28光年の希望 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087460889

感想・レビュー・書評

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  • ー 私はこの不安と恐怖の時代を生きながら時々、人間の持つ強い生への欲求こそが、この苦しい世界を救うのではないか、と思うことがある。

    悲しい出来事が続くこの世界だが、人間は最後の最後に、力強い味方を得るのではないか、と思いたくなる瞬間がある。 ー

    同時多発テロ、イラク戦争、SARSの感染拡大、そして謎の病気、感覚・感情不全症候群(SEDS)の流行。

    不安に覆われたパリを舞台とした作品。

    不倫、不治の病、自殺という何とも現在の状況に通ずるものがあるテーマだが、愛と生に満ちた作品。

    不思議と暗い気持ちにはならない。
    でも、すごく寂しい気持ちになる作品。

    辻仁成の作品は間違いないなぁ。

  • 気づかずに
    近くの星に
    恋をして

    悲し運命(さだめ)
    望みへ変える

    読了後に浮かんだ一句です。

  • 読んだ後、しばしぼーっとしてしまう、悲しいのに爽やかな気持ちがする。
    辻さんって、凄いなと思いました。
    素敵な物語でした。

    例えば二十八光年…。
    星空を見上げたら、見方が少し変わった気がします。
    それぞれに果てしない時間が隠されているんだな。人生はと。

    そして三ツ星レストランとは、ただただ美味しく素晴らしいレストランだとしか受け止めていなかったので、三ツ星を目指すシェフ達の人生にあらためて感動をしました。
    大変な世界である事を知りました。
    現在もミシュラン発表の前日に自殺をしたという話が実際にあるだけに、料理界の凄さを学ばせてもらいました。

    とにかく良かった。

  • この人結婚して文章の感じが変わった??

    きゅんとしないし切なくならんし
    そんなキラキラしてちゃいけんでしょ!
    彼の本があたえてくれる「きゅん」がなくなっていて残念でした
    恋愛の気持ちを忘れてしまったのかしら・・・

    でも、いい話なんだよ!言っとくと

  • うーん、かなしい。。。

  • 読んだ後、涙がしばらく止まりません!!

    さすが辻さんです☆久しぶりにとても心に残る本に出会いました*衝撃の展開に、読むのを止められなくなってしまい、読み終わった時には、気付いたら明け方でした(>д<)

    本当にお勧めの本です☆★☆★

  • パリで三つ星シェフを目指すハナと総料理長ジェローム。生きていることが素晴らしくてたまらないハナの毎日がパリの景色と共に爽やかに広がる…
    残酷な運命に翻弄されるハナとジェロームの無限の愛に思わず引き込まれる作品

  • 久しぶりに辻仁成が読みたくなって前知識無しで本屋で感覚で選んで買って読んでみました。
    普段は何か関連のある小説を読む事が多いのですが、たまにこういう本の選び方します。

    「冷静と情熱のあいだ」が好きなので、完全な日本が舞台な恋愛小説よりも少し海外が匂う物語が良くて、ってのが選んだ理由です。

    最後まで読んで・・・とにかくジェロームの人間臭さがたまらなく良かったです。
    最後は泣いちゃいました。
    はじめは機械のような人間味の無いシェフだったジェロームがハナと出会って変わってゆく様子がに惹きこまれました。
    料理の世界がどこまでフィクションかわからないけど、かなり緻密に描かれていて、それだけでも面白かったし。

    読んで良かったなぁ、と思わされた本でした。
    とにかくジェロームに尽きます。
    ああいう人間臭さが無いと、やっぱ人間駄目ですね。
    仕事だけ、お金だけ、では駄目なんだなぁ。

