なぜ、はたらくのか―94歳・女性理容師の遺言

著者 :
  • 主婦の友社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784072746486

感想・レビュー・書評

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  • 世界で再び大きな戦争の続く昨今で、久しぶりに強く読みたくなりました。本書のメッセージは平和の大切さだと以前に読ませて頂いて感じたからでした。改めて読むとその大切な平和のために如何に働き者でいらっしゃったかということに溢れていると確認させていただきました。苦しい時代を生き抜いた方の多大な努力のメッセージに感謝します。

  • うるさいバァさんの説教がたまに聞きたくなるんだよね。
    そう。床屋に通うぐらいたまに。

    本というのは素晴らしい。

    そういうバァさんが身内にいなくても、そしてバァさんがもうこの世にいなくても、それに耳を傾けることが出来るのだから。


    本書「なぜ、はたらくのか - 94歳・女性理容師の遺言」は、理容師という平凡な仕事を、50年間文字通り死ぬまで続けて来た著者の超凡なる箴言。

    内容紹介
    東京・新橋駅のガード下、わずか6坪の理髪店がある。「バーバーホマレ」。1953年の開店以来、ハサミを握り続けた一人の女性・理容師がいた。彼女はこの店の2階で暮らし、女手ひとつで娘2人を育てた。多くのお客様に支えられ、人さまのため、家族のためにと働き続けてきた。15歳で理容師修行を始めてから94歳で亡くなるまで。「東京が2回も焼け野原になる姿を見たんだよ」。関東大震災、東京大空襲。死体が転がる中を、命からがら逃げ続けた。「あのことが、人生でいちばん辛かった」。夫を事故で亡くした。娘を病気で亡くした。それでも、「待ってくれる人がいるから」とハサミを置くことはなかった。
    年長者の説教のほとんどを「老害」の二文字でスルーする私も、こういうバァさんの説教であれば耳を傾ける。その一言一言が、手で裏付けられているからだ。なぜかはわからないが、その言葉を紡ぐのに首から上しか使っていないのか、それとも全身で紡いだのかは、著者の享年の半分にも満たない人生しか歩んでいない私のような若輩者でも気づかずにはいられない。

    世の中がよくなっていくことの欠点の一つは、そうした体験を得る場が見つけづらくなることかも知れない。関東大震災と第二次世界大戦を生き抜き、戦地から生還した夫がその年に交通事故で亡くなり、娘二人を女手一つで育て上げという人生は、1969年生まれの私はおろか、著者の娘達の年齢であっても得難い体験であるが、著者の年代であればさほど珍しいことではなかったのだ。

    かといって日本中全てがそうだったわけではない。私の父方の祖父母はほぼ著者と同年代であるが、著者のような体験を持たない。大地主だった先祖の田畑を売ってぬくぬくと生活していたことと、私の代にはほぼ食いつぶし終わっていたことは幼少の私にもわかった。そんなわけで私にはたまに説教を聞きたくなるようなバァさんは身内にはいない。戦後65年の今となってはいない人の方が多数だろう。

    しかし本書をひも解けば、著者の説教にいつでも耳を傾けることができるのだ。

    ありとあらゆる説教がそうであるように、本書も100%真に受けることはできない。著者と同じ人生は一つもない以上、著者が得た経験則がそのまま読者に通用するわけもない。しかし「端を楽にしてきた」人であれば、自分にしか使えない言葉はなるべく避けるものだ。それで端であるところの読者自身が楽になった言葉であれば、それはありがたく頂いておけばいい。

    P. 186
    命ある限り「昨日より今日の方がよかった」と言えるように生きていかなくては。
    それが、人として生まれた宿命ではないでしょうか。
    誰にも当てはまる、誰が言ってもおかしくない言葉だ。

    こういう言葉こそ、言い手を選ぶ。それにふさわしい人生を歩んで来た人でもなければ、歯が浮いてしまうだろう。

    たまに聞きたくなるような説教ができるジィさんに、

    こんな言葉が似合うジィさんに、

    私はなりたい。

  • 過酷な苦難を乗り越えてきたからこそ見えてきた生き方。その教えが現代の人にストレートに伝わるのは難しいが、教えは一貫して相手や物を想う愛。そして感謝だというのを感じる。時代は変わっても愛と感謝を持って大切に生きていけば、「なぜ、はたらくのか」の答えを自分で見つけられるんだと感じた本でした。

  • 働くとは「端を楽にすること」と。なるほどそういう考え方もあるのかと目から鱗だった。
    女性は土台石というような大正時代の女性がどういった躾をされていたのか垣間見た。時代錯誤な内容とも取れるが、女性が話されたことであるし、卑下されていたと言うよりは、土台石となって家族の下支えをしていた自負を感じられた。
    戦時中の話しは今のウクライナを彷彿とさせ、心が痛む。勝っても負けても犠牲者が出る戦争は絶対してはいけない。生き抜いてきた方だからこそ伝わる言葉の重さがあった。

  • 94歳まで働いた理容師の加藤さんの、なんで働くのかという問いや、普段の生き方までさまざまなためになる言葉が書かれていた。戦争や関東大震災の話も載っていて、とても苦しい時代を乗り越えたことがわかり、苦労を乗り越えた加藤さんだからこそのことばだと感じた。特に大事だと思った言葉は覚えて、心がけていきたい。

  • コロナで積読本消化中。手に職で食べ続けていくのが大変な時代になったと思っていたけれど、いつの時代も大変。毎日を丁寧に実直に生きていく人生を人にもそうしなさいと言う先輩がどんどん居なくなっていく。生々しい戦争体験を直接聞くことはもうできないと思うから、この本が今も絶版にならず、言葉として残ってくれていることは本当にうれしい。手元に置いておこう。

  • 昔はこういう話をしてくれるおばあちゃんっていっぱいいたような気がする。書籍化になっているということはそれだけ、今は珍しいんだろう。

  • 感謝
    世のため人のために働く
    節約→使うべきところに使い、そうでないところを抑える
    ケチ→どちらも抑える

  • はたらくということ。
    戦争のこと。
    時々読み返したい。

  • はたらくとは端を楽させる。
    関東大震災や戦争、そして現代を経験した女性であるからこそ
    現代のモノが豊かでヒトの心が豊かでないことを指摘する。

    昔は生きること、食べることなどそもそも全てのことが尊いことであった。そして働くことはこの女性にとっては娘、家族を守るために行っていた当たり前のことである。
    働くというのはすなわち自分のために、自分の成長のために本来行うのではない。

    自分を育ててくれた家族や、子供や周りの人のために働くのである。
    この女性は子供が小さい頃は子供のために働き、その後は周りの人のために働いた。
    理容師という仕事は決して最初から望んでいたものではないが、彼女には天職であり、天職と信じる必要がある。
    これは彼女以外のケースでもあるが違う選択を同じ状況ですることは難しいことからも、自分の道を如何に正当化するか。そこにモチベーションを見出すかが重要である。

    人間やりたいことは不変ではないし、やりたいことを仕事に出来る人は一握り(確率的に)であるため、やりたいことは仕事でなくてもいいし、仕事を正当化してやりたいことに繋げてしまうことも決して悪いことではないと感じる。

    もちろん今と状況が違うので全てに納得感があった訳ではなかったが、モノ、生き物への感謝や周りへの感謝、運、努力など忘れがちだが絶対に忘れてはいけないものについて改めて考えさせられた。

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