終の盟約 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087444209

作品紹介・あらすじ

認知症になった親が
死を望んでいたら
あなたはどうしますか。

認知症の父の突然死。医師同士による、ある密約。
医師の兄と、弁護士の弟は、真相にたどり着けるのか。
楡周平史上、最大の問題作。
次に挑むテーマは“安楽死"


ある晩、内科医の輝彦は、妻・慶子の絶叫で跳ね起きた。父の久が慶子の入浴を覗いていたというのだ。久の部屋へ行くと、妻に似た裸婦と男女の性交が描かれたカンバスで埋め尽くされていた。久が認知症だと確信した輝彦は、久が残した事前指示書「認知症になったら専門の病院に入院させる。延命治療の類も一切拒否する」に従い、父の旧友が経営する病院に入院させることに。弁護士をしている弟の真也にも、事前指示書の存在を伝えた。父の長い介護生活を覚悟した輝彦だったが、ほどなくして久は突然死する。死因は心不全。しかし、あまりに急な久の死に、疑惑を抱く者もいて――。

【著者略歴】
楡周平(にれ・しゅうへい)
1957年、岩手県生まれ。米国系企業在職中の96年に書いた『Cの福音』がベストセラーとなり、翌年より作家業に専念する。ハードボイルド、ミステリーから時事問題を反映させた経済小説まで幅広く手がける。著書に「朝倉恭介」シリーズ、「有川崇」シリーズ、『再生巨流』『プラチナタウン』『修羅の宴』『レイク・クローバー』『象の墓場』『スリーパー』『ミッション建国』『砂の王宮』『ぷろぼの』『サリエルの命題』『鉄の楽園』等多数。

感想・レビュー・書評

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  • 楡周平『終の盟約』集英社文庫。

    認知症を患った高齢者の安楽死、尊厳死をテーマにした社会問題小説。

    誰もが近い将来に起こり得る自身の老いの問題、今まさに或いはこれから我々が抱えるであろう高齢家族の問題に斬り込んだ秀作。自分や家族のことについて色々と考えさせられた。

    父親から二代続く内科医の藤枝輝彦はとある事件を切っ掛けに父親の久が認知症であることを確信する。輝彦は父親が書いていた『認知症になったら専門の病院に入院させる。延命治療の類も一切拒否する。』という内容の事前指示書に従い、父の旧友が経営する病院に入院させる。

    輝彦は父親の長い入院生活を覚悟していたが、程無くして父親は心不全により突然死する。

    しかし、その死に輝彦の弟・真也の嫁である昭恵が疑問を抱く。人権派の弁護士真也の嫁・昭恵は内科医で恵まれた暮らしをする義兄一家の暮らしにやっかみ半分で抱いた疑念はやがて……

    自分も高齢で要介護4の父親を施設に入れようと動いているが、介護保健を使っての特別養護老人ホーム利用でさえも月に15万とか20万とかの費用が掛かり、しかも部屋に空きが無く、待機状態にある。一時期、待機児童が問題になったが、これからは待機老人が増えるに違いない。

    本体価格1,050円
    ★★★★★

    • ことぶきジローさん
      先日、本当に運良く父親の入所先の特別養護老人ホームが決まった。

      6月に脱水症により救急車で病院に運び込まれ、胆嚢炎が見付かり、一時は危ない...
      先日、本当に運良く父親の入所先の特別養護老人ホームが決まった。

      6月に脱水症により救急車で病院に運び込まれ、胆嚢炎が見付かり、一時は危ない状態だった。原因が胆石ではなく、胆泥だったことが幸いし、薬で流すことが出来た。

      1ヶ月間の入院を経て、体力を回復するために別の病院に移り、入所先を探していたが、2ヶ月間の待機でようやく入所先が見付かった。

      7ヶ所の施設に申し込み、入所の可能性を知らせる連絡があった施設は2ヶ所のみ。後の5ヶ所は面接までしたのに全く連絡が無かった。
      2022/09/13
    • ことぶきジローさん
      先日、ようやく特別養護老人ホームに入所出来た。

      その後の役所の手続きや銀行口座の開設、その他の書類の作成や入所で必要な物の購入も何とか完了...
      先日、ようやく特別養護老人ホームに入所出来た。

      その後の役所の手続きや銀行口座の開設、その他の書類の作成や入所で必要な物の購入も何とか完了し、ひと安心。

      新聞によれば、待機老人の数は相当数に上るようだ。
      2022/10/11
  • 認知症、介護、相続、安楽死、尊厳死。
    他人事ではないテーマ。自分の環境とダブらせながら一気読み。

  • 興味深いテーマである上に文体が大変読みやすく、さらにストーリーがよく練られていたため、それなりのボリュームでしたがあっという間に読み終えました。

    最大のテーマは安楽死ですが、それを取り巻く介護、認知症、延命措置、後期高齢に備えるお金、現代の医療制度など、考えさせられることばかりの1冊です。

    かつて内科医だった藤枝久は85歳で認知症を発症。
    妻には先立たれており、前もって用意されていた事前指示書には一切の延命措置を拒むこと、また認知症になった場合は速やかにしかるべき施設への入所を望む旨が記載されていた。
    久の長男・輝彦は指示書に従い、父を専門施設に入所させるが入所間もなく久は心不全で突然死する。
    父親を突然失ったショックを受けながらも、輝彦と弟の真也は人格まで変わってしまった父が認知症と長く闘うことなく死を迎えられたことに安堵する。
    だが、その幸運とも言える死期に違和感を感じた人間がいたー。

