激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972 (講談社現代新書)
- 講談社 (2021年12月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065265697
作品紹介・あらすじ
高揚する学生運動、泥沼化する内ゲバ、あさま山荘事件の衝撃。
左翼の掲げた理想はなぜ「過激化」するのか?
戦後左派の「失敗の本質」。
「この時代は、左翼運動が最高潮に達しながらその後急速な凋落を辿っていった時代にあたり、左翼史全体を通じても特に歴史の教訓に満ちた時代です。まさに、この時代は「左翼史の核心」と言えるでしょう。」(佐藤優)
「なぜ左翼は失敗したのか。この本では一貫してこの問いに立ち返ることになるでしょう。そして、左翼の顛末を歴史の教訓として総括することは、最も学生運動が盛り上がっていた1968年に大学生になった私の使命でもあります。」(池上彰)
自分の命を投げ出しても構わない。他人を殺すことも躊躇しない。
これが「思想の力」である。
いま、戦後史から学ぶべき歴史の教訓とは。
【本書の目次】
序章 「60年代」前史
第1章 60年安保と社会党・共産党の対立(1960~1965年)
第2章 学生運動の高揚(1965~1969年)
第3章 新左翼の理論家たち
第4章 過激化する新左翼(1970年~)
【本書の内容】
・60年安保は「反米闘争」か「反岸闘争」か
・「敵の出方」論をめぐる共産党・志位和夫の嘘
・「反スターリニズム」に賭けた新左翼の精神
・「反米従属」と「愛国」に舵を切る60年代共産党
・新左翼は「リアリズムを欠いたロマン主義」
・「第一次羽田事件」山崎博昭の死が時代を動かす
・戦う意志を貫き、代議制を捨てた「全共闘」
・行動の「中核派」、理論の「革マル派」
・「ニセ左翼」vs.「権力の泳がせ論」
・本屋で「火炎瓶製造マニュアル」が買えた時代
・「日大アウシュヴィッツ」という揶揄の声
・池上彰青年を「オルグ」しようとしたセクト
・卓越した思想家・黒田寛一と国鉄・松崎明の関係
・沖縄は「奪還」すべきか、「解放」すべきか
・日本人を「総ノンポリ化」した新左翼運動
・左翼は「人間の不完全さ」を自覚せよ ……ほか
感想・レビュー・書評
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昨年6月に出版された前巻では、社会党と共産党の理解が
自分比で以前より深まりました。
この巻では「新左翼」のこと。
「学生運動と過激派」とあるように、1960~1972は
そういう時代でした。
ときどきテレビで見る昔の映像
「東大紛争」「あさま山荘」「よど号事件」など
「あー、そういうことだったの!」とまあ満足しました。
佐藤優さんはこう言います。
「私たちがいま敢えて左翼史を若い人たちに学んでもらいたいと考え、こんな対談をしているのだって、その理由の一つは、影響を受けることで自分の命を投げ出しても構わない、そしていざとなれば自分だけでなく他人を殺すことも躊躇うまいという人に決意させてしまうほどの力をもつ思想というものが現実に存在することを知ってもらいたいからです。
そして人間に思想を紡ぐ力がある以上、それだけの力を持つ思想は今後も形を変えながら何度も現れるでしょう。
しかしそうした、人間を最終的には殺し合いに駆り立てる思想にしても、その始まりにおいては殺人とは無縁の、むしろこの世の中を良くしたいと真剣に考えた人たちが生み出したものではあるわけで、だからこそそれが、どういう回路を通ることで殺人を正当化する思想に変わってしまうのかを示したいのです」
そもそも「思想」というものに縁がない私。
終戦と今との間にこんな暴力的な事件が起こっていたことに驚きですが、この時代に生きていれば共感するようなことがあったのでしょうか?
あるいは何十年かして今の自分を振り返り
「あの時代の自分の思想はおかしかった」などと思うのか?
さて第三巻ではその後の日本の左翼運動の動向、
あるいは社会党の没落についてだそうです。
ソ連崩壊の影響が大きそうですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今まで何となくでしか知らなかったあさま山荘、よど号ハイジャック事件など、背景や経緯を理解することができた。
池上さんの以下の文章は是非引用したい。この文章に違わず、ある種の覚悟を感じる本。
「なぜ左翼は失敗したのか。この本では一貫してこの問いに立ち返ることになるでしょう。そして、左翼の顛末を歴史の教訓として総括することは、最も学生運動が盛り上がっていた1968年に大学生になった私の使命でもあります。」 -
左翼、ってなんだ?
マルクス、スターリン、日本赤軍、ブント…聞いたことはあるけれど、「なんかやべー奴ら」としか思っていなかった。
左翼といえば革命。
革命を担うは労働者、労働者の権利といえば労働組合。
誤解なきようはじめに言うと、労働組合そのものは労働者の権利であって全く悪いものではない。
だが、「九条、沖縄、団結せよ!」しか言わない(しかも組合費の使途は不透明でやたら高い上に私の給料も待遇も上がらないし)会社の労働組合はとっくに抜けた。
せいせいした〜
だが、その程度の認識でいいのか?よく知らないままでいいのか?
