富士山噴火 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.90
  • (15)
  • (43)
  • (18)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 301
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (648ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087455946

作品紹介・あらすじ

死者数最大1万3千人、被害総額2兆5千億円と予測される富士山噴火。過去最大の災害危機に真っ向から挑み、さらに父娘の絆の再生を描き出すノンストップ防災エンターテインメント。(解説/鎌田浩毅)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 面白かった!
    災害パニックエンターテイメント小説!
    富士山噴火時のパニックとその救助活動のヒューマンスペクタクル!
    この手の小説大好きです。
    後半のスピード感の中で、これはあり得ないって思うところが多々ありますが、そこはエンターテイメントと割り切り、最後のヒューマンドラマに涙するハリウッド映画さながらのハラハラドキドキの物語です。

    主人公は、3年前の南海トラフ大災害で妻と息子を失った元自衛隊ヘリパイロットの新居見。その娘はかろうじて生き残りますが、その事件を境に娘とは絶縁状態になり、新居見は自衛隊をやめることに。
    家族を救助する前に目の前の国民を救助するのが自衛隊。辛い。
    そんな新居見は今は老人ホームの管理人をしていますが、ある日、富士山の噴火が近いことを旧友の記者から聞かされます。
    さらに火山学者から、その噴火の規模がかなり大きく、未曾有の災害になる事を理解します。
    富士山の噴火の前に、老人ホームの人たちを、そして、御殿場市の住民を避難させることが出来るのか?
    そして、市長や警察、消防、自衛隊とともに、住民避難の指揮を任されることに。

    噴火予知を信じる者・信じない者のギャップ。
    そして、いざ、噴火となった時の人々のパニック。
    さらに火山灰、火砕流、溶岩流、噴石、とさまざまな事象が発生していくなかでの避難活動!
    それぞれの人たちがそれぞれの使命を果たしていく姿は心が熱くなります。
    そんな中、医師となった娘は、災害現場での医療活動を通じて、父親の当時の自衛隊での信頼ぶりや今のホームでの信頼ぶりを目の当たりにします。父親の本当の姿を理解していきます。
    さらに、娘の婚約者を救いにヘリコプタで噴火している富士山に向かう父親。
    婚約者だけでなく、あちこちの住民をヘリで救助していく新居見。
    そして、噴石が飛び交う中、最後の救助に向かいます。
    無事救助できるのか?間に合うのか?
    ハッピーエンドなのか、哀しい結末で終わるのか?手に汗握って、読み進めることになります。

    後半の救助活動の中では、いまや民間人の主人公が当時の部下の自衛隊員を指揮したり、自衛隊のヘリコプタを操縦したり、さらには、勝手にヘリコプタを操縦したりと、あり得ない事がありますが、エンターテイメントとして割り切って、最後のシーンに臨みましょう。

    ハラハラドキドキ、そして、父娘の絆を感じられる物語です。

    とってもお勧め!

  • 高嶋哲夫『富士山噴火』集英社文庫。

    『M8』『TSUNAMI 』『原発クライシス』『東京大洪水』に続く、巨大災害シミュレーション小説。

    平成南海トラフ大震災から3年後、日本が誇れる美しき富士の山が突如、怒れる山と化する。南海トラフ大震災で自分の妻と息子を救うことが出来ずに自責の念に苛まれ続ける元陸上自衛隊のパイロット・新居見は…

    巨大災害のシミュレーション小説と言えば高嶋哲夫を置いて他に居ないという程、リアリティがあり、迫力のある描写に圧倒された。多少、無理と思われる展開や災害の描写に比べると安っぽい人間ドラマもあるのは致し方無いのかも知れない。

    今や何時、どのような自然災害が起きても不思議ではない程、自然は人類に対して牙を剥き始めている。まるで、人類への過酷な試練こそが自然の摂理と言わんばかりである。こうした小説を読むと、常日頃から自然災害への備えと心構えが必要と身の引き締まる思いを抱く。

    • バス好きな読書虫さん
      ことぶきジローさんが言ったとおり、氷血面白かったです。このシリーズ、新しいものが出たのですね!私も4作全部読んでいるので、読んでみます!
      ことぶきジローさんが言ったとおり、氷血面白かったです。このシリーズ、新しいものが出たのですね!私も4作全部読んでいるので、読んでみます!
      2017/07/01
  • 最近地震が多く感じ、富士山付近を震源とするものもあったので、富士山噴火に至るまでの現象や噴火が本格的になってからの被害状況・住民避難の描写等、リアリティをもって読めた。
    富士山はその姿を大きく変えてしまう程大規模に噴火した。非常に多くの犠牲者が出たが、災害規模を考えるとそれでも被害を抑えたように書かれていると感じた。
    その要因は、超人的なヘリ操縦スキルを持つ元自衛官の新居見をはじめ、その仲間や家族、自衛隊・行政組織の適材適所の奮闘にあると思うが、責任感があり(ありすぎる部分もある)、統率力もある黒田市長の存在が大きいと思えた。
    現実の日本で、いざという時に、黒田市長のように行動できる自治体の首長が少しはいるのだろうかと思ってしまった。
    大地が変動する時の流れは、一般の人間が感じるそれよりはるかに永い。エピローグでの、秋山有紀博士の壮大で楽観的な言葉からそれを感じることができた。

  • 本の内容の感想ではありませんが、読後に考えたのは世界の富裕層は宇宙旅行や宇宙開発よりも地球の災害を減らすことにお金を使って欲しいということ。
    地球の火山ひとつもコントロール出来ないのに月だ火星だなどとちゃんちゃら可笑しいです。

