類 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.83
  • (10)
  • (24)
  • (11)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 340
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087445442

作品紹介・あらすじ

【第34回柴田錬三郎賞受賞作】明治44年、文豪・森鴎外の末子として誕生した類。優しい父と美しい母志げ、姉の茉莉、杏奴と千駄木の大きな屋敷で何不自由なく暮らしていた。大正11年に父が亡くなり、生活は一変。大きな喪失を抱えながら、自らの道を模索する類は、杏奴とともに画業を志しパリへ遊学。帰国後に母を看取り、やがて、画家・安宅安五郎の娘と結婚。明るい未来が開けるはずが、戦争によって財産が失われ困窮していく――。昭和26年、心機一転を図り東京・千駄木で書店を開業。忙しない日々のなか、身を削り挑んだ文筆の道で才能を認められていくが……。明治、大正、昭和、平成。時代の荒波に大きく揺さぶられながら、自らの生と格闘し続けた生涯が鮮やかによみがえる圧巻の長編小説。文庫版には、二〇二三年一月二十一日、森鷗外記念館(島根県津和野町)の鷗外生誕記念講演会で著者がおこなった講演の内容を書き起こした「鷗外夫人の恋」を収録。【著者略歴】朝井まかて1959年大阪府生まれ。2008年小説現代長編新人賞奨励賞を受賞して作家デビュー。2013年に発表した『恋歌』で本屋が選ぶ時代小説大賞を、2014年に直木賞を受賞。ほか、同年『阿蘭陀西鶴』で織田作之助賞、2015年『すかたん』で大阪ほんま本大賞、2016年『眩』で中山義秀文学賞、2017年『福袋』で舟橋聖一文学賞、2018年『雲上雲下』で中央公論文芸賞、『悪玉伝』で司馬遼太郎賞、2019年に大阪文化賞、2020年に『グッドバイ』で親鸞賞、2021年に『類』で芸術選奨、柴田錬三郎賞を受賞。近著に『落花狼藉』『輪舞曲』などがある。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ああ、読み終わってしまった
    残りが少なくなるのを感じる度にあともう少しで終わってしまうと寂しくなった
    私は不勉強で、森鴎外氏も森類氏も詳しく知らない
    何となく、「椿姫」の人だったよなぁ位の知識だったため
    どんな人生だったのか、ネタバレもなく話しに入り込んでいった
    庭の描写では花が浮かび、食事の描写では色が浮かび
    パリの場面では一緒に歩いているような気さえした

    1人の青年の人生を読むというよりは
    近所で見ていた位の気持ち

    じっくりしっかりしみじみ読める一冊

  • 充分に読み応えありました。長編多いけど飽きない恐るべし朝井まかてさん!ウイキペディアを開いて全部が実話で事細かに正確なのは驚くって事。晩年の千葉県移住もそうだし!森茉莉ではなく類なんだね、偉人伝でもない初めて知る人なので吸い込まれる程の夢中にならない ただ鴎外のパッパぶりやズバズバ言う茂げ、エッセイの森茉莉さん中でもアンナの行き方が好感触ですね。初めて就職した社長に言われたあなたのような人が生きるのが無理だと 自信がないけどここまで役に立たない人間だと思わなかったと自身を語る場面で好きになり好感が持てた。

  • 森鴎外の末子、森類が大正から昭和、平成を生き抜く物語。
    偉人の息子として生まれた森類の煌びやかな少年時代と、偉大すぎる親を持った故の懊悩を描いている。

    類は森鴎外の事をパッパと呼ぶ。
    それだけで、当時の森類の生活レベルが分かるようだ。
    大正時代に海外文化を生活に積極的に取り入れ、食事や芸術を楽しんでいる森家の雰囲気がなんともモダンで、読んでいるとなんだか羨ましくなる。
    現代のように日本の生活と海外の文化が混ざり合っておらず、それぞれを大事にし、意識を持って向き合い大切にしている森家の姿勢がこの時代特有の豊かさを表しているように感じた。

