逢坂の六人 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087456356

作品紹介・あらすじ

記念すべきやまと歌初の勅撰集、古今和歌集の選者に任命された紀貫之。歴史に残る歌集の成立を背景に、紀貫之と六歌仙たちとの関わりをドラマティックに描き出す長編時代小説。(解説/北上次郎)

感想・レビュー・書評

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  • 日本初となる勅撰和歌集(古今和歌集)の選者に抜擢された、紀貫之の物語。
    勅撰集はそれまでも出されているけれど、すべて漢詩集だったということだ。
    今度は序文も仮名で書いて良いと言われ、「やまとの魂をうたうのはやまとの言葉」をモットーとする貫之は大いに張り切るのだが、序文の出来にいまいち納得できない。
    彼は、母と共に元服前の若き日を過ごした逢坂の地で遭遇した出来事、出会った歌人たちに想いを馳せる。

    「六歌仙」という言葉は知っている。
    古典の授業で習ったかなあ・・・?
    三十六歌仙というのもある。
    36人よりも、6人の方が少数精鋭だよね?最高峰の人たちだろうね?と思っていた。
    無知だったので・・・
    知らないのは自分だけかと思っていたら、「六歌仙」は古今集の序文で述べられているけれど、歴史的にはなんとも謎の人たちだったらしい。

    その、少ない資料のピースを組み合わせ、びっくりするようなお話を描き出したのがこの本。
    個性的すぎる歌人たち。
    恐ろしき藤原家。

    どの時代にも共通するが、リア充は良き詩人にはなれない。
    満ち足りぬ思いの発露が、詩であり、歌なのだ。
    つらゆき殿、あなたの選んだ六歌仙は、今の時代まで名を残していますよ。

    【在原業平】浮ついた女たらし、と認識していたけれど、幼い貫之・“あこくそ”を可愛がってくれる、イケオジに惚れ直した。
    【小野小町】片っ端から男を振りまくった思い上がり女・・・みたいに言われていたけれど、それは男視点なのでは?
    個人的には昔から、はっきり「NO」を言った小町はかっこいいと思っていた。ここに書かれている彼女の心情もよくわかる。
    【大友黒主】近江大津の宮の幻想。さらなる昔を、万華鏡の向こうに見るような。
    壬申の乱前後の歴史に興味があるので、思いがけない昔語りに、タイムスリップした思い。
    【文屋康秀】飄々として軽い、ゴーストライター。いいキャラだと思う。
    【僧正遍照】私ごとですが・・・高校の時、一週間に一回の「必修クラブ」で百人一首クラブに入った。その時に一番人気だったのが「あまつおとめ」
    でも、なんでこの歌をお坊様が詠んだの?生臭なの?と思っていたんだなあ・・・

    夢のやまい(夢遊病とか?)の貫之が幻視する世界は、伝奇もの。
    奈良から平安初期にかけての時代には、まことにに似つかわしく思われる。

  • ハードカバー版よりジャケットが好き!
    「The Magnificent Six」とあるけれど、直訳すると「壮大な六人」?
    ちなみに「Seven」に置き換えると、「七人の侍」が出て来る。
    なぜ横文字を入れたし(笑)

    六歌仙を題材にした話なんて読んだことがない!
    と思って読み始めたら、なかなか最後まで楽しませてくれる構成でした。

    紀貫之達が『古今和歌集』を編纂するはじまりから、彼の幼少時代へ。
    おじ上である白馬の王子様的在原業平。
    逢坂の席でサロンを開いている小野小町。
    闇の色が濃すぎる薬師?大友黒主。まさか、壬申の乱まで振り返るとは。
    代作業に勤しむ喰えない文屋康秀。
    かなりアブナいボス坊主、僧正遍照。
    そしてちゃっかり顔出し喜撰法師。

    色合いがクルクル変わる、そんな一冊。
    紀貫之が想いを託して編んだ『古今和歌集』に親しみを感じさせてくれる。
    さて、どこまで史実か分からんが、そういう説がある、という所を上手く繋げているようす。

    ただ一点。
    最後まで読みきると、ふと思うのだ。
    ああ、このエンディングにして『土佐日記』に繋がるのだな、と。
    それが、ほんのり寂しい。

  • 平安時代感が、変わってしまった!

    全員くせ者過ぎ‼️


  • 紀貫之と六歌仙の話。
    そんなエピソードがあるんだ!知らなかった!と思ってネットで調べてみると、出てくる。よく調べられて、練られた作品。

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著者プロフィール

1964年生まれ。作家。早稲田大学第一文学部卒業。編集者・ライターを経て、『八月の青い蝶』で第26回小説すばる新人賞、第5回広島本大賞を受賞。『身もこがれつつ』で第28回中山義秀文学賞を受賞。日本史を扱った他の小説に『高天原』『蘇我の娘の古事記』『逢坂の六人』『うきよの恋花』などがある。

「2023年 『小説で読みとく古代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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