ちばてつやが語る「ちばてつや」 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
3.77
  • (5)
  • (8)
  • (8)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 65
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207392

作品紹介・あらすじ

『あしたのジョー』など数々のヒット作で知られる漫画界の巨人が、その作品一つ一つについて自ら語り下ろした初めての一冊。その57年にも及ぶ漫画家生活を振り返ることで、日本の戦後史を描き出す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  書名のとおり、大御所マンガ家・ちばてつやが自らの歩みを振り返った本。構成者の名は明記されていないが、インタビューをライターか編集者がまとめたものだと思われる。

     生い立ちから説き起こされてはいるものの、自伝というよりは自作解題が中心になっている。
     ちばてつやの主要作品すべてについて、それがどのように生まれ、どのように描きつづけられていったのかの舞台裏を、自らつぶさに明かした本なのである。
     もちろん、作品の舞台裏を語る作業を通じて、おのずとマンガ家人生を振り返ることになるので、自伝としても読める(ちばは過去に『みんみん蝉の歌』という自伝も刊行しているが)。
     ちばてつや作品のファンなら楽しめる本だ。

     国民的マンガ家の1人であるわりに、きちんとした「ちばてつや論」の書は皆無に等しいが(これは手塚治虫を除く大半の大物マンガ家について言えること)、本書は今後ちばてつやを論ずる場合の基本文献になり得るものだ。

     ちばてつやは、野球でいえば王貞治に相当するような「斯界を代表する人格者」として知られる。
     本書にも、誠実であたたかい人柄が行間ににじみ出ている。とくに、一つひとつの作品に真剣に向き合う姿勢が随所に感じられ、感動的である。

     初期作品(貸本マンガや少女マンガ)についての章は、私自身に思い入れがないため印象が薄い。が、リアルタイムで連載を読んでいた『おれは鉄兵』や、マイフェイバリット作『紫電改のタカ』「蛍三七子」、そしてもちろん『あしたのジョー』についての項目は、夢中になって読みふけってしまった。
     とくに、『あしたのジョー』の舞台裏を明かしたくだりは、本書の白眉だろう。

  • あしたのジョーは、豪華装丁本のセットを持っていて、何度も何度も繰り返し読んだ。もう20年くらい前だけど。のたり松太郎は、Kindleで全巻購入した。あした天気になれ、も、ゴルフが好きでなかったので、なかなか手を出さなかったが、少しずつ買っている。

    著者が人生を振り返り、丁寧にデビュー作から自分の作品に解説を加えた本。まじめで良心的な人柄が伝わってくる。そして、どうしてこの人の作品があれほど面白いのか、広く読まれているのかが、さらによくわかる。気持ちがあたたくなる、よい本です。

  • 漫画界のヨハネパウロ二世(西原理恵子さん談)巨匠・ちばてつや先生の自伝。以前友人から借りた書籍でもちば先生の大陸からの引き揚げ体験が壮絶だったことは読んでいたがご本人の口から語られたものを読むと余計に悲しい。戦争は絶対いかん。自著解説がメインだが近年の漫画規制の話題にも触れられていて「子供を守るために」を盾にする輩は危険、と仰ってたのが印象的だった。本当ですよ。知人でも「子供が喜ぶなら私は詰まらなくてもいい」って言う人がいたんですがその人今ではマルチ商法にハマって勧誘してきます…(ちょっと話題が違うか)。

  • ちばてつや。僕らの世代なら「あしたのジョー」の作者(原作は高森朝雄=梶原一騎の別名)であり、「おれは鉄兵」、「のたり松太郎」、「明日天気になあれ」などのヒット作を持つ人気漫画家として知らない人はいないだろう。
    そのちばてつや氏が、幼くして家族が満州に渡り、終戦後その満州からの引き揚げを経験した事から始まり、素人同然で飛び込んだ貸本漫画作者としての道、そして少女漫画から少年漫画に移行して大成功をおさめる経緯については、一作一作、、作品を取り上げて、それを描く事になったきっかけや、当時どういう思いで描いていたかなど、作品についての思い入れを語っている。
    「あしたのジョー」は今も全巻持っている。その中で金竜飛という韓国人ボクサーの生い立ちとして、朝鮮戦争で家族が離散し、知らなかったとはいえ、自分の父親を殺してしまうエピソードが出てくるが、そのあたりには自身の戦争経験が下地になっているのだという事は初めて知った。
    あと、この本の中では余り目立たないが、ちばてつやさんの奥さんが面白い。最近は連載漫画を持たず、読み切り作品と大学で漫画を教える事を生業とされている。そのきっかけは、連載などを持っていたちば氏が体調を崩し、入院して、休業を余儀なくされたからだが、氏の入院中に奥様が独断でアシスタント全員に退職金を払ってプロダクションを解散し、事務所も整理してしまっていたからだったそうだ。それで踏ん切りがついたという事だったが、夫の健康のためとはいえ、何十年と漫画一筋で暮らしてきたちば氏に無断でプロダクションを畳んでしまうのだから、凄い。なるほど、ちば氏は頼まれると断れない性格で、編集者の要請に押し切られ、週刊連載を同時に何本も抱えて失敗しそうになったという話が何回か出てきていたから、放っておいたら退院後も無理をして更に体調を悪くしていたかもしれない。ご内儀はそれを見越して大胆な行動に出たのかもしれない。
    新書で軽く読める内容だけど、ちばてつやという漫画家の人柄や思いがよく伝わってくる一冊だった。

