国家と秘密 隠される公文書 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207590

作品紹介・あらすじ

情報公開の世界的な流れに逆行!

特定秘密保護法施行で
葬られる歴史と責任!

国民の「知る権利」を軽んじ、秘密が横行する権力は必ず暴走する――。
第二次世界大戦敗戦直後の軍部による戦争責任資料の焼却指令から福島第一原発事故にいたるまで変わらない、
情報を隠し続けて責任を曖昧にする国家の論理。この「無責任の体系」を可能にするものは何か?
本書はその原因が情報公開と公文書の管理体制の不備にあることをわかりやすく説明する。

そして、世界の情報公開の流れに完全に逆行した形で、2013年末に可決された特定秘密保護法の問題点と今後を展望する。
行政の責任を明確にし、歴史の真相を明らかにするための一冊。

「知識は無知を永遠に支配する」
ジェームズ・マディソン(米国第四代大統領)

感想・レビュー・書評

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  • 佐川元理財局長が公文書改竄をしたとして日本全国問題になっている今、遅れながらも特定秘密保護法や情報公開法、公文書管理法がどのような過程で成立したか大きな流れが理解できた。
    役人たちが作成してきた公文書を保存しておく習慣がない日本は世界でも遅れているようで、公文書管理法や情報公開法が成立したのも21世紀に入ってからだということを聞いて驚いた。
    しかもせっかく成立したこれらの法案に逆行するかのように作られた特定秘密保護法のことも紹介されていて勉強になった。

  • 【書誌情報+内容紹介】
    『国家と秘密 隠される公文書』
    著者:久保 亨  中国経済史
    著者:瀬畑 源  現代政治史
    定価:本体720円+税
    ISBN:978-4-08-720759-0

     公文書とともに葬られる歴史と行政の責任!
     国民の「知る権利」を軽んじ、秘密が横行する権力は必ず暴走する――。
第二次世界大戦敗戦直後の軍部による戦争責任資料の焼却指令から福島第一原発事故、南スーダンの自衛隊の日報をめぐる顛末等にいたるまで変わらない、情報を隠し続けて責任を曖昧にする国家の論理。この「無責任の体系」を可能にするものは何か? 本書はその原因が情報公開と公文書の管理体制の不備にあることをわかりやすく説明する。
     そして、世界の情報公開の流れに完全に逆行した形で、2013年末に可決された特定秘密保護法の問題点と今後を展望する。行政の責任を明確にし、歴史の真相を明らかにするための一冊。


    【簡易目次】
    序章 もともと秘密だらけの公文書――情報公開の後進国日本[久保亨] 011
    第一章 捨てられる公文書――日本の公文書管理の歴史[瀬畑源] 029
    第二章 情報公開法と公文書管理法の制定[瀬畑源] 059
    第三章 現代日本の公文書管理の実態と問題点[瀬畑源] 093
    第四章 公文書館の国際比較[久保亨] 125
    第五章 特定秘密保護法と公文書管理[瀬畑源] 155
    おわりに 公文書と共に消されていく行政の責任と歴史の真相[久保享/瀬畑源] 180



    【目次】
    目次 [003-010]

    序章 もともと秘密だらけの公文書――情報公開の後進国日本[久保亨] 011
    1 霞が関に疎遠な竹橋 
      首相の国立公文書館初視察
      無いも同然の経済財政文書
      遅々たる戦後外交文書公開
    2 情報非公開の近現代日本 
      満州事変勃発時の情報隠し
      太平洋戦争前夜の戦力比較
      沖縄返還密約
    3 二週遅れの情報公開 
      公文書館整備の遅れ
      情報公開法制定の遅れ
      重要な情報の秘匿を許せば、政治権力は際限なく暴走する

    第一章 捨てられる公文書――日本の公文書管理の歴史[瀬畑源] 029
    1 敗戦時の文書焼却 
      燃やされる公文書
      隠される公文書
      東京裁判
      文書は捨てられる
    2 帝国憲法下の公文書管理制度 
      官僚制と文書
      縦割り行政
      保存年限制度
      外交文書の特殊性
      そして重要文書はなくなった
    3 戦後の公文書管理制度――高度成長期まで 
      日本国憲法制定
      戦前とほぼ変わらなかった行政法
      公文書管理も戦前そのままに
      行政能率向上への取り組み
      「戦前の方がまだ文書は公文書は残っている、戦後の方が残り方は酷い」
      国立公文書館の設立

