犬のかたちをしているもの (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.60
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感想 : 159
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087444278

作品紹介・あらすじ

第43回すばる文学賞受賞作

昔飼っていた犬を愛していた。
どうしたら愛を証明できるんだろう。犬を愛していると確信する、あの強さで――。


間橋薫、30歳。恋人の田中郁也と半同棲のような生活を送っていた。21歳の時に卵巣の手術をして以来、男性とは付き合ってしばらくたつと性交渉を拒むようになった。郁也と付き合い始めた時も、そのうちセックスしなくなると宣言した薫だが「好きだから大丈夫」だと彼は言った。普段と変らない日々を過ごしていたある日、郁也に呼び出されコーヒーショップに赴くと、彼の隣にはミナシロと名乗る見知らぬ女性が座っていた。大学時代の同級生で、郁也がお金を払ってセックスした相手だという。そんなミナシロが妊娠してしまい、彼女曰く、子供を堕すのは怖いけど子供は欲しくないと薫に説明した。そして「間橋さんが育ててくれませんか、田中くんと一緒に。つまり子ども、もらってくれませんか?」と唐突な提案をされる。自ら子供を産みたいと思ったこともなく、可愛いと思ったこともない薫だったが、郁也のことはたぶん愛している。セックスもしないし出来にくい身体である薫は、考えぬいたうえ、産まれてくる子供の幸せではなく、故郷の家族を喜ばせるためにもらおうかと思案するのだったが……。
快楽のためのセックス、生殖のためのセックス。子供を産むということ、子供を持つということ。
1人の女性の醸成してきた「問い」の行方を描く。

【著者略歴】
高瀬隼子(たかせ・じゅんこ)
1988年愛媛県生まれ。東京都在住。立命館大学文学部卒業。「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞

感想・レビュー・書評

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  • 『彼氏が他の女の人との間に子どもを作ってしまって、それをあげるって言われてるんですけど、どう思いますか?』

    いやー、そんなこと訊かれても下手に答えられないですよね。なんというシチュエーションでしょうか。これぞ、修・羅・場だと思います。この先、どれだけの血が流れるのでしょうか?

    (´・ω・)ω・`)こわい

    男と女の関係はもうそれぞれです。一見仲良くやっているように見えてもその本当のところはなかなか分かりません。全てのカップルが幸せな未来への階段を上がっていけるならこの世は愛に満ち溢れているでしょう。でも、実際には人の心は常にゆらゆらと揺れ動きもします。そんな揺れた先に違う相手との間に関係が進む、そんな展開も十分ありえます。自分がそこに関係するならゾッとしますが、それを他人事とする分には一つのドラマをそこに見るような感覚になってしまいます。そう、そこに数多の小説が生まれる余地があるのだと思います。

    さて、ここに『二十七歳の時に郁也と付き合い始めて以来、仲良く過ごしている』と、彼と付き合い始めて三年が経った今を思う一人の女性が主人公となる作品があります。『同じ布団にくるまって手をつないで眠る時の、心の底からの安心』を思うその女性。この作品は、そんな女性がある日、彼氏に見ず知らずの女性を紹介される物語。そんな女性が彼氏の子どもが産まれたら『もらってくれませんか?』と淡々と語る物語。そしてそれは、そんな強烈なシチュエーションで展開する物語の中に、『愛する』という言葉の意味を読者のあなたが噛み締めることになる物語です。
    
