ひつじが丘

著者 :
  • 主婦の友社
3.00
  • (0)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 9
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784079097628

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【ひつじが丘】 三浦綾子さん

    牧師の家に生まれた美しい娘、広野奈緒実

    彼女は父母の反対を押し切って、友だち杉原京子の兄
    良一と結婚した。


    気取らず、何でも思ったことを口にし、
    自由奔放な彼の純真さに惹かれたのだ。

    良一の第一印象に不安を感じていた父の耕介は
    「愛することは、相手を生かすことだ」
    そして、「愛することは、ゆるし続けることだ」
    と彼女に伝え、奈緒実に「彼をゆるし続ける事が
    出来るかね。」とたずね、母の愛子も「彼は
    結婚しても、女性のことで奈緒実に苦労をかける
    気がする」と伝えた。

    その時、奈緒実は憤慨し、札幌の家を飛び出し
    函館に行く良一に随行たのだった。


    良一は、絵を描くことが好きで、いずれは
    「絵」で生活をしようと思っていた。

    そして、自分の感性を磨く為には、どんなコトも
    厭わないという考えでもあった。

    結婚生活は、夢に描いていたものとはかけ離れていた。

    良一は酒にも女にもだらしのない男であった。

    気取らず、自由奔放な性格というのも
    実はただの我がままであった。

    しかも、酒や女は「絵」を描くために必要なことだと
    良一は考えており、改める気配もなかった。

    父母の反対を押し切り教会を飛び出した奈緒実には
    帰るべき家はなかった。

    しかし、良一のあまりの酷さに、ついには函館を後にし
    札幌の教会へ向かった。

    教会に着いたときは夜中であった。。


    2年ぶりの教会。
    おそるおそるドアに手をかけてみると、鍵がかかっていない。

    父母は奈緒実がいつ帰ってきても困らないように
    夜中でも鍵をかけないでいたのだった。

    父母の愛の深さに奈緒実が自分がいかに
    思い上がっていたかを痛感した。

    翌朝、良一が教会へ迎えに来たが、奈緒実は
    良一の元へ帰る気は全くなかった。

    肺病を患っていた良一は教会で吐血し、耕介と
    愛子によって看病される。。

    耕介と愛子に触れることにより、良一の心に
    変化がおきてゆく。。

    そして、過去の自分を悔いるようになり
    自分自身の存在というものに、ゆるしを乞うように
    なってきた。

    そして、奈緒実にプレゼントするための「絵」を
    書き始めた。

    ある日良一は、彼が過去に遊んだ女とキッパリと別れるため、
    そして許しを請うために、彼女の元を訪れ
    睡眠薬を盛られて、教会への帰宅途中に凍死してしまう。

    良一が生前書き残した、奈緒実への「絵」は
    キリストの足元でゆるしを乞う良一の姿であった。

    この絵を見て奈緒実は初めて、彼の悔恨と信仰心を
    知ることが出来た。



    奈緒実と良一と京子、そして女子高時代の教師であり、
    良一の友人でもある竹原。

    女子高時代に京子に辛く当たっていた、財閥の娘、輝子。

    良一と竹原。。
    二人の男性への想いが天秤のように左右に振れる
    奈緒実の心。。

    友人の妻への想いを捨てきれない竹原。


    人間というものは、かくも移ろいやすく、しかも、
    御しがたい感情が心の中に存在しているもの
    なのである。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三浦綾子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×