公文書問題 日本の「闇」の核心 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087210200

作品紹介・あらすじ

自衛隊員の活動記録、豊洲市場、森友、加計学園問題等の巨額の税金の使途、国是の大転換を伴う決定の経過が記された公文書が隠蔽される事態が行政の中枢で常態化している。問題の本質を第一人者が解説。

感想・レビュー・書評

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  •  公文書問題に迫る。

     日本では情報公開が重んじられておらず公文書の管理もかなり怪しい。
     前半では事務的で退屈な記述も多いが、森友や加計などの問題を公文書という視点から見る後半は一気にテンションが上がる。豊洲移転、防衛相日報などなど今の日本の問題の多くは実は公文書の問題が中心にある。ここを考えなければ問題の本質は見えてこない。

     本として決して面白い本ではない。でも今の日本を知る上では必読の一冊。

  • 公文書がいかに政策決定のプロセスを検証していくうえで重要かを解説した図書。具体的な事柄にも触れ、豊洲問題、南スーダンPKO、森友学園などに関する公文書がいかにずさんに管理されていたかも示す。
    驚きなのは公文書管理法で「軽微なもの」は保存期間が「一年未満」という規定を抜け穴として使っている点。さまざまな公文書を拡大解釈で「軽微なもの」とし、破棄しているようだ。さらには重要な政策決定のプロセスにも関わらず、公文書にせず私的メモ扱いして公開しないなど、日本の民主主義はどこいった的な現象が起きていた。今後もこの問題には興味を持っていたい。

  • これまた勉強になった。日本における公文書管理の問題点をわかりやすく知れる。加えて、公文書から離れて「歴史資料をいかに保存するか」という問題をはさむことによって、公文書を含む、過去に関する記録を保存することの重要性を浮かび上がらせようとしている。

    しかし現実は依然として、いやもしかしたら以前よりひどい状態になっている。政権の公文書管理に対するひどい行為を、国民が自分にかかわる問題だと認識するために、この問題は引き続き問われ続けなければならないだろう。

  • 【書誌情報】
    著者:瀬畑 源[せばた はじめ] (1967-) 現代政治史
    発売日:2018年2月16日
    定価:本体740円+税
    ISBN:978-4-08-721020-0

     海外に派遣された自衛隊員の現地での活動記録や豊洲市場、森友、加計学園等をめぐる巨額の税金の使途、国是の大転換を伴う決定のプロセスが記された公文書が相次いで破棄、あるいは未作成とされ、隠蔽される事態が行政の中枢で常態化しています。
     公文書を軽んじ、秘密が横行することは国民の「知る権利」を著しく傷つけるものです。本来公文書は、適切な施政が行われたのであれば、それを証明する記録となります。にもかかわらず、公的な情報を隠し続けて責任を曖昧にする理由は何でしょうか。この「無責任の体系」の背後にある情報公開と公文書管理体制の不備とその弊害を、最新情報を交え、第一人者が明快に解説します。

    [著者情報]
    瀬畑 源(せばた はじめ)
    一九七六年東京都生まれ。一橋大学大学院社会学研究科特任講師を経て長野県短期大学准教授。一橋大学博士(社会学)。日本近現代政治史専攻。著書に『公文書をつかう 公文書管理制度と歴史研究』(青弓社)、共著に『国家と秘密 隠される公文書』(集英社新書)。共編著に『平成の天皇制とは何か 制度と個人のはざまで』(岩波書店)などがある。
    https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0920-a/

    【目次】
    はじめに 行ったことの検証を疎かにすることは、同じ過ちをくり返すこと [003-009]
      ずさんな公文書管理
      公文書管理制度の歴史
      公文書管理制度の核心
    初出 [010]
    目次 [011-017]


    第一部 情報公開と公文書管理はなぜ重要か 019
    第一章 記録を作らない「法の番人」 020
      内閣法制局長官の「強弁」
      公文書管理法とはなにか?
      嘘に嘘をかさね……

    第二章 情報公開がなぜ必要か 029
      マディソンの至言
      米国情報自由法
      日本の情報公開運動
      情報公開法制定

    第三章 公文書を残さなければ国益を損なう――TPP文書・外交文書公開をめぐる議論 038
      TPP文書の情報開示
      外交文書を残すことの意味
      外交文書の公開のあり方
      文書の「作成」と「公開」

    第四章 外交文書を公開する意義 047
      岡田克也衆議院議員の外交文書論
      外交史料館での文書公開の進展
      外交文書がなぜ公開されるのか
      日本での外交文書公開
      外交文書公開を進めるには