    『何してんの』と、『開けたままにしていたドアの外に』立つ郁也に訊かれて『陰毛切ってた。明日、検診に行くから』と答えたのは主人公の間橋薫(まばし かおる)。四年前に再発が分かり『三か月に一度のペースで』検診を受けている薫。『明日の夜って何か予定ある?』と訊かれ『ないよ。午後から有休取ってるし、検診、夕方には終わるから』と返した薫は『駒込駅前のドトールに十八時』と場所と時間を指定されました。『別れ話では、ないんだよなあ、たぶん』と思い待ち合わせ場所へと向かう薫は郁也との今までを思い返します。『二十七歳の時に』付き合いはじめて『もう三年になる』という二人は、『セックスをしなくなって』以降も『仲良く過ごして』きました。『特にこの一年ほどは、わたしのマンションで半同棲のように生活している』という二人。『結婚はいつでもできるけど、すぐにする必要はない気がしている』という薫は、『仕事帰りのドトールで話すようなことって、どんな話だろう』と考えます。そして、ドトールに着いた薫は郁也がいることに気づき席へと向かうと、郁也の『隣に女の人が座ってい』ます。『同い年くらいに見える』、『仕事帰りなのか、ネイビーのパンツスーツを着ていた』という女は『ミナシロといいます。今日は、間橋さんとお話ししたくて、田中くんに呼んでもらいました』と語り始めました。その横で『病院、どうだった』と訊く郁也に『別に、なにも変わってないって…』と答える薫。しかし、郁也はその言葉を最後に黙ってしまいますが、注文をする段になってようやく『ミナシロさんが、妊娠していて』と『追いつめられたような顔』で語ります。それに、『そうなんだ』と答えた薫に、『それが、おれの子らしくて』と続ける郁也。『びっくり』と口にした薫は『郁也、あの女の人と、セックスしたの』と思います。そこに説明を始めたミナシロは『田中くんと間橋さんに、別れてほしいんじゃないんです… ビジネスの関係だったんです。お金をもらって、そういうことをする。なので、今回のは、ミスでした』と語ります。『間違えて、子どもができてしまって。それで、間橋さんには、ただ、わたしが子どもを産むことと、田中くんがその父親になることを、許してほしいんです』と続けます。そんなミナシロに『子どもを認知して、養育費を出してほしいってこと、ですか?』と訊く薫。そんな薫に『少し、違います。認知というか…』と説明するも薫が理解していないことを察し『ミナシロさんと入籍して、戸籍上ちゃんと、生まれてくる子の父親になって、その後で離婚する。それで、子どもはおれが引き取る』と代わりに説明する郁也。そして、『わたし、子どもが嫌いなんです』、『間橋さんが育ててくれませんか、田中くんと一緒に。つまり、子ども、もらってくれませんか?』と『唇の右端』を震えさせながら訴えるミナシロ。まさかの申し出に戸惑いを隠せない薫。そんな薫、郁也、そしてミナシロのそれからが描かれていきます。

    “「子ども、もらってくれませんか?」ー 彼氏の郁也に呼び出された薫は、その隣に座る見知らぬ女性からそう言われた。薫とセックスレスだった郁也は、大学時代の同級生に金を払ってセックスしていた…”という衝撃的な前提が内容紹介に語られるこの作品。2022年に第167回芥川賞を受賞された高瀬準子さんのデビュー作です。漆黒の背景を前に白い犬らしきものの頭から後ろのみが写っているインパクト大な表紙も印象に残りますが、そもそも「犬のかたちをしているもの」という書名がまずもって意味不明です。そんな作品は文庫本160ページとあっという間に読み終える分量ですが、読み終えた印象としては、この短さの中にここまで色々なものを詰め込むのかと驚くほどに密度感を感じる物語でした。

    では、まずはそんな物語の表現から見てみたいと思います。私がまず、えっ!と思ったのは文章の独特なリズム感です。

    ・『おへそに溜まった汗を人差し指でかき出す。ぴっ、てん、てん、と飛んで、トイレットペーパーに染み込んでいった。たまらなくあつい』。

    ・『郁也のむきだしの胸が大きな息で膨らんだ。わたしは心臓の音をききもらさないように耳をぴったりくっつけた。速いリズム』。

    二箇所取り出してみましたが状況を淡々と説明した後に、ポツッと感情の表現が短く付け加えられています。特に二つ目の『速いリズム』で体言止めされる表現は独特な余韻を残します。好き嫌いが分かれそうですが、私はこういった独特なリズム感を感じる文章はたまらなく好きです。次に、芥川賞作家さんらしい比喩表現を見てみましょう。

    ・『体を巡る血液が表面から冷やされていく感覚。発汗をすぐに止めるよう、体中に号令がかかる』。

    ・『郁也はわたしのことが好きだ。その愛情が少し、信仰のようになっているくらい』。

    ひとつ目の方は『エアコンのきいたリビングに』入った時の感覚を描写したものですが、暑い場所から涼しい場所に移動しただけのことをこんな大袈裟に表現するところがたまりません。一方、ふたつ目の方は愛情を『信仰』に比喩していくものです。『セックスをしなくなっ』た二人の関係。薫から見た郁也の姿を表したものですが、これも『信仰』という二文字が強いインパクトを残します。

    次は、書名に続く『犬』を描写した箇所を追ってみたいと思います。『ロクジロウ』という犬を飼っていたことがあるという薫は、『ばあちゃんの家の裏で』犬を見つけ、『子どもだった自分の両手の中に納まるサイズのぬくもりに興奮し』た先にそんな犬を飼うことになりました。

    『わたしとロクジロウは、飼い主と犬というより、きょうだい同士のように育った…わたしとロクジロウと、二人きょうだい』。

    そんな風に仲良く暮らしてきた『ロクジロウ』との関係性の先、『ロクジロウが死ん』だことをきっかけに、薫は一つの思いに到達する瞬間を得ます。

    『愛するって、こういうことなんだ、って分かった』。

    それこそが『誰にも感じたことのない深い祈るような感情』でした。

    『この子が助かるならなんでもするのに、っていう祈り。この子が幸せでありますように、この子を幸せにできますように、幸せにしなくちゃ、なにがなんでも、っていう覚悟みたいな決意みたいな』。

