた。
短編だからか
なんとなく読みやすかった
最後の短編で今までの短編の事が絡んでくるのは読んでて楽しくなる。
ミステリーや謎解きの小説ではらないから全てをスッキリする必要はないのかもしれないが、最後の短編はその後が気になった。
娘の事
その後会社はどうなった?
裏切った後輩にやり返しはしないのか?
別れた夫との事は?
いろいろあるがもう少し続きを読みたいと思った小説でした。
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あれ?短編集?
と思ったら連作短編集!
さらっと読めて、通勤にもぴったりです。
とっても信頼している読者友達からの紹介で、
イチオシのこちらをやっと読みました。
山本幸久さん、いまではお仕事小説の作家さん、というイメージみたいだけど、リアルな世界のなかでも、ちょっぴり勇気をもらえるような素敵なお話をたくさん書いています。
短編それぞれにちょっとずつ床屋さんのエピソードが挟まれていて、どこで床屋さんが登場するのかな?って読んでいくのも楽しかった!
読後感もいいし、さっくり読めるし、いろんなひとにおすすめできるお話だったな〜 -
「床屋さんへちょっと」
軽いタイトルの割に、書かれた内容は一人の男の人生と、その家族の物語。
でもやっぱりどこか飄々として、それでいて人生の厳しさと温かさと寂しさと…人生そのもののような味わいを感じさせてくれる。
冒頭の「桜」では自分の墓を下見にいく老年の男性が、次の「鋤き鋏」では娘の婚約者と行動を共にしている。そして「マスターと呼ばれた男」では海外出張に出かけた先での話で…
そう、この物語は主人公である「宍倉 勲」の人生の一場面一場面をカットした作品だ。
当然ながら、一つ一つの話にはつながりがあり、「あそこで書かれていたことはこういうことだったのか」という伏線を読み解くような楽しみ方もできる。
勲本人の人生を描いた中で、娘である香や、妻である睦子の人となりも段々と浮き彫りになってくる。
読み終えたときには勲本人ですら気づかなかったであろう彼の人間くささ、そして魅力をしみじみと感じることができる。
人生って、人間ってこういうものだよな。
「床屋」という場所を軸に描かれた一人の男性とその家族の物語をぜひ手にとって欲しい。 -
宍倉勲の人生を遡る短編集。そして亡くなった後の娘、香と孫、勇の日常。
読者側も勲が亡くなったのが判り、少しさみしい。そんな魅力ある方。成り行きで夫婦揃ってテクノカットだなんて…思わず顔の弛む。-
もう素敵なレビューを拝見させていただき、とっても興味が湧いてきました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆。もう素敵なレビューを拝見させていただき、とっても興味が湧いてきました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆。2013/01/05
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心温まる家族のストーリー。自分の事に置き換えて切なくなる。不器用だけど一生懸命に、誠実に自分も生きていきたい。
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時代を遡りながら、一家族の日常を切り取った連作短編小説。
勲と香、勇、そして床屋。
何気ない日常の中で、床屋が登場し、家族4代(勲の父も含む)に渡って利用する。
勲は父が建てた製菓工場を20代で引継ぎ、2代目となるが、時代の流れもあり、倒産させてしまう。
その後は一ヒラ社員として働き続ける、過酷な人生だが、何か過酷さを感じさせない表現とユーモアがある。
心温まる物語有り、胸が熱くなる物語有り、短編ということでスラスラ読めてしまう。
床屋という、誰しも身近に感じる舞台だけに共感しやすい話。 -
4世代に渡るある家族の話。平凡に見える家族でも必ず何かしらあるもの。慌ただしい毎日をやり過ごすので精一杯だけどちょっと足を止めて振り返るのも大事だね。男女雇用機会均等法やら、女性総合職やらでワーワーしてる時代に戸惑う主人公の娘。あー、そうだった、そうだった。社会に出て、現実を思い知らされたあの頃を思い出した。自分も強くなったもんだ(笑)
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好き。すごく好き。うまく言えないけど、好き。表題作は読みながら涙が止まらなかった。