絶対悲観主義 (講談社+α新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1120
感想 : 113
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065289327

作品紹介・あらすじ

みなさん、がんばりすぎていませんか?
そんなに心配することはありません。なぜなら、そもそも仕事で自分の思い通りになることは、ほとんどないから。
この元も子もない「真実」を直視して、成功の呪縛からもっと自由になろう。
そうすれば目の前の仕事に対し、もっと気楽に、淡々と取り組むことができる。
絶対主義者の著者が実践してきた「普通の人のための」思考のストレッチ。

感想・レビュー・書評

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  • 楠木建は別の著書で「読書は著者の論理を楽しむもの」と発言していて、妙に心に残った。恐らく自分もそうした読み方をしているからだろう。しかしそのためと言うか、楠木建の著書は、教授職でありながら、研究データに基づく解説や実験結果の引用は少ない。直観的かつ説得力のある論理を当てはめながら、持論を展開しているだけなのだ。それはとても自然体で、読書でインプットした論理展開を駆使して好きな事をやって飯を食うという感じだ。著者が言うように背伸びもせず。しかし、これで世の中悲観主義でいこう、つまり期待値下げていきまっしょいと言われても、自分はなんだ、特権階級の人じゃないかと。いや、私はこの脱力感が嫌いではないので読むのだが、本書の行間には多分に挑発が含まれる(穿ち過ぎか)。本著はそんな雑記である。

    もう一つ余計なことを書くと、車を趣味にしたいらしく。コブラも良いね、シグネットはカッコ良い。ポルシェは手に届かないが、還暦記念車に…と。まあ、色んな養分を得て、楽しむ事も別に悪くはないのだろうけれど。

    パーティーを抜け出して孤独を楽しむ。高速道路のサービスステーションで一人の時間に至福を感じる。失敗して、そうは問屋が卸さぬかと一人呟く。著者のそんなメンタリティは非常に共感できる。私も孤独と読書が好きな一人として、そんな楠木建を楽しんでいる。

    本著で引用されるドラッカーの教条的な文章を引こう。本著のタイトルに対して示唆的な気がしたから。「もともとやらなくても良いことを効率よく行うほど無駄な事は無い」なるほど、自然体が強いわけだ。

  • 絶対悲観主義とは「自分の通りにうまくいくことなんて、この世の中にはひとつもない」という前提で仕事をすることである。これは仕事を成功させる努力を放棄することを意味しない。根拠のない楽観による「うまく行くはず」という期待だけを排除すれば楽に生きられる、ということだ。
    著者の主著は、心理学者河合隼雄氏の「ものごとは努力によって解決しない(『こころの処方箋』)」という言葉に通じるところがある。
    お仕事エッセイとして軽く読み流してはもったいない好著。

  • 淡々と身も蓋もないことが書いているけど、それに共感してしまう自分を見つける。
    また読もう。

  •  楠木健さんのエッセイです。特に絶対悲観主義を一冊で主張されているわけではないようです。
     タイトルに引かれて選んだのですが、私は興味持てなかったです。このようなエッセイに興味持てないのは年のせいでしょか。それとも、私の置かれている現実のせいでしょか。いずれにしても、時間を大切にしましょう。

  • 自己啓発本の類いだった。
    自己啓発本は実はそんなに嫌いではないし、サクッと読めるので、楽しく読了した。ただ、アクセルとブレーキを同時に踏み込んでいるタイプの方のようで、どの部分が本当のこの人なのか少し疑心暗鬼になりつつ。

    後半の経営者たちのエピソードとか、Gの話とか、全く心を動かされなかったところもままあった(笑)あーでも、小池百合子の(好きか嫌いかと言われたら、僕も大嫌いです)には笑った。

    せっかく読んだから、いいとこだけは取り入れようと思う。

    以下、よかったところの羅列。

    オリバー・ストーンのプーチンへのインタビュー集は読んでないので、ここで紹介されて得した気分。この時点のプーチンは「冷静で損得勘定に長けたリーダー」で切り返しも冴えている。なのに現在のプーチンは「狂気と錯乱」にある。このギャップ!

