島へ免許を取りに行く (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087454321

作品紹介・あらすじ

人間関係の悩み、愛猫の死……。人生に行き詰まった著者が決意したのは「合宿で運転免許を取る」こと。旅立った長崎県・五島の小さな自動車学校には、意外な出会いや発見が待っていた。(解説/高橋源一郎)

感想・レビュー・書評

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  • 四十代にして運転免許を取得しようというきっかけが、仕事や人間関係のつまずき、そして愛猫の死から立ち直るためだった。

    何か新しいことに没頭して、暗く沈んでしまう気持ちを忘れたいのって分かるなーと思いながら、東京在住の筆者が選んだのは五島列島にある(馬にも乗れる)教習所だったのに、驚いた(笑)

    免許取得までに紆余曲折あるのだけど、免許取り終わってからも、真面目にお父さんと練習したり、センスアップ講習などというものに通ったりする真面目さにも、また驚いた(笑)

    というか、よく考えると運転免許取得でエッセイ一冊書けてしまうことが、凄いと言えば凄い。

    なんて言いながら、私も免許取得にまつわるドラマ保持者であり、共感ポイントも多い。
    そもそも、大学時代の友人全員が「ハンドルをただ右左に動かすだけ」の補習にかかり、教習所の裏でひたすらハンドルを動かしていた経験の持ち主たちであった。
    二回言うけど、友人全員が、である。

    それを耳にしていた私は、笑いながらも、同じグループに属する者として、自分も同じ道を歩むだろうから免許を取るのは諦めよう!と思ったのだった。
    その後、仕事の都合で取らざるを得なくなるまでは。(これは本とは関係ないので、以下略)

    運転の上手い人からすれば、読んでいて、笑いを通り越して「なんで、そうなるんだ!」とむしろイライラするかもしれない。
    そういう人は、五島列島という特異な地にある教習所という部分に焦点を合わせて読んでみて欲しい。
    馬も出て来て楽しめるから。

    私のように「運転向いてないな」と真面目に思う族の方々は、あー、分かるー、って、うなると思う。
    ちなみに、運転に向いていないことと、運転が好きかどうかは別だと個人的には思っている。

  • 一念発起して、中年の筆者、星野さんが長崎の離島で車の免許合宿にいったエッセイ。
    私は島ののんびりのとした雰囲気が好きなので、島旅を擬似体験できて楽しかった。だいたい想像どおりの展開というのも、それはそれで安心感。何より星野さんのキャラがいい感じ。不器用でマジメ、というのはそれだけで物語が成立するなあと。
    島での出来事も良かったけど、後半の星野家のストーリー、文庫本あとがきが個人的にはなんだかじんわりココロに染みました。星野さんは異文化に興味がある旅好きのようですが、「車」という異文化に触れることで、「父」という異文化にも順応していったんですね。

  • 人間関係も仕事も行き詰まった時に、そうだ免許取ろう!と思い立った著者(当時四十代)のエッセイ。
    いや何か他にやることあったんじゃない?!と全力で突っ込みたくなるが、何かこう、あるよね。
    人生でプツッと糸が切れて、突拍子もないことをしなきゃならない時ね。
    思い切った彼女は、離島でに合宿免許に挑む。
    馬場付きのスローライフ免許合宿は、予定とは違う様相を見せ始め…と、その行方もとても面白いのだけど、本書で一番好きなのはさらりと書かれた人生と運転とを重ねた部分。

    「それとも、人生の道路にも実は「徐行」「一方通行」「落石注意」といった様々な警告が出されているのに、自分が気づいていないだけなのか。」

    ああそうだなぁと思う。
    かえって周囲には標識が見えているのだけど、当人にだけは見えていないことは多々あって、降りるはずの高速を降りられなくなったりね、しますよね。
    こういった、軽妙な著者の筆も楽しめた良作だった。

  • 免許をとるぞー!って話なんだけど どーも五島に興味が行ってしまって…

  • 読書で声出して笑ったの何年振り?
    開始4ページ目でもう声を上げて笑った。

    作者は絶望の運気を自らの力で変えようと一念発起、40代半ばにしてはるばる東京から長崎五島列島にある合宿制自動車学校へ入校する。

    学校選びの段階から笑わされたけど、わからないことをあけすけに何でも質問する作者の様子と、五島弁で温かな先生たち、馬、他の合宿生とのやりとりが面白いしほのぼのする。
    登場する人、動物、五島の自然、何もかもを愛おしく感じた。

    運転下手な私が読むと、共感の嵐で笑わずにいられない。
    でも、運転が上手い人や自動車学校の先生が読んだら、
    イライラしちゃうかもしれない。自己責任でぜひ読んでほしい!笑

    向田邦子やさくらももこという偉大で大好きなエッセイストの新作がもう読めない寂しさを、この本が埋めてくれた。星野博美さんありがとう!

  • 「転がる香港に〜」に続き、星野博美2作品目。
    私の中の星野博美像がガラッと変わった。
    素直で、実直、それは変わりない。
    しかし、ここまで“出来ないキャラ”だったとは思わなかった。中年と呼ばれる年齢で新しいことを覚えることが大変なのはよくわかる。
    しかし、そもそも挑戦する事実が素晴らしいのだと思う。
    どれだけ運転ができなくても、わからないことは分からないときちんと伝える。言われたことは素直に従う。星野博美は実直にそれを行う。
    こんなにも簡単なことが意外と出来ないものである。それは歳を増すほど難しい。
    だからこそ、星野博美を素敵に感じる。
    五島列島という特異な場所で、その島の特別な空気を吸いながら、おおよその人間が取得できる免許を苦労して取得する。最高だ。

    実際に免許取り立ての星野氏と路上ですれ違うことを想像すれば、怖い気持ちもする。しかし、これからは初心者により優しく運転しようと思える内容だった。

  • 新しいことへのチャレンジ

  • 老いてもなお、自分にできることがある。それだけで人はキラキラする。

    星野さんの文章を読んで共感することばかりで首がもげそう。私も下手だけど安全な運転を目指して自分の世界が広がることを楽しみに、今は踏ん張ろうと思う。
    キラキラを追いかけ続ける。

  • 面白かった。
    島の人たちの人柄や星野さんの考え方。
    笑いながらもなるほどど思える箇所が沢山あって
    生き方の参考にもなる本でもあった。

  • 「著者が島へ免許を取りに行く」
    僅か15文字足らずで完成してしまう、本書の要約。

    だから、すごいのだ。人生の何気ない一コマである自動車免許取得についても、自分の心のひだをしかとみつめ、それを文章にして紡ぎだす。併せて、時折ちりばめられる人生哲学。

    だから、星野さんが好きだ。

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著者プロフィール

1966年、戸越銀座生まれ。ノンフィクション作家、写真家。著書に『転がる香港に苔は生えない』(2000年、第32回大宅壮一ノンフィクション賞)、『コンニャク屋漂流記』(2011年、第2回いける本大賞、第63回読売文学賞随筆・紀行賞)、『戸越銀座でつかまえて』(2013年)、『みんな彗星を見ていた』(2015年)、『今日はヒョウ柄を着る日』(2017年)、『旅ごころはリュートに乗って』(2020年)など多数。

「2022年 『世界は五反田から始まった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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