    誰もが名前を知っている森鴎外という作家の人間像も温かく描かれる。
    妻と子供達を愛し、死の間際までプライドをもって仕事に励む森鴎外の生き様を触れ、物語序盤に関わらず明治の男の生き様をみた。

    独特な感性と文章力を持ち、自分のペースで人生を謳歌する長女、森茉莉。
    一家を支える精神的な強さと優しさに溢れ、絵や文学にも才能を発揮する、森杏奴。
    二人の姉も個性豊かに描かれており、長編の小説にも関わらず、飽きずに読めた。

    作品を通して、実在する人の一生を追体験すると、いつも言葉にできない感慨を覚える。
    朝井まかて作品の中では、1、2を争うレベルで好きだった。

  • 森鴎外の末子 類 を中心に、両親や兄姉が描かれる。雲の上の家族が少し近づいた感じ。
    今より”家”が重い時代、同じ家に生まれたいとは思わないなぁ私は。

  • 団子坂が徒歩圏内にあるので手に取った。

    森類さんの生き方にかなりモヤモヤして、奥様が「働いてくれ」と懇願するシーンではよく言った!と思うくらいだったのだけど、森類さんがクビになった出版社の同僚が言っていた、生きる時代が違ったのだ、という趣旨の一言になるほどとなった。
    明治時代は高等遊民と呼ばれる人がいたし、昭和の国民皆が貧しい時代に突入しなければ、森類さんはそのありのままの生き方で生計を立てることもできたのだろう。

    森鴎外が日露戦争から凱旋して、志げさんの元に会いに行くシーンはとてもロマンティックで印象的だった。

  • 中盤までなかなか読み進められず苦戦していましたが、類が困窮し、苦労し、人間味が増してからはスピードが急に加速。結論としてはとても面白かったです。

    結婚後、妻が老けたり、痩せたり太ったりするのは、夫の甲斐性のせい・・・ってことは逆も然り・・・

    いろいろ考えるところがありました。
    志げさん、好きです。茉莉さんも。美穂さんも。

  • 特別な人々の一生のようだ。

  • 森鴎外の家系を知るには面白い。ただ、主人公の類は最期まで自分の才能を客観的に捉えることのできない不器用な生き方をしているので読んでて疲れる。
    まかてさんの表現もやや冗長であるため、読みづらさもある。

    兄弟であった森茉莉さんや森杏奴さんの作品を読んでみたい!との興味は抱く。

  • 【選書No】022

  • 森鴎外の末子、明治時代のお坊ちゃんである森類の生涯。
    550頁超の読み応えだが、類さんの名前も知らなかったくらいなので、どのような展開になるのかがわからなくて、ずっと面白い。こういう人の小説こそ読みたい。

    甘ったれで勉強ができず、社会に出て苦労したことがなく、パッパのような何者かになろうとするが、画家としても作家としてもなかなか芽が出ない。贅沢をして煙草ばかり喫んでいる。
    森家の財産を食いつぶしていく様子、特に鴎外の版権が切れた後、戦後は読んでいて恐い。それでも、お坊ちゃん特有のおおらかさ、無邪気さ、善良さのため、どこか話が深刻にならないのがおかしい。

    「役に立つ立たないじゃないんですよ。あなたのような人が生きること自体が、現代では無理なんです」(40過ぎで初めて働いた出版社の編集部員)
    「威張るんじゃない」「いいか、肝に銘じておきたまえ。鴎外が偉いんであって、君が偉いんじゃない」(小林勇)
    「僕にはこれしかない、死んででもやり抜くという決意、あなたにはそれがないのよ」(妻)

    彼らの言い分は正しい。子どもが4人もいるなら尚更だ。
    しかし、正しいと感じる分だけ、姉森茉莉が体現していた「底抜けの善良さ」や戦前の東京にあった社会の余裕が失われてしまったことが悲しい。

    森茉莉、杏奴との姉弟関係が変化していく様子、当時のその場所に居合わせたような感覚になれるのも楽しい。

全26件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朝井まかての作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
凪良 ゆう
永井 紗耶子
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×