能力はどのように遺伝するのか 「生まれつき」と「努力」のあいだ (ブルーバックス)
- 講談社 (2023年6月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065324059
作品紹介・あらすじ
能力は遺伝するのか。そもそも「能力」とは何か。そして「遺伝」とは何だろうか。実はわからないことだらけの領域を第一人者が解説!
感想・レビュー・書評
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とても興味深い内容だったが、文系人間には結構難しかった。
遺伝の研究は双子による臨床研究が知られているが、一卵性と二卵性による遺伝の確率の違いがきちんと数値で表れていることに驚いた。
能力…というのはただ頭がいい、というだけでなく、集中力や継続力なども含めてのものであるというのは、ちゃんと考えたことがなかったが、ごもっともなことだと理解できた。
残念ながら、netgalleyでは多くのグラフや統計は伏せられていたので、理解が深まらない部分も多かった。
netgalley7.30詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
遺伝子の不都合な真実・・・・・・
遺伝子学の専門家による『遺伝子って、ぶっちゃけ人生にどれくらい影響しているの?』を明らかにしてくれる一冊。
正直、専門用語の連発や、多用されている図も何を言いたいのか分かりにくいものが多く、専門外の者には難しい書籍ではあります。
それでも伝わってくること。
人生への遺伝子の影響は大きい
環境だって遺伝子の影響がある。
読書の目標としていた『遺伝を理解した上で、自分の能力を伸ばす!』というところは本書からは得られませんでしたが、『遺伝子に抗うことは所詮難しいことなんだな』ということを理解できただけでも意義のあった一冊でした。
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双生児の調査で遺伝の影響が明らかになっている、そんな知識はあったが、本書に掲載されている大規模調査の結果は、残酷なものに思えた。
想像が付きやすい顔立ちや身長、影響があるだろうな思える走るなどの身体能力。それだけでなく、協調性や外向性などの精神的と思われるものまで遺伝の影響は色濃く、ざっくり半分程度を説明するという。
驚いたのは環境までが影響されているということ。単なる外部要因と思えるが、自分の行動が環境に影響を与えることで、結果的に環境にも有意な差が見られると理解した。
遺伝が半分だとしても残り半分は運とか、ちょっとした心がけの差異とか。全部ひっくるめて自分なんだから、キチンと付き合わないといけないな。 -
途中、論文のような図や説明があり難しかった。作者の独特な表現もあり、内容が入りにくかったが、独自の意図があり興味深い。
遺伝と環境要因が複雑に絡み合い相互作用していく中で、自分らしく生きることを前向きに考えたくなる。たとえ自分に前向きな遺伝子が少なく、前向きな環境に置かれていなくても。 -
人間ならばDNA配列の99.9%は同一
つまり、世に才能を知らしめる人と凡人の差はDNA配列0.1%の範疇ということ
しかしながら、0.1%に相当する塩基対は300万ヶ所
遺伝的多様性はこの組み合わせで生じるのだが、実にゼロが2万個以上並ぶパターンらしい
あまりにも組み合わせが多いので、例えば身長を構成する要素だけでも、社会集団全体の分布と一組の家族内での分布がほぼ重なる
つまりはどんな両親の元でも突然変異は起こるのではないか?と受け取れたが、理解が追いついてない… -
2023.07.11
遺伝を正面から受け止める必要性を改めて感じる。
私の理解では、遺伝と環境(生育環境)は、ある意味ではニワトリと卵の関係にも思えてならない。
遺伝を否定しても、環境を否定しても、正鵠には達しない。相互作用が働くからである。
本書を人文学的にさらに身も蓋もなく述べているのが橘玲氏の著作である。
両者の作品を読み比べるとさらに理解が増す。
なお、本書はブクログさまからご恵与いただきました。改めて御礼申し上げます。抽選に当たって嬉しいです。 -
遺伝の話には抵抗がある。優生学とナチスの話は避けては通れない。でも、すでに明らかになったことがたくさんあるので、それを知ってから、倫理的に考えていくことが大切なようだ。
遺伝と共有環境、非共有環境という、双生児研究の基本的な話が主となる。心理学の教科書にグラフが載っているやつだ。あれをどう見るのか、解説してくれる。
DNAのアノテーションとか、より詳細な話はその次に出てくる。ポリジーンの話。
読んでみて残っているのが、セットポイントの話だ。遺伝が決めるのはセットポイント。そこから環境や教育や努力でポイントを頂点とした正規分布になる。セットポイントを遺伝によって正規分布になる。
統計学の授業で重回帰やら分散分析やら、説明を受けたのが思い出され、腑に落ちた。
安藤先生は最近たくさん本を出しているので、どれがおすすめになるかは他を読んでいない私には分からない。どれか一つ読んでみるのがいいだろう。それはこの本でもいいと思う。 -
この本を読む前は遺伝の影響もあるが、成長してからの環境や行動が社会的な立場を左右すると考えていた。
その考え方は合っている部分と間違っている部分があった。
遺伝は非常に複雑である。また、能力が発揮されること自体も想像以上に単純ではない。
大前提としてあらゆる能力に関することに遺伝が影響を及ぼしている。そして、遺伝情報は外生変数であり、環境などの外的要因の影響を受けない。遺伝情報はセントラルドグマである。
本書では能力と才能という言葉を使い分けているが、才能は遺伝と学習、社会的な文脈が合致したときに発揮される。
さらに、能力も個人間・個人内・環境のレベルの確率状態が影響する。
後半には行動遺伝学の発見についての説明、知能に関する遺伝の影響を図るポリジェニック・スコアについて書かれている。
遺伝のことについてわかっていることとわかっていないことを峻別し、そのうえで倫理的な判断を下すようにしていきたい。