英語教育論争史 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065293270

作品紹介・あらすじ

中学から高校の6年間で膨大な英単語を覚え、暗号解読のような苦労で英文を訳し、長文の速読練習もこなした。でも、労力の割には使えるようにならない。しかも2020年度からは小学校で外国語が正式教科になった。はたして英語は、どのように教え、学ぶべきか。これは、100年以上前から繰り返された議論である。
小学生の英語教育の是非、必要なのは文法訳読か英会話か、全員が必修の必要があるのか、他の教科にエネルギーを回せばもっと日本人の学力は上がるのではないか、そもそも、外国語は英語だけでいいのか。それは、知的バトルあり、人間臭い感情のぶつかり合いもある、真剣勝負の論争史だった。
漱石の指導で英文学に開眼した藤村作の「英語科廃止論」、戦後の熱狂を生んだラジオ「カムカム英語」への批判、加藤周一の「英語義務教育化反対論」、渡部昇一と平泉渉の大論争、筑紫哲也と中村敬の英語帝国主義論争など、文明開化の時代から、戦時下の「敵性語」時代を経て、グローバル化が進む現代まで、「日本人と英語」の百年余りを振り返り、これからの英語教育・英語学習を展望する。

目次

はじめに―― 一〇〇年越しの「真剣勝負」
第一章 早ければ良いのか? 小学校英語教育論争
1 文明開化と内地雑居
2 高等小学校の発足と論争の本格化
3 誰が、どうやって教えるのか
4 岡倉由三郎の小学校英語教育論
5 文部省が小学校英語教育を縮減
第二章 訳読か? 会話か? 文法訳読vs.話せる英語論争
1 学習英文法はどう根づいたか
2 英文法偏重・擁護論争
3 ナチュラル・メソッド論争
第三章 教養か? 実用か? 中等学校の英語存廃論争
1 「一等国」の英語廃止論
2 ナショナリズムと英語教育
3 「米国語」を追い払え!
4 廃止論の急先鋒・藤村作
5 「帝国日本」の外国語教育
6 戦時体制下の英語教師たち
第四章 英語は全員に必要なのか?「カムカム英語」と英語義務化論争
1 敗戦直後の英語熱
2 米会話ブームと「カムカム英語」への批判
3 「英語義務教育化」反対論
第五章 国際化時代に必要な英語とは? 平泉-渡部「英語教育大論争」
1 国際化と英語コミュニケーション能力
2 「平泉試案」の衝撃
3 「平泉新提案」をめぐる論争
4 「平泉試案」後の英語教育政策
第六章 外国語は「英語だけ」でよいのか? 英語帝国主義論争
1 言語帝国主義への先駆的な批判
2 一九九〇年代の英語帝国主義批判
3 中村敬と二つの英語帝国主義論争
終章 そもそも、なぜ、英語を学ぶのか? 英語教育論争史が問いかけるもの
おわりに

感想・レビュー・書評

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  • 明治以来から同じ問題が何度も何度も蒸し返されては、何らの解決にも至っていない様子が丁寧に跡づけられている。数年前に「toeic不要論」がネット上で論議された。これもまた本書で解説されている、結論が出されずに曖昧に終わった論争のひとつであり、明治以来の論争の範疇のささやかな変奏にすぎない。


  • この年になっても、日々英語に悪戦苦闘しています。血のにじむような努力までやってないと言われるとそれまでですが。
    一方、Google の翻訳の近年の進化の凄まじさを目の当たりにすると、本書の末尾に、リマインドされている、そもそもなぜ英語を学ぶのか? の目的は、脳トレを除いて、突然違うルートが現れて、Google に頼むことで、それぞれ目的達成が出来る日は近いようにも思ったりしてます。
    これからは、英語教育論争史の指摘する繰り返しではなく、大きな転換が起こる、必要である、と思いました。

  • 英語教育をめぐる議論は繰り返されてきた。

  • 面白い。
    が、しかし固い。半分論文半分一般書ぐらいの感覚だろうか。論文の引用も多数あり、興味深い論文はネットで調べる事も出来るため興味のある読者には非常に有益である。また参考文献、索引まであり、本書を孫引きして本を執筆出来そうだ。
    上記の通りのような適切な引用方法は、一般書として本書を読む際にはカッコ書き、引用元記載、原文引用入り乱れており、正直読みにくい。興味を持った読者も論文的に斜め読みするしかないだろう。
    終章は半分おまけだろうが、「なぜ英語論争は延々と繰り返されるのか」という問いに対して、論争にけじめをつけない日本人として切っている点も面白い。が、本書テーマと少し逸脱しているために軽く触っているだけに留めている。個人的にはここをもう少し膨らましても楽しめたように思える。

    本書は論争史として扱っているが、その中身は現代でも変わらない。再読して更なる知見を得たい。

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著者プロフィール

江利川 春雄(えりかわ・はるお):1956年埼玉県生まれ。神戸大学大学院教育学研究科修士課程修了。広島大学で博士(教育学)取得。専攻は英語教育学、英語教育史。現在、和歌山大学名誉教授。著書に『英語教育論争史』(講談社選書メチエ)、『日本の外国語教育政策史』(ひつじ書房、日本英語教育史学会著作賞受賞)、『英語と日本軍』(NHKブックス)、『受験英語と日本人』、『英語教科書は<戦争>をどう教えてきたか』、『日本人は英語をどう学んできたか』(以上、研究社)、『英語教育のポリティクス』(三友社出版)、『近代日本の英語科教育史』(東信堂、日本英学史学会豊田實賞受賞)、監修・解題『英語教育史重要文献集成 全15巻』(ゆまに書房)など。

「2023年 『英語と日本人 挫折と希望の二〇〇年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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