  • 書棚に買った覚えのない本があった。それが本書。君はどこから
    来たのかね?ちょっとミステリアスである。

    と言っても、本書はミステリーではなく災害小説。主人公は元
    陸上自衛隊のパイロット。3年前の南海トラフ大地震で妻と長男
    を失い、唯一生き残った長女との間には確執がある。

    自衛隊を辞め、富士山を臨む高齢者介護施設の施設長を務める
    主人公の元に、新聞記者となった高校の同級生から情報が入る。

    近く富士山が噴火する。

    入居している高齢者全員を、いかに安全に避難させるか。主人公
    は最悪を想定して、最善の手段を取る。

    日本の象徴である霊峰富士。過去に何度も噴火を繰り返し、現在の
    姿になった。優美な山容を見せる富士山は、活火山である。なので、
    本書のテーマとなっている富士山噴火は絵空事ではない。

    遠くない将来、富士山が噴火したらどうなるのか。富士山の歴史や
    火山がどのように噴火に至るのかの過程、注意しなけばけない前兆、
    火山灰が降ったらどのようなことが起こるのか等を織り交ぜながら、
    大規模災害と対峙する人々の姿を縦軸して、主人公の家族の再生を
    描いている。

    実際、内閣府のホームページでも富士山噴火を想定したハザード
    マップなどが公開されている。しかし、それを前提とした防災訓練
    が首都圏でなされていると言う話は寡聞にして聞かない。

    怖かったんだよね、映画「ボルケーノ」を観た時も。この映画は
    都市部で地震による火山活動が始まり、溶岩流が襲って来るとの
    設定だったか。

    富士山が噴火した場合、首都圏にまで火砕流・溶岩流は襲って来ない
    のだろうが、広範囲が火山灰に覆われる。そうして、火山灰によって
    停電などの様々な不具合に見舞われる。

    もし、富士山の噴火が台風や豪雪と重なったら?と、読みながら悪い
    方向へと考えてしまった。余計に怖い思いをしてどうするよ、自分。

    ストーリー展開のスピード感もあり、ぐいぐいと読ませる小説だった。

    「想定外」。東日本大震災と福島第一原発事故の際に、何度も聞か
    された台詞だ。万能な言葉だが、想定外にならぬよう最悪を想定し、
    最善を尽くすのが防災なんじゃないかな。

  • 只事ではない大規模災害を描いているが、その重大危機のあちこちで、結構簡単に危機回避ができてしまっている。
    実際に、こんなに上手く回避できればいいが、と云う感想。

  • 「M8」から続くシリーズの第4作目になるのかな?
    相変わらず日本が大変な事になっています。

    タイトルの通り、富士山が噴火します。
    テレビとかで富士山が噴火した時のシミュレーションを行ったりしていますが、そんな感じです。

    静岡県の御殿場市周辺がメインステージとなっていますが、土地勘がある人と無い人でイメージのわきやすさに大分差が出ると思います。
    自分は静岡県に住んでいた事があるから結構イメージわいたかな。

    ただ、やはりページ数が多いので結構根気は必要です。

  • このタイミングでか、という感じですが。
    災害シリーズは火山噴火。
    なんかリアリティがあって、読み始めると一気に読んでしまって寝不足になるシリーズ。
    これも、中盤から終わりまでは一気読み。
    しっかし、この人の本読むと、それに近しいこと起こるからこわいわー
    まさか草津白根山とは…

  • 現代の預言者高嶋の近未来小説。念入りな取材と緻密な仮説。でも、これまでの地震や原発事故、津波や洪水を扱った預言小説よりも、災害に関わる人間のストーリーテリングに、より焦点をあてているという点で、今までの高嶋の小説と異なっている。映画化してもいいかも!

  • 初めて読む作家さん。
    震災系の本を多く書かれているみたい。
    *
    地球は活動期に入ったと言われ、富士山もいつ噴火してもおかしくないと言われてますよね。
    正直、あの東日本大震災の後に本当に噴火してしまうんじゃないかと、結構本気で心配してました、私。
    でも、心配しつつも家に防災グッズとかほぼ皆無な状態で…。
    でも、これ読んだらちょっと本格的に用意しようかなぁという気になって来ました。
    *
    そして、富士山にいつか登りたいと思ってるんだけど、怖くて当分登る気になれません 笑
    この前読んだ、『火竜の山』も噴火のお話だったんだけど、今回もドキドキハラハラで面白かったです!
    *
    日本政府の早急に動けない所とか、本当にこうなりそうだなーって思ったら、怖くなったよ。
    富士山の噴火の仕組み?噴火の様子に詳しくなった気がする。
    噴石コワイ。
    *
    そして、自衛隊やっぱり格好良いなーって思った‧˚₊*̥(∗︎*⁰͈꒨⁰͈)‧˚₊*̥
    自衛隊が活躍するお話は読んでて楽しい!
    あと、お医者様も活躍してます!
    *
    高嶋哲夫さんの他のパニック物も読んでみたくなった。
    他には直下型地震や津波、原発など日本に住んでる上では意識せざるをえないテーマばかり。
    直下型地震のお話は今回ちょっとだけ出てきた、地震・火山の研究者が出てくるので特に気になる!

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一九四九年、岡山県玉野市生まれ。九四年「メルト・ダウン」で第1回小説現代推理新人賞、九九年「イントゥルーダー」で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞を受賞。他に『ダーティー・ユー』『ミッドナイトイーグル』『M8』『TSUNAMI津波』『東京大洪水』『風をつかまえて』『乱神』『衆愚の果て』『首都感染』『首都崩壊』『富士山噴火』『日本核武装』『神童』『ハリケーン』『官邸襲撃』『紅い砂』『決戦は日曜日』など著書多数

「2022年 『落葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高嶋哲夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×