  • 2014年5月刊。ちばさんの自叙伝。他の人が書かれたもので作品のことや創作の話は読んだことはあったが、自ら語られる内容は、インパクトがあり、詳細で興味深かった。創作活動は、今も続けておられるとのことで、新作が読みたいです。

  • 2014年5月21日、初、並、帯無
    2014年12月27日白子BF

  • たまたま読んでいたのですが、文化勲章を受章されたようですね。 おめでとうございます!

  • [ 内容 ]
    『あしたのジョー』『おれは鉄兵』『のたり松太郎』『あした天気になあれ』など数々のヒット作で知られる漫画界の巨人が、自らの「作品」一つ一つに込めた熱い思いを、執筆当時の制作秘話を交えて初めて綴った。
    『ジョー』の中で一番描くのが難しかったキャラクターは誰か。
    『鉄平』の主人公の身長がだんだん小さくなっていったのはなぜか。
    あの名作の知られざるエピソードが満載の一冊。

    [ 目次 ]
    序章 「ちばてつや」になる前の千葉徹彌(一九三九~一九五五年)
    第1章 高校生で「貸本漫画家」に(一九五六~一九五八年)
    第2章 「少女漫画家」として雑誌デビュー(一九五八~一九六一年)
    第3章 『ちかいの魔球』『紫電改のタカ』と週刊少年漫画誌(一九六一~一九六五年)
    第4章 『ハリスの旋風』から『あしたのジョー』への激動時代(一九六五~一九七三年)
    第5章 『おれは鉄兵』『のたり松太郎』と青年漫画への進出(一九七三~一九八〇年)
    第6章 『あした天気になあれ』とスポーツ漫画(一九八〇~一九九四年)
    終章 漫画の未来に向けて(一九九五年~)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • ちばてつやが生い立ちから現在にいたるまでを自ら語っています。子供時代の満州からの引き上げ体験から始まります。学生時代にプロの漫画家になり、その後の人生は、当時描かれた作品をもって語られていくため、ほぼ漫画制作で占められた人生だったんだなぁという印象を受けます。その後の野球漫画の原型となった「ちかいの魔球」、TVでアニメ化され、子供に大人気だった「ハリスの風」、漫画の読者が高齢化していく中で一世を風靡した「あしたのジョー」、最長の連載作となった「のたり松太郎」など、有名作の部分がやはり興味深く、面白く読みました。

  • 巨匠が半世紀を超える漫画家生活を振り返る。敗戦後、家族で満州から帰国したちば少年は高校生でデビュー。今でも自らを遅筆で、女性をうまく描けないと語る。「おれは鉄兵」の主人公が連載が進むにつれて幼児化したことも反省している。

    トリビアだったのは、ちばてつやには3人の弟がいて、その3人が皆、マンガ業界にいること。少年スポ根マンガの名作「キャプテン」のちばあきお、マンガ原作者七三太朗、そして「ちばプロダクション」のマネージャー。兄弟4人が協力者として、ライバルとして同じ業界で切磋琢磨している。この兄弟のエピソードをもっと知りたい気もする。

    そして、ちばてつやといえば、「あしたのジョー」だ。原作者とのやりとりや劇画タッチを学べたこととか、本作品について多くのページを費やしているが、思ったほどではない。むしろ、誰もしらないような読み切りや短期連載作品についても、同じくらいの熱量をこめて語っている。すべての作品に愛着を持って全力で取り組んだ結果なんだろう。確かにこの人の作品にはハズレはない。

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ちばてつや(本名:千葉徹弥)1939年(昭和14年)1月11日、東京築地の聖路加病院で生まれる。 同年11月に朝鮮半島を経て、1941年1月旧満州・奉天(現中国・遼寧省瀋陽)に渡る。 1945年終戦。翌年中国より引揚げる。 1950年、友人の作る漫画同人誌「漫画クラブ」に参加。1956年、単行本作品でプロデビュー。1958年「ママのバイオリン」で雑誌連載を始め、1961年「ちかいの魔球」で週刊少年誌にデビュー。 主な作品に「1・2・3と4・5・ロク」、「ユキの太陽」、「紫電改のタカ」、「ハリスの旋風」、「みそっかす」、「あしたのジョー」、「おれは鉄兵」、「あした天気になあれ」、「のたり松太郎」など。 公益社団法人日本漫画家協会会長。 東京都練馬区在住。

「2022年 『わたしの金子みすゞ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ちばてつやの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×