    物語は薫がそんな『ロクジロウ』の死に感じた『愛するって、こういうことなんだ』という感覚、『愛する』とは何かという感覚を読者に問いかけながら”「子ども、もらってくれませんか?」”という現実にはありえない展開の物語、薫が答えを出せない中に展開していく物語が描かれていきます。

    そもそもあなたは、自分が同棲までしている彼と『ビジネスの関係』にあると突然現れた女に、自分の胎内に宿している子を出産後に『もらってくれませんか?』などと言われたとしたらどうするでしょうか?しかも『許される要素のひとつもない話で、責められてなじられて罵倒される覚悟もありそうな様子なのに、でも最終的には許してくれるんでしょ、と思っていそう』というミナシロ。これはもう、現実にはありえない話です。しかし、高瀬さんはそんな前提の物語にあくまで大真面目に薫を向き合わせていきます。そんな中に、さまざまな言葉で高瀬さんは読者に問いかけます。

    ・『子どもがほしいのと、子どもがいる人生がほしいのは、同じことって思う?』

    ・『子どもという存在、産むのか産まないのか、産めるのか産めないのか、産めるなら自分はどうしたいのか』。

    そんな物語に上記した『犬』というものの存在が重なりを見せてもいきます。さらにそんな薫はこんな悩みも見せます。

    『仕事をしてお金を稼いで生活している。自立している。それはわたしが目指したところだったはずだ。だけど、このままでいいのかなって、考えてしまう』。

    この表現の下に、『愛する』ということを描いていく物語は、さらに複雑な感情を読者に抱かせます。そして、たった160ページという分量の物語の中にさまざまに感情が揺すぶられていく物語は、えっ!という衝撃の中に幕を下ろします。悶々とした思いが残るその結末、しかし、そこには『愛する』ということへの一つの答えを読者に確かに気づかせてくれる物語がありました。

    『郁也を愛しているんだと思うんだけど、自信がない。ちゃんと、ロクジロウを愛するのと同じように、思えているのか』。

    同棲している彼から告げられた衝撃の告白の先に主人公・薫が悩みを深くしていく様が描かれるこの作品。そこには、幼き頃に飼育していた愛犬『ロクジロウ』を思う気持ちに今を重ねる薫の感情の変化が描かれていました。芥川賞作家さんらしい表現の工夫を楽しめるこの作品。あっという間に読み終える物語に想像以上の奥深さを感じるこの作品。

    “女性の息苦しさみたいなもの。その息苦しさを理解して書いていたというよりは、むかつくなという気持ちで書い”た、とこの作品執筆時のことを語る高瀬さん。終始息苦しさを感じさせる物語の中に、「犬のかたちをしているもの」という書名が意味を持って浮かび上がる印象深い作品でした。

  • すごい、これは、「BOOK OF THE YEAR2022」ノミネートだ!

    …いい!
    もう最初っからぐいぐい持っていかれっぱなしで、通勤電車を降りたくなかったくらい!
    以前読んだ高瀬さんの作品『水たまりで息をする』より全然いい!
    『水たまりで息をする』は、もっと夫に壊れてほしいと、少し欲求不満に終わってしまったんだった。だけど、この2作品には共通点もあって。
    いずれも、”主人公がマトモで、そのマトモな主人公のもとに訪れる不穏でリアルな日常”がテーマとなっている。
    この「マトモ」って部分を少し考えてみたのだけれど。
    解説ではP150「『わたし』が読者と等身大の、リアリズム小説の主人公にふさわしい、『平凡』な人物であるところに本小説の力動点はあるのだ」
    としていて、あくまでこの主人公に対して、P148「『わたし』は平凡、とはいえぬまでも、常識的な人物として造形されている」と描かれている。
    確かにそうだ。でも、どうなんだろう。この主人公「わたし」は常識的な考え方なんだろうか。個人的には、現実から少し距離をとっている人物と思ったのだけれど、どうなんだろう。
    少なくとも、『水たまりで息をする』よりも。
    この「わたし」の人物像を表現するならば、普段は隠し持ってる、護身用のナイフのようなもの。
    わたしの場合、その護身用ナイフを常に振りかざしちゃってるので、たぶんマトモをこじらせちゃっているばかりか、逆に無防備になっているのだけれど。

