宝石商リチャード氏の謎鑑定 邂逅の珊瑚 (集英社オレンジ文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086802666

作品紹介・あらすじ

滞在していたスリランカでの戒厳令発令をうけ、日本に一時帰国することになった見習い宝石商の中田正義だが、
帰国前にある人物からのメールを受け取っていた。
メールの差出人は、連絡が取れずにいたヴィンセント。文面は「話をしましょう」。
戒厳令下の慌ただしい中でやりとりをすると、それはヴィンセントのアカウントを乗っ取った別人からのメッセージだった。
その人物の要望もあり、正義は日本滞在もそこそこに、ヴィンセントに会うために香港へと飛んだ。
かつてリチャードを裏切っていたはずなのに、なぜか正義を助けてくれるヴィンセントの真意とは?
そして、リチャードと再会した正義が思うこととは……?

大好評ジュエルミステリー第9弾!

感想・レビュー・書評

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  • 今回はシャウルさんの宗教のお話が印象的でした。

    あなたの知らない美は、未だこの世界のいたるところに溢れ、あなたに見出されるのを待っている。

    スリランカ、日本、アメリカ、香港と飛び回り、真相に辿り着くために行動する正義。

    リチャードともスリランカで再会。
    そしてオクタヴィアが引きこもりをやめてスリランカに向かっている。果たして和解はできるのでしょうか。

  • 宗教感や、リチャード周りの過去が明らかにされ、リチャードの過去の清算が少しずつされてきている途中。
    正義は、どんどん身軽に世界を飛び回ってるな。
    正義とリチャードの恋愛?友情?どいなりたいのか。

  • これが私の強めの幻覚なのかそうでないのかはっきりしないんだけど、というのは原作読む限り「もしかしてそうなんじゃ?」と思えてならないんだけどそもそも私がそういう目で見ているからそんなふうに考えてしまうんじゃないかというのが前提としてありまして、いやそのつまり、

    リチャードって正義くんのこと好きなんじゃないか?

    と思うのです。
    いやちょっとまって!! 好きなのはわかってる。リチャードにとっての「友人」は、夫婦間パートナー間に生じる気持ちとほぼほぼイコールであることも、だから正義くんのことを「友人」と呼ぶのはそういう、特別な意味での好きであると告白しているも同然(本人に自覚があるかはさておき)だと思うので、だからリチャードが正義くんのことを好きなのはすでにわかってる。

    その、正義くんがリチャードに告白して、リチャードがそれを自分のためを思って言ってくれたことだと理解して断った場面、あれがあの、あれなのよ。

    正義くんの告白を断る理由、突き詰めれば「あなたは私のことを 恋人にしたい という意味で好きなわけではないでしょう」だと思ったんですよ。
    もちろんリチャードも、正義くんが自分を好きなことをわかってる。だから彼が告白してきても「そう来ると思いました」みたいなリアクション。大事に思われていることは分かってる。

    リチャードは一番最初の「友人」であるデボラさんと結婚しようとして、それは彼女の傍に一生いたかったから。で、今は正義くんに対しても同じことを思っているはず。デボラさんとの再婚が現実的ではなくなったのは正義くんの存在が非常に大きいと思う。

    でもリチャードは正義くんに付き合ってくれとは言わないし、結婚も申し込まないし、正義くんから告白されてもどさくさで受け取ったりはしない。

    それはリチャードなりの「中田正義を大事にする」ということなんだと思う。いやもうリチャ氏はいっつもそう。

    正義くんが恋愛感情をもって告白してきたら受けたと思う。でもそうじゃないことは聡いリチャードなので分かってる。自分が一番正義くんの幸せを願っていることも、そのために誰よりも尽くせることもわかってる。だけどその提案が恋愛感情に基づいていないなら、交際という手段はとらない。もし付き合ったあと、正義くんに好きな人ができてしまったら? というのもそうだし、デボラさんの例もある。付き合わなくても傍にいられるのなら、わざわざ交際という形をとらなくてもいい。
    だからたぶん、リチャード自身のことも大事にしている結果なんだと思う。リチャード、自分の再婚の可能性について正義くんが取り乱さなかったら自分が取り乱してたってあれ、ほんと、ウウーッ!!!! ジェフがデボラさんのことを確認したときにちょっと怒ったふうだったのもほんと、ウウーッ!!!!

    正義くんが「リチャードを大事にしたいけど、どうやったら一番大切にできるのか考えてる。考えるのに飽きなかったらどうすればいい?」ってのに「考えるのに飽きなかったら2人で考えましょう」と返したやつ、あれが、あれがな、私にはな、年上が年下の可能性の芽を潰さないように見守るあれにしか見えなくってな、つまりその、リチャードには正義くんと寄り添う準備はもうできているんじゃないかな、あとは全部正義くん次第なんじゃないかなと思えてならなかったのだよ。だって8歳差なんだものな。

    ちょっともう胸がいっぱいだ。正義くん、正義くんだってリチャードのこと好きだと思う。いや好きなのはわかってんだけど!
    彼を邪魔しているのは「俺とリチャードが付き合うことで得するのは俺ばっかりだ」という気持ちだと思う。人工呼吸をし合うような間柄が理想だけど、自分ばっかり寄りかかってるような気持ちでいるんだと思う。
    だからリチャードと自分が付き合うことでリチャード側のメリットが発生するかもと思いついた途端「じゃあ告白するか」の流れになったんじゃないかと思う。でも正義くん、正義くんが思っている以上にリチャードには君が必要だし、でっかい存在だし、もう、ウッウッウッ……

