マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年 (集英社オレンジ文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086801768

作品紹介・あらすじ

海洋人工都市キヴィタス。アンドロイド管理官である若きエリートのエルガーは、登録情報のない“野良アンドロイド"の少年を拾う。記憶を失った彼の過去を探るうち、都市の重大な秘密に巻き込まれて…?

感想・レビュー・書評

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  • 913-T
    文庫

  • 野良アンドロイドと人造人間が出会って同居して友好的な関係を育み、野良アンドロイドの元の持ち主(アンドロイドの虐待、都市の犯罪者)から野良アンドロイドを助けてついでに都市も助ける話(犯罪者なので、虐待から助けたつもりが犯罪の証拠も掴む)

    SFでした。SF。オチも仲良くなってめでたし、ということでした。さらり、さくっとしたSF。

  • シリーズ初巻


    これはまた、リチャード〜シリーズとはうってかわって、
    ゴリゴリのSFもの。

    高性能野良アンドロイドと、人間感情に乏しい調律師の
    お話。


    あれよあれよと、過激になっていく後半のストーリーは
    圧巻。

  • 宝石商リチャード氏の謎鑑定の著者の最新作。
    未来の人口都市・・・
    読み始めのあたりでは、長野まゆみさんのテレビジョン・シティを
    連想してしまいました。
    読後数日間、切なさを引きずった作品だったので、
    裏表紙に書かれた「せめて血の色くらいは赤がよかったな」
    というセリフで嫌な予感バリバリ。
    ハイスペック幼児で天才馬鹿なエルとアンドロイドなのに
    人間以上に人間らしい二人の噛み合わない会話がいい。
    後半で、いきなり走り出す物語に、久しぶりの心臓バクバク!
    ベタで王道と言えば、その通りなんだけど
    その持って行き方が好き。
    これはうまく誘導されてしまったなぁ~
    楽しく読めました。
    ただ、表紙絵は、どうにかならなかったのかしら?

  • 作者さん、SFが好きなんだなあ、とそんな風に感じる。作り込まれた設定もそうだが、終盤に出てくる「メモリーダビング端末」なんてガジェットに強くそれを感じる。

  • 人間らしさとは、を究極までに問い質している物語。

    この中で一番人間らしいのは実はアンドロイドのワンで、一番人間の倫理から外れているのが唯一の人間、というのがなんとも皮肉。
    ただ機械が一律同じものを作り続けられるか、と言われるとある一定の確率で必ず「不良品」は見つかるし、それは実は人間も一緒で、それを「不良品」として排除するか、「進化」として受け入れるかもまた、社会の在り方によるんだな、と考えさせられる。

    最初はエルはワンの言うようにエリートだけに人間性の壊れた人物だと思ってたのが、大量生産で生まれ不良品を排除し続けた結果残った人造人間、という背景が凄まじいと思った。同じ遺伝子、同じ環境で育てられても、排除されていく個体があると、その個自身を決定するものはなんだろう?と考えてしまう。
    エルが如何に最小限の被害で自分の最大の目的を遂行していくか、感情のままに行動しながらめっちゃ冷静にテキパキ物事を進めていくところが「静かにキレてる」感があって面白かった。
    最小限であっても何かを誰かも傷つけても、自分以外の存在を助けたい、命令を受けなくても自ら実行していくその姿勢は、まさに人間の思考そのものだと思うので。その領域に達していれば、もう人造人間でもアンドロイドでもいいのではないかと。ワンもそうだし。
    欲望に忠実、こそが人間を人間たらしめ、進化を促してきたことなのだろうな。

    物理的に肉体は機械を使って不老不死にすることは可能だけど、精神を不老不死にすることは可能だろうか?
    痴呆というのはいずれ向かう死についての逃避、という見方もあるというので、人はいつか死ぬし、その思考についてはAIが引き継いでいく未来もあるのかな、と思う。

    あと人造人間が金色の血、てどうやって着色してるんだろう、とか(笑)人間の血が赤いのは鉄を含んでいるからだし、肌の色が違っても血の色が変わらない以上、肌の色を変えることは可能だけど、血の色はどうやって変えるのかなーとか素朴な疑問。ちなみにタコやイカは銅が含まれているから血が青いというし、ホヤに至ってはバナジウムが含まれているから緑の血だということなので。どうでもいい疑問でした。

  • 「お前も俺も同じ地獄の釜の住人だ。お前だけ天国にいるようなふりをしなくてもいい。俺にはお前の苦労はわかんねーし、お前にも俺のあれこれはわかんねーだろうが、まあ、そんなもんだろ」
    (P.130)

  • すごく良かった…!! 2人のやりとりが可愛かった。近未来SFものとしても、世界観にスッと入れたし説得力があった。ラスト近辺はちょっとごちゃついたかなという印象。続刊があったらいいのにな!
    アンドロイドのワンの方が感情表現豊かで、人間のエルの方がそういう出力が不得手なのもちぐはぐで可愛かった。エルが、ワンとの交流で自分の心に生まれた新しい気持ちを手探りで知ろうとするような感じがよかった。ワンのこと好きなのは分かってるのに恋愛に結びつけて考えていないところもかわいい。にぶちん。ハイスペック幼児言い得て妙すぎて笑った。ワンの方がとっくに気づいているな〜これは…と途中で思ってにこにこした。常とは違う欲求や感情をバグだと思っていそうだエルは…無自覚だからこそ突拍子もない爆弾発言をするのだろな。かわいいな〜!

  • 知らない言葉や言い回しが多かったけど、調べながら読むと内容理解も深まって楽しかった!
    エルの空虚な疑問がワンによって素晴らしいものに変わっていく様子もすごくよかったな。
    裏表紙にある、「せめて血の色くらいは赤がよかったな」というセリフ。
    正直ありきたりだなとか思いながら読んでたけど、その分が登場した瞬間の感動がやばかった!
    続き出たらいいのになぁ…

  • 19:世界情勢やキヴィタスの設定には首を傾げる部分もありましたが、本題の、エルとワンのお互いを見つめる眼差し、互いを想い合う心をオープンにしてゆくさまはすごく良かった。
    「ハイスペック幼児」エルの真面目さが一回転してコメディになる部分や、ワンの饒舌な役者ぶりがうまく噛み合って、読み進めるほどにキャラクターに愛着が出てきます。「天使のような味」「背骨を持ってかれそう」なんかのエルの(夢見がちな)比喩が好き……。
    実際のところ、ヒトに似(せ)たアンドロイドに対してヒトが優越感を抱くかどうかはさておき、ロマンチックですてきな「未来のピノッキオ」でした。

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著者プロフィール

9月24日生まれ。神奈川県出身。『時泥棒と椿姫の夢』で2014年度ロマン賞を受賞。受賞作を改題・加筆改稿した『螺旋時空のラビリンス』で文庫デビュー。

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