九十九藤 (つづらふじ) (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087457865

作品紹介・あらすじ

江戸の人材派遣業、口入屋の女主人となったお藤。商いは人で決まる──その信条を胸に、行き詰まった店を立て直すため、仲間と共に前代未聞の大勝負に打って出る。感動の長編時代小説。(解説/中江有里)

感想・レビュー・書評

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  • 季節の名から取った「冬屋」という口入屋を差配する女性・藤の物語。フユ屋と最後まで読んでいたが、最後の解説で「カズラ屋」と読むのがわかった。本のタイトルも「九十九藤:ツヅラフジ」で、文中にも女衒から逃れた時に「葛藤:ツヅラフジ」に行く手を阻まれながら運命的に武士に助けられる。最後のシーンも「藤にからめとられても、自力で這い出す」とフジヅルが象徴的に描かれている。
    主人公が祖母や母の教えを受け、知恵と度胸で成功する物語のようで、実はアツい恋愛物語だった。最後のシーンが良かった。

    • NORAxxさん
      浩太さん、こんにちは^ ^
      私はなかなか覚えられない難読漢字を自分オリジナルに変換して最後まで貫き通してしまう事があります。人に説明する時に...
      浩太さん、こんにちは^ ^
      私はなかなか覚えられない難読漢字を自分オリジナルに変換して最後まで貫き通してしまう事があります。人に説明する時に露呈して恥をかくアレです...笑
      「冬屋」が「カズラ屋」と読むのも今初めて知りました!!賢くなっちゃいました(´>∀<`)ゝありがとうございます。
      恋愛物は中々手を出さない私なので、レビューを読んで胸熱の気持ちだけ頂戴しちゃってますが、これからも楽しみにしてます☆
      2022/02/21
    • 浩太さん
      最初に読みが出てきたのに、忘れてその後は「フユヤ」と読んでました。他の本でも同様に自分流の別な読みをすることが多いです。
      植物で「忍冬」と...
      最初に読みが出てきたのに、忘れてその後は「フユヤ」と読んでました。他の本でも同様に自分流の別な読みをすることが多いです。
      植物で「忍冬」と書いてスイカズラですが、そこから取ったそうです。
      ハーブとしても用いるので、以前、庭に植えたことがありましたので、なるほどと思った次第です。
      2022/03/07
  • 女性ながらに口入屋の差配をすることになったお藤。

    武家に中元を送り出すような口入屋の仕事は荒っぽい男相手で、女が務まるような仕事ではないのだ。

    だが、彼女は武家相手ではなく、商家相手の商売を考え、まず仕事を求めてきた人間に仕事を仕込むことから始める。

    だが、それは店のものの反発を招き、また他の口入屋の反感も買うことになる。

    それにも負けじと進むお藤の過去。

    見事なお仕事小説であり、人材育成小説ですね。
    面白かったです。
    あと一冊、西條さんの本は読みかけがあるので、それを読むのもさらに楽しみです♪

  • 時代小説。

    主人公お藤は伊勢四日市の生まれ。
    幼くして孤児となり、艱難辛苦の果てに江戸にたどり着いた。
    この地で縁に恵まれ、口入屋の差配として一歩を踏み出す。
    口入屋とはいわば人材斡旋業である。働きたい者と、働き手を必要とする者とをつなぐ仕事だ。
    江戸の口入屋の得意先はほぼ武家と決まっていた。だが、お藤は商家に眼を付ける。ただ奉公人を紹介するのではない。時間を掛けて一から仕事を教え込み、すぐ使える形で送り込むのだ。商家では特に、男で台所仕事ができる者が求められていた。お藤が仕切る口入屋は次第に評判を呼び、商いは軌道に乗り始める。
    だが、好事魔多しの言葉通り、もちろん、先には困難が待ち受けていた。

    物語の柱の1つは、このお藤の商売を巡るお話。
    目敏く商機を見つけ、女の細腕で荒波を渡っていく。
    利にさといばかりではなく、人情のまろさもあってこそ、商いはうまく回る。たおやかでありつつしたたかなお藤の心の支えになっているのは、今は亡き祖母の教えである。
    お藤には、潰れた家業をもう一度興す夢がある。

    物語のもう1つの軸は、淡い恋物語である。
    生まれ故郷で酷い目にあったお藤は、追手から必死で逃げる途中、1人の侍に助けられていた。その姿は幼い目に焼き付けられたが、相手の名も知らず、それきり会うこともなかった。
    その恩人にお藤は江戸で巡り合う。けれどもその姿は、あの時の凛としたものではなかった。彼に何が起こったのか。

