- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087212747
作品紹介・あらすじ
トランスジェンダーとはどのような人たちなのか。性別を変えるには何をしなければならないのか。トランスの人たちはどのような差別に苦しめられているのか。そして、この社会には何が求められているのか。これまで「LGBT」と一括りにされることが多かった「T=トランスジェンダー」について、さまざまなデータを用いて現状を明らかにすると共に、医療や法律をはじめその全体像をつかむことのできる、本邦初の入門書となる。トランスジェンダーについて知りたい当事者およびその力になりたい人が、最初に手にしたい一冊。◆目次◆第1章 トランスジェンダーとは?第2章 性別移行第3章 差別第4章 医療と健康第5章 法律第6章 フェミニズムと男性学◆著者略歴◆周司あきら(しゅうじ あきら)主夫、作家。著書に『トランス男性による トランスジェンダー男性学』、共著に『埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡』。高井ゆと里(たかい ゆとり)倫理学者、群馬大学准教授。訳書にショーン・フェイ『トランスジェンダー問題 議論は正義のために』、著書に『ハイデガー 世界内存在を生きる』。
感想・レビュー・書評
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この本を読み終えて、自分の中にフィルターが一枚生まれた気がした。それは過剰な忖度だったり、厚みの分だけ他者との距離を生んでしまうものではなくて、考えや思いを口にしたり文字で発信する際に、無意識に誰かを傷つけてしまうような表現をこしとってくれるようなもの…であったらいいなと思ってます。
正直なことを言うと、半分くらい読んだ時点ではトランスジェンダーの人たちの辛い体験や困難を想像して神妙な面持ちになりつつも、文章の端々から滲み出てくる言葉の強さに「なんかすみません…」と書き手のお二方に頭を下げたくなるような圧を感じてしまったのも事実でした。本書に出てくる表現でいうところのシスジェンダーにとって、トランスジェンダーの人たちの「生きづらさ」は想像しようと思ってもなかなか想像できないもので、でもだからこそ本書を手に取ったりして歩み寄りたい、できる範囲で理解させてほしい、と思って読み進めていったらすごい勢いで感情に訴えかけられてきて面食らうというか…。
でも、4章の「医療と健康」を読み進めるにつれて「命に関わるレベルで困ってるなら、必死になるのも当然だな…」と思ってからは、言葉の強さがそのまま生きるための強さにも感じられて、腑に落ちたような気がしました。 -
私が当事者の方々とお付き合いを始めた、この20年の間にも変化や進化があったことを本書で知る。特に「ガイドライン」の功罪については驚きを持って学んだ。
最近、最高裁の判決で、特例法が違憲とされたので、そこの記述は変わってくるだろう。喜ばしいことだ。また、LGBT理解増進法も制定された。完全ではないが、ここから漸進させていけるはず。 -
気合の入った新書。
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この本に書かれていることが、テレビをはじめとしたメディアによっても広く知られてほしい。
メディアが作り出すトランスジェンダーの姿は、いまだに誤った表象に溢れていることがよくわかる。
学校教育での正しい知識の普及もすみやかに行われてほしい。
一刻も早い差別禁止法の制定を望む。
優生保護法の思想を引きずった、戸籍上の性別変更のための「特例法」も、その要件を改めるべきで、制度が見直されるべきで、明らかな人権侵害である。
学べる限り学び続けること。自分の中の特権性を直視し、あらゆる差別、人権侵害を無くすために声を上げ、行動すること、そう思って生きること。自戒。 -
断片的な知識はあってもあまりよく知らなかったトランスジェンダーのこと。
たとえば、FtM/MtFという表現がもはや好ましくないことは知らなかった。また、性自認と性的指向は別物だという知識はあっても、性的マイノリティというときにトランス女性のレズビアンやトランス男性のゲイという存在は想定から抜けてしまっていた。
第二章では、ある架空のトランスの人の性別移行に当たって直面する課題が物語風に描かれ、当事者の人生を想像する助けとなる。また、トランスジェンダーの議論となると公衆浴場やスポーツといった直感的・扇情的な議論が取り上げられがちだが、著者らのいうように、当事者が人生の中で対峙する障壁に比べればそんなことはあまりに些細なことだと切に感じる。
法的な性別変更くらい厳格な要件を満たさずとも可能となる社会を実現しなければならないと思う。 -
別の著者の本(たしかフェミニズム系の本だったと思う)で「差別主義者の最大の特徴は、自らが差別主義者だと自覚していないことだ」と書かれているのを読んだことがあり、自分が誰かを無意識のうちに差別することがないように、自分のよく知らないトランスジェンダーについて書かれたこの本を読んでみた。
著者は、「トランスジェンダーのことをきちんとわかりやすく書いた本が世の中にないので自分でこの本を書いた」と述べている。
私は専門外なのでこの本に書かれていることがどれほど正しいのかは判断できないが、少なくともこの本を読んでトランスジェンダーの方たちの気持ちを以前よりはるかに理解したり想像したりすることができるようになった。
それはつまり、トランスジェンダーの方の立場になって考えることが(完全にではないだろうが)できるようになったということでもあると思う。
この、別の人の立場になって考える、ということが私はとても大事だと思っている。それが世界から差別をなくす一歩になると信じたい。
時間のない人でも、第一章だけでいいから読んでほしい。 -
一度体系的に学ぶべきだな、と簡単そうなとこから読んでみました。FtM、MtFって今言わないのか。用語の印象に引きずられる注意がいるというの含め考え方の基本はつかめた気がします。最近話題になってた公衆浴場の利用に関する議論についてもきっぱりつっぱねててよかった。
https://wan.or.jp/article/show/10757
https://www.nikkan...
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/328646