    当所人物が要所要所で吐き出す言葉には、悪意ではない、毒のある本音があって、これはたぶん誰しも抱えてて、でもそれは普段はしまわれてて、それを登場人物に言わせてる。
    特にそのしまわれてるものの塊が、ミナシロさんの存在だ。
    なぜかわたしの頭の中で、ぶっ飛んでた元同僚のイメージとぴたりと重なってしまって、その後も訂正することなく、そのまま読みすすめた。

    『犬のかたちをしているもの』
    このタイトルから、誰がこんな内容だと推測できただろう。
    川上未映子さんの『夏物語』の時に考えた「産む、産まない問題」が再浮上してきて、またわたしの中をぐるぐると駆け回る。
    自分の中に渦巻く、「こう思ってるけど、こんなこと思ってちゃいけない」というのを、その目線で語る主人公。
    一方ミナシロさんは「こんなこと思ってるとやばいと思われるかもしれないけど私はこう思う」ってしれっと人に言えちゃう人で、その対比がとにかく面白い。
    このミナシロさんの存在によって、ちょっと現実から距離を置いてるように見える主人公が「マトモ」に見えるのだ。
    真面目に生きてると言えなくなるいくつかのこと。
    だけどそれを閉じ込めてると苦しくて、でも飼い慣らすこともできない。
    そんな感情の持っていきどころを、ミナシロさんが全部抱えていて、嫌な役割を背負わされてる。でもそれも、生きてる人間である以上、感じることであって、否定できない負の感情。見逃すと余計に苦しくなる。

    やっぱり小説っていいね。
    なんで自分がこんなに小説が好きで、小説を読み続けているのか、わかった気がする。

    • naonaonao16gさん
      5552さん

      あのシーンは印象的ですよね…( ˊᵕˋ ;)
      トラウマですよ…

      『テリファー』笑
      もしかしたらこれは絶対観るなよって言って...
      5552さん

      あのシーンは印象的ですよね…( ˊᵕˋ ;)
      トラウマですよ…

      『テリファー』笑
      もしかしたらこれは絶対観るなよって言って見せるよう仕向ける、あのフリかもしれませんね…笑
      2022/11/21
    • sinsekaiさん
      ニヤリ
      ニヤリ
      2022/11/21
    • naonaonao16gさん
      sinsekaiさん
      5552さん

      やはり…笑
      sinsekaiさん
      5552さん

      やはり…笑
      2022/11/21
  •  こちらの作品がデビュー作だったんですね!読む順番を間違えたかな…でも、まぁいいや…!ということで、「犬のかたちをしているもの」です。

     主人公は30歳の間橋薫、上京して大学卒業後にIT企業に勤め7年目、田中郁也という学習塾講師と半同棲中だが、セックスレスの関係…というのも、薫が交際後3カ月ほどで性への欲求を失ってしまうのが原因で、そこには卵巣の持病があり、将来的に出産は見込めない可能性があるという現実もあってのことかもしれない…。それでも郁也は「好きだから大丈夫」と言い交際を続けていたある日、郁也から呼び出された先には彼の同級生ミナシロさんがいて、彼の子を出産しますので薫と郁也のふたりに育ててほしい…と!!

     う…ん、ありえない設定…!!自分が出産できないかもしれないからって、彼との子供を別の女性から託される…?これって、ある意味代理母??だからといって、薫はどうしても子供がほしいわけじゃないし…と、いうか、そんな話されたら速攻別れるでしょ??とか思うんだけど…。ラストは、ある意味思った通りかな…。でも、なんだろ、このモヤモヤ感は…!高瀬隼子さんの作品って、読後やっぱり色々考えさせられるなぁ…。ありえない設定と思ったけれど、こういう価値観もあるのかも、しれない…ですね。

    • かなさん
      チーニャさん、こんにちは!
      評価は、ホント悩むとキリがないんですよね(^-^;
      なので、読み終えたあとの直観で決めるがほとんどです。
      ...
      チーニャさん、こんにちは!
      評価は、ホント悩むとキリがないんですよね(^-^;
      なので、読み終えたあとの直観で決めるがほとんどです。
      だけど、レビュー作ってみて評価変えたくなるとか
      他の読書家さんのレビュー読んで
      変えたくなったりもしちゃうんですよねぇ…。
      私、優柔不断だから(笑)

      だけど、どんな評価でもしてあれば、
      あとから私がわかりやすいかなって思ってるんですよね…!
      私がわかりやすくなってる実感は正直ないけど(汗)。
      2024/03/22
    • ヒボさん
      チーニャさん&かなさん、わかります!!
      ( ´˘`) -ᴗ-) ´˘`) -ᴗ-)‎ ´˘`) -ᴗ-)スペシャルウンウン
      チーニャさん&かなさん、わかります!!
      ( ´˘`) -ᴗ-) ´˘`) -ᴗ-)‎ ´˘`) -ᴗ-)スペシャルウンウン
      2024/03/22
    • かなさん
      ヒボさん、おはようございます!
      お返事が遅れてしまいましたm(__)m
      評価は迷いに迷いますよね!!
      でも裏を返せば
      読書を楽しめて...
      ヒボさん、おはようございます!
      お返事が遅れてしまいましたm(__)m
      評価は迷いに迷いますよね!!
      でも裏を返せば
      読書を楽しめているってことにつながるので
      これからも楽しんでいきたいですね(*'▽')
      2024/03/28
  • すっごい面白かった!!