    第二章 情報公開法と公文書管理法の制定[瀬畑源] 059
    1 情報公開法の制定 
      知識は無知を永遠に支配する
      政府の非合法活動に歯止めをかけるための米国情報自由法
      日本に波及した情報公開の波
      大平首相と情報公開
      地方の情報公開条例が国へのプレッシャーになった
      自民党議員が情熱を傾けた公文書館法の制定
      細川連立内閣から政府方針となった情報公開法の制定
      誰でも行政文書にアクセスできる権利
    2 公文書管理法の制定 
      行政文書、不存在の多発
      再び起きてしまった文書の大量廃棄
      文書を作らない
      公文書管理法にかける福田康夫議員の熱意
      消えた年金問題の解決のため
      公文書管理法の制定
      公文書管理法は守られているのか

    第三章 現代日本の公文書管理の実態と問題点[瀬畑源] 093
    1 公文書管理法と情報公開法 
      車の両輪
      国民への「説明責任」と仕事の効率化を図る公文書管理法の理念
      情報公開制度の発展
    2 行政文書の管理 
      意思決定に至る過程を明らかにするための文書作成義務
      閣議の議事録
      レコードスケジュール
      残すか捨てるか
      管理状況の報告
      文書管理規則
    3 行政文書を閲覧するには 
      現用と非現用
      情報公開法による請求
      秘密保護法以前からの問題――広範囲に及んでいる不開示規定
      国立公文書館等
      公文書管理法による請求
      便利になった国立公文書館
      【等】

    第四章 公文書館の国際比較[久保亨] 125
    1 市民革命から生まれた欧米の公文書館 
      一世紀半の歴史――イギリスの公文書館
      公文書の系統的な保存と管理
      公文書の選別と保存
      革命が生んだ公文書館――フランス
      強大な権限を持つ公文書館――アメリカ
    2 王朝の伝統を継ぐ中国の公文書館 
      正史編纂のための文書保存
      中央・地方で三〇〇〇を超える公文書館
      中国版秘密保護法――国家保密法
      大陸の文書も含め公開が進展――台湾
      イギリスの公文書館の伝統を継承――香港
    3 独立を記録するアジアの公文書館 
      王朝時代・植民地期・建国以降の三種の公文書――韓国
      職員数は日本の六倍――ベトナム
      独立直後に公文書館を開設した東南アジア
    4 立ち遅れた日本 
      日本の立ち遅れの歴史的背景
      アジア歴史資料センター

    第五章 特定秘密保護法と公文書管理[瀬畑源] 155
    1 特定秘密のコントロール 
      特定秘密保護法
      秘密と情報公開のバランス
      ツワネ原則
      監視機関なき特定秘密の指定
      谷垣禎一議員のスパイ防止法案批判
      秘密の指定の期間
    2 特定秘密保護法と公文書管理法 
      あいまいなままの公文書管理法との関係
      国立公文書館等へ移管される保証
      防衛秘密のゆくえ
      特定秘密を捨てる?

    おわりに 公文書と共に消されていく行政の責任と歴史の真相[久保享/瀬畑源] 180
      名ばかりの監視機関のもと特定秘密保護法の施行へ
      前近代的な国家の秘密主義から国民主権を取り戻すために


    註 [188-192]
    参考文献 [193-194]
    付録1 特定秘密の保護に関する法律 [195-198]
    付録2 公文書等の管理に関する法律 [199-203]
    付録3 行政機関の保有する情報の公開に関する法律 [204-206]

