金融緩和の罠 (集英社新書)

  • 集英社
3.74
  • (12)
  • (23)
  • (19)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 212
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087206876

作品紹介・あらすじ

金融緩和の副作用はとてつもない! 日本経済の再生を阻害する金融緩和政策の落とし穴を見極めるために、『デフレの正体』の藻谷浩介氏ら第一線のエコノミストたちが社会哲学者と徹底的に討論する!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 金融緩和→貨幣供給量の増加→消費の増加?

  • 対談集。
    藻谷浩介;「デフレの正体」著者。
    河野龍太郎;BNPパリバ証券経済調査本部長。
    小野善康;大阪大学社会経済研究所教授。

    はじめに
    第1章 ミクロの現場を無視したリフレ政策 藻谷浩介×萱野稔人
    第2章 積極緩和の長期化がもたらす副作用 河野龍太郎×萱野稔人
    第3章 お金への欲望に金融緩和は勝てない 小野善康×萱野稔人

  • 金融緩和政策が思うように効かない理由が、新たな視点で解説され興味深い。大変勉強になった。

  • 2013年刊行の少し古い本。三人の著名エコノミストがアベノミクスの掲げる金融緩和を真っ向から否定し、その危険性を解く。
    自分の理解できる範囲で、何で金融緩和が意味がないかという理由は2点)。
    1.日本は人口オーナス期(現役世代が減少して高齢化社会)に入っていて、人口が減っていくところに需要は生じないというもの。需要のないところにお金をジャブジャブ注ぎ込んでもその効果は?
    2.人は豊かになっていくとモノではなくお金の所有願望が強くなっていくというもの。ものが溢れている日本にお金をジャブジャブ注ぎ込んでも実際にお金がモノに変わるのか?
    2番目については思いあたる節もあり目から鱗。ミニマミスト思考とか無駄を省こうとか、モノが減っていく方向への世の中の流れを感じる今日この頃。その中に企業が投資をしてモノを作っても消費されず過剰在庫に苦しむだけだろう。

  • 2013年刊。

     反リフレ派の論客3名と萱野との対談形式のリフレ批判書だが、論の目新しさは多くない(もとより内容がオカシイわけではない)。

     具体的には、
    ① 人口の実数減、特に生産人口の実数減が、需要の合計総額を減らす。
    ② これを助長したのが、労働配分率の低下に代表される生産人口帯の可処分所得減と、これに伴う総計としての需要減。
    ③ 供給増加は需要を生み出さない。あるいは総体としての需要「額」の増大につながらない。
    ④ 金融緩和は
    ⑴ 既に打ち続けた手で有効性に疑問
    ⑵ これに伴う円安は資源高を招き、内需拡大に必要な国内資産の流出。
    ⑶ 金融緩和で増大した貨幣は、金融セクターを通じ国債購入にしか行かない。家計・企業など市中に流れなければ需要喚起につながらない。
    とのこと。


     個人的に目を引く点、あるいは上手い言い回しは以下のとおり。
    ① 生産人口減は需要低迷・減少の未来像を映し出し、企業の設備投資を減退・縮退させる。
     そもそも設備投資は企業の「消費」であるところ、家計に加え企業も消費を減少させる。
    ② デフレは貨幣価値のバブル現象である(逆に言えば、物の価値の異常な上昇は俗に言われている「バブル経済」のこと)。
    ③ 成熟社会は物への欲求≪貨幣への欲求。貨幣を増やしても需要増にはならない。

    ◆著者萱野は津田塾大学国際関係学科准教授。
     同藻谷は㈱日本総合研究所調査部主席研究員。
     同河野はBNPバリパ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト。
     同小野は大阪大学社会経済研究所教授。

  • 現在、黒田日銀総裁が進めている金融緩和政策が、いかに景気浮揚にとって無力かが理解出来る本です。

  • 金融緩和に懐疑的なインタビュアーが、意見を同じくする3人の専門家との対談を通じて、アベノミクスの金融緩和を批判的に記したビジネス書。結局『罠』とは、政府債務の増大とその後訪れるであろう国債価格の暴落、通貨信用の毀損(円の暴落)と、従来の反リフレ派の主張と変わらないところ。
    3人の専門家の意見に納得する部分も多かったが、同時に100%同意できるわけでもなく、納得できない部分も多々あります。とはいっても、全般的にわかりやすく、楽しく読ませていただいた。

  • 河野龍太郎さんのインタビューを新聞で読んで、この方の本を読んでみたいと思い、この本に辿り着く。

    この本は、萱野稔人(津田塾大教授)が、安倍政権で推し進める金融緩和に反対意見を主張する3名、藻谷浩介氏(日本総研主席研究員)・河野龍太郎(BNPパリバ経済調査本部長)・小野喜康(阪大教授)とそれぞれ対談した内容がまとめられている。