    正直、あらすじを知ったときは、ふーん、という感じだったけれど、読み出してみれば、ほぼ一気読み。(途中で来客があった)

    ………………………………………………………
    主人公の間橋薫は同棲中の恋人田中郁也とセックスレス。
    実は薫は、セックスが苦手で、恋人ができてもしばらくするとしなくなってしまう。
    それでもいい、と、言ってくれている郁也と長く恋人関係を続けていた薫だったが、ある日郁也にドトールに呼び出される。
    そこにはミナシロさんという女性が一緒にいて、彼女は郁也の子を妊娠していた。
    そしてこう言う。
    「間橋さんが育ててくれませんか、田中くんと一緒に。つまり、子ども、もらってくれませんか?」

    …………………………………………………………

    素っ頓狂なお願いから幕を開けるこの小説。
    もしかしたら、主要登場人物みんなに嫌悪感を覚える人もいるかもしれない。
    まるで、犬の子を里親に出すように人間の子を扱っているように見える。

    知人に、子供はかわいいよ、と言われたことがある。
    猫みたいに?と、聞いたら、それより、何倍も。と答えられて、私は、わかんないな、と、思った。

    近所の同級生の女性が子供を産み育てている。
    その子は大の猫好きだったのだが、子供が生まれてから子供が一番になっちゃった、と、そう話してくれた。
    わかんないな、と私は思った。

    思えば、私にとって、他者の子供は、その他者自身に感情移入しないと「かわいい」に、ならないんだな。

    子供そのものが、かわいいという感じではない。

    この小説の主人公薫も、子供より犬の方がかわいい、と思っている。
    その薫が、どういう結論を出すのだろう、と、気になって気になって。

    ラストのミナシロさんの思いも、薫の決意も、なんか分かるような気がする。

    世間の常識からすると不自然な展開のように思えるのに、何となく自然に思えてくる高瀬さんの手腕は確かに素晴らしい。

    子供を産むことの出来る性として、生れついた人間なら、思うことがあると思う。

    文庫の帯で優しく微笑む高瀬さんに感謝。

    この感想を書いたら、奥泉光さんの解説と皆さんのレビューを読みにいきます。←引きずられるので我慢していた。
    楽しみ!

    • naonaonao16gさん
      5552さん

      いえ、こういうこと考えるのむしろ好きなので謝らないでください。
      5552さん、田舎にお住いと仰っていますが、5552さんの価...
      5552さん

      いえ、こういうこと考えるのむしろ好きなので謝らないでください。
      5552さん、田舎にお住いと仰っていますが、5552さんの価値観だと大変だと思うこと多くないですか?
      というのは、わたしは田舎の価値観を窮屈に感じて東京に出てきて、5552さんと感覚合うな~って思ってるからです…だから、世間知らずって言葉使っていらっしゃいますが、全然そういうことではないんじゃないかな、と、わたしも知ったようなことを言ってすみません。

      5552さん、定時制高校のご出身だったんですね!
      わたしが出た高校は定時制があったんですが、ヤンキーばかりで怖かったです爆
      なかなか苦労してる子達が多かったでしょうね。でも5552さんは、そう話す子の話を否定せずに聴いてあげたのではないでしょうか。
      当時のクラスメイトのこと、今思い出すといろいろ思うことありますよね。わたしは中学の頃、友達がどんどん不登校になっていって、家にプリントを届けたりしていました。なんとなく今の仕事と繋がってるんですよねー、不思議です。

      自分育てに失敗…なかなか突き刺さりますね…わたしもそうかもしれません…
      子ども、心の奥底では望んでいると思うんですけどね、だけどやっぱり怖いです。
      その恐怖心を取り除いてくれる人と出会えたら、また変わってくるかもしれないんですけど…そこに至ってない上に、壮絶なものを見てしまったというオプション付き…笑

      こうやって拗らせて、一体何が本音か分からなくなっているので、ミナシロさんのようなスカッと自分の意見をぶつけられる人って本当に羨ましいです。
      2022/11/25
    • 5552さん
      naonaonao16gさん