  • 会社で仕事に従事したり、社会の中で生活するにあたり、日常的に多くの情報に接している。自分や家族の個人情報、会社にある営業機密や顧客情報、社員の人事情報など、データの形で保管されているものから、紙の契約書など、周囲は情報で溢れかえっている。国家運営レベルならさらに多くの情報を抱えているだろうし、自治体の公務員や行政に仕える官僚であれば、制度制定の過程を含めた情報量は途轍もない量に上ると思われる。最近は会社でも紙の削減やら経費削減で、何でもかんでもデータ化する傾向があり、尚且つ、検索スピードを維持するために無駄にデータ量を増やさないよう社員は涙ぐましい努力をしている。際たるものは文書情報一つ一つに保管期間を定め、期限経過後に削除していくものだろう。しかしながらこれもいつか使うのでは、という削除に対する恐怖から、わざわざテープに移して大型の倉庫に行った時点で永久に日の目を見ず、消えることの無い核燃料ゴミみたいになる。これは消せないパターンだが、世の中には知られたく無い情報をすぐに消してしまう文化もある。政治や外交、国防に関する検討過程などの情報がそれらに該当する。よく政治家がその情報はすでに廃棄されてます、といった答弁をする様な類いだ。国の運営に関わる重要文書がそうやって好き勝手に削除されていく。
    本書は問題が制度にある事は勿論、それを利用する側や体制に問題があるとする。制度については日本で文書を保管する明確なルールが整備されたのは諸外国に比べて遅く、保管がイマイチだから開示請求しても存在しない状況が生まれてしまう。一方で制度があっても運営していく体制が少なすぎるから、一つ一つ情報を精査して管理するなど出来ようがない。また保管のルールができると今度は特定秘密保持の法制度化で、見たい情報が次々と秘匿されていくという、情報に関して八方塞がりの状況になっている。
    よってこれを解決するにはその逆をやるしか無い。文書を必ず残すルールのもと、しっかりデータ化して分類し、情報を適切な範囲で共有可能とし、必要に応じてすぐに取り出せる様にする。システムの世界ではDKIWと表現される、(data,knowledge,information,wisdom)の世界観だ。重要なのは適切なアクセス権の設定と取り出しのスピードである。ただしシステムの世界でも厳格な管理運用を行うには相応のチェック体制が必要だ。体制がなければ適当な管理しかされずにただのゴミ溜めと化してしまう。
    保存・管理・開示は一部が欠けると情報の価値が下がると言っても過言では無い。
    本書を読みながら、制度も管理も開示も全てが不十分な実態を目にするが、多くの企業も似たような状況にあると思う。海外はわからないが、少なくとも日本人は情報の扱いが下手くそなだけでなく、情報の活用も苦手なのだと思う。
    近年、世界情勢が刻一刻と目まぐるしく変わり、国家間の機密情報の交換なども国の運営に於いて非常に重要度を増している。アメリカのCIAやイギリスのMI6などまるでスパイ映画の世界に感じるが、日本でもそれに類する機関はあるものの、本当に重要な情報のやり取りができるのであろうか。情報に対する意識が低く、管理もままならない国に真面目に収集管理する各国が本当に重要な情報を開示するとは思えない。また交換に値する情報をこちらが提供できるかも謎だ。
    本書を読んでそうした不安は益々大きくなるばかり。まずはウチの会社大丈夫?という不安ばかりが頭をよぎる。

  • 2014.12―読了

  • ☆ちょっと、騒ぎすぎ。口述筆記ではないかと思われる文体。

  • 2013年の特定秘密保護法可決を受けて刊行された本。

    <公文書管理の歴史>
    ・戦前、文書管理のルールは各省に任されていた。現在の業務での有用性で管理されるため、説明責任という観点は軽視されがち。たとえば決定までの経緯等は残りにくい。戦後も行政省庁の組織は基本的に維持され、体質はあまり変わらなかった。
    ※外務省と宮内庁は、もともと文書がきちんと保存される傾向があった。外交文書は相手の国で公開されるため、宮内庁は前例を重んじる傾向があったため。現在も独自のアーカイブがある。
    ・1950年代からアメリカ発で「知る権利」が提唱されるようになる。日本では70年代くらいの市民運動で盛んに。
    ・1980年「情報提供に関する改善措置等について(閣議了解)」行政機関に窓口設置
    ・80年代、地方自治体で情報公開条例が制定されていく。
    ・1987年 公文書館法制定。地域での公文書館設立の追い風に。
    ・1999年 情報公開法制定、2001年施行。ただし国立公文書館へ移管するかどうかは行政機関側の判断。
    ・2011年 公文書管理法施行。経緯に福田康夫の尽力。施行後すぐに東日本大震災の原子力災害対策本部の議事録不作成問題があり注目されることになる。