    品が良い人の定義を「欲望に対する速度が遅い」と表現したのはなるほどと思った。元々は立川談志の言葉らしいが。
    名言も多く紹介されているが、ほとんど心に刺さらず。唯一気に入ったのは
    ドラッガーの「元々やらなくてもいいことを効率よく行うほど、無駄なことはない」
    ブルシット・ジョブを効率よくやって鼻高々なのは確かにダサいよなと思う。

    この人が発表という行為を大好物としている点はよくわかる。こういう「切り取り方」をするのは面白いところ。



    絶対悲観主義は、確かに多くの期待をしないが故に、軽やかに動くことができる。期待をするとがんじがらめになってしまいがち。
    そこは時々思い出して心の安定の足しにさせてもらおうと思う。

  • うまく行くことなんてほとんどないという前提に立ち、絶対悲観主義に考えれば、失敗しても落ち込まず、成功した時の嬉しさは何倍にもなる。
    失敗して当たり前なのでGRITも不要。レジリエンスも不要。
    GRITや頑張らなければうまくいかない、常に気を張っていないといけないという呪縛に囚われていたのでとても響いた。
    ネガティブになるのではなく、あくまで悲観主義。
    ある種のポジティブとも捉えられる面白い考えだと感じた

  • うまくいくことなんてひとつもない=絶対悲観主義
     効用 1.実行がシンプルで簡単になる
        2.仕事への速度が上がる 
        3.悲観から楽観が生まれる
        4.リスク耐性と失敗の時の耐性がつく
        5.顧客志向になる
        6.自分の才能がはっきりする

    幸福の敵=他人との比較  他律性  幸福だと自分で言語化できる状態が幸福

    知性=客観視からの ことごとの本質
    教養=自分で獲得した価値基準からの精神的自立と自律 

    品の良さの定義 =欲望に対する速度が遅い・執着しない潔さ
     
    失敗と 待つ力
     エネルギーが戻ってくるのをひたすら待つのが最善策(畑村洋太郎)

    プーチン
     国益と主権の徹底追及 現実主義 明晰で率直 慎重な決断 一度破壊した国

  • ネガティブなほうなので、共感できることが多く、経営学社が自分みたいに卑近な考えもしていると面白かった。

    語るような文体なので、考え方などがわかるのもいい。

  • 仕事は相手があり人が評価するものなので、うまく行かないことの方が多い、むしろうまく行かないのが当たり前、と思っておけば、落ち込むこともないし流行りのレジリエンスさえ不要、というのが絶対悲観主義の考え方。
    構えとしては持っておいてもいいけど、実用的かはちょっとわからない。人はやはり、失敗したくないし成功したいし、期待してしまう生き物だと思うので。

    でも読み物としてはとても面白く、爆笑必至の箇所が何ヶ所もあった。Webマガジンの連載をまとめたものなので、軽くて読みやすい。著者は書評を書くのが大好きということで、人の本の中身を説明しているだけの箇所も多いが、引用の仕方や切り口がこなれているので違和感なく読めた。
    経営学の存在価値には疑問があるけど、著者が会った経営者たちの描写はなかなか興味深かった。

  • Audibleで読了。

    成果はコントロールできない。けれど、「構え」はコントロールできる。

    「絶対に自分の思い通りにはならないぞ」「世の中そんなうまくいかないんらだから」→「まぁ、うまくいかないけど、ちょっとやってみるか。」

    思いっきり始めっからマインドセットを悲観にセットして、万が一上手くいったらめちゃくちゃ嬉しい。上手くやりたい、失敗できない、とばかり考えると、仕事そのものの存在が大きくなりすぎて自然体に取り組めないから後回しにしてしまう。はじめっからそんな上手くいかないんだから、のスタンスで挑めば楽観を生む。もう始めっからうまくいかない(絶対悲観主義)、って思って仕事をするスタンスが大切なんだよ、と楠木大先生が話してくれています。

    フランスの思想家によると「幸福の最も大きな障害は、過大な幸福を期待することである」そうです。

    負けが板についてるのに、ストレングスファインダーでも最上志向、目的志向強めの私は、はぁ、上手くいかなかった、と凹むことが多い。そんな私にピッタリの構えだと思う。若いと失敗は許されるんだけど、歳を重ねると上手くやって当然、って思われるんだよねぇ。実際そうだし、私もそう思っちゃうとこがある。いや、もともと上手くいかないんだし、気楽に謙虚に挑戦していこうよ。

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著者プロフィール

経営学者。一橋ビジネススクール特任教授。専攻は競争戦略。主な著書に『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社)などがある。

「2023年 『すらすら読める新訳 フランクリン自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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