「なんかやべー奴ら」の歴史を知りたい。
学校や資格試験の勉強、普段の仕事では出てこないことをちゃんと知りたい。
本書は佐藤優氏と池上彰氏の対談形式。
どちらもまだ学生運動華やかなりし頃に学生時代を過ごしている。
左翼の思想から学ぶことは多い、と彼らは言う。少し構えた。
しかし彼らは何も暴力革命を煽っているわけではない。
本書は可能な限りフラットに語ろうとしているように思えた。
分裂していく思想、政党の変遷…こうしたものを見ると、人間の善き面だけではない多様性を感じた。
確かにどこからでも学ぶべきものはある。
まだ、私は左翼を知らない。 -
日本左翼史第二弾「激動」
第一弾である「真説」はなかなか理解が難しい部分が多かったが、今回の「激動」は学生運動やよど号、あさま山荘等実際に起きた出来事、事件を題材にしていることもあり、非常に面白かった。
読んでいて思ったが、正直共産党や社会党の成り立ち、歴史等はあまり興味が持てなかったし、分裂や合流が複雑すぎて理解が追いつかなかった。
ただ、左翼という思想を発端にして、いかに学生運動等のできごとが起こったか、そこに至るまでの経緯や思想、考え方についてはある程度理解できたのではないかと思う。また左翼という団体がなぜ過激な暴力という道に進んだのかもなんとなく理解はできた。
左翼という思想が起こした歴史は決して肯定されるものではないが、元は純粋に国の行末を案じての行動だったに違いない。果たしてそれだけの想いをいる大人現在がどれほどいるだろうか。当時の人達が今の選挙率を見たら失望の念を抱かずにはいられないはずだ。この国のことを少しでも真面目に考える一つのきっかけになったと思う。 -
左翼はなぜ過激になるのか。(右翼にもあてはまりますが)豊富な事例を分析しながら解き明かす。現代への示唆もしっかりあります。おすすめです。
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まあ、二人の対談なので分かり易いのはもちろんなのですが、共産党批判でもある。政治的な立場はリベラルからの左翼批判かな。
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知らないことが多い。こう言う流れでこう言う事が起きたのかと改めて整理出来た。あさま山荘事件とか。テルアビブ空港乱射事件なんて知らなかったし、よど号事件も知らなかった。もっとちゃんと知らないとダメだな。しかしこのエネルギーはどこから来るのか。そう言う時代だったという事なのだろうが、このエネルギーが何処に行ってしまったのかも謎だ。今の若者も政府から過剰なコロナ対策で青春を奪われまくっているが、誰も抵抗しない。革命起こしても良いくらい理不尽に痛めつけられているのに。老人支配国家だし。過度な暴力や内ゲバとか、やっぱり引くよな。支持を失うよ。次の巻も出るようだから読んでみよう。マルクスとか勉強した事ないけど、ちゃんと知っておかなければならないのかな。佐藤氏はそう言う面ではこの頃の新左翼は勉強していたし知的レベルは高かったと評価していた。そんなものなのか。
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1巻目もそうだったが、理論家の登場人物が多すぎて頭こんがらがる。
そして事実の解説部分と佐藤優さんの自説開陳部分の区別をもう少し明瞭にしてもらいたい。
60年安保→その後空白期間→68年東大闘争→ますます過激化し70年よど号ハイジャック事件など
という流れは改めて理解できた。
それからこれは次の巻で語られるのかもしれないが、新左翼が世間から見放されたことはわかるがそれがどう社会党と共産党の凋落に結びつくのかをもう少し詳しく解説してほしい。
だって流石に規制政党は新左翼みたいな内ゲバやらないでしょ、と普通考えると思うので世間が左翼全体を見放すにはもう少しいくつかの要素がいるんじゃないか。と思ったりした。
今を生きる私たちにとって重要なのは、佐藤優が何度か言及している「左翼とリベラルは違う」という点を理解することなのでは?
リベラル=左翼と思われてるし当事者もそう思ってると思うので、次の巻ではその点をもっと語ってほしい。
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2024/2/6読了
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池上彰、佐藤優著『激動日本左翼史 : 学生運動と過激派1960-1972 (講談社現代新書 ; 2643)』(講談社)
2021.12発行
国民の生活が豊かになっていくと、人は保守化していく。ところが、日本社会党や日本共産党などの既成左翼や新左翼は、内ゲバを繰り返しながら、どんどん過激化していき、およそノンポリがついて行ける組織ではなくなってしまった。
その結果、日本社会党や新左翼は支持を失い、スターリン主義政党である日本共産党だけが今日まで残ってしまった。何とも情けない話である。
2023.12.17読了
URL:https://id.ndl.go.jp/bib/031859931