陽だまりの天使たち ソウルメイトII (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087457964

感想・レビュー・書評

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  • 馳星周さんによる「ソウルメイト」シリーズの続編である「陽だまりの天使たち ソウルメイトⅡ」を前作に引き続き読んだ。

    犬や猫を飼うということはその最期を看取る覚悟を持って始める必要があると、愛猫達を飼い始めた際に教わった。ただ可愛いからという無責任な理由で飼われ、挙げ句に虐待されたり捨てられるペット達の多いことも知った。更には幼犬、幼猫のうちに親と引き離され、仔犬や仔猫のうちでないとペットショップで買い手がつかず、売れ残ると店によって処分されることもあったという残酷な業界の闇も知った。その経験や知識を踏まえて馳さんの犬と人間をテーマとした作品群を読むと、馳さんの愛犬マージ《ソウルメイト》への愛が作品の出発点となっていることを実感できる。だからこその魅力なのだ。

    馳さんの犬と人間の関係を綴った作品群が他にも文庫化(電子書籍化)されていることを知り、また別の機会に読んでみたくなった。馳さんの愛犬マージへの思いがこもった「走ろうぜマージ」も是非とも読んでみたい。

    『いつもそばにいるよ』

    いつもそばにいるよ こんなに陽射しが強いのに、 そんなに遊んでばかりいたら熱中症になっちゃうよ。 よその子と取っ組み合って遊ぶなんて、 怪我でもしたらどうするの。 向かいから来たワンコ、この前、すれ違う時に唸ったのよね。 違う道を行きましょうね。

    わいちいちうるさいんだよなあ。 そんなに心配ばかりしてたら、 楽しいことひとつもなくなっちゃうじゃないか。 ぼくたちはね、人間と違って今を生きてるんだ。 その瞬間、瞬間に、 楽しかったり嬉しかったり怖かったり悲しかったり。 昔はこうだったからとか、あのときこうだったからなんて 考えたりしないんだよ。 今がすべて。大切なのは今だけ。 せっかくぼくらと暮らしてるんだから、
    あなたたちも今を楽しもうよ。 起こるかどうかもわからないことに怯えてないでさ。

    どうしよう、どうしよう。 この子はもう助からないのかしら。 この子がいなくなったら、わたしたち、どうしたらいいの? この子のいない人生なんて考えられないわ。

    どうしてそんなことばかり考えるのさ。 ぼくはまだここにいるよ。
    自分の脚では立てなくなったけど、 尻尾も振れるし、ご飯も美味しいんだ。 そりゃぼく、いつかはいなくなるよ。 ぼくたちの一生は人間よりずっと短いんだから。 でも、今はまだその時じゃない。 今がすべて。大切なのは今だけ。 お願いだから、ぼくたちみたいに今を生きて。 いつか死んじゃうなんて考えるより、 今日は昨日より元気だとか、昨日より食欲があるみたいとか、 いいこと考えようよ。だって、ぼくはここにいるんだから。 ここにいて、みんなのこと愛してるんだから。

    どうしていつまでも泣いてるの? 悲しんでるの? 確かにぼくはこっちの世界に旅立っちゃったけど、 あなたたちとの楽しかった日々を覚えてるよ。 ぼくは幸せだったんだよ。 なのにどうして泣くの? 今を生きようよ。一瞬、一瞬を大切に生きようよ。 そうしたら、寂しくはあっても悲しくはないと思うよ。覚えてるでしょう。 ぼくと暮らした日々。楽しかった一瞬、一瞬。 ぼくが幸せだとあなたたちも幸せだった。 あなたたちが幸せだったらぼくも幸せだった。 別れの時より、楽しかった時の方がずっと長かったんだから。 ぼくはずっとあなたたちのそばにいるんだよ。 ぼくとあなたたちは魂で繫がっているんだから。 魂の絆は永遠なんだから。 だから、約束してよ。 新しい子を迎えるって。その子に、ぼくにしてくれたのと同じことをしてあげて。 愛してあげて。幸せにしてあげて。 そしたら、その子はあなたがたのことを愛してくれるよ。 幸せにしてくれるよ。 その子との生活の一瞬、一瞬を楽しんでね。 だって、あなたたちが幸せなら、 ぼくの魂も幸せになれるから。 あなたたちの幸せがぼくの幸せなんだから。

