掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 (講談社文庫)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065273074

作品紹介・あらすじ

2020年本屋大賞〔翻訳小説部門〕第2位。
第10回Twitter文学賞〔海外編〕第1位。

「アメリカ文学界最後の秘密」と呼ばれたルシア・ベルリン、初の邦訳作品集!


メディア、SNSで大反響!
朝日、日経、読売、毎日、東京、中日、北陸中日、北海道、河北新報、信濃毎日、京都、共同、週刊文春、週刊新潮、週刊朝日、文藝春秋、GINZA、MORE、FIGAR JAPON、VOGUE JAPAN、ELLE JAPON、クロワッサン、婦人公論、ミセス、本の雑誌、POPEYE、本の雑誌、mi-mollet、現代ビジネス、クーリエ・ジャポン、本の雑誌、図書新聞、週刊読書人、文藝、すばる、小説すばる、波、本、RKBラジオ、NHKラジオ深夜便、TOKYO FM。 J-WAVE……。「ダ・ヴィンチ」の「ひとめ惚れ大賞」受賞!

2013年にノーベル文学賞を受賞したアリス・マンローや、短篇の名手レイモンド・カーヴァー、日本で近年人気が高まっているリディア・デイヴィスなどの名だたる作家たちに影響を与えながら、寡作ゆえに一部のディープな文学ファンにのみその名を知られてきた作家、ルシア・ベルリン。

2004年の逝去から10年を経て、2015年、短篇集A Manual for Cleaning Womenが出版されると同書はたちまちベストセラーとなり、The New York Times Book Reviewはじめ、その年の多くのメディアのベスト本リストに選ばれました。
本書は、同書から岸本佐知子がよりすぐった24篇を収録。
この一冊を読めば、世界が「再発見」した、この注目の作家の世界がわかります!

このむきだしの言葉、魂から直接つかみとってきたような言葉を、
とにかく読んで、揺さぶられてください
――岸本佐知子「訳者あとがき」より

彼女の小説を読んでいると、自分がそれまで何をしていたかも、
どこにいるかも、自分が誰かさえ忘れてしまう。
――リディア・デイヴィスによる原書序文「物語こそがすべて」(本書収録)より

毎日バスに揺られて他人の家に通いながら、ひたすら死ぬことを思う掃除婦(「掃除婦のための手引き書」)。
夜明けにふるえる足で酒を買いに行くアルコール依存症のシングルマザー(「どうにもならない」)。
刑務所で囚人たちに創作を教える女性教師(「さあ土曜日だ」)。……
自身の人生に根ざして紡ぎ出された奇跡の文学。

感想・レビュー・書評

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  • ルシア・ベルリン
    『掃除婦のための手引き書』
    2020年本屋大賞翻訳部門第2位
    第10回Twitter文学賞(海外編)第1位

    大変申し訳ないが、掃除婦のハウツー本か何かだと思っていた
    全く違っていて、著者の波瀾万丈な人生に根ざした、24篇の短編集だった
    それも死後10年にやっと評価されたものだった

    翻訳ものだからなのか、度々出てくる独特な比喩表現や文体になかなか馴染めず、個人的に読みやすいものと読みにくいものに分かれてしまった
    しかしながら、今なんて言った?!と一瞬聞き逃してしまいそうな程サラッとしたユーモアのある表現が面白かった

    ルシア・ベルリン、アラスカ生まれ
    アメリカ西部の鉱山町、エルパソ、チリ、メキシコ、アリゾナ、ニューメキシコ、ニューヨークとたくさんの場所に住み移る
    掃除婦、看護師、病院の事務員、シングルマザー、女性教師、電話交換手と様々な顔を持つ
    三度の離婚と結婚、息子が4人
    アルコール依存症
    本人も祖父も母も叔父もみんなである性的虐待、孤独だった幼少時

    面白かった話は、
    『どうにもならない』
    『セックスアピール』
    『ドクターH.Aモイニハン』
    『エルパソの電気自動車』
    まるでコメディ映画を観ているかの様だった

    『どうにもならない』
    アルコール依存症なので、発作が起こるとそれこそ『どうにもならない』
    酒屋が朝開店するのを必死に耐えながら待ち、息子達が起きる前にウォッカを買いに行くその姿は死に物狂いなのだが、何故かおかしい
    植え込みや木の幹につかまり、歩道のひび割れを数えながら、よろよろと失神寸前に酒を手に入れる

    『エルパソの電気自動車』
    スノーデンさんの運転は制限速度すら出せない、しかも道路の真ん中を走る
    パトカーに停められ注意されると、そんなに出せないと逆に怒る
    それに左折という行為が出来ない
    真っ直ぐか右折しか出来ないので、
    目的地になかなか着かない
    だから乗車していた著者は、尿意を我慢できずにもらしてしまう

