- Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087440652
感想・レビュー・書評
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ナツイチ2020、の一冊。
小説を読むことの楽しさ喜びを味わえた作品だった。
叔母の莫大な遺産を相続することになった主人公が、実は叔母には行方不明になったままの娘がいることを知る。
なぜ死んだこととしてずっと秘密にされていたのか…謎に迫る物語。
ロサンゼルスの情景と共に緩やかに流れていく時間がまず心地よさを誘い、謎に迫る時間はとにかく興味をそそる。
終盤の語りはまるで自分もその場で耳を傾けているような感覚だった。
誰も傷つけたくない、その登場人物誰もの優しさが読み手の心をふんわり包む。
それが心地よい読後感へといざなう。これが良かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ミステリだと思い手に取った。想像していた内容とは違っていたのだが、とても良い一冊に出会えた。
すっと物語に惹き込まれ、社会の光と陰を覗き見た気がした。ストーリーの展開に想像はついたのだけれど、それでも彼らの感情や行動を見守らずにはいられなかった。
人間の表と裏、愛と憎しみ、尊敬と失望。時には人間ではないものに助けられながらも、人は人と関わって生きていく。
秋の高い空に、青すぎる彼の地の空を重ねてみたりした。
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クレバーな登場人物たちが
解いていく謎
少しショッキングな謎解きではあったけれど
みんながいい方へ進んだ
作者の落ち着いた文章が本当に好き -
大きな遺産を残して急逝した叔母の遺書を見せられ、弦矢はそこには書かれてはいない叔母の願いを叶えるべく、謎解きを始める。
娘を思う母の強さ、そして、引き受けた子供を本当の子として深い愛情を持って育てたキョウコとケヴィンの強さには感服するしかない。そして、庭の草花もこの物語の中で深い意味を持っていることが最後に明かされる。。
もっと読み続けたくなるお話でした。
宮本輝の作品はやはり心に響きます。 -
映画を見終わったような読後感の一冊です。
アメリカに住んでいた叔母・菊枝が日本旅行中に亡くなり、突如莫大な遺産を相続することになった小畑弦矢。
諸々の手続の為、ロサンゼルスにある叔母の家に向かいますが、そこで27年前に死んだと聞かされていた叔母の娘・レイラが行方不明だと知らされます。
レイラは生きているのでしょうか?そして生きているとしたら何処に?そもそも何故、死んだとされていたのでしょうか・・?弦矢は探偵のニコと共に謎の解明に乗り出します。
・・と、あらすじだけ見るとミステリのようで勿論その要素もあるのですが(“探偵”も登場しますしね)、描かれているのが宮本さんだけに、やはり“ヒューマンドラマ”が軸となっている印象です。
主人公の弦矢は、アメリカの大学院でMBAとCPAを取得していて、英語はペラペラ、計算もスラスラの秀才なのですが、すごく気さくないい奴です。
一緒にレイラの謎を追う探偵のニコも、ちょっとクセはありますが頼りになるオジサンで、この二人の関係性も心地よいですね。
レイラの謎の真相は結構深刻で、これを27年間抱えてきたかと思うと壮絶なものがあります。
でも、物語としてそんなに重さを感じさせないのは、弦矢の人柄や、菊枝叔母さんの庭の花々の美しさ、そしてストックされていた菊枝さん手作りのスープの美味しそうな描写が癒してくれるからかな、と思います。どちらも丹精込めて作られたもので、それらを弦矢が受け継いでいく・・そんな未来が見える終わり方が素敵ですね。
そして、本書の舞台となっている、ロスの高級住宅街・ランチョ・パロス・ヴァーデスを一度訪れてみたくなりました。 -
久しぶりに宮本輝さんの本を読みました。私のおススメの作家さんの一人です。私が勝手にイメージする宮本輝さんの本に登場する主人公は、①それなりの教養を備えている、②運を持っている、③自分を引き上げてくれる出会いや人とのつながりがある、の三つかな。なのですごく羨ましくて、自分もこんな人物になれたらいいなと思いながら読むことが多いです。
「草花たちの静かな誓い」は、もし読者が宮本輝さんについてなんの予備知識も無しに読むことになったとしたら、たぶん「ミステリーかな?」と感じてしまうかもしれません。でも本のタイトルはミステリーっぽくなくて「あれ?」と思うかも。そこが宮本輝さんらしいのですが。
この本のメインテーマではないですが、ゲンとニコがこれから創ろうとしている新しい会社のポリシーは「働いている人たちが幸せになること」です。多くの経営者にも読んでほしい一冊ですね。
私も今日から草花たちに話しかけてみようかな... -
作者の小説を読むのは初めてだったが、好きな作風だなと感じた。落ち着いた時間の中で読みたいような。
文章の言い回しには違和感があるけど、それがこの作者の味なのかな。 -
著者には、旅行とかで外国を舞台にした作品が多々あるが、この小説は全編ランチョ・バロス・ヴァーデスというロス郊外の高級住宅地が舞台。
アメリカに住んでいた叔母から莫大な遺産を相続した主人公が、行方不明と知らされた叔母の娘を探すというミステリー仕立ての物語。
といっても、大半を占めるのは、主人公が高級住宅地を行き来する様子と、豪邸とその庭園の描写。
「良い小説は自然に非日常へ誘ってくれる」と、解説で中江有里さんが書いている。この小説も、草花が咲き誇る庭園に、読者を誘い込んでくれる。
庭園で主人公が草花たちに話しかける。
「きれいだなあ。君たちは命の塊だよ。宇宙の一員でもないし、宇宙から生まれたんでもないよ。宇宙そのものだ。君たちが宇宙なんだ。そうでなきゃあ、こんなにうつくしいはずがないよ」
「花を見ていると、心を見ているような気持になっていくの」
庭園あるいは花の文章だけでも、この本を読む価値があるのではないか。 -
フィクションなのだろうけど、こういう壮大なのは良い
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カリフォルニアの景色を思い浮かべながら読み進められた。宮本輝さんは実際に行ったのかな?
話は失踪した従姉妹の事が徐々に明らかになっていく事を軸に進められいる。
最後までドキドキしながら読み進める事ができた。
宮本輝さんの作品にはシチューだとかスープで商売を始める描写が多いのですが、今回もありました。
流転の海を読み、宮本輝氏の生い立ちの中で飲食業で成功する為に試行錯誤をしたという描写があったので時々作品に出てくる意味がわかった気がする。