実録 ドイツで決闘した日本人 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207118

作品紹介・あらすじ

驚くべき事にドイツでは今日でも、真剣を用いた決闘が学生の間で行われている。ドイツ留学時学生結社に誘われ、そこで決闘を経験した著者。ゲルマンエリートを作り出す決闘文化の実態を本邦初公開。

感想・レビュー・書評

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  • 1980年代初頭のマンハイム大学留学時代に、「コーア・レノ・ニカーリア」という男だけの大学内秘密結社に入会した東洋人、菅野瑞治也(すがの・みちなり)は、ドイツ国内をはじめ欧州各地で残っている真剣を用いた決闘「メンズーア」の試合の舞台に立った。これはその決闘文化紹介つきの回顧録となっている。私はこの本を秋口に友人に薦められて読んだ。
     西洋版バンカラとでもいうべき剣闘結社のホモソーシャルな絆は、筆者の書く文章の論理に充満していていっそすがすがしい(詳細は「フレーズ」欄を参照)。
     文章の脈絡も、その絆のチカラがそうさせるのか、どこかおかしい。AだからB、BだからC、というときのその帰結Cが「ん?(何を言っているんだこの高貴なる野蛮人を内面化した男どもは?)」としか思われない、そういう文章があちこちに立ち込めている。こんなにツッコミどころのある異文化紹介があっただろうか。
     決闘結社の話は、日本の大学における体育会系部活ともよく似た何かを感じさせる。実際、自分も大学の体育会合気道をやっていたころを思い出した。しかしここまでムッと立ち込める絆に参入できた気がしない。やはり真剣で一発撫でられて十針縫うリスクとか負った方がいいのだろうか。
     ノンフィクション版『ファイトクラブ』とでもいおうか、男のオトコとしての獣性を若干取り戻したい時に一服脳に通したくなるタイプのドラッグ・ブックである。また決闘結社をテーマにした映像作品(ドラマでも、アニメでもよい)を見てみたくもなった。豪奢な一軒家で屯する規律ある男子大学生たちの生活空間はとても心地よさそうだ。花押もかっこいいし。
    ▼別アプローチからの評価
     最近、スポーツ社会史をまとめて調べ直す機会があり、その時、近代スポーツ以前の「ブラディスポーツ」というものを知った。これは近代化したスポーツ格闘技から取りこぼされた、流血スポーツ共同体を報告したものとして読むこともできるかもしれないと思った(ブラディスポーツについては講談社現代新書の松井良明『近代スポーツの誕生』などを参照)

  • ドイツでは今でも真剣を用いた決闘がある。と聞くと驚くけど確かに存在してしっかり防具を身にまとい厳格な作法がある中で行われるとはいえ真剣を用いて行われる。そういった文化がヨーロッパにもあるというのは興味深かった。そこで求められるのは騎士道精神のようなものであり空手家や柔道家が求められるものと似ている気がする。様式は違えど似たようなものがあることに親しみを覚えると同時にこの決闘のあり方にも変化があり、それも興味深かった。

  • 図書館で「呼ばれて」借りた本。

    「今でもドイツ学生結社では真剣を用いた決闘が行われている。ニーチェやゲーテ、ビスマルクの時代はもちろん、現在の政財界のエリートの経験者の多くが決闘経験者という事実」
    と見返しには書いてある。

    「ドイツと日本はよく似ている」と言われるし、ドイツ語は日本にも静かに浸透している。
    「結局、日本ってドイツ好きなんだよ」と感じていたが、「武士道」にも通じる「ゲルマン騎士の高貴なり野蛮さを具現化する血統文化」には仰け反るほどの驚きだ。ここまで似ているとは!

    ただし、女性と18歳以下の男性、犬(ドイツではレストランでも犬を連れて入ってよい)は入場禁止。文字通り
    「男の世界」
    なのである。

    読めば読むほど
    「女だけど、メンズーアを見たい!」
    と思ってしまう。
    松本零士さんファンなので
    「キャプテン・ハーロックの顔の傷もメンズーアの後か?」
    などと楽しい? 想像をしてしまった。

  • [ 内容 ]
    驚くべきことにドイツの学生結社では今日でも、鋭い真剣を用いた決闘が一部の学生の間で普通に行われている。
    一九八〇年代初頭にドイツ留学した著者はふとしたことから学生結社に誘われ、そこで決闘を経験する。
    本書は、武士道にも通じるゲルマン騎士の「高貴なる野蛮さ」を具現する決闘文化に迫るドキュメントである。

