著作権とは何か ―文化と創造のゆくえ (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
3.72
  • (28)
  • (49)
  • (66)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 513
感想 : 59
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202946

作品紹介・あらすじ

いま著作権という権利が、大きな注目を集めている。芸術家や作家などのクリエイターはもちろん、一般ユーザーにとっても、著作権はとても身近な権利になってきている。また、それは巨大ビジネスとなった映像・音楽・出版・ネット産業などの動向さえ時に左右する。では、こうした著作権とは、いったいどのような権利なのだろうか。著作権は、どのような場合に生まれ、具体的にどのようなことが出来て、そもそも何のために存在するのだろうか。本書は、著作権を専門とする弁護士が、著作権の基礎や考え方を、シェイクスピア、デュシャン、手塚治虫など豊富な実例を挙げつつ解説し、著作権と文化の関わりを探る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 広義の知的財産権法は、毎年のように改定される。
    特実意商は、特許庁の管轄。
    不正競争防止法は、特許庁の上部組織の経済産業省の管轄になる。
    本書のテーマの著作権法は、文化庁の管轄になる。
    省庁をまたぐもののこれらは、弁理士試験の試験範囲に含まれる。
    インターネットを使って情報発信するものとしては、
    著作権法に熟知しておく必要がある。

    例えば、ブログやホームページで使う素材が、著作権を侵害していないか。
    あるいはストックフォトで使う写真が、著作権を侵害していないか。
    常にチェックする必要がある。
    しかも、毎年のように改定される。
    時代が先に進むので、後追いの様に著作権法や、不正競争防止法は、都度改定される。
    わが国では、スパイ法に相当するものがないので、産業スパイも不正競争防止法の範疇で判断される。

    因みに某ストックフォトでは、クリエーター登録する際に著作権法等に関するテストに合格しなければならない。当方は、一発満点でパスした。

    本書は、著作権とは何かを、一般に知らしめる良書だと思う。

    本書は、2005年の発行で、一部陳腐化しているかもしれない。
    本箱にモスボールしてたけど、用途廃棄するか
    そのまま続けるか。

    さすがに、ロングセラーだけあって、改訂版が出された。つまり根強い需要があるからだろう。
    買い替えるか?

    追記

    三脚使って構図を考え、一眼レフを使って4人で一緒に写真を撮った。
    その写真をエアドロップで提供した。
    するとインスタグラムにアップされた。
    クローズドなコミュニティの人達だけ見られるのだろう。
    リモコンでシャッターを切った。
    写真には、私の著作権がある。

    一方、個々の4人には、所謂肖像権がある。
    こんな時、どうする?

    通りすがりの人にシャッターを頼むと、
    厳密には、著作権は通りすがりの人になる。
    著作権は難しい。

  • 著作権法では何を守ろとしている権利なのか、今更ながら、良く理解できた。
    アイデイアは保護されないが、それを表現したものは保護される。

  • 著者が言うとおり著作権概論と言う感じ。

  • 目次
    はじめに 著作権とは何か 9
    第一章 それは「著作物」ですか 19
     1 法律の条文を読んでみる
     2 創作性その他の条件
        「創作性」どの程度のオリジナリティが必要か
        事実やデータは著作物か
        アイデアは著作物か
        アイデアと表現の一致
        パスティーシュ(作風の模倣)
        キャラクターは著作物か
        即興演奏や即興の語りは著作物か

    第二章 著作者にはどんな権利が与えられるか 53
     1 著作権は権利の束
     2 権利保護の条件
     3 「著作者」と「著作権者」
     4 著作者人格権とは

    第三章 模倣とオリジナルの境界 77
     1 盗作か否か裁判で争われたケース
     2 『ウェスト・サイド物語』はシェイクスピアの盗作か
     3 ディズニー『ライオン・キング』をめぐる論争から
     4 さて、正解は?−著作権の存在理由

    この法律は、著作物ならびに実演、レコード、放送および有線放送に関して著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。(著作権法第1条)

    第四章 既存作品を自由に利用できる場合 119
     1 さまざまな制限規定
     2 私的使用のための複製
        第一の波 ビデオカセット、コピー機の普及
        第二の波 デジタル録音・録画機器の登場
        第三の波 ネットワーク化
     3 パロディとアプロプリエーションの地平を探る
     4 引用

    公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。(著作権法第32条)

    最高裁による引用の条件
    (1) 明瞭区別性
    (2) 主従関係
    (3) 著作者人格権を侵害しないこと

    第五章 その権利、切れていませんか? 183
     1 著作権の保護機関
     2 国際的な保護

    第六章 「反著作権」と表現の未来 193
     1 アメリカ「ソニー・ボノ法」意見訴訟
     2 「反著作権」や「フェアユースの拡大」
     3 再び『ロミオとジュリエット』をめぐって