    お藤の商いと恋は幾重にも曲がりくねり、時に2つが重なり、時により合わされる。
    九十九藤(つづらふじ)は葛藤とも書く。葛籠(つづら:蔓で編んだ四角い衣装箱)を編むのに使ったことからそう称されるようになった。くねくねと幾度も折れ曲がる様から九十九の字があてられる。
    お藤とお侍の最初の出会いにも九十九藤が絡んでいた。
    しなやかで容易には切れないさまは、物語そのものを象徴しているようでもある。

    お藤と一緒に泣いて笑って、九十九の曲道をたどった先に訪れる大団円。
    爽やかな読み心地の一編。


    *まったくの蛇足なのですが、いわゆる藤(ヤマフジ)とツヅラフジは種類が違っていて、フジは一般に、つる性の植物を指して使ったもののようです。表紙の花はヤマフジのもの。ツヅラフジの花はもうちょっと地味な感じのようですね。お藤の名前自体はヤマフジから採っているのでしょうから、これはこれでありと思いますが。

  • 【記録】
    九十九藤 (つづらふじ)
    2018.09発行。 字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。
    残念です。

    皆様のレビューを見て予約するが、字が小さくて読めず。
    少し読むが、面白そうなのに残念、返却する。
    ※【記録】の説明は、プロフィール欄に書いて有ります。

  • 江戸時代における人材派遣業、および人事コンサルタント業界で辣腕を振るう女性差配・お藤さんの半生記。

    非常にからりとした気風の良い展開が快い冒頭パート・増子屋奮闘編。
    お藤の過去パートでの出逢いに端を発する百蔵恋慕編。
    口入屋の女主人としてもいち女性としても円熟を迎え、次世代へ継がれる志・明るい前途を感じさせるような、満月を浮かべすっきりとしたラストシーン。

    まさに人生は山あり谷あり・紆余曲折・九十九折りの如く。なかなか真っ直ぐ最短距離では行けないけども歩みを止めなければやがては頂に到達する。

    一貫して爽やかな印象の作品で、特に序盤の店の切り盛りの場面は人物がみんな活き活きとエネルギーに満ち溢れていてすごく面白い。

    が、八部会との対立〜百蔵の決行というシリアス展開に差し掛かると物語が熱を帯びる一方、それまでの勢いが減じられ、お藤も葛藤に絡め取られる。それは百蔵においても同様で、小網町での二人のやり取りは第三者(読者)立場としても苦渋が伝わってくるかのよう。
    いや、このシーンについてはもっと分かりやすく後押しする描写の方がスカッとするのだろうけど、言外に漂う生々しい駆け引きのようなものが作品に良い味付けをしているような。

    書きながら気付いたが’葛藤’ってまさにこの小説を表した言葉だなあ。

    悩み悶え傷を負いながらも絡まった蔓を振り解き前へ進む、たくましい上質な大人のラブストーリーだと感じた。



    9刷
    2022.1.19

  • 時代小説の中でも、西條奈加さんの描く物語には女性が活躍するものが多く、いつもぐっと心を掴まれます。
    こちらの小説も、主人公のお藤の挑戦の数々に胸が高鳴りました。
    そして、恋も。
    あまりにも切なくて泣いてしまいましたが、
    最後は嬉しくて泣いてしまいました笑
    良かった〜!!
    読み終わったあともずっと幸せの余韻にひたってしまっています。

    とてもとても大好きな一冊になりました。

  • 口入れ屋の増子屋を訪れるシーンから、ここで何が起きるんだろうと引き込まれ、この店に来るまでのお藤の来歴に息を呑み、百蔵との再会とその後にときどきし、ほろりとした。
    本当に引き込まれて一気に読めた。
    最高におもしろかった。

  • 大好き。江戸の話なのに、仕事の知恵、家族の温かさ、恋のときめきが詰まってる。男顔負けの強気なお藤は気持ちがいい。お藤を支える冬屋の面々も素敵です。素直じゃない島五郎が好きだし、危険人物・黒羽の百蔵も好きになってしまいそう。読んでいくうちに各人物の過去が明らかになっていくのも見逃せない。

  • 好みの話しです。不幸に負けない 自分の才覚で運命を切り開いていく若い女性が主人公
    助けてくれる周りの人たち
    お品という天女のような女主人は 気持ちをわかってくれる親友のよう
    昔助けられた黒羽の百蔵とのロマンス
    最後がハッピーエンドなのもいいですね!
    読み終わって気持ちのいいお話しでした。

  • 江戸の人材派遣業、口入屋。縁あってその女主人と
    なったお藤は、祖母仕込みの人を見る目と持ち前の
    胆力で、傾きかけた店を繁盛させていき…。
    己と仲間を信じて人生を切り開くお藤の波乱万丈の
    半生を描く時代長編。

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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