国体論 菊と星条旗 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087210286

作品紹介・あらすじ

戦前の「国体」は敗戦で消えた? 否、戦後も「国体」は、天皇制の頂点にアメリカを鎮座させ、永続している! この異形の「国体」は我々をどこに導くのか? 二度めの破局から日本を救い出す、警世の書!

感想・レビュー・書評

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  •  「国体」と聞けば,神国ニッポン,教育勅語,万世一系の天皇…など,戦前の日本を覆っていた「国民を統合するための思想」「国民をしばっていた雰囲気」「はみ出しを許さない社会」などを思い出します。ところが,本書の副題には「菊と星条旗」と書かれています。「菊」は分かるけど,「星条旗」って,あの国の旗のこと? 一体どんな内容なのだろう…気になるタイトルですね。
     戦前は天皇,戦後は米国…その連続性について書かれています。そう,日本人は,敗戦後変わったのですが,変わっていなかったのです。これまで「天皇バンザイ」だったのが「アメリカバンザイ」になっただけ。国民を縛り付ける(雰囲気も含めて)もの,それが「国体」なんでしょうね。
     本書は,2016年8月8日の天皇の「お言葉」から始まります。天皇は,なぜ,あのような意思表示をしなければならなかったのか。そこから見えるものは…。
     「国体概念」がなぜ有効なのかという段落では,次のように述べています。

    当初,共産主義対策を意図した国体護持の手段であったはずの対米従属は,共産主義の脅威が消えてもなお生き延びた,というよりもむしろ強化されることとなった。「国体としての安保体制」は,その存在根拠を失ってからこそ,それが「国体」である所以を露わにし始めたとも言える。(59p)

     それにしても,オキナワ米軍基地の普天間と辺野古をめぐる騒動を見るにつけ「そもそも米軍に出ていってもらうことが無理である」という出発点でしかないことが「星条旗が国体の国体たる所以」を物語っています。

  • 2018/8/10読了
    ちょっと恐ろしすぎて感想が書けない。

    2018/8/23再読了。
    三十年近く前の学生時代のこと、つまり「失われた二十年もしくは三十年」が始まる頃だが、男に貢いで尽くしてセックスの道具のように使われて、捨てられそうになっても懲りずに尽くし、また抱いてもらって「こんなにいい男とセックスしている自分は他の女よりすごい」と歪んだ承認欲求の満たし方をする非常にみっともない女が主人公の恋愛小説を書いた先輩がいた。恋愛というよりも、極端に自己肯定感が低いというか自己承認ができない女のセックス依存症を描いたとしか思えないその代物を、「これ日米関係だろ」と見抜いて評価した別の先輩がいて、恋愛関係に国際関係の隠喩を込めて何の意味があるのだ、こいつら何言ってんだと当時は思ったものだった。
    ところが最近、接待ゴルフの最中にバンカーで派手に転げたにも関わらず、接待相手にそのことを気付いてももらえずに、這うように追いすがって歩く自国の総理大臣の姿を見たときに、ああこのことかと、不意にその恋愛小説のことを思い出した。ここまでマンガじみた光景で象徴してもらわなければ三十年間も腑に落ちなかった己の不明を羞じた。
    なぜこの二つがつながるのか。その理路の整然たる説明が本書には書かれている。「アメリカに抱かれる日本」のキーワードは目にしていたはずなのに、ここまで丁寧な説明を読まなければ三十年間も腑に落ちなかった己の不明を羞じた。
    それで改めて分かったのは、本書の言う「愚かな右翼」に限らず、もう少しライトかつナチュラルに天皇制とアメリカニズムを受け入れている一般的な日本人のメンタルの在り方つまり国体意識は、確かに依存型の関係に陥って捨てられがちな者の病んだ恋愛体質に似ている、ということだ。本人が端からは無自覚あるいは盲目的に見えるところ、そういう恋愛を繰り返しがちなところ、破綻期にDVのような暴力やリストカットのような激発を伴いがちなところ、などがよく似ている。誰か大統領と総理大臣のBLを書いてくれないか。