    他の話は孤独や死別、貧困、確執等といった話が多かったが、悲劇を悲劇として感じさせない著者の強さを感じた

    読み終えた今、私もこの人の様に人生の短編集を描くとしたら、何を選ぶだろうかとふと考えてみた

  • ブクログのレビューをはじめ、各所から絶賛の本作。

    しかしながら、びっくりするほどわたしには合わなかったようだ。
    それは読み進めても変わらず、久々の断念…
    わたし自身が年度末で多忙だったせいなのか、前に読んでいた『黄色い家』が素晴らしすぎたせいなのか、受賞作品がこれ程合わない自分の感性を疑う。
    また気分が乗ったら読もうかな。

    この作品を読む少し前、ダメンズを断ち切って以来初めて、やっとこんな気持ちになれたな~という人に出会ったのですが、どうやら失恋したようです。
    それも相まって。
    今回は断念。次へいこう。
    でもすき。

  • 様々な年齢、様々な境遇、様々な性格。
    カラフルな色彩から色味の全く感じられない灰色まで。次に現れる文章は果たしてどんな色味を放つものなのか。浮き沈みの激しい荒波に、読み手ものみ込まれそうになる。
    けれどそれら全てが、同じ一人の女性の人生。
    貧乏暮らしから一転して裕福な上流階級へと転身。
    性的虐待、依存症、病気などに強いられる苦難の連続。
    結婚・離婚を3回繰り返し4人の息子のシングルマザーとなり、教師、掃除婦、電話交換手、看護助手と様々な職業につく。
    そんな波乱万丈な継ぎ接ぎだらけの彼女の人生を、一つ一つ丁寧に重ね合わせていった中身の濃い一冊。様々な色合いの文章の端々に覗かせる明るさと知性、潔さに目が離せなくなる。

    「後悔はないと言ったけれど、あれは嘘だ。でもあのときはこれっぽっちも後悔しなかった」

    どこか他人事のように客観的に綴られた彼女の一度きりの人生。時として一人でストレスを抱え眠れぬ夜を過ごす我々を救う手引き書となり得る。

  • アルコール依存症一家に生まれ、アメリカ合衆国、チリ、メキシコと居住地を転々としながら、2度の離婚、3人の夫、4人の子ども達と駆け抜けてきた著者ルシア・ベルリンの起伏に富んだ人生を下地にした短編集。

    正直、何を読み取るべきかは暗黙的で、単純なエンターテイメントというよりはいささか文学的。
    巻末で熱烈な賛辞を贈るリディア・デイヴィス氏、訳者あとがきで同様に褒め称える岸本佐知子氏ほどの感性をもっていない自分には、それほどまでの一編一編、一文一文の熱量を感じとることはできなかった。

    ただ、物語ひとつひとつが著者の人生に基づくものという背景を踏まえつつ、順不同で現れる年代をつなぎ合わせながら読んでいくと、”これが1人の人生!?なんて人生なんだ”という興味深い想いを得るし、ざらついた剥き出しの表現の中のそこここに散らばる感情のかけらに出会うと何とも言えない胸の詰まる思いがするのは確か。

    全体としての読書体験が味わい深い系の一冊。

  • 2020年本屋大賞(翻訳小説部門)第2位。
    少し前にずっとランキングに入っていたので「読みたい」に入れていたが、ようやく行きつけの中古本屋で見つけた。
    姪の結婚式に行って帰る新幹線の中で読み進む。

    家庭の事情で色んな土地・国に移り住み、祖父も祖母も父も母も妹も強烈な個性の家族の中で育ち、長じてからは男と一緒になって別れてを繰り返し、様々な職業を経験しながら4人の息子を育てる、といった作者そのものの実人生を題材にしたお話の数々。
    私には、面白いと思えたものとそうでもなくやや退屈に感じたものが取り混ぜてあった。
    アルコール依存症の生活を描いた3編(「最初のデトックス」「どうにもならない」「ステップ」)、コインランドリーが出てくる2編(エンジェル・コインランドリー店」「今を楽しめ」)、彼女を躍起になっていい子にしようとしたシスターと先生が出てくる2編(「星と聖人」「いいと悪い」)が印象に残る。
    「セックス・アピール」と「わたしの騎手」も好き。
    おしなべて、悲惨なことでもさらりとした語り口でユーモアやちょっとした笑いを感じさせるところが良かった。

    結婚式の中で、姪のこれまでの生い立ちを紹介する写真の中に亡くなった父や幼かった頃の息子の姿を見つけて、何だか胸が一杯になった。
    作者に比べるべくもない全く平凡な人生だけれども、それでもこうやって切り取ると自分にも結構色んなことがあったんだなぁと思わされた。

  • 原作はもちろんのこと、自分が読んだ邦訳が素晴らしいのだろう、リズムがとても心地よい。いつか原文にもチャレンジしてみたい。
    知性と環境とユーモアと好奇心‥‥どれだけの幸運が重なったら、作者のような文章を紡げるようになるのだろう? 至福の時間でした。