    第二部 特定秘密という公共の情報を考える 059
    第五章 特定秘密の運用上の問題 060
      特定秘密保護法成立後の世論
      特定秘密の増加
      監視の不十分さ
      公文書管理法体系の見直し

    第六章 会計検査院と特定秘密 069
      会計検査院に特定秘密を見せたくない?
      会計検査院と特定秘密保護法
      会計検査院と軍事機密
      「毎日新聞」の調査報道のすごみ

    第七章 特定秘密をどう監視するか 080
      「あらかじめ指定」
      「頭の中」の特定秘密
      どのように監視をするのか


    第三部 公文書管理は日本の諸問題の核心 089
    第八章 豊洲市場問題にみる公文書管理条例の必要性 090
      豊洲市場問題の追及
      なぜ文書が残っていないのか
      公文書管理条例の必要性

    第九章 南スーダンPKO文書公開問題 101
      日報公開までの経緯
      稲田防衛相の辞任
      行政文書にならない論理
      なぜ捨てることができるのか
      なぜ残されていたのか

    第一〇章 特別防衛秘密の闇 116
      特別防衛秘密とは
      特防秘の成立
      特定秘密保護法への道
      特防秘の闇

    第一一章 森友学園関係公文書廃棄問題 127
      文書が残っていない
      財務省の論理
      法の趣旨を歪める解釈
      公文書管理法の精神を生かして

    第一二章 「私的メモ」と行政文書 138
      加計学園問題
      「私的メモ」という言い逃れ
      「私的メモ」が横行するのは……
      恣意的な文書管理の行く先には


    第四部 展望:公文書と日本人 147
    第一三章 国立公文書館の新館建設問題 148
      国立公文書館新館建設計画
      国立公文書館とはなにか?
      新館建設問題の浮上
      調査検討報告書
      保存施設としての充実化
      専門職の育成

    第一四章 公文書館と家系調査 163
      公文書館のユーザー
      家系調査と日本
      家系調査支援の可能性

    第一五章 立法文書の保存と公開 173
      国会の公文書
      立法文書の分類
      立法過程の透明化

    第一六章 東京都公文書管理条例の制定 182
      「一丁目一番地」
      公文書管理条例の理念
      文書の移管と廃棄
      拙速だった条例審議

    第一七章 公文書管理法改正を考える 191
      公文書が無い……
      ガイドライン改正
      一年未満文書をどうするか
      野党の公文書管理法改正案

    第一八章 公文書の正確性とは何か? 201
      内閣官房の提案
      「方策」の内容
      行政文書の正確性
      行政文書が歪められる危機


    おわりに(二〇一七年一ニ月八日 瀬畑 源) [213-214]
    参考文献 [215-216]


    【抜き書き】
     初出情報(p. 10)。
     “本書は、『時の法令』(編集:雅粒社、発行:朝陽会、発売元:全国官報販売協同組合) の2000号(2016年4月30日)から2040号(2017年12月30日)まで隔号(月一回)連載された「公文書管理と日本人」に加筆修正をし、読みやすいように再編集したものです。”

  • 20190415〜0421 海外に派遣された自衛隊員の現地での活動記録や豊洲市場、森友、加計学園等をめぐる巨額の税金の使途、国是の大転換を伴う決定のプロセスが記された公文書が相次いで破棄、あるいは未作成とされ、隠蔽される事態が行政の中枢で常態化しています。
    公文書を軽んじ、秘密が横行することは国民の「知る権利」を著しく傷つけるものです。本来公文書は、適切な施政が行われたのであれば、それを証明する記録となります。にもかかわらず、公的な情報を隠し続けて責任を曖昧にする理由は何でしょうか。この「無責任の体系」の背後にある情報公開と公文書管理体制の不備とその弊害を、最新情報を交え、第一人者が明快に解説します。
    公文書の適切な管理の一案として、筆者は立法機関の公文書管理法や情報公開法が制定されるべきだと説く。さらに国会図書館を「立法公文書センター」として位置づけたらどうかと提案している。同様の議論はたまに国会議員からも寄せられたことがあるような気がするけど、実際NDLの中で議論になっているのかな?