      私が住んでいるのは、割と大きな市の田舎の方…です。
      バスも一日十本にも満たない、車がないとやっていけな...
      naonaonao16gさん

      私が住んでいるのは、割と大きな市の田舎の方…です。
      バスも一日十本にも満たない、車がないとやっていけない所です。
      田舎の価値観、というのも、私はよくわからないんですよ。
      なぜなら、近所付き合いをあまりしなかったから。
      父や母にまかせきりなんです。
      人生のほどんどを家で過ごしているので、絶対、浮いた存在だと思いますが 笑
      何となく育ててきた価値観は、家の中でも摂取できるもの――テレビ、映画、本――などなので、地に足ついてないんだろうな、と、思います。
      基本、ひとりでいるので、さほど窮屈さは感じません。
      身近に接するのは家族なんですが、旧弊的な価値観だな、嫌だな、と、思っても口下手でうまく話せず、ムズムズします。
      その代わりにブクログで思いの丈を書いています。

      私の高校は元不登校っ子が多いイメージでしたね。
      それでも段々と辞めていき、二年時には同級生の数が半分に。
      私も二年の終わりの方でドロップアウトしました。
      私が学生のころはスクールカウンセラーなどという人はおらず、私も誰にも相談することなく辞めたので、今の学生さんはnaonaoさんのような、生徒のことを考えてくれる方がいて、そのぶん、救われている部分もあるのだろうな、と、想像します。
      naonaoさんが仰る、中学のときと今の仕事が繋がっているというのも興味深いです。

      自分育てに失敗、ブクログのみなさんのレビューから垣間見えるそのかたの考え方などに触れると、自分ってだいぶ甘いな、緩いな、と感じます。
      金原ひとみさんのエッセイで、金原さんが自身の友人を評して「未熟なまま成熟する」と、書かれていて、自分もそうなのだろうかと。
      子供はですねー。自分の中の「本音」を探っていくと、言葉を選ばずに言うと、私は子供(と、相手)を「今の状況を覆す最終兵器」と、捉えてるらしくて、自分で自分に戦き、軽蔑が襲ってきます。
      ちょっと『善良と傲慢』のようですかね。←積読中。

      naonaoさんの恐怖心、もう気にならなくなるまで愛せる人に出会えたらいいですね。













      2022/11/26
    • naonaonao16gさん
      5552さん

      いろいろご自身のことを教えてくださってありがとうございます。
      窮屈さを感じない、これが一番ですよ!
      周りへの違和感も、その場...
      5552さん

      いろいろご自身のことを教えてくださってありがとうございます。
      窮屈さを感じない、これが一番ですよ!
      周りへの違和感も、その場で言えなくてもブクログで言葉にできるのはすごいことだと思います。感情を言葉にできるのはなかなか難しいし、それができる人はすごく強いです。

      わたしも映画や本で想像力だけはいっちょ前になり、やいのやいの言うものの、結局はその言葉にも生活にも、現実味がありません…笑

      今の仕事は、言い方が適切かわかりませんが、クラスに1人くらいはいる子、をたくさん見ている感じです。
      なんというか…想像を超えることが起きて面白くもあるのですが、5552さん仰る通り、そこで救われてもいるんだろうなと思うんですよね。
      そこにいる自分は圧倒的マトモだ(と思える)し、そこで苦しんでる子どもをサポートすることで、過去の苦しかった自分を救ってあげてるんだと思います。

      金原さんのエッセイ!
      あれまだ読んでないんですよね~
      早く文庫化しないかなとソワソワしています。
      まだ読んでないのであれですが、わたしも未熟なまま成熟してますね、特に恋愛してるときの依存的な側面はどう見ても高校生です。ちょっと意味違ったらすみません…

      「今の状況を覆す最終兵器」上等じゃないですか!わたしももしいざそうやって生活が変わる、となった時、一旦今の人間関係をリセットしないといけないかもなので、似たようなもんです笑
      『善良と傲慢』是非読んでください!笑

      蓋をしてきたものを徐々に開けて、見つめていかないといけないですね、それでも恐怖は消えないとは思いますが。
      2022/11/28
  • 彼氏が大学時代の同級生にお金を払ってセックスをしていて、その同級生に子供ができてしまって、あろうことか、子どもが嫌いで育てたくないからもらってもらえないか、と持ちかけられる。

    このぶっ飛んだ展開は村田沙耶香さんの小説を思わせるものがある。
    けれど、どんどんクレイジーな方向に向かいがちな村田沙耶香小説と違い、この作品は、普段口には出せないような女性心理をえぐりながら、とことん地に足をつけて、リアルに問題に向き合っていく。
    子宮の検査や不正出血の描写も生々しく、ある意味村田さんの小説よりこちらの方がエグいかも。

