- Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065273654
作品紹介・あらすじ
第166回芥川賞受賞作。
ずっと遠くに行きたかった。
今も行きたいと思っている。
自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。
自衛隊を辞め、いまは自転車便メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。
昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。
気鋭の実力派作家、新境地の傑作。
感想・レビュー・書評
-
芥川賞受賞作とは知らずに読みました。
主人公サクマが抱えるザラザラとしたイラつきが終始まとわりつき こちらまで鬱鬱としてきます。
こういう常にイライラして いつスイッチ入るか分からないひと居るよなぁ。こわすぎる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
“ちゃんとしなきゃ“と焦りつつも、そこを突き詰めずに先延ばしにしてしまう。少なからず、私にも覚えはあります。
世渡り術を持つ人を羨ましく思いつつも、(サクマは羨ましくないと言っているが、本当は羨ましいのだと思う)同じようには振る舞えない自分。
自分に欠けているものがはっきり分かっているのに、その先、どう動いていいか分からない。
そんなサクマの頭の中(決して心の中ではない)がずっと書かれています。もう、ずっとサクマの頭の中なのです。深く深く潜り込んでしまって時々息苦しくなるほど。
読みながら、サクマに必要なのは教育だろうか?忍耐だろうか?経験だろうか?とどんどんどんどん私自身も深みに嵌まっていってしまいました。
でも最後は“心の中“が覗けたような気がしたかな。血が通った温かさを感じることができて良かった。
-
芥川賞
なんだよね?
にもかかわらず
この小説、めちゃくちゃおもしろいです(笑)
最後まで、ロードバイクの爆走の如く一気読み。
タイトルの「ブラックボックス」という言葉は、作中で「昼間走る街並みやそこかしこにあるであろうオフィスや倉庫、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようでいて見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。」と説明されている。
そしてそのわからなさは、
「帰路についているなかで、どこからともなく漂ってくるカレーとか煮物のにおい」のようだと。
そうなんだよね。
見えそうで、見えない。
他人の生活、心の中、全てはブラックボックスで、覗けるのは(もしくは、覗けた気になっているのは)ほんの一部だけだ。
世界は、ブラックボックスの積み重ねだ。
誤解を重ねた上に成り立っている。
さらに言えば自分も自分のブラックボックスを持て余しており、制御できない。
だから不安だらけだ。
だけど、この不確かさこそ、生きる本質であり歓びでもある。
だって、刑務所のような「制度」は未来を確たるものとして示すことができて安心だけど、やっぱり不愉快だもの。-
naonaoさん、おはようございます!
芥川賞っぽくない作品と話題なんですねー
どうりで…
読みやすいですが、しっかり芯はある、そんな作...naonaoさん、おはようございます!
芥川賞っぽくない作品と話題なんですねー
どうりで…
読みやすいですが、しっかり芯はある、そんな作品です。ぜひ。
腹筋やって腰痛めたんですか…久々にやるときは無理しないでくださいね。応援してます笑2022/02/07 -
おはようございます!
そうなんです!話題です!
取り上げられている職業も現代的で、現代の芥川賞っていう感じらしいです
より続けるために前...おはようございます!
そうなんです!話題です!
取り上げられている職業も現代的で、現代の芥川賞っていう感じらしいです
より続けるために前より短めのやつにしたんですが、短時間でやる分、きついです…笑2022/02/07 -
なるほど。現代の芥川賞ですか。
自転車メッセンジャーは確かに現代的な職業ですかね。まあ、取り扱っているテーマは普遍的なものと感じました。どち...なるほど。現代の芥川賞ですか。
自転車メッセンジャーは確かに現代的な職業ですかね。まあ、取り扱っているテーマは普遍的なものと感じました。どちらかと言うと肉体派小説かな。けっこうサラッとしていて、そこが現代的なのかも。遠野遥さんの「破局」をほんのちょびっと彷彿させました。
強度強めのトレーニングなんですね。
きっとくびれがすごいことになっちゃいますね笑
ただ、腰は気をつけて!2022/02/07
-
-
2021下期芥川賞受賞作
若者の閉塞感と暴力衝動について描かれている。
清々しさ、爽やかさゼロ。どことなく暗いイメージがつきまとう物語。
何をやっても無意味な感じ、突然の暴力への衝動など社会の片隅でもがくサクマのどうしようもない孤独と、虚しい内面がしんみりと伝わってきた。
サクマは私の勝手な推測だが境界知能なんだろう。生きづらさは想像するしかできないがなんとなくわかる気がする。
本作は前後半できっぱり分かれている。前半は20代後半のサクマが、自転車でものを急いで運ぶ仕事メッセンジャーに励みながら、悶々とする姿を描いている。後半は突然に暴力事件を犯した彼の刑務所ライフだ。
淡々と事実がのっぺりと記されている構成が、サクマが世界とうまく心を通わせられないことを強調している。
働く喜びは皆無。「ずっと遠くに行きたい」と思いながら、社会の歯車としてひたすらに自転車を走らせるだけだ。ただ将来への漠然とした不安。それはまるで膜がはっているような…
サクマは私が学生時代に住んでいた近くの三鷹のはずれに住んでいるが、一緒に暮らしている女への愛情は感じられない。そんななかな暴力が噴出する。いわゆるキレて刑務所で暮らすことに。怒りをコントロールできなくて、とっさの感情を抑えられない。
刑務暮らしで自由を奪われ、逆に自分の人生の大切なことに思いをはせる。
この物語後のサクマはどうなるんだろうか。
大げさにいえば、彼の将来は日本で閉塞感や孤独にもがく若者たちの将来なのではないだろうか。
そんなことを思った。-
私も短気なので、自分のコントロールは一生の課題だなぁと考えさせられました(^^)フォローありがとうございます!私も短気なので、自分のコントロールは一生の課題だなぁと考えさせられました(^^)フォローありがとうございます!2022/05/28
-
-
社会保険とか手当とか医療費とか税金とか
私も転職するときにあまりに複雑な社会の制度が、しかも複数あって、全部一つずつ自分で手続きしなくちゃで、いろいろ気が滅入ったことがあった。
「もっとわかりやすく言ってほしかった」。本当にそれ。相手はプロで、専門的なことを論理的に言ってるつもりかもしれないが、素人にとっては全くちんぷんかんぷんであることがたくさんある。
不安定な仕事で起きる、理不尽なこと。人間関係のいざこざ。
安定した、条件の良い仕事の求人を探しては、資格やら学歴やらの欄を見て自分は合致しないと諦める日々。
それと比べると、社会から隔離されたあの場所での生活は毎日やることがあって、安定している。定まっている。皮肉なことに。
サクマみたいな人、世の中に結構いると思う。生きるって、まともに人生を送ることって、大変だ。そして面倒だ。 -
前半と後半で環境が全く変わるのが、今までにありそうでなく、面白かった。
主人公に共感する人は多くはないだろうが、にもかかわらず、何ともいえない焦燥感が伝わってくるのはなぜだろう。
砂川さん、遠野遥さん、石田夏穂さんなど、今後に期待できる作家さんが多く出てきて嬉しい限り。 -
ここまで、読みやすい芥川賞受賞作に出会った事が
ありません。純文学の良さもありつつ、社会的メッセージも含まれていて良かったです。ただ芥川賞を
獲るとは思いませんでした。