雨にシュクラン

  • 講談社
4.06
  • (13)
  • (26)
  • (10)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 190
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065292839

作品紹介・あらすじ

2019年度の中学入試で最多出題作となった『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』で講談社児童文学新人賞を受賞、『ハジメテヒラク』で第54回日本児童文学者協会新人賞を受賞したこまつあやこ氏、待望の4作目。

私、本当に影山高校の書道部員になれたんだ。
「いってきまーす。花音も遅刻しちゃだめよー。」
そうして、桜の花びらの残る通学路に踏み出した。六月にはその道を歩かなくなるなんて、思ってもみなかった。(本文より)

父の療養のため急な引っ越しをよぎなくされ、憧れだった第一志望の高校を六月で辞めることになってしまった真歩は
高校卒業検定の準備をしながら図書館の宅配ボランティアをすることに。
ある日真歩は、ボランティアで伺ったお宅で、アラビア書道の流れるような美しい文字「約束は雲、実行は雨」と書かれたアートに魅了される。

目次

プロローグ 5
1 ナイチンゲールの休息 8
2 私だけの時間割り 29
3 ミックスジュースな玄関 48
4 十五周年キャンペーン 65
5 クッキーとスカーフ  75
6 もう一人のお客さん  93
7 テイクアウトの宝もの  116
8 ハチミツ入り紅茶   143
9 卒業証書       161
エピローグ    185

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • やっとの思いで受かった憧れの書道部がある高校を、父の病気療養のために辞めなければならなくなった真歩。
    転校ではなく独学で高卒検定を目指すことにするが、高校生じゃないためアルバイトをすることもできず、心の支えをなくしていろいろなことに身が入らない。
    そんな時出会った、図書館の本を配達するボランティアの仕事。
    本の届け先で知ったアラビア書道に、新たな世界へつながる扉が開く予感がする...。

    自分の意志ではなく、進路を変えざるを得なかった真歩。
    もっと腐ってもいいはずなのに、もがきながらも新しい世界へ一歩踏み出し、当初とは違う選択をする。
    その柔軟性は、視野を広く持って可能性を捨てないでほしいという読者へのメッセージにもなっている気がする。
    アラビア書道(コーランに書かれているアラビア文字)にも興味が湧いた。
    2023.6

  •  書道に打ち込む真步は、念願の書道部のある影山高校に合格、春から楽しく学校に通っていた。
     しかし、父が心に風邪を引いてしまい、母の意見で会社を辞めて父の地元に引っ越すことに。
     しばらくは往復5時間かけて通学していたが、高卒認定試験を目指し、高校を中退する。
     目標はあるものの、どこにも所属していない心許なさを抱いていた真步。図書館の宅配ボランティアを通じて“アラビア書道”とトルコルーツの姉弟と出会う。

    ○気持ちのよい物語だった。真歩自身は書道に魅せられた気持ちに揺らぎはなく、身をおく環境が変わっていく。
     お互いを大切にしお互いを尊重するが、きちんと優先順位をはっきりとさせて風通しのよい家庭になっている
    ○外国ルーツの悩みなどは真歩の視点で、相手の文化を尊重し、自分とも紐付けて受け入れている
    ○アラビア書道に興味を持った。カバーの文字の流れる美しさ
    ○臨機応変に自分の道を歩いていくしなやかさ

  • アラビア語、トルコ料理、ムスリム…。真歩と同じで、実際に近くに触れることってなかなかない。
    高校に行ってない16才がいたって、ぬいぐるみが好きな中年男性がいたっていいんだよね。それをスッと受け入れてくれる周りがとても素敵。
    言葉や文化の違いはあるけど、それ以前に一人一人なんだよね。読み終わり、爽やかな気持ちになった。

  • いろんな価値観があっていい。あった方がいい。
    そんな気付きを異文化交流も交えながらイキイキと読むことができた。

  • アラビア語を少しだけ齧ったことがあるので、タイトルを見て即読み。アラビア語がティーン向けの本でも扱われるなんて…とちょっと感動してしまった。話自体はあっさりさっぱりしているが、若い人がアラビア語に興味を持つきっかけになればいいなとの思いを込めて⭐︎5。

    偉そうなことを言いながら習ったことをほぼ忘れてしまったのでもう一度アラビア語の勉強頑張ろうかな…

  • そのときどきに合った選択をする。作中に出てくる言葉のなかで、いちばん好きなブレーズだ。こうと決めたことを一心に貫く意志の強さはもちろん大切だけれど、人生には思いどおりにいかないことがたくさんある。どちらかというと、ままならないことの方が多いかもしれない。それでも。芯となる考え方や生き方さえブレなければ、あとのことは柔軟に、そのときどきに合わせて選択していけばよい。そしてその選択肢は、自分の行動や見ようとする景色によって変化し、ときには思いもよらない方向に広がっていくよ。そんなあたたかいまなざしで子どもたちを見守り、応援している作者の気持ちが伝わってくるような作品だった。

    文章のタッチはやや軽めで、読む人によっては若干幼さを感じるかもしれない。ただ、ヤングアダルトや児童書というジャンルであれば、かえってこのライトさがちょうどいいのかなとも思う。

    装丁については、扉の部分につい手触りを確かめたくなるような、少し変わった紙が使われていたのが印象的だった。装画もとても素敵で、紙の本ならではの魅力がつまった1冊でした。

  • そういう生き方もあるよってことを
    教えてくれる本。
    侮りがたし児童文学。

  • 著者4冊目となる作品。念願の影山高校に入学し書道部に入部した真歩。しかし、メンタルの不調で退職した父奏介のため、一家は父の地元(湘南か)へ移り住むことになる。真歩は往復5時間をかけて影山高校への通学を続けるが、書道部の先輩の言葉をきっかけに高校を中退することに。そしてひょんなことから図書館資料の宅配ボランティアを始め、宅配先のおばあさん宅で目にしたのがアラビア文字の「書道」だった。彼女はアラビア書道を通じて多くの人と出会い、目の前に広がった新たな世界から改めて自分が進むべき道を選び取っていく。誰しも大なり小なり選択の時はあるもので、私も第一志望で入学した高校を家庭の事情により一学期で去った。希望すれば残れなくはなかったので、結局自ら選択して(中退はしなかったが)転校したわけだ。そして短かった最初の高校生活と、新たな高校生活がともに自分の人生を決めたのだと思う。自分の思い通りになることは限られているが、真歩のように出会いに気付きそれを意義あるものにしていきたいものだ。

  • 皆で約束して傷つけないようにすることや
    甘んじる父親にはじめウエッとなるけど
    常にお天気の日とはいかないのが人生だと
    気を許せるようになるのはいいことだね

  • <閲覧スタッフより>

    --------------------------------------
    所在記号:913.6||コマ
    資料番号:10274055
    --------------------------------------

全24件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一九八五年生まれ。神奈川県在住。
清泉女子大学文学部日本語日本文学科卒業。公共図書館にて司書として勤務した後、私立中高一貫校に司書として勤務。2017年『 リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』で講談社児童文学新人賞受賞。『ハジメテヒラク』で日本児童文学者協会新人賞受賞。

「2023年 『雨にシュクラン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

こまつあやこの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×