- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065333082
作品紹介・あらすじ
どこにでもある日常が、どうしてこんなに愛おしいんだろう。かけがえのない「今日」を描く、芥川賞・大江賞作家の最新作。夫婦と5歳の息子が暮らす築50年の大型マンションに、今日もささやかな事件が降りかかる――。日本に「住む」すべての人へ、エールを送るマンション小説!「しゅっ」「ぱーつ!」――5歳の息子コースケと僕たち夫婦は、今日も小さな冒険の旅に出る。子育てのため、郊外にある大規模マンション「Rグランハイツ」に引っ越してきた美春と恵示。管理組合の理事になった妻とリモートワークの夫は、築50年のマンションに集まり住む住人たちとともに、どこにでもあるけれど、かけがえのない日々を重ねていく。三本阪奈による漫画化原作、「舟」を併録。(アンソロジー『いろんな私が本当の私』原作・長嶋有、双葉社より11月22日刊行予定)
感想・レビュー・書評
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約二十年ぶりの長嶋有さんの小説。
これまでも「長嶋有読みたい」という発作に幾度か襲われつつも、いつのまにか忘れて読まずじまいだったけど、今回は図書館予約しておいたので、無事読めました。
R市にある「ジュラシックな」佇まいを持つ古いマンション。
主人公はそこに住む中年の夫婦と5歳の息子。
小説はその妻と夫の視点が交互に変わりながら進む。
妻はドラッグストアでアルバイトしながら、リモートワークの夫とともに息子のコースケを育てていた。
夫婦仲はお互いの努力もあり、なかなか良好そうに見え、息子もすくすくと育っている。
何気ない日常、と一言で言えば味気なく思えるのだが、その「何気なさ」の中に、不安や、喜びや、ままならなさ、を、みんなみんな飲み込んで、生活は続いていく。
読みながら私は、長嶋さんはこの小説で、何か繊細でかけがえのないものを読者に手渡そうとしてるのではないか、と、思った。
私などが言語化したら(出来ないんだけど)、立ちどころに壊れてしまいそうな何かを。
私は子どもを育てた経験がないので、5歳児の子育て小説としても新鮮で楽しかった。
子どもは面白いですね。
短編の『舟』も良かった。
声に出したくなる語呂合わせ「水兵リーベ、僕の舟」
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築50年のマンションに住む、夫婦と5歳の息子の日常。
何の音?AEDだと気づいたのは、消防車と救急車のサイレンが聞こえた後である。
6階から見下ろしていたけど、下の階へ降りて挨拶だけしたことのあるおばあさんに聞いたら飛び降りらしいと。
特に騒ぎ立ててる人もおらず、翌日も対して変わらず。
夫と交代で息子の送り迎えをして、管理組合の理事を最小限こなしている。
取り立てて、大きな事件はなく飛び降りは中年の鬱による自殺。
だけど住んでるところは、連続殺人事件があった現場に近いのかも…。
しかし、何も変わらず寝て明日を迎える。
あまりにも淡々とした日常。
しかし、これが普通にどこにあってもおかしくない日常かもしれない。
こんな時代あったかも、とかマンションはやはり管理組合や自治会もあって面倒だったなぁとか…を思い出した。
短編の「舟」は、憧れの先輩が口にしていた暗記法の「水兵リーべ、僕の舟」を思い出していた歯科矯正中の私が、久々に出会って瞬間に一日だけの恋に気づいた話。
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初読みの作者さん。中編と短編が一つずつ入っていた。ちょっとした日常に、ちょっとしたスパイス。自分の人生にはこのちょっとしたスパイスもあまり出てこないな。
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読み始めは、なんだかいつもの著者とはテイストが違うなと戸惑いつつ、最後はうまく着地した。
battery lowのアナウンス、ビートルズのCome Together、いずれも英語と絡めた表現が笑えた。
「舟」は読んでから、これもなんか違う?と思っていたら、漫画の原作として書かれたものだったのね。
元素記号が妙に新鮮に感じられたのが悲しい年齢(笑) -
男の子をもつ父と母。特に何にも事件があるわけじゃなく(あっても完全なる傍観者)、悩みや困難や痛みがあるわけじゃなく(あっても日々の雑事)、将来への希望や不安があるわけじゃなく(あってもやっぱり日々の雑事)、つまり、どこにでもある日常の生活の繰り返しをただ切り取って描いているだけなのに、
長嶋先生の手にかかると小説になる。
ほのぼのとも違うし、まったり、という言葉とも一味違う。この大きなマンションの隣ではなく違う棟に私も住んで時々これからもこのご家族と世間話をしたい気になる。
「あらぁコースケちゃん、今度小学校なのね〜」
『舟』こちらも普通の女子高生の何でもない日常。
なのに、この短編小説も長嶋先生らしさに満たされている。言葉の選び方やつまらない(?)面白さをみつけるのが絶妙!
図らずも自分自身の高校生時代に逆戻りして、友人の日記帳を見ちゃた感じ。そこに世代間のジェネレーションは感じるが(笑)
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大きな出来事はないけれど、文体の心地よさに引っ張られてスイスイと読んだ。
恐ろしさと愛おしさが入り混じった読後感は、私が胸の底で実際に自分の「トゥデイズ」に対して感じているものなのかも。 -
子育て中のなんでもない毎日。
プチトマトのくだりが非常に共感できた。 -
レイバン風サングラス男性が放った悪意、自分もギョッとすることが多く印象的だった。
「われわれ善良な市民からしたらー」という主語の雑さ。
しかしそういう人が社会を秩序立てている一面もあるという。
男性が投げつけた電子タバコのカートリッジ(?)を回収しに行く、そのささやかな行動に主人公の意思の表明を見た。
大人のミロ、おしりたんていなど小説では長嶋作品でしか見かけなさそうな固有名詞が今回も楽しい。 -
全然頭に入ってこないくらい、意味があまり分からなかった泣
というよりも、面白くないに近いかもしれない。。。