プロパガンダ戦争 分断される世界とメディア (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087211375

作品紹介・あらすじ

迎合か抵抗か?
嫌イスラーム、新型コロナ・パンデミック、
紛争、「テロとの戦い」、フェイク報道……。
報道の中で展開される宣伝戦と混迷の世界情勢を読む!

メディアは報道だけではなく、世界に分断をつくりだす宣伝、すなわちプロパガンダにも使われる。
独裁国家や全体主義的な国のメディアは言うまでもなく、欧米、日本の報道でも程度の差はあれ、その社会の権力に都合のよい報道がされることがある。
さらに、近年のSNSの普及でこうした宣伝戦は巧妙を極める一方となっている。
戦争、難民、移民排斥、嫌イスラーム、大災害やパンデミックによって世界が未曽有の分断の局面にある今、事態をどうとらえるか?
そこで重要なのは情報を読み解く力、すなわちメディア・リテラシーだ。
宣伝戦を見抜き分断を超える視座を得るため、激動の世界情勢を俎上(そじょう)に、いかに情報に接し、読み取るかを提言する。

◆主なトピック◆
第一章 世界の分断を俯瞰する
第二章 「テロとの戦い」が世界を分断した
第三章 ヨーロッパの分断、ヨーロッパとの分断
第四章 トルコ・バッシング
第五章 中東の独裁者たちとアルジャジーラのメディア戦
第六章 市民のメディアが持つ分断修復の可能性
第七章 パンデミックがもたらす新たな分断

◆著者略歴◆
内藤正典(ないとう・まさのり)
1956年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科科学史・科学哲学分科卒業。博士(社会学)。
専門は多文化共生論、現代イスラム地域研究。同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。一橋大学名誉教授。
『イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北』『限界の現代史 イスラームが破壊する欺瞞の世界秩序』(集英社新書)、『外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?』(集英社)、『イスラームからヨーロッパを見る 社会の深層で何が起きているのか』(岩波新書)他著作多数。

感想・レビュー・書評

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  • メディアのあり方。

    一方方向からの情報しか見ないことは分断へとつながる危険がある。

  • メディアの情報がいかに政府のプロパカンダや見解を垂れ流してきたかを痛感。


    現場の声を聞き、その地域の歴史を学んで記事を書いても、本社の都合で角が取りれたニュースになってしまう。

    メディアリテラシーの持ち方に加えて、中東情勢とそれに絡む欧米露の外交政策も勉強になった。


    欧米、イスラーム世界など、文化圏が異なれば情報の捉え方も違う。
    その点で、カタールの国際メディア、アルジャジーラのニュースは定期的にチェックしたい。

  • 報道機関が本当に「公平中立」なら、被害者だけでなく加害者の言い分も報道しなければならないだろう。泥棒の言い分は聞いてもしょうがないし、報道せんとはけしからん、とは思わないけれど、ことが国際問題となると話が違う。例えば宗教からみ、例えば難民問題。立場が違えば主張も違う。本来なら両方の言い分を聴くべきところが、当事国の報道機関が相手に与することはない。日本だって国際社会の中で特定の立場をもっているわけだから、報道も偏って不思議はない。となると、著者の言うように外国語の報道を調べて、自分でバランスをとるしかないのかもしれないが、それは素人にはなかなかしんどい。
    少なくとも、当事者の言い分を鵜呑みにしないようにしようと思った。特に「○○はテロリストだ」という主張には気をつけよう。そこから始まる人道危機が、世界中で進行中だ。
    しかしまあ、実際問題として何を信じたらいいものやら。SNSもデマの宝庫だし、トランプみたいのが出てくるとデマよりたち悪い。

  • 結構レベルは高め。
    だけれどもいかに情報というものが
    そういったものの前には歪になるかは
    よくわかることでしょう。

    全てを鵜呑みにするわけにはいきませんが
    思惑というものがあるのです。
    それぞれの国にも。
    それに踊らされたケースというのもある訳で。
    (まあ関係者はすでに、ね)