    犬のかたちをしているもの=愛のようなもの?と解釈したけれども、男女間で、性行為なしで愛し愛され続けることは可能なんだろうか。
    主人公は、そういう関係になれる他者を求めて、子供をほしがるようになるように読める。
    肉体関係なしの愛情は、子供か動物からしか得られないんだろうか。
    答えの出ない問いが、自分の中に残った。

  • 子供を産むの、産まないの、女性にしか分からない
    悩みがあるということがよく分かりました。
    主人公の薫は、若い時に卵巣の病気で手術をして、
    子供を産むことへの恐怖感や、周りの人たちが子供を産んで、自分が取り残されてしまったと焦りを持ち始めた。とてもデビュー作とは思えない、ストレートに心に沁みる感じが取れて、面白かったです。
    女性に読んでほしいです。

  • 本屋さんでタイトルを見てすごく気になってた作品だったので、naoさんのレビューを見てすぐに購入し、さっそく読み終わりました。
    naoさんがいっていたとおり、「夏物語」を読んだ人は絶対に読んだ方が良いと思います。

    いきなり、彼氏と浮気相手にできた子供を引き取って育てていかなければいけないという
    かなりイカれた究極的な状況をこの女性はどうやって受け止めて乗り越えていくのかが、めちゃくちゃ気になってグイグイ作品に引き込まれていきました。

    このイカれた状況を彼氏と浮気相手に聞かされ駅で立ちすくんで泣いている場面で

    「横切っていくたくさんのひとたちはわたしに気づかない。
    まっすぐに前を向くか、手元のスマートフォンを見ている。
    時々偶然にわたしの涙が視界に入った人も、ごく自然に見なかった事にして立ち去る。
    そこには「見ちゃった、めんどくさそう、逃げよう」なんて思考はなくて、ただ「見る、去る」だけがある。
    興味を持つ前にただ風景として受け流していく。
    ああ、ここは東京だ。
    これだからわたしは、この街にいられるんだ。」
    この場面はすごく印象的で、自分もずっと東京に住んで暮らしているから、この無関心さに助けられる感覚はすごくわかるし、東京の好きな一面の1つではあります。

    祖母が危篤になり実家に向かっていたが、容体が安定したとの連絡を受けたタクシーの中で
    「まだ朝が来ていない街の中は静かだった。
    それでも京都駅に近づくにつれて、車や人をぽつりぽつりと見かけた。
    わたしは人間が動いているのを不思議な気持ちで眺めた。みんな動いているということは誰かの子供だったということだし、みんな動いているということは、いつか死ぬということだ。
    この緊張と緩和のなかで、突然何かを悟ったという
    この場面も作中でとても重要なシーンです印象深いです。

    「わたしのほしいものは、子どもの形をしている。
    けど、子どもではない。
    子どもじゃないのに、その子の中に全部入ってる。」
    この言葉は主人公の思いが全て詰まっていて
    心に刺さりました。

    この素晴らしい小説を読むきっかけを与えてくれた
    naoさん、ありがとうございました。
    高瀬隼子さんの他の作品も読んでみたいと思います。

    • sinsekaiさん
      女性ならではの永遠のテーマかもしれませんね

      単純に子供が欲しい人
      欲しくてもできない人
      できちゃった人
      ミナシロさんみたいに産む経験をして...
      女性ならではの永遠のテーマかもしれませんね

      単純に子供が欲しい人
      欲しくてもできない人
      できちゃった人
      ミナシロさんみたいに産む経験をしてみたい人
      経済的な問題や育てていく大変さ

      答えは出ないけど、自分自身で答えは出さないといけないんでしょうね

      その点、男は気楽なもんです、すみません
      2022/12/02
    • naonaonao16gさん
      本来、「できちゃった」ものなんですよね。それでいいはずなんですよね。
      だから、「できる」こと、その後育てることがどれほど大変なことなのかって...
      本来、「できちゃった」ものなんですよね。それでいいはずなんですよね。
      だから、「できる」こと、その後育てることがどれほど大変なことなのかっていう想像力をもっと義務教育で養った方がいいですよね。

      わたしは拗らせてるのでいくら考えても答えはでません笑
      そのうち自然に産めなくなりそう…
      2022/12/02
    • sinsekaiさん
      そうですよね
      時間的な制限もあるから、その中で答えを出さなければいけないから…
      より悩ましいですね
      特に拗らせ女子は笑笑
      そうですよね
      時間的な制限もあるから、その中で答えを出さなければいけないから…
      より悩ましいですね
      特に拗らせ女子は笑笑
      2022/12/03
  • 彼氏と見知らぬ女性との間にできた子どもを、貰うか否か。
    すごいテーマ。そして、結局そうなっちゃうのかと思う結末。