    あとがき 208
    主要参考文献 212
    索引 221



    P17 知的財産権にはどんなものがあるか
    知的財産権
     著作権
      著作者の権利
       著作者人格権
       著作権(財産権)
      著作隣接権
       実演家の権利
        実演家の人格権
        財産権
       レコード製作者の権利(いわゆる原盤権)
       放送事業者の権利
       有線放送事業者の権利
     産業財産権(工業所有権)
      特許権(特許法)
      実用新案権(実用新案法)
      意匠権(意匠法)
      商標権(商標法)
     上記以外
      <不正競争防止法>で守られる各種の権利
      肖像パブリシティ権<判例で認められた権利>
      育成者権(種苗法)
      その他の権利

    p55 著作権に含まれる各種の権利
     複製権
     上演権・演奏権
     上映権
     公衆送信権
     口述権
     展示権
     頒布権
     譲渡権
     貸与権
     翻訳権・翻案権等
     二次的著作物の利用権

    p123 著作権の許可がいらない場合ー著作権の制限規定
     私的利用のための複製(著作権法第30条)
     図書館等における複製(第31条)
     引用(第32条)
      (1) 公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内であれば、公表された著作物を引用して利用できる。
      (2) 国・自治体等が一般に周知させるために発行した公報資料等は、転載禁止の表示がされていない限り、説明の材料として新聞その他の刊行物に転載できる(いずれも翻訳も可)。
     教科用図書等への掲載(第33条)
     学校教育番組の放送等(第34条)
     教育機関における複製等(第35条)
     試験問題としての複製等(第36条)
     点字による複製等(第37条) 
     聴覚障害者のための自動公衆送信(第37条の2)
     非営利目的の上演・上映・貸与等(第38条)
     時事問題に関する論説の転載等(第39条)
     政治上の演説等の利用(第40条)
     時事の事件の報道のための利用(第41条)
     裁判手続き等による複製(第42条)
     情報公開法による開示のための利用(第42条の2)
     放送事業者等による一時的固定(第44条)
     美術の著作物等の原作品の所有者による展示(第45条)
     公開の美術の著作物等の利用(第46条)
     美術の著作物等の展示に伴う複製(第47条)
     プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等(第47条の2)

  • 著作権の基本的な成り立ち、目的と権利範囲が明確化されていくまでの背景を紹介する本。

    まず基本となる著作権とその周辺権利の解説がとても分かりやすかった。
    そのうえで、文章や音楽、写真、劇や絵画など、それぞれの作品の成立特性による違いや考え方にも展開してます。

    ただの解説にとどまらず、おもしろいのは時代の変化によって出てきた課題や、著作権の根幹にある「創造性」とは何か?という議論に及んでいる点。

    例えば、著作物が容易にコピーできる時代になってきているが、コピーの技術提供者と実際にコピーを作成する実行者が別の場合、著作権侵害の実行者は誰になるのか?
    法の運用上、責任を負わせるべき「加害者」の定義も必要なのだろう。だけど技術提供者と実行者が分離することで、責任の所在はわかりづらくなっている。

    作品の創造性がどこに表れるのか、芸術論にも関わる領域に触れ、著作権の本来の目的であるクリエイティビティの保護にまで論は及んでいます。
    平易な言葉で書かれているのに、奥深い内容でした。

  • 「文化の創造とアクセス」という視座。

  • 「著作権とは、オリジナルな表現を守ることによって、新しい芸術文化が生まれれつづけることができるのではないか、ということを立証するための壮大な社会実験なのである」
    この考え方が面白く、解説の仕方も非常に上手いので難なく読破。著作権というと固いイメージで難しそうだが、この本を読めば著作権とは何なのか、ざっくりと、しかし確かに納得して理解することができる。
    入門にはとてもよい教科書である。

  • ついでに積読のもう一冊。プリマ-ではないので内容はややソリッドだが,だいたい同じ感じ。2冊読むと著者の頭の良さが伝わってくる気がします。

  • 116著作権とは何か
    ・著作権に関する考え方の全体像に言及する本。非常に面白い

    著作権の存在理由は、文化芸術活動が活発に行われるようにするため

    ・著作権(中身、情報)と所有権(有体物、もの)の違い
    ・知的財産権:1著作権(著作者の権利、著作隣接権)2産業財産権3上記以外
    ・著作物:思想又は感情を創作的に表現したもので、文学美術等の範囲内のもの
    @cpa_1992
    ・事実やデータは著作物ではない←思想の創作的表現でない
    ・アイディア自由の原則
    ・アイディア:抽象、テーマ、枠組み
    ・表現:具体、詳細なストーリー
    ・パスティーシュ:作風の模倣

    盗作論争
    1依拠性:原作を見る
    2模倣性:原作を真似る
    @cpa_1992
    ・引用の2要件
    1明瞭区別性
    2主従関係
    @cpa_1992
    >アイディア自由の原則
    1作品を観察
    2具体(個々の表現)に分解
    3抽象(着想、大元のアイディア)に統合
    4そのアイディアを異なる表現として展開

    という流れが有効なのでは?
    @cpa_1992
    例えば、JRの広告
    「そこに雪はあるか」
    「全部雪のせいだ」
    ↑この表現が、少年マンガに出てきそうなセリフというアイディアをもとに展開されていると考える


    その着想を利用して、
    「この雪は絶対譲れない」
    という広告を考える

    という流れ

全59件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

弁護士・ニューヨーク州弁護士。1991年東京大学法学部卒業。1993年弁護士登録(第二東京弁護士会)。骨董通り法律事務所代表パートナー、日本大学芸術学部客員教授、国会図書館審議会・文化庁などの委員、「本の未来基金」理事、think C世話人、東京芸術大学兼任講師などを務める。著書に『18歳の著作権入門』(ちくまプリマー新書)、『著作権とは何か』『著作権の世紀』(集英社新書)など多数。
http://www.kottolaw.com/
Twitter: @fukuikensaku

「2016年 『インディーズの護身術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

福井健策の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×