アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 166
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087461381

作品紹介・あらすじ

ミャンマー北部、反政府ゲリラの支配区・ワ州。1995年、アヘンを持つ者が力を握る無法地帯ともいわれるその地に単身7カ月、播種から収穫までケシ栽培に従事した著者が見た麻薬生産。それは農業なのか犯罪なのか。小さな村の暖かい人間模様、経済、教育。実際のアヘン中毒とはどういうことか。「そこまでやるか」と常に読者を驚かせてきた著者の伝説のルポルタージュ、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • ミャンマーのワ州における、アヘンにまつわるドキュメンタリー。いろんな国に潜入し、どっぷりその国にはまってみる…という高野秀行さんのバイタリティー、すごい!!Σ( ̄□ ̄;)

  • すごい本だった。
    内容もさることながら、出版された後の社会的影響も高野さんの著作の中では群を抜いている。
    日本語で出版される前に英訳版が出版され、それが回り回ってビルマ語版が出版されるまでになる。しかも、政府要人たっての要請で。
    それだけ、本書の内容がディープで希少性があったということだ。
    前半はいつもの感じで、飄々とした筆致によって現地の人々との面白おかしいやり取りが描かれる。が、後半は怒涛の展開。特に、ラスト数十頁は圧巻。体調不良から収穫したアヘンを吸引することになり、あっという間に中毒になっていく様や、平気でアヘンをリュックに入れたまま国境を越えてしまう様子に、高野さん言うところの「善悪の彼岸」へ足を踏み入れた人の頭の中を垣間見る思いだった。そして、アヘンビジネスを巡る国際的な動きの怪しさが、誇張されることなく淡々と暴き出されていく。ワ州がアヘン=ヘロイン生産のゴールデン・ランドたる背後に中国の存在があること、さらに、アヘン生産量を不自然なまでに誇張して喧伝することで麻薬取締の予算をせしめようとするアメリカの思惑。こうした諸々が、ワ州で素朴な暮らしを営む人々の姿とコントラストを成す。
    「善悪の彼岸」には、当たり前の暮らしが存在し、そこに暮らす人々は「此岸」に暮らす我々と何ら変わりのない生活感情を抱いて暮らしている。彼らを「彼岸」の人間にし、色眼鏡をかけて眺めているのは、あくまでも「此岸」の都合に過ぎない。アヘンビジネスという闇の構造は、その他に数多ある様々な差別や貧困の構造と同じだと感じる。
    これが書かれたのは90年代半ば。高野さんがミャンマーを出た後にアヘンビジネスには様々な動きがあったようだが、現在、民主化を巡るゴタゴタは悪化の一途を辿っている様子。が、それも所詮は大手メディアが伝えることに過ぎず、大手故の利害関係が背後で蠢いているはず。今、高野さんがミャンマーに入ることができたら、一体、何を見、何を描いてくれるのだろう?

  • 行動力ありすぎ...

  • 親から聞いた昔の沖縄とそんなに変わらないのでは?と思いながら読んだ
    村は先祖を敬う儒教のようだし、女性一人では生きるのに厳しいところとか、ケシ栽培がサトウキビ畑に変われば昔の沖縄なんだと思う
    ワ軍はアメリカ軍と考えたらさらにそうかも
    世界地図のミャンマーの場所すらちゃんと知らないのに共通点があっておもしろい

  • めちゃくちゃ面白いんだよなあ

  • ミャンマーの東側のワ州の村でケシ栽培をしてアヘンを作ってみる話、ノンフィクション。
    本当にこの人の行動力は頭おかしい(褒め言葉として)
    しっかりアヘン中毒にはなってるし、倫理観も少し流されてるし。
    でも当時の貴重な資料そのもので現地の人々の暮らしがわりと面白い。

    数年前に行って見て、資源と民族的にこの国は揉めるよなあと何となく思ってたけど本当にあっという間に旅行に行けなくなってしまって残念で悲しく思ってる。

  • 図らずもビルマ(ミャンマー)での軍部によるクーデターが発生したタイミングで読んでいた。(2021/2/4現在)

    国際的な報道では、民主化or軍政の観点からの記事が主を占める中、背景にあるビルマの歴史や民族について知った上でそれらのニュースに触れる事が出来ているのはラッキーだったと思う。

    本著に描かれた時期から時間も経ち、ワ州を取り巻く状況や、アヘンにまつわる実態も変わっていることも多いとは思うが、ビルマの民主化がいかに複雑なバランスで成り立っていたのか推察できたし、軍部の力が衰えない背景もこの本に描かれている現実が大きく関わっているのだろう。

    高野秀行さんの体当たりルポ。
    そこに行った人だけが語る事ができる、当事者たちの営みや不条理。
    本物の情報だと思う。

    表紙とタイトルのパンチが強すぎて、久しぶりにブックカバーをかけて読んだ笑

  • 未知が詰め込まれてる本。好奇心に誘われてどんどん読めてしまった。

    アヘン栽培を生業とする辺境の国に長期滞在して実際にケシの種まきからアヘンの収穫までやってしまいました。という本。滞在の中での現地の人との交流や気づき、発見などなど。

    地に足がついた、俯瞰ではなく現地目線でのレポート、ハードな現地の生活に溶け込む筆者の強さ、現地の人々と絆を育んだり、アヘン中毒になってしまった時に見せる人間臭さ。とても面白かった。

  • 正直、破天荒なエンタメって観点からは「西南シルクロード~」とか「謎の独立国家ソマリランド ~」とかのがうへーとか言いながらガンガン読み進む感じなんだけど、これはまた手応えずっしりな感じ。しかも何というか最後の方がググと来る。

  • ミャンマー国ワ州というアヘン栽培の拠点がいかにも古き良き村落共同体といった感じで大変興味深かった。ギャップがすごい。
    辺境の村に分け入った著者が長期の滞在で村人に受け入れられていく様が愛おしい。
    村人との素朴な交流の背後に時折垣間見えるワ州の政治的背景が、ラストで覆されるのはスリリング。そして著者のワ州との縁が切れてしまいワ州に入れなくなるのがとても切ない。村人たちとの涙の別れの後に書かれているために、落差にびびる。
    アヘンを栽培する農家への密着という企画の趣旨からしておりこうさんなグローバルスタンダードへのアンチテーゼであることだなあ。

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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