京大的アホがなぜ必要か カオスな世界の生存戦略 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
4.13
  • (32)
  • (19)
  • (14)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 336
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087210705

作品紹介・あらすじ

自然界は予定調和ではなく、予測不可能なカオスであり、生き延びるには「非常識なアホ=変人」が必要だ・・・。
「京大変人講座」を主宰する著者が披歴する、驚きの哲学と「変人」の育て方。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 高速道路が塞がって、大勢が立ち止まるなかでも、
    私は広大な原っぱを駆け抜けるアホでありたい。

  • 本書は京大の先生が「アホ」なことをする重要性を「マジメ」に書いた本という印象でした。
    1章、2章のカオスについての話は少々理屈っぽく読んでいて眠くなることもありましたが、3章以降の本題は読みやすかったです。
    「選択と集中は絶滅への道」とも書かれていますが、大学内においても「無駄」と思われるものを排除して過度に効率化を進めようとする昨今の情勢に警鐘を鳴らしています。

  • 職場の上司から「この本、読んでみると良いよ」と言われ、お借りした本。大学における教養概念を考えていく上で、ヒントがたくさんあった。著者は京大の旧教養部・総人の教員であり、「アホ」や「ムダ」・「ガラクタ知識」の効用を自身の研究と教育経験に基づきわかりやすく説いている。複雑化社会に対応するには、生物の真似をし、様々なことをやってゆるく選択するという「発散と選択」の考え方が有用とのこと。今日の樹形図構造により組織された秩序だけで、物事を判断しようとすると、人間がが生物でなくAIを備えたロボットのようになってしまうと危惧されている。本書では教養について、「カオスな世界では、因果律を積み上げた体系的知識(樹形図構造の知識)はどこかで破綻してしまう。そのときに必要になるのが、いわゆる教養なのではないでしょうか?だとすれば、教養とは樹形図構造の『外側』にある知識だとみなすこともできるでしょう。」(p.108)という見方を示している。

    また、京大の「教養部」がなくなり研究者がプレッシャーを感じずに研究できる場が一つなくなり、さらに大学界全体が法人化後競争原理にさらされ、論文一つひとつの質にこだわらず、本数や生産性・効率性を過度に重視する昨今の風潮を明確に批判している。

    大学論において、大学における教養と科学技術政策は、分けて論じられることが多いが、相互に関連しあっていると改めて認識した。最後に、終章の政財界に対する著者の主張が少しでも届くことを望みたい。

  • なぜ私は京大生時代、あんなにものを自由に考えていたように思えたのに、卒業して約25年、こんなにも受け身で面白味のない人間になってしまったのか。その哀しみを打破してくれる本でした。もうこの人生には「飽き飽き」!

  • 卒業式の仮装や折田先生などの話で「どや京大はおもろいとこやろ」という本かと思っていたが、いい意味で裏切られた。カオス・複雑系の話から教養部、世の中にまで話が流れていく。心地良さとともに、自分の考えかたにも入ってきた部分がある

  • 民間の企業で求められる力と、学者達の世界で求められる力が異なることがよく分かる。
    大学の独立行政法人化によって壊されてしまったことへの危機感を筆者が提言する。

  • 序章の最初の五ページはすべての学生さんに読んでほしい。まだ、読み始めたばかりだが期待しかない(笑)

  • 面白いけど、所々難しかった。
    マジメとアホという切り口で多様性の大切さを書いている、そんな本でした。

  • 「アホなことをせい」。高校の先輩でもある故・森毅先生がおっしゃりそうな言葉だ。「アホなことをせい」とは、要するに「社会の常識にとらわれずに何でもやってみろ」ということだ。自然界を含む現実の世界はカオスそのものだ。自然環境も社会環境も想定外の変化を見せる。生物は、無目的な突然変異が偶然環境変化に適応することで生存してきた。人類はどうか。人類は、アホなことを思いつくことで自然環境や社会環境の激変を乗り越えてきた。バラバラな専門知識を捉え直し結びつける非常識な能力、学問分野の枠にとらわれない横断的な「教養」。一見何の役に立つかわからない「ムダ」や「ガラクタ」を内包していることによって、社会は環境変化に対する柔軟性を獲得するのである。しかし、日本はこうした能力や教養を「大学改革」によって破壊しようとしている。著者はあえてこう断言する。「(資源の)選択と集中は絶滅への道」であると。最後に、政治家、経営者、大学人、学生諸君への言葉が記されているが、読むべきはむしろ文科省の官僚かもしれない。

  • 大学改革に対する批判の本かと思いきや、筆者の地球流体力学の知識を援用して、カオス理論の最新の理解としてのランダムネットワークとスケールフリーネットワークの比較を、学問の体系と比較して言及するスタイル。非常に腑に落ちるし、「体系だっていないが確実にどこかで役に立っている」知識こそ大学で得たと思っている僕にとっては、まさに思っていたことを言語化してもらった感覚。

全32件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

昭和34(1959)年、千葉県生まれ。千葉県立千葉高等学校、早稲田大学教育学部を経て、早稲田大学大学院文学研究科博士課程後期課程単位取得退学、文学修士。中京大学文学部・大学院文学研究科教授。

「2022年 『森鷗外 ー作品と周辺ー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

酒井敏の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×