    「わたしにも子どもがいれば、笹本さんとずっと友だちでいられるかもしれない。郁也ともずっと一緒にいられて、地元の両親は孫ができて喜ぶ。子どもがいるだけで、世界が急にシンプルで優しいものになる。」

    子どもができるって特别なことだよなぁ。
    でも、薫のように、自分の彼氏と見ず知らずの女の間にできた子どもを貰ってくれと言われて、その子を愛せるかどうか・・・どうだろう。
    実際に生んだ子ではなくても、愛することはできるはずなんだけど、薫は【子ども】に対して愛情を持って接することができるか自信がない。たしかに、子どもが身近になれば自然に愛情を持って育てられるというわけではないはず。
    動物を愛することと、人間を、子どもを愛することはどう違うんだろう。


    「産むではなくて、持つでも、世界の優しさは同じだけ与えられるだろうか?自分で産まないで、人に産んでもらったって、それは郁也たち全ての男の人たちと、同じだ。」

  • さてさてさんの本棚から図書館予約
    とても丁寧に内容だけでなく巧みな文章表現についてレビューを書いておられます
    でもバアさんには無理でした

    これがデビュー作!
    なんと!

    女性の「性」が赤裸々すぎて
    戸惑いばかりが先に立ってなかなかすんなり読み進められませんでした。

    子どもを産むこと、育てること
    愛すること
    全てが混とんとして……

    ≪ あの犬を 愛したように 彼重ね ≫

    • はまだかよこさん
      naonaonao16gさんへ

      本棚楽しみに読ませていただいております
      あなたの中の核というかベクトルにとても共感しつつ……
      お仕...
      naonaonao16gさんへ

      本棚楽しみに読ませていただいております
      あなたの中の核というかベクトルにとても共感しつつ……
      お仕事なにかと「壁」があるでしょうが、
      どうぞ突き進んでくださいませね

      バアサンは(なんでも年齢のせいにするのもどうかとは思いますが)
      この小説とはやはり溝がムムム
      ただこの作家さんには大きな拍手を送り期待しています

      わざわざコメントありがとうございました
      これからもよろしくお願いいたします

      2023/10/05
    • naonaonao16gさん
      はまだかよこさん

      仕事の壁ならまだマシなんです、、
      最近は同僚から嫌がらせというかハラスメントというか、受けていて…
      味方が多いので助かっ...
      はまだかよこさん

      仕事の壁ならまだマシなんです、、
      最近は同僚から嫌がらせというかハラスメントというか、受けていて…
      味方が多いので助かっていますが、一日の気分がだいなしになるのが最悪です。

      すみません、別の話になってしまいました。
      2023/10/05
    • はまだかよこさん
      おはようございます
      いやあですね
      職場の人間関係はああぁぁ
      昔のこと思い出しただけで鬱々となります

      naonaoさんの適切なアド...
      おはようございます
      いやあですね
      職場の人間関係はああぁぁ
      昔のこと思い出しただけで鬱々となります

      naonaoさんの適切なアドバイスを待っておられる方がおられますよ
      ふんだ!いーっだ!
      そうおっしゃりながら
      おいしいものを召し上がれ
      なんのこっちゃゴメンナサイ
      役立たずのばあさんです
      お元気で!

      コメントありがとうございました
      2023/10/06
  • そう、おもしろい!とは違う。おもしろいと言うべき作品ではないし、人に声を大にして薦められる作品とも違う。けど、高い評価をつけるべきだと思う作品。

    主人公「わたし」の視点で進む。卵巣に病気をもつわたしが、恋人とそれなりに仲良く過ごしていたのに、突如恋人と金銭のやり取りをした上で性行為を行い、子どもを授かったという女性が現れる。

    「わたし」が、なんとなく流されながら大事なことが決まっていく感じは、ものすごくリアルだなぁと思う。
    全体的に冷たい空気があるのは、恋人である男以外の女性たちに、子どもに対する愛が希薄なことかもしれない。
    読み手もじんわりと(人によってはしっかりと)傷つく作品だと思う。

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著者プロフィール

1988年愛媛県生まれ。東京都在住。立命館大学文学部卒業。2019年「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞しデビュー。2022年「おいしいごはんが食べられますように」で第167回芥川賞を受賞。著書に『犬のかたちをしているもの』『水たまりで息をする』『おいしいごはんが食べられますように』『いい子のあくび』『うるさいこの音の全部』がある。

「2024年 『め生える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高瀬隼子の作品

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