    [ 目次 ]
    第1章 ドイツの決闘(学生の決闘「メンズーア」とは;顔と頭の刀傷=シュミス ほか)
    第2章 決闘の掟(「男」になるための試練;騎士道精神 ほか)
    第3章 学生結社の日常(学生結社はどのような組織になっているのか;処罰規定 ほか)
    第4章 伝承と継承―高貴なる野蛮(国民団(ナツィオーン)とは何か
    新入生いじめの儀式と学生同郷人会ランツマンシャフト ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • ドイツ語圏には決闘という女子禁止の文化的習慣行事がある。それを実体験に基づいて書いた本。すぐに読める。でも、決闘のルールから、仲間の絆、少しの歴史までが網羅されているのでわかりやすい。

  • 著書はドイツ マンハイム大学留学中に学生結社に所属し、そこでの体験が書かれています。真剣を使った真剣勝負の実態等、実際に二度決闘に参加した著者ならではの実体験は、驚かされることばかりでした。

  • ドイツに今も残る「決闘」と「学生結社」の文化について書かれた本。
    著者自身が留学中に思いがけず学生結社に入会することになり、それに伴って決闘まですることになったという体験をしている。中世からの流れを組み、今も生き続ける学生結社とはどんなものなのかがよくわかる。


    この本で主に描かれているドイツの学生結社の姿だけに関して言えば、「ドイツらしい」というか、「日本らしい」というか。

    規律を守る、苦しみをともに体験するといったことを通して「兄弟」となり、一生の友となる、というのは、ある意味軍隊や任侠の世界に通じる。
    ドイツ人や日本人は、たぶんそうした精神性にうまくはまりやすい人々なんじゃないかと感じるので、こういう結社が受け継がれていくのもうなずけるところがある。

  • 命をかけた仲間とのつながりは強いものがあるんだな。
    臆病な行為(ムッケン)をせずに決闘を終える。そこには決闘相手との勝敗は関係ない。己に負けずに戦い続けたものだけが知る世界がある。
    日本の武士道に通じるものがあるのではないか?ドイツ人と日本人が似ていると言われる所以はこういうところにも表れているのかも。
    決闘を経験したものたちの仲間意識の強さは憧れさえ抱く。

  • HONZのオススメ。
    著者の実体験である現代ドイツに受け継がれる学生結社の話をその特筆すべきポイントの一つである決闘を切り口に解説。
    経験に基づいた話はリアルだけれど、どこか遠いところの話のようでもある。世界は広いなぁー、とありきたりではありますが、改めて感じます。

  • 決闘?ドイツで?この時代に?しかも真剣で?なんで日本人が? と幾つもの?マークが浮かぶタイトルと表紙だが、いきなりプロローグでの決闘シーンに圧倒されてしまった。ガチの決闘じゃん!しかもミッチー(著者)斬られてるし!

    本書にはドイツ留学経験のある著者が、実際に体験した決闘の様子が描かれている。ドイツにはたくさんの「学生結社」という団体が存在し、多くの学生やOBたちが加入しているそうだ。実はこの決闘という行為は、学生結社の正会員になるために必要な通過儀礼なのだ。

    決闘シーン以外にも、学生結社の歴史や儀式の様子、決闘の正しいルールや練習方法などが紹介されている。知られざるドイツ文化に触れる事が出来た、というか、むしろ知ってはいけない事を知ってしまったような気さえする。
    でもどうやら全ての学生結社が、決闘を行なっているワケでは無いらしい。たまたま親しくなったドン臭い友人に勧誘されたのが、運悪く「決闘が義務付けられている学生結社」だったのだ。

    ただ、決闘という超日常離れした体験を共有した仲間とは、在学中はもちろん卒業してからも一生の友となり、OBからは就職の斡旋までしてもらえるそうだ、そんな濃密な人間関係を築けるとは、非常に羨ましい限りである。著者が卒業後にドイツでトラブルに巻き込まれた際のエピソードには感動してしまった。

    でも、 もし万が一、 自分の人生の内で、一番血気盛んな年頃に、ドイツに留学していたらなんて考えると・・・・・・

    イヤ!絶対決闘なんかやんねーわ!!

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著者プロフィール

京都外国語大学教授。専攻はドイツ文化史、文学。ドイツ留学中に学生結社「コート・レノ・ニカーリア」の一員となり、決闘を体験。著書に『実録ドイツで決闘した日本人』がある。

「2021年 『決闘のヨーロッパ史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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