    <国立公文書館>
    ・歴史研究者の団体が日本学術会議に働きかけ、1959年に同会議から内閣総理大臣へ「公文書散逸防止についての勧告」を出す。
    ・1964年 閣議了承。
    ・1971年 国立公文書館開館。
    ・1980年「公文書などの国立公文書館への移管及び国立公文書館における公開措置の促進について(連絡会議申合わせ)により、永年保存文書の移管先となる。
    ・2001年独立行政法人化。

    <公文書管理法>
    ・国の行政機関と独立行政法人が対象。
    ・作成した文書は保存期間を設定してレコードスケジュールを作る。
    ・保存期間満了後は(1)国立公文書館へ移管して永久保存、(2)保存期間延長して持ち続ける、(3)廃棄。(2)(3)は総理大臣への報告や同意が必要。
    ・(3)のチェックは内閣府と国立公文書館で行う。
    ・特定秘密保護法と公文書管理法とのバランス。法的な区分けの未整備。公文書管理制度の上から「漏洩防止」の網をかけている状態。

    イギリス、フランス、アメリカ、中国の他、アジアのいくつかの国との制度比較もあり。

  • 歴史
    政治
    社会

  • 情報を隠し続けて責任を曖昧にする国家の論理。この「無責任の体系」を可能にするものは何か?本書はその原因が情報公開と公文書の管理体制の不備にあることをわかりやすく説明する。(2014年刊)
    ・序 章  もともと秘密だらけの公文書
    ・第一章  捨てられる公文書
    ・第二章  情報公開法と公文書管理法の制定
    ・第三章  現代日本の公文書管理の実態と問題点
    ・第四章  公文書館の国際比較
    ・第五章  特定秘密法と公文書管理
    ・おわりに 公文書と共に消されていく行政の責任と歴史の真相

    重要な内容であるが、すんなりと読める。掘り下げに物足りなさを感じるが、2014年の刊行時に比べ、事態(公文書の管理や情報公開のあり方)が悪化しているからであろう。「由らしむべし知らしめるべからず」と言うが、昨今の状況を考えると、国民の側にも、知る権利を守る意識が足りないのではないかと感じる。

  • 財務省の公文書の書き換え問題(森友学園、加計学園問題など)が世間を騒がせて久しい。
    日本の「情報公開法」や「公文書管理法」の成り立ち、「特定秘密保護法」の問題点がよくわかる。
    国を預かる官僚たちに主権者である国民に対しての「説明責任がある」ことへの意識の低さというより、そんなものがあるのか?というレベルであることが脈々と続いてるのである。今回のこれらの安倍炎上は、ある意味それをわからせてくれたわけで、いい迷惑ではあるが、いいキッカケとも言える。

    日本も明治維新でなんちゃって民主主義にはなったが、戦後GHQ指導によりさらにグビっと軌道修正された。けれど、その運営にあたって、米国は直接軍政をしくつもりが占領のための要員が確保できず、日本の統治機構を利用した間接占領を取ることにしたため、一部の省を除き、ほとんどの省で戦前との組織の連続性が強く残ったという。(P49-50)
    どーりで!!!、なのである。

    こと「公文書」に関しては、社会共産主義であるお隣中国からも1周遅れな日本である。残念すぎる…。
    ただこれは「お上が悪い」と言ってるだけでは、その悪いお上と一緒なのである。自分の意識も変えて「国のすることをチェック」して、あかんことはあかんと言える市民(国民)にならないといけないのである。

    とにかく、南京事件も、防衛省日報隠蔽も、森友も、加計学園も、これに絡む財務省書類改竄も、すべてっ!!!!!!!同じ「根っこ」なのである。
    ほんとに、国民も文句ばっかり言ってる場合でないよね。

    ●NNNドキュメント「南京事件Ⅱ~歴史修正を検証せよ~」
     https://bit.ly/2lIo7YJ

  • 日本の公文書管理の現状、隠ぺい体質といったものがよくわかる入門書。さもありなんという状況がこれでもか、というくらい書かれている。

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著者プロフィール

信州大学人文学部特任教授

「2019年 『現代中国の歴史 第2版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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