    だから、今を大切に生きてね。

  • 会社の方から頂いた一冊。

    目次を見るとどうやら短編小説のようだった為、暫く積ん読になっていた。

    読む本が無くなり、読み始めてみた。

    短編であるが、一作一作の熱量が凄い。
    どの作品も心掴まれ、物語の世界に浸透してしまう。
    情景も一気に頭の中に広がり、犬たちとのやりとりに仕事で疲れささくれ立っていた気持ちもほっこりとする。

    実家で飼っていた犬との別れを思い出し、胸が熱くなったり、様々な感情が呼び戻される温かい一冊だった。

  • ソウルメイトの続編。

    犬を飼うということの重さを、ひしひしと感じた。
    前作以上に、犬と生きること、魂の絆を訴えてくる作品だと思う。

    本編から外れるが初めに、この本を捧げる犬たちの名前が出てくるのだが、そこに『雨降る森の犬』の犬の名前があった。
    あの犬は作者のソウルメイトだったのだなと、改めて知った。
    また、あの作品に登場する少女の名前が、今作の中にもあるのは、こちらも思い入れのある名前なのかも?

    …とここで解説を読んだら、この少女のモデルが作者の姪だと書かれていましたーーー!

    私自身は、犬の物語が好きだが、現実に責任をもってここまで共に生きることは自信がない。
    やはり本のなかで楽しませてもらおうと思う。

  • 馳星周『陽だまりの天使たち ソウルメイトII 』集英社文庫。

    シリーズ第2弾。今回も犬をテーマに家族、元家族、或いは未来の家族を描いたハートウォーミングな短編7編を収録。ハードなピカレスク小説の印象が強い馳星周であるが、その対極とも言えるようなハートウォーミング小説でもその実力を発揮している。

    7編の中では『ラブラドール・レトリバー』『フレンチ・ブルドック』の2編が印象深かった。前作でも述べたが、内海隆一郎の一連のハートウォーミングな短編、或いは谷口ジローの『犬を飼う』にも似た雰囲気の短編集である。

  • 2022.01.22 ★4.8

    1、2と続けて読んだ。

    1で泣けた。
    この作者は犬を飼い、心から愛した人なんだと思った。

    2を読み、号泣した。
    読み進められないかと思われるほど泣き、嗚咽した。
    この作者は犬を愛し、何度も見送ったことがある人だと気付かされた。

    私もこの物語に出てくる子たちのように『幸せだった』と言って貰えるだろうか。

  • 犬は、その時その時を懸命に生き、過去の出来事やまだ起きていない未来に惑わされたりはしない。犬とは人間の言葉で話し合うことはできないが、人間同士以上に心を交わしあうことができる。馳星周 著「陽だまりの天使たち ソウルメイトⅡ」、2018.10発行(文庫)トイ・プードル、ミックス、ラブラドール・レトリーバー、バセット・ハウンド、フラット・コーテッド・レトリーバー、フレンチ・ブルドック、バーニーズ・マウンテン・ドッグの7話。フレンチ・ブルドック、最高でした(^-^)トイ・プードル、ミックスも良かったです。

  • 号泣すると分かってて読みました。
    号泣しました。

    いい涙を流せました。

    やっぱり犬が大好き。
    それにしてもどうしてこんなに犬の描写が上手なのでしょう。
    登場する犬達の息遣いまで、すぐ側で聞こえるような気がしました。

    2016年4冊目。

  • 犬と人との絆を描いた短編集、第2弾。

    犬好きな人には何ともたまらないシリーズです。
    前作同様、犬種ごとに様々な物語が展開されますが、その特徴を良く捉えているからこそ…という感じでした。
    どの物語も、作者の犬への並々ならぬ深い愛情を感じます。

    いつでも犬は懸命に純粋に今を生きている。家族と共に過ごす時間が何よりの幸せ。
    すべての犬が幸せな一生を送れますように!と願わずにはいられません。

  • 馳星周の、「雨降る森の犬」が良かったので、ついつい再び犬ものを買ってしまった。

  • ソウルメイトシリーズ2作目。
    前作同様犬と人間の絆を描いた作品ですが、相変わらず飼う側の責任の重さを考えさせられるものばかりでした。安易にペットを飼うものではないですが、その責任を存分に全うできるなら、人生が豊かになるのは間違いないでしょう。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年、『少年と犬』で第163回直木賞受賞した。著者多数。

「2022年 『煉獄の使徒 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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