ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー (講談社タイガ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065296264

作品紹介・あらすじ

5人のSF作家が描く、5人のもしも。

宮内悠介『パニック――一九六五年のSNS』
もしも50年以上前にSNSが存在したら? ベトナムから帰ってきた作家・開高健の周りで渦巻いた「ジコセキニン」という非難。世界初の炎上事件の謎を追え。

石川宗生『うたう蜘蛛』
死ぬまで踊り続ける奇病が蔓延し始めたイタリア南部。感染を収束させるのは容易いと嘯(うそぶ)く錬金術師が示したのは、ある奇天烈な方法で--。

伴名 練 『二〇〇〇一周目のジャンヌ』
1431年5月30日、フランスの英雄ジャンヌ・ダルクの命は失われようとしていた。彼女にいまひとたび齎(もたら)された「奇蹟」の代償は――?

小川一水『大江戸石廓突破仕留(おおえどいしのくるわをつきやぶりしとめる)』
南北四里、丈百尺、厚さは二間。その江戸には巨大な壁があった。明暦三年一月。燃え上がる想像力が導き出したあの日の真実。

感想・レビュー・書評

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  • 人気作家による歴史改変もののアンソロジー。
    久しぶりにSFを読んだら難しかった。でも面白かった。
    作家さんたちの知識量に感服。
    私のような歴史音痴でも何となく楽しめるが、歴史に詳しい方はもっと楽しめるでしょう。
    石井宗生さんと宮内悠介さんと伴名練さんの作品が好き!
    宮内さんの作品の皮肉めいた結末がキュンときた。

    死ぬまで踊る奇病が蔓延したイタリア―――石川宗生
    1965年に起きた世界初の炎上事件の顛末―――宮内悠介
    和歌を詠訳(英訳)する平安時代の恋の物語―――斜線堂有紀
    石造りの町、江戸で起きた事件の真相とは―――小川一水
    何度も火刑の前に戻ってしまう、ジャンヌ・ダルク―――伴名練

  •  そうそうたる執筆陣なので期待したが、今一つ物足りない。内容が軽いのだ。ラノベ系文庫のレーベルから出版されているし、表紙カバーのイラストもそれっぽい。

     そんな中でも、 小川一水氏の「大江戸石廓突破仕留(おおえどいしのくるわをつきやぶりしとめる)」は、お薦めできるかな。

  • 斜線堂有紀の上智卒なるほど!と思わせる英語力も見せつけられました。斜線堂ファンなら、この短編だけのために読むべき一冊です。
    ・石川宗生「うたう蜘蛛」
    死ぬまで踊り続ける奇病が蔓延したイタリア。総督の前に、「この流行り病を収束させてみせましょう」とホーエンハイムなる錬金術師が現れる。
    性描写あり、中学生には微妙ライン。
    好み的には合わず。
    ・宮内悠介「パニック――一九六五年のSNS」
    一九六五年の日本。そこには「ピーガー」というSNSが存在した。
    一番心が乗らなかった作品。発想は面白い。
    ・斜線堂有紀「一一六二年のlovin' life」
    和歌を詠むと同時に“詠訳”する平安時代。“詠語”が苦手で人前では歌を詠まない式子内親王の前に現れた一人の女房、帥(ソチ)によって詠訳の力を得る。
    いやー、面白かったです。シスターフッドっぽいところは斜線堂有紀らしいけど、それ以外はこれまでにあまり見なかったような(平安だし!)世界観。
    ・小川一水「大江戸石廓突破仕留(おおえどいしのくるわをつきやぶりしとめる)」
    江戸には巨大な石壁「大廓」が横たわっていた。
    一体、その石壁は“何”から江戸を守っているのか――? 明暦三年一月。燃え上がるあの日の真実が紐解かれる。
    これはなかなか話の展開が楽しかったのと、江戸の治水や防火の史実との絡みなどはもっと知識あればより楽しめたかな。
    ・伴名 練 「二〇〇〇一周目のジャンヌ」
    ジャンヌ・ダルクは今まさに火刑に処されたのに、処された朝にループするお話。しかも20001回。
    短いループでどんな運命変化あるのか、というところに焦点当たっていればもっと楽しめたかも。何故ループするのか、の方が私にはあまり入って来なかったので。でも、印象に残る作品でした。

  • わーい歴史改変だー。歴史改変小説大好き!こんなんなんぼあっても良いですからね〜。
    いやこれほんとおすすめです。いずれもハイレベルな出来になっていて満足感たっぷり。現実と虚構の狭間を華麗に描く5編のアンソロジー。

    宮内悠介「パニックーー一九六五年のSNS」は、SNSの普及が現実より50年早まった日本が舞台。開高健のベトナム現地取材をめぐって、SNS上で様々な意見が飛び交うアイロニカルな短編。見覚えのない、しかし馴染みのある不思議な光景が幻出しておりゾクゾク!