  • 衝撃的な映画を見ているよう。
    都度、映画が脳内再生されるのだ。
    衝撃的で奇抜、過酷なのに、ルシアのユーモアな文章がお話を華やかに、軽快にする。
    ルシアの人生の壮絶さを読後に悟ってしまうくらい印象的で、何度も読み返したく、クセになる。

  • この本を手にとった人は、まず、2つのことに強く興味を惹かれる。1つは、表紙写真のルシア・ベルリンの美貌に。もう1つは、帯に書かれた彼女の人生の波乱万丈ぶりに。
    1936年アラスカ生まれ。父の仕事の関係で、北米の鉱山町やチリで育つ。3度の結婚と離婚を経て、シングルマザーとして4人の息子を育てる。学校教師、掃除婦、電話交換手、看護助手として働く一方、アルコール依存症に苦しむ。2004年逝去。
    2015年、彼女の全作品の中から43編を選んだ作品集”A Manual for Cleaning Women”が米国で発売され、評判となった。本書はその中から24編を選んで翻訳されたものである。小説は、ほぼすべてが彼女の経験をベースにしている。
    本書を実際に読んだ人は、更に2つのことに驚く。1つは、彼女の人生が想像以上に波乱万丈であったことに。さらには、それを客観的な、時にユーモラスな語り口で物語に仕立てる彼女の作家としての腕前に。
    アルコール依存症時代、夜中にどうしてもお酒を飲まずにいられなくなり、夜明けを待って、4ドルを握りしめて酒屋に45分かけて歩いて行く。お酒を飲み落ち着きを取り戻し、帰宅し洗濯を始めたところに2人の息子が起き出してくる。学校に出かける2人を送り出したあと、彼女は自宅近くの角の酒屋に向かう。「どうにもならない」という題名の短編に書かれたこのような強烈なエピソードが続く。彼女の人生は、想像を超える波乱万丈ぶりなのだ。
    そういった物語を語る語り口にも強い印象を受ける。貧困や死やアルコール依存症といった悲惨な話を題材にしている短編が多いが、そこに愚痴っぽさや、後悔が全く感じられない。「楽しい思い出を語っているかのように」とは言い過ぎになるが、そのような独特な語り口は、彼女の物語にリアリティと活気を与えている。
    「まるで小説のような人生」ではなく、人生を語っていたら自然に小説になっていた。そんな印象の短編集だった。

  • 祝文庫化!

    むき出しの魂が心をえぐる『掃除婦のための手引書』 過剰さと色にあふれた叙述の話題作 | PRESIDENT Online(プレジデント 2020年7月31日号)
    https://president.jp/articles/-/34363

    人生何回ぶんも生きた米女性作家の短篇集 『掃除婦のための手引き書』 | BOOKウォッチ(2019/8/17)
    https://books.j-cast.com/2019/08/17009637.html

    掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 ルシア・ベルリン(著/文) - 講談社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065273074
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    単行本は図書館から借りて読んだ。猫的には泣ける話です。。。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「掃除婦のための手引き書」ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳|日刊ゲンダイDIGITAL
      https://www.nikkan-gendai....
      「掃除婦のための手引き書」ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳|日刊ゲンダイDIGITAL
      https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/304523
      2022/05/06
  • 貧困、病、薬物、酒、中毒と、目を背けたくなる重く苦しい描写の連続だけど、物語に引き込まれたのは、短い文章でテンポ良く少しのユーモアを交えた文章ゆえか、どこか何か共鳴する人生観を突きつけられたのか…
    登場人物の存在感も圧倒的。凄い…

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著者プロフィール

1936年アラスカ生まれ。鉱山技師だった父の仕事の関係で幼少期より北米の鉱山町を転々とし、成長期の大半をチリで過ごす。3回の結婚と離婚を経て4人の息子をシングルマザーとして育てながら、学校教師、掃除婦、電話交換手、看護助手などをして働く。いっぽうでアルコール依存症に苦しむ。20代から自身の体験に根ざした小説を書きはじめ、77年に最初の作品集が発表されると、その斬新な「声」により、多くの同時代人作家に衝撃を与える。90年代に入ってサンフランシスコ郡刑務所などで創作を教えるようになり、のちにコロラド大学准教授になる。2004年逝去。レイモンド・カーヴァー、リディア・デイヴィスをはじめ多くの作家に影響を与えながらも、生前は一部にその名を知られるのみであったが、2015年、本書の底本となるA Manual for Cleaning Womenが出版されると同書はたちまちベストセラーとなり、多くの読者に驚きとともに「再発見」された。邦訳書に『掃除婦のための手引き書』(岸本佐知子訳)がある。


「2022年 『すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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