イタリアのしっぽ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087457803

作品紹介・あらすじ

家族関係が破たんした芸術家を見捨てずにいた犬、老女の窮地を救った近所の猫、山を隔てた男女の縁を結んだ馬……。動物を通して見えてくる様々な人間模様を綴った珠玉のエッセイ。(解説/唯川恵)

感想・レビュー・書評

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  • 主にペットである動物たちにまつわる15の短いエッセイ集。
    相変わらず達者。作家の唯川恵さんが解説を書かれていて、内田洋子さんのこと、あるいは内田さんの作品のことを紹介されている。少し長くなるが引用する。

    日常を切り取る、という言い方があるが、それがどれほど難しいテクニックを必要とするか、よく知っているつもりだ。
    単に日常を書き連ねるだけでは味わいがない。下手をすれば退屈な印象しか残らない。日々のさりげない光景から何を掬い取るか、どこに的を絞るか。大事件が起きないからこそ、深い洞察力と審美眼が不可欠であり、作者の手腕が試される。
    【中略】
    何より、語り口のセンスのよさ。文章は華美過ぎず、それでいてしみじみと情感溢れ、ウィットに富んでいる。妙味ある展開と、艶やかで緩やかな時の流れ。それが読み手の呼吸と実にマッチする。また自分の存在を声高に主張せず、語り部に徹する慎ましやかさには、書き手としての確固たるスタンスを感じる。

    唯川さんのこの文章は、内田ファンの感じていることを過不足なく表現してくれている。この文章自体にプロの書き手の力量を感じるが、内田洋子さんも、良い意味で、プロのエッセイストなのだということだろう。

  • イタリアを舞台にペットを飼う人との交流が描かれていました。
    知っていて読み始めたのに「これ本当にエッセイ?」と問いたくなるような美しい文章で、小説だと錯覚してしまいました。

    ペットは犬、猫にとどまらず、猿やウサギ、馬、タコ、一風変わったキツネまでも…。
    それに加え、イタリア各地の土地事情や暮らしぶり、人間ドラマが詰まっていて読み応えがありました。
    なかなかこんなエッセイはないと思う。

    特に好きだったのは、
    *「来年もまた会えるかしら」
    *「憑かれて」
    *「要るときに、いてくれる」
    *「嗅ぎ付ける」

    植木市で出会った老夫人リアさんとの偶然の再会から繋がるご縁、「憑かれて」から受ける印象とは違って、気持ちが明るくなる素敵なエピソードも良かった。

  • 表紙にひかれて借りたけどハズレ。文字通り文字を追うだけで頭に入ってこんし苦痛だった。短編でそれぞれ違う人出てきてよう分からんっちゃ

  • 内田洋子さんの作品を初めて読んだ。
    図書館をうろうろしていて小川洋子さんが好きなので洋子つながりでみつけた本だった。

    ペットに纏わるエッセイというより、動物と共に暮らしいている人の生活や人生について書かれていた。
    それも明るくハッピー幸せいっぱい!ではなく人生悲喜交々、どちらかと言えば孤独な人という印象のお話が多い。
    ペットも犬や猫といった一般的な動物だけでなく馬や猿、タコ、京都の狐(お稲荷さん?)まで出てくる。

    大きなイベントやハプニングについて書いているわけでもないのに惹きつけて読ませてくる美しく、物悲しい雰囲気の文章が凄いなと思った。そして途中からエッセイであることを忘れ小説を読んでいるような気持ちになった。

    この2点については解説で唯川恵さんも書かれていて、「小説を読んでいるような気分になるのは、語り手である内田さんの存在を主張することなく語り部に徹しているから」とあり、なるほどと納得させられた。

    特に好きだったのはタコ(アルベルト)と暮らしている、初めての映画だけ成功し、そのあとは細々と映像制作を続けているマリーノの話。この作品は特に物寂しい雰囲気が強くて好きだった。

    本編だけでなく、内田さんが幼い頃祖父とその飼い犬と須磨海岸まで散歩していたエピソードについて書かれているあとがきまで美しく、何度も読み返したい文章だった。

    なんとなく手に取った本だったが買い直して手元に置いておきたいくらい好きな本になった。内田さんの他の作品も読んでみたい。

  • イタリアで暮らす作者と、その周囲の何かが欠けた人たち。その隙間を埋めるように寄り添う犬や、猫や、しっぽのあるいろいろな生き物たち。ラストに近づくと、そのどこか欠けた人たちが寄り添って、欠けたところを埋めながら集まるところに希望を感じました。そして最後は作者自身がペットのような立場になり、、弱くて世話をやかれる立場も悪くない。あせって前のめりになりがちな私を諫めるような、素敵な物語でした。

  • 図書館で。
    なんとなく表紙はパスタの絵かと思ったら犬だった(笑)
    それぐらい…の感想かも…

  • イタリア(当初はミラノ)に暮らすジャーナリスト、内田洋子さんの動物に纏わるエッセイ集です。
    初読み作家さんでしたが、とてもかっこいい文章を書かれる方でした。
    解説で唯川恵さんも書いていますが、この人のエッセイは小説みたい。
    なぜそうなのか考えてみたら、内田さんはご自分のことをあまり書かないのです。出自や境遇、仕事や生活の細々とした自分事をほぼ排除して、ただ身の回りに起こることを淡々と描き出す。
    クールでドライな視点は、感情論を嫌う研究者のようです。想像するイタリアとは全く違う影の部分を垣間見ました。

  • 最初の頃より感動が薄くなってきている。
    作品というより読むときの状態によるのもあると思うけど。

  • エッセイというよりインタビュー。様々なイタリア人の人生が垣間見れる。
    温度の低い文章だけど、その人生はそれぞれ違う形で起伏に富んでいて興味深い。

  • 私には合わない感じだった。

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内田洋子の作品

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