    伴名練「二〇〇〇一周目のジャンヌ」はジャンヌ・ダルクを主役に添えたループもの。死ぬことで運命を繰り返し、あらゆる可能性の世界を描くグルーヴ感がすごい。架空のキャラの死を軽んじることに対する問題提起にも読めそう。ラストは胸に迫るものがありました。

    欲を言えば5編中3編が日本を舞台とした作品だったので、例えば海外作家中心の歴史改変アンソロジーなんかも読んでみたいです。というわけで、楽しいたのしいアンソロジーでした。

  • 小説現代2022年4月号石川宗生:うたう蜘蛛、宮内悠介:パニック-1965年のSNS-、小川一水:大江戸石廓突破仕留、伴名練:20001周目のジャンヌ、10月号斜線堂有紀:1162年のlovin'life、の5つの改変歴史SFアンソロジー。歴史改変に違いはないが、いずれも小ネタアイデアをもとにしたかなりぶっ飛んだ話ばかりで、ちょっとノリきれなかった。残念。

  • 副題が「改変歴史SFアンソロジー」と書かれ、帯には「5人のSF作家が語る偽史」と書かれ、知っている書評家の2人が「大推薦!」としている。5人の作家はいずれも知っている人で、今回は私の嫌いな伴名練もいるが短い作品なので一応読んでみようと思う。しかし、大袈裟に歴史改変SFって言っているが、ちょこちょことタイムスリップさせる程度のレベルじゃないかと思い、あまり肩肘張らずに読み始めた。

    全体を読み終えた感想としては、石川宗生が意外と健闘している、宮内悠介は全く響かなかった、斜線堂有紀は新しい概念で歴史を引き戻し、小川一水はスパイ系の要素を加え、一番驚いたのは伴名練。伴名練、やればできるじゃないか、ダラダラ無駄に長い長編よりもコンパクトに纏まった短編の方が合っているんじゃないか?感心した!見直した!

    それでは、いつものとおり各作品について簡単なコメントをさせて戴こう。
    〇 石川宗生「うたう蜘蛛」
    最後のどんでん返しでSF登場。それまではどうしてこの作品がSFなんだろうかと思ったが、読み返してみると結構伏線を撒いている。このなかなか巧みな技術に感心した。広義の錬金術師は何でもできる、所謂何でも屋。中にはいかがわしいイカサマ野郎もいただろうに。人を甘利信用し過ぎることは昔も今も危険行為だ。警戒感の薄い偉い人は破滅する。あれ、これってネタバレか?

    〇 宮内悠介「パニック――一九六五年のSNS」
    おもしろくない。

    〇 斜線堂有紀「一一六二年のlovin' life」
    「詠語」って素晴らしい当て字。これだけでこの作品を最高評価せざるを得ない。それと、時間旅行者(女房)が昔改変させられた歴史を元に戻す地味な歴史改変とも思えるが、違う背景シナリオの可能性もある。主人公の心の動きも考えると百合の要素もある。結果として、かなり盛沢山な作品になり、今後の作品にも期待がかかる。

    〇 小川一水「大江戸石廓突破仕留(おおえどいしのくるわをつきやぶりしとめる)」
    ちょっと大雑把な展開、更に悪く言うとこじつけの様な気がするが、エンタテインメントの要素もあり、小川作品らしい面も垣間見られた。

    〇 伴名練 「二〇〇〇一周目のジャンヌ」
    こちらは石川作品と真逆で、最初からSFの世界、典型的なパラレルワールド、王道ですね。これまで主人公が何回も何回もループする作品はあり、本作品の様に少しずつ良い方向に改変するものはあったが、さすがに20,001回も繰り返すアイディアは凄い。それだけでも伴名作品を十分に評価できる。余談だが、最近の将棋中継では形勢判断にAIが用いられる。AIが読みを深める度に形勢が徐々に変化していく。1万手読むのと1億手読むのとではかなり未来が違ってくる場合がある。まあ、AIほどではないが、この世界も場面を少しずつ変化させることで無数の将来が生じる。勿論、今回は億レベルまでには行かないが、主人公は永遠に繰り返す世界を体感する訳だ。ある意味、凄まじい程のパラレルワールドが折り重なった世界を漂流しているとも言える。素晴らしい作品だ。

    今年突然現れたこのアンソロジー、日本SF界に楔を撃ち込む一冊になる可能性を秘めている。

    藤井竜王、棋王戦挑決敗者復活戦、頑張れ!

  • 良い企画。昔ながらのタイムパトロールのジュブナイル風味を感じた。伴名練はさすがで、良い出来。

  • 少し歴史に疎い私でもどれも面白かったー!

    伝説の錬金術師の実験。
    和歌を扱った詠語(=英語)、なるほど。
    SNS炎上がこの時代に起こったら…。
    時空を超えて江戸の町を石造りに。
    歴史の考察で何回もやり直されるジャンヌ・ダルク。

    どれもひねりが効いていて、5人の作家さんの味が楽しめる一冊。

  • 歴史改変をテーマにしたSF短編集。作家陣が豪華で手に取りました。伴名練「二〇〇〇〇一周目のジャンヌ」がお気に入り。

    量子計算機の発達により過去を高精度に再現できるようになった社会が舞台。歴史改変のターゲットにされたジャンヌ・ダルクは何度も処刑されるが、そのジャンヌも同じシーンを何度も繰り返し経験することで、歴史改変を目論む者の意図を意図せずくぐり抜けてしまう様が面白かった。

  • 史上の人物や出来事を引きつつ、現代・近未来の技術を持ち込んだ物語。
    『パニック――一九六五年のSNS』(宮内悠介)は、"自己責任"という言葉が飛び交うSNSをストレートに批判する一編。ベトナムに赴いた作家、開高健をSNSの海に投げ込んだらどうなるか。ラストも含めておもしろい。
    『一一六二年のlovin' life』(斜線堂有紀)は、はみ出し者の女二人が同志となり、やがてより強く結びつくようになるのを描いた切なく熱い物語。式子内親王の和歌を取り上げており、メカの登場もないので、やわらかな情感に満ちている。

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著者プロフィール

’84年千葉県生まれ。作家、翻訳者。’16年に短編「吉田同名」で創元SF短編賞を受賞し、’18年、受賞作を含む短編集『半分世界』で作家デビュー。’20年『ホテル・アルカディア』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。最新作は『四分の一世界旅行記』。

「2022年 『ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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