    感想。とっても面白い。読んで良かった。

    備忘録。
    ①藻谷氏の見解
    ・リフレ論は「供給されたお金は必ず消費される」という前提に立っている。それは現実と乖離している。
    ・バブル崩壊以降の日本の景気低迷は、貨幣供給量不足が引き起こしたのではなく、モノの需要不足によるものだ。だってバブル崩壊後日本の生産年齢人口が減っているんだもの(15年で7%減少)。
    ・人口オーナス→モノの供給過剰→モノの値崩れ、これが不況の原因だ。
    ②河野氏
    ・物価上昇→金利上昇→日銀は物価安定か金融システム安定のどちらかを選ぶ必要あり。たぶん金融システムの安定(国債買い支え)を選ぶ=金融緩和→円安→また物価上昇→また金利上昇・・・
    ・労働力と設備(資本)は独立していない。労働力が増加すれば設備も増える。労働力が減れば消費が減るから投資に躊躇し設備が減る。いずれも労働力(人口動態)から始まる)
    ③小野氏
    ・小野理論:成熟社会では欲望の対象がモノではなく、お金が究極の欲望対象になる→セイの法則が成立しない→モノが余る→雇用不安→不況

  • アベノミクス反対の立場から3人の論客に萱野稔人がそれぞれインタビューしたものを纏めたのが本書。3人とも主張は必ずしも同じではなく、私自身の考え方とも違うが、色々考えさせられた。
    理解不足かもしれないが、藻谷浩介は、人口オーナスなんだから不況でもしょうがないと言っているように思える。最後の方で給与アップ、女性の就労促進、外国人観光客の消費促進なんて言っているが、給与アップが簡単にできれば苦労しないし、多くの女性は専業主婦志向で働かずに済むならあまり働きたいとは思っていないし、外人観光客の消費ってそんなに効果があるのだろうか。日本はデフレじゃなく、減っていく現役世代を主たる相手にした特定分野の商品の単なる値崩れで、平均物価を見ていても駄目だとするこの部分は、現実の経済を良く見ているようで興味深い。また、日本の完全失業率は先進国最低水準を維持していると指摘しているが、他方、小野善康はむしろ失業者が多いので、介護や保育や教育やインフラ整備等の雇用増大のための施策を取るべきだとしているのと好対照であるのも面白い。
    小野善康は、乗数効果は存在しないとか、増税は景気に中立的だとか、経済学の教科書を普通に読んだだけでは中々ついていけない面白いことを言っている。また、サプライサイドの効率化は失業者を増やすだけで、解雇された人がより効率的な職場に移るなんて市場主義者が考えるようなことは起こらないという指摘はそのとおりだと思う。ただ、構造改革論者は、効率化を進めて生産力を増やせば需要は喚起されるというセイの法則を信奉しているのではなく、弱肉強食、富める者をさらに富ませるために単に理論武装しているだけだと思う。高齢者福祉を現物給付にするべきという主張については、実際にそんなことどうやってやるのかかなり疑問。
    河野龍太郎の労働力が設備投資を決めるという指摘は興味深い。円安円高の基準についても一般に与せず、実質実効為替レートを用いて、小泉政権下での円安誘導が電機セクターの過剰ストックを招いたとする点も面白い。ただ、金融緩和は金融機関が融資ではなく国債投資に走り、結果としてクラウディングアウトを引き起こしているという主張は、銀行って最近は国債を売っているので、誤っていると思う。

  • [ 内容 ]
    アベノミクスでにわかに注目をあびる金融緩和政策。
    しかし、「日銀が大量にマネーを供給すれば、景気が回復する」というのは机上の空論だ。
    「失われた二〇年」をもたらした本当の理由を覆い隠し、かりそめのバブルを引き起こすだけではないか。
    しかも副作用の大きさは計り知れない。
    国債の信用喪失に始まる金融危機、制御困難なインフレなど、さまざまなリスクを第一線のエコノミスト・経済学者らが、哲学者と徹底的に討論。
    金融緩和の落とし穴を見極め、真の日本経済再生への道筋を描き出す。

    [ 目次 ]
    第1章 ミクロの現場を無視したリフレ政策(現実から乖離したリフレ政策;働いてお金を稼ぐ世代が減りはじめた;人口オーナスが値崩れを引き起こす ほか)
    第2章 積極緩和の長期化がもたらす副作用(金融緩和反対で日銀人事案否決;需要としての設備投資;設備投資と人口動態 ほか)
    第3章 お金への欲望に金融緩和は勝てない(金融緩和が効かない明白な証拠;「成熟社会」に入った日本;長期不況をはじめて説明できた小野理論 ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

全23件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1964年、山口県生まれ。㈱日本総合研究所調査部主席研究員。1988年東京大学法学部卒、同年日本開発銀行 (現、㈱日本政策投資銀行)入行。米国コロンビア大学ビジネススクール留学、日本経済研究所出向などを経ながら、2000年頃より地域振興の各分野で精力的に研究・著作・講演を行う。2012年度より現職。政府関係の公職多数。主な著書に『実測!ニッポンの地域力』(日本経済新聞出版社)、『デフレの正体』(角川oneテーマ21)。

「2012年 『藻谷浩介さん、経済成長がなければ僕たちは幸せになれないのでしょうか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藻谷浩介の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
古賀 茂明
ヴィクトール・E...
三浦 しをん
ジャレド・ダイア...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×