最後の講義 完全版 上野千鶴子 これからの時代を生きるあなたへ安心して弱者になれる社会をつくりたい
- 主婦の友社 (2022年2月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784074494095
作品紹介・あらすじ
「あなたは人生最後の日に何を語りますか」という問いに答えて各界の著名人が1度きりの特別講義をしてくれるNHKの人気番組「最後の講義」。本書は社会学者の上野千鶴子さんのテレビでは放送されなかった未放映部分を含む完全版をお届けします。上野さんの研究、実は「主婦」から始まりました。家事が不払い労働であること、家事、育児、介護、看護がすべて一人の女性の負担になっていること。お嫁さんがやっていた介護が仕事になっていったことなど、ずっと女性の幸せのために研究してこられた上野さんの女性学・ジェンダー学の問題点も歴史もわかります。時代の先頭を走り続け、私たちの生きやすい社会を作ってくれた先輩からのエールに胸が熱くなること間違いありません!
感想・レビュー・書評
-
何気なく手に取った本だったけど、面白かった!
有名な東大入学式の祝辞には、カットされていた続きがあったとは。
「弱者が弱者でいられる社会」は、みんなにとって生きやすい社会なのだと思う。
なんでこんな世の中に…と最近よく思うけれど、こんな世の中にしてしまった一因は大人である自分にもあるのかと思うと、同じく「ごめんなさい」となってしまう。
大きなことは出来そうにないけど、身近なところからでも小さな変化を作っていけたらいいなと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
-
認知症になるのは自己責任なのか…上野千鶴子が「認知症予防という言葉は大嫌い」と訴えるワケ 「予防しなかったあなたが悪い」と言われる社会は最悪...認知症になるのは自己責任なのか…上野千鶴子が「認知症予防という言葉は大嫌い」と訴えるワケ 「予防しなかったあなたが悪い」と言われる社会は最悪 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
https://president.jp/articles/-/585282022/06/16 -
母は不幸な主婦だった。上野千鶴子が「最後の講義」で語った原体験 『最後の講義完全版 上野千鶴子 これからの時代を生きるあなたへ』 | BOO...母は不幸な主婦だった。上野千鶴子が「最後の講義」で語った原体験 『最後の講義完全版 上野千鶴子 これからの時代を生きるあなたへ』 | BOOKウォッチ
https://books.j-cast.com/topics/2022/03/15017516.html2023/01/20
-
-
「こんな世の中にして
ごめんなさいと
言わなくてすむ社会を
手渡したい」
姫野カオルコ「彼女は頭が悪いから」を世の中に知らしめた上野千鶴子さんの東京大学入学式の祝辞が有名だ。
その中で「あなたの恵まれた環境と能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください」とある。
上野千鶴子さんはこの本でも、これまでも
「フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です」と言い続けている。
フェミニズムというと、女性を敬えよ、という考えと受け取る人もいるかもしれない。たぶん、上野さんが言いたいのはそれだけじゃない。
もっとお互いをわかり合おう。認め合おう。幼い子供からお年寄りからみんなの事をお互いに気遣い合おうよ。なんて言う言い方じゃぬるいかもしれないけど、そう感じた。
年をとって、色々な機能が弱くなってくる。それは、誰にも訪れる。いつかみんな中途障害者になる。ケアは専業主婦に押しつける仕事じゃない。社会の構造として受け止めるべきでは?と。
「アラフォーって、自分の時間とエネルギーに限りがある事に気づく。やりたい事に優先順位をつけなきゃいけない。」というセリフに、蛍光ペンを5往復ぐらいしたいぐらいだった。
どんな年代でも、女性は取り入れた方が自分が楽になれる考え方がたくさん書かれている。もちろん、男性が読んでもいろいろ考えることはあると思う。
私でも感じるぐらい、時代は変わってきてると思う。それは、きちんと声を上げてくれた先陣がいるからだ。こんな世の中にしてごめんなさい。と、若い人を見ていて思うことも確かにある。まだ、私にもできることあるかな、と勇気が出た。 -
80年代から女性学を研究しており「マルクス主義フェミニスト」を名乗る、上野千鶴子。現在はケアの研究をしているという。ケアとはつまり、家事、育児、介護や看護である。昔からそういったことは家庭内の女性が担ってきた。
現代の女性は、家庭の負担はそのまま、外に出て働くことも求められる。家庭をもつ男性は、家事や育児を「手伝う」のではなく「する」のが当たり前。もっと当事者意識をもつべきだと思う。
女性の地位の向上に人生を費やしてきた上野千鶴子のような女性たちの積み上げてきたものを、わたしたちの世代が引き継ぎ、女性がより生きやすい社会をつくっていかなければいけない。
上野千鶴子のような賢さもなければ、起業精神もないわたしは、選挙で、女性のことを考えてくれる候補者に一票を投じ続けるしかない。