  • ミシュランとはフランスのタイヤメーカーでありながら、同社の製品の宣伝をかねて自動車旅行者に有益情報を提供するためのガイドブックとして、1900年に発行した、いわゆる「三つ星」評価付きの旅行ガイドブックである。
    この話はフランスの料理界が舞台であり、2003年に「いまこの瞬間 愛しているということ」というタイトルで刊行された話。
    ミシュランの三ツ星を狙うフランス料理界のシェフ、ジェロームは孤独でありながら、無表情で人を寄せ付けぬオーラを放っていた。
    同様に日本人でありながら三ツ星シェフを夢見るハナは笑顔の鮮やかな屈託のない性格で多くの人を和ませた。
    「シェフ、ア・ドゥマン!(A demain!)」と特大の笑顔で挨拶をするハナの輝きに彼は惹かれて行く。
    しかし、三ツ星シェフになるためには料理の質の素晴らしさだけでなく、安定感、店が三ツ星にふさわしい雰囲気かどうか、それからシェフ自身の人間性にも焦点が当てられるのだった。
    たとえば、「家庭の安定」。結婚したり、子供が生まれたりするのはいい印象を審査員達に与える。
    家族が安定しているということは精神的にも充実していると見なされるのだった。
    ジェロームは結婚していたが、妻フランソワーズとの仲は正直ウマくいっていなかった。
    よって夫婦間の問題があるだけでもマイナス要因であることは間違いない。その上、厨房内に若い愛人がいるとなるとこれは三ツ星獲得どころかレストランの威厳にも傷を付けかねない。
    「禁断の愛」ゆえにその不幸が彼らを襲う。
    ハナは感覚・感情不全症(SEDS=Sense Emotion Deficiency Syndrome)を患ってしまう。
    欧米では絶望症と呼ばれ、症状としては甘み、苦味、しょっぱさなどの味覚が鈍る初期段階から始まり、最後にはすべての感覚、感情を失っていき、最後にはロボットのように無感動な人間になる。
    初期の患者は自分の感覚、感情麻痺がまだ理解できるだけに次第の極度の鬱状態となって、自ら人間としての尊厳を守るために自殺をする者もいる。
    自殺を選ばない者でも最後には視覚、聴覚の喪失が起きてあらゆる触覚を感じなくなり、空腹感の喪失に至って、自力では生活できずに生命維持装置で延命治療が施されるのだ。
    シェフであるハナは手足を切断されるよりこの奇病に罹ったことは致命的であった。
    仕事でクタクタに疲れているにも関わらず、東洋医学で「この病気の進行を食い止める為の良薬は愛」と耳にし、献身的にハナを介護した。

    「全ては三ツ星のための人生だった。そのために生きてきたし、幼少時代から料理の世界で生きてきたのでここでしか生きていけない。でもそれは色のない愛のない世界で生きていた私の人生のなかでハナと出会ったあの一時だけは輝いていた。孤独だった私に彼女は輝く光をくれた・・・。本気で彼女を愛している・・・。」

    失われていく感覚を呼び戻すためには失われていく速度よりも速く、強く、大きくプラスの感動や心の刺激など素晴らしい記憶を与えていくこと・・・。
    効果的に感覚を刺激するためには愛情という感情を最大限に利用するのが良いとされる。愛情は最後まで失われない感情だから・・・。
    今のウチにできるだけ多くの感覚・感情を思い出へと交換する・・・その為にジェロームは自分の職業を生かして、世界一美味しい料理を拵え、それをハナに食べさせていった。
    世界中の食材と料理法を駆使して彼だけが生み出せる究極の料理を彼女に味あわせ、その時の気持ちを日記につけることで、美味しいものを生きている証として全て記憶に変換することにしたのだった。
    しかしハナは自分が三ツ星を狙う恋人の足を引っ張っていると思うと病気のこと以上に悲しくなっていった。
    「このままではいけない。このまま看病をさせてはジェロームは永久に三ツ星を掴むことができない・・・。」
    ジェロームは星が据え置きになったにも関わらず、しかもその原因の一端は明らかに自分のせいだというのに文句を言わず、愛を注いで看病してくれる彼のもとを静かに一人で離れていくことを決意する。

    帰国したハナに待ち受ける悲痛な運命。
    ハナの後を追って、夢よりも最愛の恋人を選んだジェロームにハナはこう告げる。
    「私のために、もう一度三ツ星に挑戦してもらいたい。あなたが頑張っていれば私の療養にも張り合いがでる。感情は失われても、心がなくなるわけではない。あなたを思う気持ちはなくならない。」
    そして「あなたが星を獲るまで病気を悪化させないように努力する・・・。」と付け足すように約束した。

    「私のために星を獲って・・・輝いてください。そしたら私もその輝きを分けてもらえるような気がする。」

    ジェロームは「分かった。必ず」と約束し、それを守った。

    彼は星を獲得し、三ツ星を手に入れた。
    しかしハナの実体は28歳という若さでなくなってしまった。彼女は本物の星になってしまった。

    そしてその星はいまや、星獲りには無縁な人生を歩き、自分が納得するものを届ける料理人になったジェロームの頭上に光々と輝くのだった。

    悲劇であるにも関わらず、命のはかなくも強い輝きと本当の愛を感じながら、読み通すことができた。

  • エロスもほどほど辻さまのなかでもなかなか一般受けすんじゃないかと思える作品
    僕はとてもすきですよ

    辻様の作品ってなんか5感に訴えかけきます。。。

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著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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