  • 南スーダンPKOにおける現地部隊の「日報」破棄問題、森友学園問題に係る文書破棄問題、加計学園問題に係る「怪文書」問題、東京都の豊洲市場問題に係る公文書の杜撰な管理の問題など、最近の公文書管理に関する問題の背後にある情報公開と公文書管理体制の不備とその弊害について、公文書管理問題に詳しい歴史学者がわかりやすく解説。
     政策決定のプロセスが公文書という形で明示されることにより、国民・住民が政策について議論したり、検証したりすることが可能になるという点で、公文書管理や情報公開は民主主義の基盤であり、公文書がきちんと管理されることがいかに重要であるかということが、よく理解できた。また、「私的メモ」の横行や「一年未満」の保存期間の濫用など、現在の公文書管理の問題点についても理解が深まった。
    ただ、雑誌の連載を再編集したものとのことなので仕方のない面はあるが、ちょっと時事的な問題に偏りすぎ、あまり体系性がなく、雑漠とした内容であるという印象はある。

  • 将来の歴史検証が難しくなるのを防ぐためにも、今だけよければ将来なんてどうでもいい、という態度でやり過ごそうとするのはやめてほしいと思った。
    一方で、個人的な記録を残しておくことは大事だと思った。それらしきものをつけてはいたけど、もう少し目的をはっきりさせてみようと思った。

  • 法治国家にしたいなら根幹をなすね。

  • ◆本書刊行後にも、著者の予想だにしなかったであろう森友・加計に関して、新たな爆弾が炸裂している。ここで問題とされる公文書管理と国家保有情報開示の闇を開陳する本書。ただ本書の問題提起すら過小に思える現実に薄ら寒さを覚えるが…。◆

    2018年(2月)刊。著者は長野県短期大学准教授。

     まさか刊行後に、新たな森友爆弾、財務省の公文書改竄、近畿財務局職員の自殺。
     さらに加計爆弾(「首相案件」明記文書)と、これに関する国会での発言の虚偽性とともに、「イラク」派遣自衛隊日報の隠蔽と虚偽回答が露わになるなど、本書が提起する問題点はますます喧しく、そして公文書管理と、様々な発言の出鱈目さが露呈し続けている現状にある。

     一方で、本書ではモリカケ、派遣日報はスーダンだけしか書かれていない。
     この意味で、本書で書かれている内容すら、公務員の公文書管理の病巣を軽く見ている帰結になっているのは、皮肉と言う他はない。

     さらに言えば…と書きたいが、余りにも固有名詞が批判的にバンバン出てきそうなので、これ以上は書かないが、性悪説でルール化=立法化しないとどうしようもない。あるいは偽計業務妨害罪適用の運用範囲を広げるなど(ただし摘発できても氷山の一角だし、検察庁も官僚内部という限界はあるが)も真剣に検討されなければならない感を強くする。

     他方、本書はこの公文書管理、それを担う国立公文書館の施設拡充・更新に加え、特定秘密保護法の問題に紙幅を割いて言及している。深くはないが、取っ掛かりとしては意義深い。自衛隊日報関連でイラク派兵関連日報など、「無いものが有る」ことが明らかになり、背広組による制服組のコントロールが効いていない可能性も取りざたされる中、防衛関連秘密が多く特定秘密とされる実情を見ると、今後どのような目線で特定秘密保護法の運用に目を向け、また必要に応じて改廃の議論をなすべきとの問題意識を醸成できそうだ。

     そもそも、自民党の福田康夫が丹精を込めて育て、岡田克也が実を入れた情報公開を放逐した人物らを本書は明らかにする。
     また、これらの問題に関して、毎日新聞だけがマスコミで一人気を吐くお寒い現実(せめて経済外交分野くらいは日経に頑張ってもらいたい)。会計検査院(今回、森友で一定の役割を果たした)に対してすら様々な隘路で開示を拒もうとする様に、本当にこれでいいんですか、と。

     兎も角、読破の価値ある書であることは確か。

     ところで、政府文書の保管の必要性が叫ばれるようになったのは。まずはWWⅠ後のドイツ。戦争責任が自国にないことを主張するため(有利な敗戦後条約を結ぶため)様々な外交文書を駆使して主張を展開したところ、対する英仏らがこの主張を封じ込めるために外交文書を利用するようになり、その価値を見出した、とのこと。
     つまり客観的なのを前提に(=説得力付与)、自国主張に有利な証拠を残置しておくという意義を見出したということだ。この意義と真逆の姿勢が終戦時における日本政府・軍の文書焼却ということは脳裏に止めておくべきか。

  • 東2法経図・6F開架 317.6A/Se12k//K

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著者プロフィール

龍谷大学法学部准教授。1976年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、一橋大学博士(社会学)。主要業績:『公文書問題―日本の「闇」の核心』集英社新書、2018年。共編著『平成の天皇制とは何か―制度と個人のはざまで』岩波書店、2017年。

「2022年 『大熊信行と凍土社の地域文化運動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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