天使の柩 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087454536

作品紹介・あらすじ

自分を愛せずにいる少女・茉莉と、心に癒えない傷を抱え続けてきた歩太。彼との出会いに、初めて心安らぐ居場所を手にした茉莉だったが……。ベストセラー「天使」シリーズ最終章!(解説/榎本正樹)

感想・レビュー・書評

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  • ハッピーエンドで、きれいに完結してくれたのですっきり。

    一見、主人公は茉莉のようだけど、真の主人公はやっぱり歩太で、20年を経た彼の成長を描いた物語。

    本作品で、辛い過去があったからこそ、同じ過ちを起こさぬよう真剣に人と向き合い、後悔のないように生きていく、そんな歩太と夏姫の姿を見届けられたのはよかった。
    天使シリーズの良さは、3作全て読まないとわからなかった気がする。

  • 不覚にもまたこの天使シリーズに泣かされてしまった。
    『天使の卵』を読んだのはいったいいつだったろう。歩太と春妃の純粋で哀しい愛情にものすごく心を揺さぶられた。
    『天使の梯子』『ヘヴンリー・ブルー』と続き、この作品がある。人が絶望の中で苦しみもがきながらも、結局は人とのつながりの中に救いを見出していくところが共通している。
    14歳の女子中学生茉莉を中心に話が進んでいくのだけれど、「きみを見てると、時々ふっと思い出す。もし、あのとき生まれていたらー今頃はきみの一つ下だった」という歩太の一言で涙腺決壊。ああ、そうか、そうだったのか、ずっと春妃とおなかの赤ちゃんとともに歩太は生きてきたんだ、と胸がいっぱいになった。

  • 天使シリーズの完結作品。
    天使の梯子、ヘヴンリー・ブルーまでは読んでいたが、ブクログのレビュー欄で完結編が出ていると知り購入。
    あれから20年なのか、と感慨深くなる。

    マリの育つ環境のあまりの惨さに、読んでいて辛くなった。生きるためとはいえ、悲しすぎる。
    また、歩太もあれからずっと苦しみ続けてきたことが分かり、胸が塞がれてしまう。
    苦しんできた過去があるからこその優しさなのかもしれないが、全てを受け入れる寛容さが羨ましい。
    優しさだけでは出来ないことだ。

    天使シリーズを読んできて分かっているつもりだったが、マリの1つ下になるはずだった子供がいた、という事実。
    それを忘れることなく数えてきた歩太に、鼻がツンとなった。

    義兄と義妹になった2人の関係性が変わるような思わせぶり?でストーリーは終わるけれど、とにかく2人には楽しく幸せな日々を過ごしてほしいと願っている。

  • 中途半端

  • 天使の卵からのシリーズで圧倒的に1番好き。

  • 語りは14歳の少女、茉莉。実母は婚家から娘を置いて逃げ出し、その嫁を憎む祖母に育てられる。これも一種の虐待だろう。身体へもだが言葉の攻撃がすごい。年端の行かぬころから繰り返し言われるのはつらい。だが、その言葉の意味は全然分かってない。ただ良くは言われてないことは分かっている。痛々しい。

    歩太の成長というか、ちゃんとまともないい大人になったのだなぁ。猫をいじめる男の子が虐待されていること、弱いものをいじめるのは強がりだと見抜いた。14歳の少女が何かに苦しんでいることを彼女が話す前から認めている。でも無理強いせず、彼女から話すこと、助けを求めてくるのを待っている。『天使の卵』で春妃が言った言葉を思い出す「あなたって、ひとを素直にさせてしまうの。まるで、子供のころみたいに」。こういうところは、たぶん天性のものなのだろうなぁ。

    茉莉の誕生祝に歩太が茉莉の絵を描いて贈った。夏姫がとても喜んだ。春妃を描いて以来、初めての人物画だ。祖母が言っていた貶める表現を信じて自分を形容していた茉莉を、見たまま素直に描いた絵だという。芸術家の目って普通の人と違うと常々思う。宗教画の天使のような感じの絵を想像した。

    最後がちょっとあっけない気がする。タクヤもその先輩の加納も、歩太の一喝にさっさと引き下がった。その後、以前撮った写真を盾に脅してもこなかった。歩太の言う通り効力がなかったのかもしれないが。おまけに父親も茉莉の養子縁組に異論を唱えなかった。自分でもどうしていいか分からなかったのかもしれない。思春期に入った娘にどう接していいかわからなくて混乱する男親って少なからずいるとは思う。それに、嫁に逃げられて、母の期待に応えられず、本当に分からなくなっていたのか。

    シリーズ第一作目で、一生に一度と言ってもいいほどの恋愛をしたのに悲恋に終わって、それからこの人はどうなるのだろうと思ったが、ちゃんと、立ち直って逞しく生きていることを見せてもらった。自分の子供は悲恋とともに逝ってしまったけれども、その子と同じ年ごろの少女の親になった。護る者があると人は強くなる。夏姫も慎一もちゃんと立ち直っている様子をみれた。次は、茉莉の成長をみたい。

  • 『天使の卵』から始まるシリーズが20年の歳月を経て完結しました。
    とは言え、すっかり前作の内容を忘れてしまっていて...。
    もう一度再読しなくては。
    単独でも悪くない内容だと思うのですが、すべてを通して読んでみて、本書の良さが出てくるような気がする。

  • 自分の居場所を見つけられずにいた14歳の茉莉は、公園で歩太と出会う。
    歩太は茉莉の境遇を深く詮索せず、自分の家への出入りを許す。そこは茉莉にとって、初めて見つけた居心地のいい場所だった。
    歩太だけでなく、歩太の周囲の人々たちと触れ合い、少しずつ茉莉は年相応の子供らしさを取り戻していく。
    しかし。茉莉につきまとうタクヤによって、茉莉に最大の危機が訪れて......。
    「天使の卵」完結編。

    2016年7月10日読了。
    「天使の卵」で始まった歩太の物語が遂に完結です。
    歩太が出会った少女、茉莉の環境は本当に悲惨。
    誰にも愛されていない、どこにも自分の居場所はない。
    そんな風に思って生きてきた少女の視点で描かれているので、最初のうちは読んでいて心がへこたれそうになりました。
    でも。歩太や夏姫を始め、シリーズの登場人物たちの言葉が、とても優しくて温かくて、そこに泣かされました。
    それぞれが、それぞれに。傷や思いを抱えて生きてきたはずで。その上で、みんなが優しくて素敵な大人になっている。
    それが感じられて、じわじわっと涙が溢れてきました。
    いい涙を流せました。良かったです。

  • 恋愛っぽい話なのかなと思っていたら、
    恋愛までは行かず(今のところ)
    男とも女とも父とも娘とも違う
    あやうくて美しい情や互いを思う気持ちに心があったかくなった。

    最後の書評にもあったけど、
    この物語のどんな結末になって傷つこうとも「出会わなければよかった」とは思わない前向きさ、素直さ、強さに改めて心が洗われた。

    この物語と出会えて良かった。

  • シリーズ3作品目の最終章。1番切なくて、読んでいる最中も苦しかった。でも、1番優しさに溢れていた。終わりの物語だけど、何かが始まる物語でもあった。

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著者プロフィール

村山由佳
1964年、東京都生まれ。立教大学卒。93年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞をトリプル受賞。『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞受賞。著書多数。近著に『雪のなまえ』『星屑』がある。Twitter公式アカウント @yukamurayama710

「2022年 『ロマンチック・ポルノグラフィー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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