東京日記1+2 卵一個ぶんのお祝い。/ほかに踊りを知らない。 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087457520

作品紹介・あらすじ

不思議におかしい、カワカミさんの日常生活記。「少なくとも、五分の四くらいは、ほんとうです」。文庫化にあたり単行本1巻と2巻を合本。門馬則雄氏のイラストもたっぷり収録しました。(解説/沼田真佑)

感想・レビュー・書評

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  • 岸本佐知子さんがエッセイの中で勝手に幼なじみという設定にしていたのが川上弘美さん。
    本当に仲良しらしいので、岸本佐知子さんに気に入られた川上弘美さんてどんな人か知りたくなり読んでみた。

    これはエッセイではなく日記。
    ある日の出来ごとを8割が本当で、2割は盛って書いたもの。
    嘘っぽい箇所はわざとらしいのですぐわかる。
    1ヶ月のうち何日かのできごとを3ページ程(1日分を5行から10行)でサラッと書いてあるので、すきま時間に読むのにちょうどいい。
    どこからでも読めるし、いつでも読むのをやめられる。

    高校の時の友達から銭亀を貰ったとか、盗まれた自転車が見つかったとか、映画を見に行こうとしたら突然雨が降ってきたのでやめた、など。
    どうでもいいことを飽きもせず書いている。
    夏場は「暑い、暑い」といい、冬場は「寒い、寒い」という。
    単に暑い寒いと言っても面白くないと思ったのか、後ろに「よ~」とか「のよ~」を付けてみたりする。
    こんな感じで気楽に読める本は常備しておきたい。
    トイレ本には最適だし、病院の待合室で読むのにも良い。

    小学生の時、夏休みの宿題に絵日記があったことを思い出した。
    毎日天気のことと、○○君と△△して遊んだというほぼ同じ内容のことしか書くことがなく、そのせいか自発的に日記を書いたことはない。
    日記を書く人って、誰かに読まれることを意識しているのだろうか?
    そういう人は、今はブログを書いているのか?日記とブログは多分ちょっと違うんだろうな。

    で、この日記本から受けた川上弘美さんの印象は「マイルドで控え目な感じ」だ。
    岸本佐知子さんは川上弘美さんのどこに惹かれたのでしょう。

  • ★3.5
    楽しい日記。

  • うそのようなほんとの日常(でも少しウソも含まれているそう?)
    気軽にサクッと読める。
    でも、私の好みとはちょっと異なり、続編を読みたいという気持ちにはならなかった。

  • 七月某日  晴れ 猛暑
    とにかく暑い。外にでて何かしようという気分にならない。
    こういう日は部屋で寝そべって本の頁をめくるに限る。川上弘美さんの「東京日記」を手にとる。

    「センセイの鞄」や「古道具 中野商店」など独特の空気感で、小説を読むことの楽しさを味あわせてくれる人だ。
    本書は、数年にわたり、川上さん自身の身辺で起こった事柄を、日記という形でまとめたものだ。
    核となる出来事は事実だろうけれど、(ご本人も4/5は実際にあったことと言っておられる)その空気感そのままに、カワカミさんと一緒に想像の世界に遊ぶことができる。
    例えばこんな感じだ。

    ◆三月某日 晴
     あたたかな日。
     朝、「桜が咲いてますよ、一分咲ですけど、咲いてますよ」という電話がかかってくる。
     受話器を持ったまま窓を開け、百メートルほど先にある桜並木のあたりを眺めると、昨日まではひんやりと沈んでいた桜のまわりが、今日は薄赤くはなやいでいる。
     「咲いてますね」と喜ぶと、相手も「咲いてますでしょう」と喜んだ。
     数十秒ほど黙ってお互いの場所の桜を眺めあい、それからそっと電話を切る。

    ◆八月某日 晴
     浅草に泊まりに行く。
     東京に住んでいるのに、めったに都心に出ない。「銀座ってどんなところ」と、ある日こどもに聞かれてそのことに気づき、ここは一つ東京見物さ行くべい、と思いたったのである。
     こどもたちと一緒に、六区のあたりをそぞろ歩く。花やしきでは、お化け屋敷に入る。豆かんを食べ、お寺にお参りし、芋ようかんを買う。太鼓の博物館に入場し、太鼓をでこでこ叩く。
     「東京はどうかね」
     こどもたちに聞くと、しばらく首をかしげていたが、やがて「東京は、すごいね」と小声で答えた。不憫になる。


    日記が身辺雑記であると同時に、本の頁にはさんだ押し花のように、その時々で揺れる気持ちを留めおいてくれる装置だということを改めて認識させてくれる。
    少しだけ、暑熱が奪われて体のなかを風が通りすぎていく気分。

  • 五分の四くらいは本当の日記。というカワカミさんの日々。喫茶店がなくなってたり、また再開してたり。お酒を飲みに行く話。道に迷ってたどり着かない話。おくらになる話。なんだなんだ?
    これが日常?
    日記、つけたことないけど、つけてみたいなあ。
    なんだか 楽しそう。
    私の日常にも??なことが起こるかも

  • 日記って詩みたいにポンポンしているな。

  • 川上未映子の本と思ってました。あー大阪出身の川上さんが東京に住んで思うところをしたためたのか、という頭で読んだら文章のタッチちゃうし流れる時間の感じもちゃうし!あれ?と思ったら川上違いやないかー!
    でも不思議とぼちぼち読み進められ、なんとなく小川洋子的な、のんびりした不思議な人の日常を垣間見た感じで楽しかったです。この人家族にいたらどんな感じかなと妄想しました。いや、ともだちにもいないタイプやな。

  • ほとんど実際にあったこと、とは思えない不思議な川上さんの日々。

    川上さんの小説も、不思議な話が多いけど、まぁ、そんな事もあるかもしれない、と思ってしまう。

    エッセイもそんな感じ

  • やっと文庫になりました!!しかも二冊分!!
    一気に読んでしまうのが勿体なくて、少しずつ読みました。

  • 何かで名前を久々見て、好きだったなと読んでみた。
    好きと言っても『蛇を踏む』は当時ワケワカランと思った記憶がある。

    日記エッセイなんだけど、不思議ワールドがちょこちょこ出てきて、(ご本人は4/5はほんとうと書いておられた)それがクセになり、すぐに読んでしまうのがもったいなくちびちび読んだ。

    読んでる間は影響されて、ツイッターがカワカミモドキになってた笑

    出かけまくってるなと思ったら実はずいぶん前の単行本の文庫版で、文庫あとがきに本人も同じことを書いてた。
    この文庫も何年も前に発刊されてたけど、褪せぬ魅力を感じた。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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