総員玉砕せよ! 新装完全版 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 286
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065286005

作品紹介・あらすじ

昭和20年3月3日、南太平洋・ニューブリテン島のバイエンを死守する、
日本軍将兵に残された道は何か。アメリカ軍の上陸を迎えて、500人の運命は玉砕しかないのか。
聖ジョージ岬の悲劇を、自らの戦争体験に重ねて活写する。
戦争の無意味さ、悲惨さを迫真のタッチで、生々しく訴える感動の長篇コミック。

感想・レビュー・書評

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  • 8月15日、終戦記念日。
    改めて世界平和を願う。

    「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる氏が描く悍ましい太平洋戦争の記録。90%が真実だという。

    「玉砕」とは玉のように美しく砕け散ること。
    「すべてのものは美しく砕け散れ」なんて命令…ほんとにつらい。

    すべてのものが砕け散った時、砕け散ったものの美しくは誰が讃えるのか?

    戦時には、「一億総玉砕」なんてスローガンもあったそうだけど、それはいったいなんのためなのか?
    誰のために美しいのか?

    下っ端兵士たちのぶざまでも生にしがみつきたいっていう姿もまた美しく思えて、泣けた。

    • 5552さん
      たけさん、こんにちは。

      kuma0504さんのブックリストを覗かせてもらっていたら……。
      何と、こちらの本がたけさんの500レビュー...
      たけさん、こんにちは。

      kuma0504さんのブックリストを覗かせてもらっていたら……。
      何と、こちらの本がたけさんの500レビューめだったのですね。
      おめでとうございます!

      こちらのレビューのラスト二行が特に素敵です。

      これからもレビュー楽しみにしています。
      2022/08/25
  • 水木しげる『総員玉砕せよ! 新装完全版』講談社文庫。

    没後に発見された『総員玉砕せよ!』構想ノートを巻末特別収録という新装完全版。

    太平洋戦争に従軍した水木しげるの実体験に基づく戦争漫画の傑作。

    この平和なはずの現代、ロシアがウクライナに侵攻を続けている。侵攻という生やさしいものではなく、非人道的な兵器まで使い、無差別攻撃を行っており、もはやジェノサイドと言っても過言ではない。世界各国はロシアを批難し、ウクライナを間接的に支援するものの核兵器による報復を恐れてなのか、ロシアを直線的に攻撃することはしない。イラクやアフガニスタンを攻撃したアメリカですらロシアには手出ししない。誰もが戦争の悲惨さを知るのにロシアの凶行を止めることが出来ず、ウクライナはまるで蛇の生殺しという状況である。何とかロシアを止める手立ては無いものか……

    さて、本書。嫌になるくらいの戦争の悲惨さが描かれる。前線で闘う兵士たちの陽気な描写と戦争の悲惨さ、残酷さとが相まって、虚しさを覚える。

    太平洋戦争末期の南方戦線ニューブリテン島バイエンで、米軍の猛攻による圧倒的な劣勢の中、日本軍将校が玉砕を決意する。まるで消耗品或いは虫けらの如く、死を命ぜられる兵士たちの無念たるや。

    定価858円
    ★★★★

  • 基本的にマンガは読書記録に加えないのだけれど、これは水木さんにしか描けない戦記もの、NHKでドラマ化もされた名作の新装完全版ということで。新たに2021年に発見された構想ノートの一部が巻末に収録されていて、解説も含めてとても興味深い内容。同ノートのメモからも、戦争の惨禍を風化させないという著者の並々ならない決意が伝わってきました。お馴染みの、のほほんとしたタッチと、「90%が事実」という悲惨な物語のギャップが凄くて圧倒されます。特に戦場の描写がリアル。解説にある、鬼太郎が戦争体験から生まれたキャラクターという捉え方も腑に落ちました。

  •  あまりの理不尽というか不条理なことに、言葉を失う。
    その場にいた人間が描いているのだから、本当に事実に基づいたことなんだろうと思う。
     当時、日本で指揮をとっていた軍上層部はどこまでこれらのことを把握していたんだろうか。
     そして人の命が、なんて軽んじられていたのだろう。

  • 映画「ゲゲゲの謎」から

    映画にもこの漫画のエピソードが、少し出てきます。
    水木しげるさんの体験をもとに描かれた漫画。
    最初に開いた時に、やけに登場人物の紹介が丁寧だなあ、たくさんいるなあと思いながら眺めていました。覚えきれ無さそうだし、読みながらおいおい覚えられるかな、と読み進める事にしました。覚える前に、戦争によって次々とかえらぬ人になっていき、最後まで読んだ頃、ようやくこの本のタイトルをきちんと理解した気がします。あんなにいたはずなのに。

  • 「玉砕」なんて言葉がフツーに、いや、命令としてまかり通るなんて日本くらいなもんだろうなと思う。現代にも変わらず続く愚行の精神。この国に無くて今後も望めそうに無いものが、基本的人権の教育と、過去から学ぶ姿勢。

  • 星の評価は敢えてしません。
    自分が生まれるたった数十年前にこんな不条理で悲惨な戦争が行われていたということがなかなか実感できない。ちゃんと認識し子どもにも認識させないとならないと思った。

  • 戦争は地獄だということをこれ程までに訴えかけてくれる漫画は当時としては珍しかったんだろうな。
    水木しげるのなんとも言えない人間味のあるキャラクター達がいとも容易く、あっけなく、強制的に死んでいくことのインパクトが凄い。
    最後の聖ジョージ岬での全員特攻は創作らしいけど、あのラストによって戦時中の異常さがくっきりと浮き彫りになった。
    わからないけど、なにかに祈らずにはいられない壮絶なラストだった。

  • 戦争の現実があった。
    あまりに凄惨。

  • そうだよねぇ
    どんな場所にいても
    日常になっていて
    日常になってくる
    最後へのセリフがないコマの流れは衝撃だけど
    そこにたどり着く時間に
    日常があるんだよね
    その時間があったからこそ
    最後への流れが染み入ります
    日常ってなんて表現するんだろう
    どんな時にもそこにあるんだけど
    それも日常なんだね

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著者プロフィール

1922年(大正11年)生まれ、鳥取県境港市で育つ。太平洋戦争時、ラバウル戦線で左腕を失う。復員後、紙芝居画家を経て貸本漫画を描き始め、1957年『ロケットマン』でデビュー。以後、戦記もの、妖怪ものなど数多くの作品を発表。1965年『テレビくん』で第6回講談社児童漫画賞を受賞。1989年『昭和史』で第13回講談社漫画賞を受賞。1991年紫綬褒章受章、2003年旭日小綬章受章。主な作品に『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』『悪魔くん』『総員玉砕せよ!』『のんのんばあとオレ』など。2015年11月死去。

「2022年 『水木しげるの大人の塗り絵 あの世紀行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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