    本書では自らが治癒不可能な病に冒された場合、もしくは認知症を発症した場合はなるべく早い死を望む医師達が、互いを安楽死させる盟約を結んでいます。
    それは単に苦痛から早く逃れたいという利己的な理由からではなく、愛する家族にかかる負担や自己をコントロールできなくなってまで生きることの意味などを考えに考えた結果から生まれたもの。

    私自身も、もしそういう状況に陥ったら早く死を迎えたいと思うでしょう。
    ですが、それが家族だったらどうなのか。
    考えても考えても、今は分かりません。

    非常に難しいテーマだけれども、考えておかなければならないこと。
    その時に備えて家族で話し合っておくべきことだと改めて感じました。

    さて、この小説の素晴らしい点はテーマだけではなくストーリーにもあります。
    真也の妻・昭恵が義兄夫婦との経済的格差からの嫉妬と羨望から義父の死に疑問を抱く流れ、久の考えを知った輝彦と真也の兄弟が取った行動、物語の結び方、難しいテーマにも関わらず小説としてのエンターテイメント性もあり、この先どうなるんだろうとページを繰る手が止まりませんでした。

    身内が元気な今でなければ読めなかったでしょう。
    同年代の友人におすすめしたい1冊です。

    2020年26冊目。

  • 認知症になったら生き続けたいか…その一方で家族はどう思うのか…
    いつもの経済小説とはまた違った切り口で大きな社会問題と向き合う1作。
    高齢社会となった日本でもうすぐ自分も直面する問題だと思うと恐ろしい。
    今こそ自分の人生の終わりについて考えるタイミングなのかもしれない。

  • 前半は、終末期医療を考え
    後半は、持つ者と持たざる者の格差を思い知る。

    読み終えて、重いため息をつく。

    途中で、読み進むのはやめたい、と思う自分もいたが
    そこは楡周平、読ませるのだ、やめられない。

    人権派弁護士の真也が、自分の病気を知った時
    妻昭恵に、出来るだけ多くのカネを残してやりたい
    と、医者である兄に懇願する。
    あれだけ妻のことで愚痴を言っていたのに
    あれだけ背を向けていた妻に
    「いいとこもあるんだよ」と。

    決して、いい関係の夫婦だとは思えなかったけど
    長い年月を共にすれば
    二人にしかわからない大事にしたいことが
    あるんだと気づく。

    それは、
    ひとつの救いかも知れない、、

  • 認知症と安楽死、尊厳死にまつわる物語。
    藤枝家長男が医師、次男が弁護士、父が元医師で、父が認知症を発症するところから、父が残した事前指示書に従ってとある病院に入院し、そして亡くなるまでが前半。義父の死に疑念を抱いた、看護師で次男の妻の友人から話が広がっていくのが後半。
    裕福な長男家と、弁護士なのに信念をもって儲かる仕事をしないために裕福とはいえない生活を送る次男家のお金をめぐる対比や、後半にそんなことってあるのかよ・・・とショックを受けざるを得ない展開もあり、物語として面白く読めた。

    認知症になって意識もなく、周りの人に迷惑かけまくるような感じになったときに、生きていたい人ってどれだけいるんだろうか。一方、人の命は大切にしましょうっていう価値観とのぶつかり合いですよね。
    自分は醜態さらして生き永らえたくないので、さっさと殺してくれって思うし、せめて延命治療はやめてくれって思いますが、そういう選択が出来る世の中になってほしいものです。

    作中にも出てきた、がんで死にたいと願う医者がいるって話、終わりが見えてるって意味では分かる気がした。さすがにまだ死にたくないけど。
    自分の前に親の問題ですね。どうなるかは誰も分からない。そうなる前に認知症の治療薬が出来ることを祈ります。

  • 202208/自分も自身に対しては安楽死・尊厳死を望むけど…。重く難しいテーマでの長編、楡周平ならではの見事な筆運びですいすい読めたし、弟嫁のキャラ描写がうますぎてこわいぐらいだった。

  • 有吉佐和子の「恍惚の人」を読んだときの衝撃に再びさらされた感じ。
    登場人物皆いさぎよい(おそらく作者の死生観?)
    わたしは認知症になったら殺してくれ、とは思えない。命にしがみついてしまう。……でも、子供とか大事な人たちができたらまた気持ちも変わってゆくのかも。

    テーマは重いんだけど、登場人物の心情に非常に共感しやすく一緒に悩んだり考えたりしながら読み進められた。

  • 認知症になってからの安楽死。毎日診療しているのに、考えたことはなかった。H先生の生き様を知っているからだろうか。レビーのK先生、どうしているだろう。いろいろ考えさせられた。

  • 認知症になった親が死を望んでいたらあなたはどうしますか。 認知症の父の突然死。医師同士による、ある密約。医師の兄と、弁護士の弟は、真相にたどり着けるのか。楡周平史上、最大の問題作。次に挑むテーマは“安楽死” (e-honより)

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著者プロフィール

1957年生まれ。米国系企業に勤務中の96年、30万部を超えるベストセラーになった『Cの福音』で衝撃のデビューを飾る。翌年から作家業に専念、日本の地方創生の在り方を描き、政財界に多大な影響を及ぼした『プラチナタウン』をはじめ、経済小説、法廷ミステリーなど、綿密な取材に基づく作品で読者を魅了し続ける。著書に『介護退職』『国士』『和僑』『食王』(以上、祥伝社刊)他多数。

「2023年 『日本ゲートウェイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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