    最初は2人がお互いを大事にしようとして空回りしていた感があったけれど、最近は大事だからこそ手探りでちょうどいい形を見つけようとしているようで、ほんと、いい着地点が見つかるといい。正直とてもものすごく付き合ってくれと何万回思ったか分からないけれど、2人がお互いを思いのまま大事にできる、そんな着地点が見つかるといいと思う。

    次巻が待たれる…! ファンブックもアニメも楽しみ。

  • 今回の物語の舞台は、香港!
    といっても、第二部が開始した頃から、各国各地域を回っているので、香港に止まらないのだが。
    世界を飛び回る、それは甘い憧れだが言葉の壁、文化の壁という中で決して見た目よりも甘くはないことも知る。
    だが、正義がぶつかったのは、日本だ。
    彼の母国。彼が育った国。故郷。
    日本人なら気づいているだろう、自分が生まれ育った国が、和を持って尊しと言いながらその和から外れるものには容赦しない国であることを。
    それでも、そこに自分の根がある。
    どこの国も内実は変わらない。

    そこまで行かなくても、日々の暮らしの中で、私たちはぶつかる。
    その時に、こんな言葉と出会えたら。
    「あなたの胸に輝く宝石の存在は、あなたが知っていればいいと。」(41頁)

    それから、リチャードと正義の間にも友情、愛情、尊敬、思慕、そんな複雑な感情を互いに相手に伝えるようになる。また、正義の淡い恋心の相手、谷本さんに対する思いの清算も。
    男女のエロスだけが愛ではない。
    けれども、アガペーと言われるとそれもまた違うような。
    触れたいと願うのは、体だけではなくて、あなたの心なんだ、そんなこともあるが、それは変なことじゃないでしょう?
    愛はグラデーション。
    美しい宝石の物語は、心という見えない宝物に姿を変え、語り続ける。
    次巻、物語は佳境へ!!

  • リチャードとヴィンスの間に昔何があったのか分かる1冊。
    きっと正義と一緒でヴィンスもリチャードの事が大好きだったのに遺言騒動のせいでヴィンスとの関係にヒビが入ってしまったのは本当に残念。
    正義の保護?を依頼されて来たシャウル師匠とのお茶のシーンは、とてもとても心に響く。美しい物を美しいと思う教…なんて素敵な心構え。
    自分もそういう気持ちは大事にしたい。
    リチャードの登場は少ないなぁと思っていたら最後の最後でぶち込まれる爆弾展開。
    もうリチャードと正義の相思相愛っぷりがスゴすぎる…
    早く次の巻が読みたい!

  • 宝石商シリーズ第9弾。謎多きスパイのヴィンスの過去と珊瑚について。
    オクタヴィアの話は薄め。

    スリランカの暴動にショックを受ける正義。
    治安悪化により、日本へ一時帰国することに。
    海外生活を経て日本に戻ると、そこには何もなかったかのような日常があり、自身の体験を共有できる人が少ないことに気づく正義。
    同級生は企業人として慣れない社会人生活を送り、海外でのびのびしている(ように見える)正義にやっかみの感情を向ける。
    養父が海外生活に理解がある人でよかったね。

    マリアンから情報をもらい、ヴィンスのいる香港へ向かう。
    香港は行った事ないけど、香港は関税がかからないから、宝石が集まる街だとテレビで言ってたな。
    ヴィンスが語るリチャードの人物像が腑に落ちない正義。ヴィンスは、リチャードは正義に会って変わったという。
    ヴィンスは劣等感や家族の問題でリチャードに与えることができなかったが、正義は自然とやってのけた。リチャードになんの含みもなく優しく接する「友達」みたいな感じ。
    正義は自分がリチャードに影響を与えた自覚はまるでないけれど、それこそが才能。運命の出会いというんだろうなぁ。


    裏表紙に「この世界にはさまざまな愛が溢れている。」とあるけど、まさにこの巻は愛の形についてがテーマだったように思う。
    ヴィンスのマリアンへのわかりにくい愛の示し方。
    石は好きだが性愛について食指が動かない谷本さん。
    リチャードを大切だと思う気持ちが、何に該当するか確信が持てない正義。
    元婚約者が離婚したと聞いたリチャードは、未練はあるが、過去の記憶と現在まで手に入れたものを手放す喪失との間で揺れる。
    単純ではない人間の感情と理性の混じった何かが、行動パターンを複雑にしている。

    グローバルな国籍と肩書と経歴の持ち主達が愛の形についてぐちゃぐちゃと悩んだり、覚悟したり、行動してみたりと、いろんな事をしているので、世界どころか家からも出ていないこの狭い環境の中だけど、世界を股にかけたような気になる。

  • ヴィンスくんとシャウルさんのお話がメイン。谷本さんも元気そうでよかった。

  • シリーズの中で1番好きになったかも。
    リチャードの登場は多くはないけれど、その存在をどのページにも感じてしまう書。
    シャウルさんのような人と学生時代に出会えていたら、もっと違った人生になったかもなぁ、と思ってやまない。

  • ヴィンス、シャウル、それぞれの過去の話が語られる。正義はアメリカ、香港、日本…と飛び回る。今回もめんどくさい2人だなと思った(笑)

  • 前と次の繋ぎのお話のようだね

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著者プロフィール

9月24日生まれ。神奈川県出身。『時泥棒と椿姫の夢』で2014年度ロマン賞を受賞。受賞作を改題・加筆改稿した『螺旋時空のラビリンス』で文庫デビュー。

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