まずは身近にいる男性にすすめたい一冊。
p54
19世紀という時代は、世界史的に見て人口が爆発的に増えた時代です。女性が一生涯に産む子どもの数が、平均して5人、9人、10人産む女性もいました。今はもうそんな時代ではありません。生涯にひとりかふたり、やっとの思いで産んで、育て上げるという時代です。
人口の再生産について考えないですんだのは、マルクスの生きた時代のおかげです。マルクスも、やはり時代の制約を受けたひとでしたし、今から思えばマルクス主義とは19世紀が生んだ思想だったといえます。
p103
ネオリベ政治家は保守政治家と違って、口が裂けても「女よ、家庭へ帰れ」とはいいません。女に働いてもらいたい。子どもも産んでもらいたい。ただし、自分たちにつごうのいい働き方をしてもらいたい、というのがネオリベ政治家です。
ネオリベラリズム 新自由主義。経済活動主義。経済活動(市場)への政府の介入の最小化、自由競争を重んじる考え方。小さな政府、民営化、規制緩和といった政策を目指す経済思想のこと。
p112
日本と似ていて極端に出生率が低いのは韓国です。韓国の社会構造は日本とよく似ていますし、男女賃金格差も日本より大きいです。
p118
海外で「日本の女の地位はなぜこんなに低いのか」を説明する際に、こういう表現をするとよく理解してもらえます。
「日本では、ジェンダーが、他の社会における人種や階級の機能的等価物として作用しています」と。
機能的等価物 同一機能を果たすものという意味。
p130
ノブレス・オブリージュ フランス語でノブレスは「貴族」、オブリージュは「義務を負わせる」。「社会的地位を有するものは、それに応じて果たさなければならない社会的責任と義務がある」という欧米社会における道徳観。
p134
フェミニズムは弱者が強者になりたいという思想ではありません。弱者になっても安心できる社会をつくることが、わたしたちの目的です。
p174
産後のうらみが一生もんだっていうことは、若いひとたちにいっておいたほうがいいです。私の周囲で若いカップルが「結婚します」っていってきたら、夫のほうに必ずいうせりふがあります。子どもが生まれたとき、産後ピリピリしているっていうだけじゃなくて、これまで見たこともない新生児を目の前にして夜中も眠れないほどテンパって、妻が追い詰められているときに、「私を助けてくれなかったあなたを一生許さない」となるよ、と。わたしは若いカップルの男のほうには、「子どもが生まれたあとのあなたのふるまいが一生、尾を引くからね、気をつけや」っていっています。 -
読了。下記を読んで、強い人だと思った。「祈ることを自分に禁じた代わりに、この世のことはこの世で解決しよう、この世で解決できる問題は、ひとの力で解決しよう、と思いました。」
-
最後の講義 完全版 上野千鶴子 これからの時代を生きるあなたへ安心して弱者になれる社会をつくりたい。上野 千鶴子先生の著書。女性ばかりが苦労して女性ばかりが虐げられて女性ばかりが自由に自分の意志で好きなように生きられないような社会があってはならない。いつでも女性の味方で弱者の味方であることを貫いている上野 千鶴子先生。日本のリーダーの中に上野 千鶴子先生のような方がたくさん増えれば安心して弱者になれる社会ができる。上野 千鶴子先生の女性学・ジェンダー研究・介護研究のお話はどこか楽しくて笑いの要素が入っているから上から目線で傲慢で偉そうなお話とは無縁で全くの別物。
-
実は有名になった東大のスピーチの内容も知らないのだけど
たまたま手に取る機会があり、さく読みし始めたら
ものすごくおもしろかった一冊。
フェミニズムに関する一つ一つの意見や考察が
とにかく突き刺さるように鋭い。そしてわかりやすい。
中でも、ケア(育児・保育・介護)に対する価値が
軽んじられているが故に対価が低いまたは無償なのだという話は
目から鱗のロジックで、本当にその通りだし、
オジサン社会の日本が改めなくてはならない部分だと痛感した。
他にも首をぶんぶん振りたくなる内容がたくさん。
そして、こういう強い(と言ったら怒られるか)女性が
構造上の問題だと諦めずに声をあげて
アクションし続けてくれることに心から感謝しないといけないね。
もう一つ、本筋とは少し外れるが、
「ケアとは非暴力の実践」であるという言葉、
育児中の自分にものすごく響いた。
そうか、自分の理性と戦いながらの実践なんだから
誰だってきっと簡単じゃないわけだよなと。
少し救われたような気分。 -
目から鱗。
時代は変わった。
自分の考え方も古い。
と思わされた本。
-
難しい内容かと思ったけど、TV番組の文字起こしなので、すごく読みやすかった。
注釈も細かくて、今の社会やフェミニズムについて学び始める導入になりそうだなと思いました。
上野先生のパワフルな言葉たちは、普段フェミニズムに興味がない人にこそ読んでほしい。
社会は少しずつ変わってきてる、そしてこれからも変えていかなきゃならない。弱者が弱者のままで尊重されるっていい言葉だな。 -
上野さんの講義部分は、理路整然としていて知識の注入量がすごかったです。中で一番気に入ったのは、市場が外部(自然、家族)から資源と構成員を取り込んで、さんざ利用後に、不要になったもの及び構成員を、同じ外部(自然、家族)に廃棄を行なっている図でした。
ひどい!
今まさに市場からチヤホヤされなくなってきた自分に重ねて、寒ーくなりました。