  • 2018年4月。同年6月に朝日新聞で評されている。
    天皇制を国体とした日本は敗戦後、アメリカ(に従うこと)が国体となった。憲法よりも日米安保が上位に位置付けられている実態。
    本書の冒頭と最後に繰り返される平成天皇のお言葉、それへの敬意と、お言葉の中に、闘っている烈しさを感じるという姿勢。大胆で明快な見方、頭がすっきりする。

  • 隠蔽されがちな事実を把握しておかないと何に支配されているか気付けないってことなんだが、生まれた時点からそういう状況に置かれていることに対しては怒るべきだと思うんだよな。

  • 「国体」という視点から日本を見つめる.国体とは何か.名言はされていないが,「国のかたち」と言えば良いだろうか.戦前は天皇を頂点として,時に近代国家設立のため,時に戦争で勝つために利用されてきた.戦後,天皇は日本国の象徴となり,代わりにアメリカを頂点とする国体が出来上がってきた.
    確かに,戦後はアメリカ様のための日本になったように思う.外交も沖縄の基地問題も.強き者に従うのは楽だが,国家がそんなことで良いのか.日本に強い政治家が生まれてることを祈る.(自分が「そんな政治家になる!」ではない辺り,私も結局強き者に従う人間なのだと思う...)
    読むと現代日本を憂い,絶望的な気持ちになる本であるが,その分本質をついているのだとも思う.

    奴隷に関する文章は,読んでて耳が痛い.

    QT) ----------------------------------------------------
    本物の奴隷とは,奴隷である状態をこの上なく素晴らしいものと考え,自らが奴隷であることを否認する奴隷である.さらにこの奴隷が完璧な奴隷である所以は,どれほど否認しようが,奴隷は奴隷に過ぎないという不愉快な事実を思い起こさせる自由人を非難し誹謗中傷する点にある.本物の奴隷は,自分自身が哀れな存在にとどまり続けるだけでなく,その惨めな境涯を他者に対しても強要するのである.
    ---------------------------------------------------- (UQ

  • 第二次世界大戦の終結とともに崩壊したとみなされている日本の「国体」という概念を、「戦前の国体」と「戦後の国体」という二つの概念に再編することで、過去から現在までをつらぬく日本の問題と、その変容の過程をえがいた本です。

    「戦前の国体」が、「天皇の国民」「天皇なき国民」「国民の天皇」という枠組みの変化をたどっていったのと同様に、「戦後の国体」はかつて天皇が占めていた位置にアメリカが置かれることになり、「戦前の国体」とパラレルな変化をたどったと著者は考えます。そして、日本のナショナリストたちがもはやアメリカへの追随をかくすこともなく全面的に主張するにいたっている現在の日本の状況が生まれた経緯を解き明かしています。

    戦後のアメリカ追従という問題について深い考察をおこなった人物としてただちに思い浮かぶのは、批評家の江藤淳です。むろん江藤は、本書のキーワードである「国体」という概念を中軸にして考察をおこなったわけではありませんが、小島信夫の『抱擁家族』を参照しつつ、近代日本の家父長制が敗戦によって決定的な変容をこうむったことに目を向けており、文学の領域における「アメリカの影」について鋭い考察をおこないました。本書では、文学にかかわる人物としては三島由紀夫がとりあげられていますが、もっぱら三島が直接的な行動に出た理由について検討するにとどまっており、あえて著者は文学の問題に立ち入ることを避けたのかもしれませんが、著者とは政治的立場の異なる江藤の議論について、著者がどのように評価しているのかということが、個人的には気になっています。

  • 文字通り戦後の日本とアメリカの関係について。

    文章のせいか、著者の言いたいことがわかりにくかった。

  • 非常に刺激的な論説。
    今を生きる我々日本人の国体とは何か、そんな考え方をしたことはなかった。しかし「史劇は2度繰り返される」のならば、そして、戦前の国体の最終段階が二・二六事件を引き起こしたのならば、戦後の国体は今、何に向かっているのか。考えないわけにはいかない。
    僕にとっては少し難しいと感じたので、星4つ。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1381139

  • 情け無くなるよー

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著者プロフィール

1977年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。思想史家、政治学者、京都精華大学教員。著書に『永続敗戦論─戦後日本の核心』(太田出版/講談社+α文庫)、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)など。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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