    そういう意味である種のメディアを知るために
    言語習得は大事なのかもしれません。

    しかし私が見なくなった理由
    だいたいにおいて…

  • 國學院大學「大学生にこそ読んで欲しい」おすすめ本アンケートより。

    ※國學院大學図書館
     https://opac.kokugakuin.ac.jp/webopac/BB01872488

  • 東2法経図・6F開架:361.46A/N29p//K

  • 日本ではなかなか得られない世界情報を、それぞれの相手国がどのように操作して、有利に組み立てているかを実例をもとに説明していた。
     最後はコロナの話であるが、何かの卒論のアイディアにはなるであろう。

  • 著者は中東でイスラム研究をしながら取材もしている大学教授。この本のメインテーマはプロパガンダなのだが、アラブ市民の民主活動の仕方など現地でじっくり観察している著者ならではの分析が興味深い。
    「民族によい民族、悪い民族などない」「メディアは白黒つけたがる」
    ニュージーランド政府は普段から移民に対しても平等に処遇することを表明してきたので、移民を狙ったテロ事件でアーダーン首相が「テロリストの名前を二度と口にしない。男がテロによって手に入れようとしていたものの一つが悪名。だからこそ私は口にしない。テロリストは無名のまま終わる。みなさんには犠牲者の名前を忘れないでほしい」
    国営放送と公共放送は違う。国営放送は国が資金を出すので政府のプロパガンダが柱になるが、公共放送は全ての市民から視聴料を徴収するので政府のプロパガンダはしない。
    ヨーロッパの難民問題、トルコでは「恥を知れ、世界」と報じられた。トルコはギリシャやイタリア、ハンガリーが難民排斥する中、360万人ものシリア人を難民として受け入れている。
    バグダディー暗殺に際し、トランプとエルドアンと筆者の推測ではロシア、イラクが水面下で交渉したのが驚き。
    2019年にサウジアラビアで開催されたアニメエキスポを日本メディアは無邪気に報じたが、2015年から2018年までイエメンでは7500人の子供がサウジアラビアとUAEの空爆によって命を落としている。ジャーナリスト殺害などの野蛮性の裏で女性ドライバーの解禁するなどと同様、アニメエキスポもサウジアラビアのプロパガンダであることを見破るべきだった。

  •  メディアが流す情報、為政者等からの偏った情報の垂れ流しなのかそれとも現地をしっかり取材した上で誰の立場で語られた情報なのか、心して受け止めよ、という強いメッセージを感じる一冊だ。
     巷にあふれている情報をどのように拾い取るかは自分次第ということだ。ただ、「どのように拾い取るか」というところにも自分のフィルターが働くし、すでに情報に操作されたフィルターなのかもしれない。

  • 内藤先生は昔近くの研究室にいながら何となく近よりがたい存在だった。そんな先生の本を見かけたので、躊躇うことなく迎え入れた。
    情報に容易くアクセス出来るからこそ、操作もしやすい。複雑な話題は、シンプルに捉えて考えた方が楽なため、ついつい対のフレームで考えがちである。しかし、対で考えることは、時に分断を生む。シンプルな構図で捉えられるほど、現実は単純ではない。一方、シンプルに敵が分かる方が、権利側は都合がいいし、自分も正義を振りかざせて気分がいい。
    本著には、その情報は誰の視点かを考えることが大事だとある。併せて情報にフィルターをかける自分の視点とは何か、それを言語化することも大事だと考えた。

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著者プロフィール

1956年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科科学史・科学哲学文科卒業。社会学博士。専門は多文化共生論、現代イスラム地域研究。一橋大学教授を経て、同支社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。著書に『イスラームから世界を見る』(ちくまプリマー新書)『となりのイスラム』(ミシマ社)『外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?』(集英社)ほか多数。

「2022年 『トルコから世界を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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