春のめざめは紫の巻 新・私本源氏 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087467222

作品紹介・あらすじ

須磨の流人生活から京へ戻り、政界最高の実力者となった光源氏。三十を過ぎてオジンの仲間入りだが、本人は都一の美男と自惚れ屋のまま。相変わらず色恋に熱心で、意中の姫のもとへ通うのだが…。少女から思い通りに育てたはずの紫の姫に翻弄され、生真面目な末摘花には興ざめの対応をされ、思いのズレル散々な日々。「源氏物語」の女人側からみた源氏の恋物語を現代風に描く愉しい古典パロディ。

感想・レビュー・書評

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  • 前提として申し上げておきます、私は田辺聖子さんの大ファンです。そして源氏物語は好きじゃありません。
    光源氏は、女を不幸にする、不幸の増殖ワラジムシ(@川原泉)であると考えています。
    だから、田辺聖子先生がこのシリーズをお書きになった気持ちがわかる気がするんです。

    なんとかして源氏物語の中に出てくる女性を使って、「幸せとは何か」ということをあの手この手で示してくださっているのだと考えます。
    しかし、残念ながらあまり成功していない気もしています。

    もとが元ゆえ、仕方がない面もあるのかもしれないし。
    六条のオバハンなど、御自分は不幸だと思っているけれど、はたからみれば、結構幸せなのかもしれないし。
    お名前は忘れましたが「朝顔」巻に出てくる高利貸しの方、世間は金でどうでもなるとおもっているけれど、本当は心の底ではあまり幸せではないかもしれないと思ったり。
    当人がいいと思っているのなら、それでいいのかなと思ったり(笑)。いろいろ考えさせられます。

     私が個人的に好きなのは「空蝉」の回。というか、伊予の介さんが好きです。年がはなれているせいか、深く大きな愛情で包んでくれます。現実では年が離れていると先立たれることも多いと思うので、いいことばかりではないのでしょうが、憧れます(笑)。
     関係はないのかもしれないけど、紫式部さん自身も、夫の藤原宣孝さんとはかなり年齢が離れていて、二年で先立たれています。そしてかなり豪快な人であったようです。

  •  田辺聖子は特に好きな作家の一人だが、その中でもこの本は何度読み返したか分からない。

     一口に言ってしまえば源氏物語のパロディであるが、本家を超える面白さがある。その理由は登場人物の魅力にある。
     光源氏は低俗で情けない人物として描かれているが、源氏を取り巻く女性たちは対照的に、鮮やかで生き生きとした魅力にあふれている。

     紫の君は、はねっかえりで源氏をいつもやりこめてばかりいる。女三宮も溌剌としていて天真爛漫だ。玉鬘は源氏の古臭い色香に惑わされず、運命の相手を自分で選び取り、空蝉は自ら大胆に源氏を誘う。

     彼女たちは常に自分の気持ちに正直に生き、潔い。真っ直ぐで大胆で、それでいて馥郁とした美しさと気品を持ち合わせている。
     男の気まぐれや都合に翻弄され、泣き寝入りをしてきた源氏の女たちにはない、凛とした強さがある。

     本当にみんなチャーミングだが、特に紫の君は魅力的だ。
     やんちゃで、お転婆で光源氏に対してずけずけと言いたいことを言うが、心の底では光源氏を大切に想っている。思いっきりツンデレなんだよね・・・。わがままで勝ち気だけど根はやさしい。
     美少女のツンデレほど美しいものがあるだろうか。
     
     やはり光源氏という男は幸せ者なのかもしれない。

  • 紫式部もまさか千年後に源氏の君がこんなキャラクターで描かれるとは思ってもなかったでしょうね。
    京都弁の源氏の君、とても面白いです。
    そして姫君達の生き生きとしてたくましいこと!
    楽しい一冊でした。

  • 前作「私本・源氏物語」とは視点を変え、
    源氏と関わり合いのあった女性の目線から見た
    源氏を描いた作品。

    前作では、従者の目線から見た愛のある源氏の悪口で、
    一貫して「中年になって初めてわかる人生の楽しみ」を主張していたため
    分かりやすく、受け入れやすかったが、

    本作は、うーん・・
    語り手が次々に入れ替わって落ち着かないし、
    「源氏なんて古い~、別に好きじゃない~」という若い女子の
    単なる悪口で、愛もないので正直途中で飽きてしまった。

  • さすがの光源氏も中年になれば、若い子からは、イタイおじさんか…私も気をつけよう……と思ってしまうほど、ムリなく読めて面白い。御大の力を感じます。

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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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