ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087210125

作品紹介・あらすじ

子供たちの独立国家は、本当に実現するのか? 竹島問題、憲法改正、象徴天皇制などのアクチュアルなテーマを、架空の小学校を舞台に平易な言葉で論じた小説的社会批評。

感想・レビュー・書評

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  • 理想先生はルソーさん
    肝太先生はカントさん
    もう ここからして
    ぐっと 引き込まれてしまう
    いいタイミングでひげもじゃの熊楠さんも
    出現してこられる

    むずかしいことをやさしく
    やさしいことをおもしろく
    おもしろいことを興味深く
    興味深いことをまじめに
    ー井上ひさし さん
    の言葉を そのまんま
    当てはめたような
    物語のような
    評論のような
    哲学のような

    最後まで
    おもしろく
    興味深く
    まじめに
    読ませてもらえました

  • 高橋源一郎さんの小説。相変わらず不思議な小説。こどもたちが主人公で、ある学校にいる生徒たちが、不思議な先生たちとインタラクションをして夏休みの宿題で『くに』を作っていくお話。『くに』だって作ることができるのだと。小説によって、『くに』というものの形をゆるめて、そして、たぶん民主主義というものについて、なにかを湧き出させようとしている。『くに』については明白に意識的だけれども、ひらがなが多いのもあきらかに意識的で、それはこの小説のもつ特性のひとつになっている。本がすきなにんげんは、もっている本をぜんぶ読むようなことはしない、というおとうさんは、自分が書いている小説を『くに』だ、という。『くに』もあるときひとが人口的につくったもので、つくる理由があったということだ。それはある観点では小説もそうだ。少なくとも高橋さんにとってはそういうものだということなのかもしれない。

    小説の中で肝太先生はこういう。「わたしの考える『おとな』についてはなしましょう。『おとな』というのは『ひとり』ではなすことができるひとのことです。たったひとり。条件というのは、そのひとに、名前があること。他には、なにもいらない。そのひとが、歳をとっているとか、中学生であるとか、左足に障害があるとか、おおきな通信会社の課長をしているとか、そういうことはすべて関係なく、ただ、『ひとり』で、自分の名前をもっていて、それだけの条件で、なにかをはなす、あるいは、なにかを考える、それが『おとな』であることです」

    自分は『おとな』になったのだろうか。

    あとがきで高橋さんが書くように「『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた』は、二十一世紀版の『君たちはどう生きるか』を目指して書かれた」という。小説というもののひとつの特性は、制約のなさであり、そこに何らかのメッセージ性を込めるとき、そのメッセージの内容によって小説は互いに似てくるものなのかもしれない。

  • ああ、これは高橋源一郎版、21世紀的『君たちはどう生きるか』だなあ、と思いながらわくわくして読み進めたら、最後のあとがきにそれを意図して書いたってあって、少し自分の読書経験に自信がついた次第(笑)。

    もう少し違うタイトルにならなかったの?
    文庫で出版できなかったの?
    もっと多くの人に読まれる可能性の高い流通形態をとることができなかったの?
    という疑問が出るくらいいい本だと思う。
    もしかしたら怒るような人がいるのかもしれないけれど、こういう形でしか表現できないことも確かにあると思う。
    それに著者自身がこの本の内容すべてに諸手を挙げて賛同してもらうことを期待はしていないと思うし。
    この本を読んで、それが「考える」ことのきっかけになればいい。
    学校では教えてくれないこともあるし、教えられないこと、教えきれないこともある。
    いや、たぶん本書でランちゃんのお父さん(誰かモデルになっているかは一目、いや一読瞭然)が言っている通り、本当に大切なことは自分で調べなくちゃならならいんだろうし。

    とにかく一度読んでみてほしい。そしていろいろと考えてほしい。できればランちゃんのようにその考えたことを共有し合える仲間と巡り合ってほしい(僕としては巡り合いたいけどそれはなかなか難しい現状なので、ランちゃんのお父さん同様、書棚の本と向き合うことにします)。

    そんな本でした。

  • この本に出てくる「がっこう」の実現は難しいけど、この本を教材にする学校が出てきてほしい。

  • 国ではなく「くに」を作るプロジェクトをたちあげたランちゃんたち。高橋家がそのままモデルなのだろうなぁと思いながら読んだ。

    「憲法は使わないと」とか領土がなければ領土争いなんておきないとか柔らかい思考の大切さを感じつつ、面白かったけれど、不思議なモヤモヤも残った。そのモヤモヤの正体はまだわからない。

    アイちゃん一家が出て来て、小さな人が出て来て、小さな人が出てきたからイギリスが登場したのかなぁ。小さな人が出てきたことの意味は何なのだろうなぁ。

  • 2021/2/24購入

  • 普通の評論もしくはエッセイなのかと思っていたら小説だった!だって新書だし!
    あ、いやこれは小説なのかな。違う気もするけど。まあいいや。そういうのは気にしないことにします。と、ランちゃん風です。
    「くに」を作ることにしたランちゃんたちは、なんとほんとに「くに」を作ったよ!作れるんだよ。くに。英国女王から国交樹立のお願いのお手紙には泣いちゃったよ。あとアイちゃんとそのご家族たちの優しさとかねー。くにを背負ってる人たちのせきにんっていうのかな。それの重さがしみじみと深いよね。せいじ家とは違う意味の背負ってる人たちね。くにのことを多分誰よりも深く理解しようと努力しているんだよね。見えないとこで。
    ところで理想先生と肝太先生って変な名前と思ってたけど、最後の最後に気づいた笑
    キャラメルの裸のおじさんは・・・。あー。そうなんだ。
    難しいよ源一郎さん!

  • ふしぎなかんじだった

  • 小説として読むには少しごちゃごちゃしすぎているので、評論として読むといいです。
    著者の考えに少し偏りがある気がします。今の日本の世論とは少しズレているかも。
    不思議な世界観だがとても面白く、私は読みやすいと感じました。
    何度も読まないと少し理解が難しいところもありますが、きちんと読み終えた後にちゃんと頭の中で内容を整理して3回くらい読めば理解できるのではないかと思います。
    個人的にはおすすめの「評論」です。

  • 途中で読むのをやめてしまった…
    1年くらいかけて読んだけど読めなかった。
    世界に入り込めなかったのはそもそも頭がいい子達や、いい家庭環境で育っている子がでてきたからかもしれないということにしたい。
    子供も読めると思うけど、色んな苦労をしてきた大人はあまり楽しめないと思う。

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著者プロフィール

作家・元明治学院大学教授

「2020年 『弱さの研究ー弱さで読み解くコロナの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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