生涯弁護人 事件ファイル2 安部英(薬害エイズ) カルロス・ゴーン 野村沙知代・・・・・・
- 講談社 (2021年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065261101
作品紹介・あらすじ
安部英(薬害エイズ事件)、カルロス・ゴーン、野村沙知代・・・マスコミを騒がせた問題人物は本当に罪を犯したのか。「悪人」に仕立てられた人たちの知られざる素顔と事件の真相。絶対的に不利な状況から数々の無罪判決を勝ち取り、「無罪請負人」と呼ばれる弘中淳一郎弁護士が初めて公開する全事件簿。マスコミと刑事司法が作り出した虚構のストーリーの裏に隠された、知られざる物語に、あなたはきっと驚愕する。
村木厚子事件(厚労省郵便不正事件)、小澤一郎事件(陸山会政治資金規正法違反事件)、鈴木宗男事件、マクリーン事件、クロマイ・クロロキン薬害訴訟、医療過誤訴訟、三浦和義事件(ロス疑惑)などを扱った「事件ファイル1」も同時刊行。
感想・レビュー・書評
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2分冊になっている、弘中弁護士の「生涯弁護人」の2巻目。1巻目、2巻目ともにボリュームがあり、本書は460ページを超える。2冊で、1,000ページ近くなるが、とても面白く短期間で読むことが出来た。
1巻目も興味深い事件が取り上げられていたが、この2巻目も面白い事件が取り上げられている。安倍英医師の薬害エイズ事件。野村沙知代事件。そして、カルロス・ゴーン事件。その他にも興味深い事件が多く取り上げられている。安倍医師の事件、カルロス・ゴーン氏の事件は、これまで新聞やテレビの報道などで知っていた内容、感じていた印象が大きく変わった。安倍医師、ゴーン氏に対しての検察起訴・逮捕は、全くの冤罪だという考えに変わった。弘中弁護士は、本書の中で、実際の事件での弁護団の弁護方針・戦略、更には、証拠等の具体的な内容についても触れており、本書に描かれているストーリーは信ぴょう性が高い(実際に安倍医師は無罪になっている)。また、ゴーン氏の逮捕・起訴・裁判の進行に関しては、「日本の司法制度は前近代的である」との批判が外国から多く寄せられていたことも、あらためて思い出したし、本書を読めば全くその通りだと思う。
ひとつひとつの事件に真摯に取り組む誠実さ。事件の核心を理解し、それを弁護方針・戦略に生かす弁護士としての腕の良さ。実際の弁護の場面での労力のかけ方や実務的な能力など、実際に事件に巻き込まれて弁護士が必要になった場合には、是非とも弘中弁護士にお願いしたいと感じた。
本書のあとがきに、ご本人が書いている自分に関しての描写は下記の通り。1,000ページ近い本の中で読者が感じるであろうイメージと全く異なるが、こういったつもりで「生涯弁護人」を務めておられたのであろう。
【引用】
私は、そんな考え方なので、とりたてての主義主張もなく、誇るべき専門領域も著書もなく、地位名誉にも縁遠く、財をなすこともなかったが、半世紀の間、そのときどきの事件に首を突っ込んで、私なりに好奇心を満足させてきた。そのうえ、このような形で、それらをひとまとめにできて、一人悦に入っている次第である。
【引用おわり】
とても格好良い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
弘中弁護士が携わってこられた印象的な事件や社会的影響の大きい事件を中心に、事件概要や弁護士としてどう関わってきたか、裏話などを含めて語られている。
難しい法律用語も多い中で、素人にもわかりやすいように解説されているので読みやすい。
なにより担当されている事件が興味深いものが多く、面白く読めた。
日本の司法の問題点も理解できる。 -
検察の調べ方に問題があるのはわかったが、
被告人の罪については、素直に弁護士の主張通りなのか疑問に思った。 -
自身の弁護経験に基づく「司法の現状」を紹介。
これは同時に「日本社会の現状」とも言えるし、
「日本人の無関心・無責任さ」への指摘ともいえる。
そういう意味で、なかなか読んでいてツライ。
私は図書館予約の都合上②を先に読んだが、
文中には①からの流れを含む表現も時々出てくるため、
事件ファイル①から順に読むことをお勧めする。 -
日本の司法制度の問題点を炙り出す小説はかなり読んできたつもりだが、当事者の経験と視点によるノンフィクションの前には沈黙してしまう。たとえ弁護人という一方からの独善的な偏りがある立場だとしても。それほど重く深い作品だ。国策捜査の闇を暴いた佐藤優氏の「国家の罠」と共に多くの日本人に読んでもらいたい作品。図書館で借りている都合で事件ファイル1は未読なので、早く読みたいと思っている。特に村木厚子事件は丹念に読みたい。
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1、2巻合わせて1,000ページを越す大著だが、事案一つ一つがスリリングであっという間に読んでしまった。
本書の数々の事案の中には村木さん事件のように検察の証拠ねつ造の暴露で詳しく知っていたものもあったが、相当の誤解をしたり、メディアの虚構に惑わされたケースがたくさんあることを知り驚いた。その最たる例が薬害エイズ事件だ。20年以上も前のことなのに、この方は悪人ではなかったの?と思いがするほど、すり込まれていた。メディア・司法・受け身で情報を理解する我が身の問題が凝縮されている。そんな中で著者のように正義感を持って行動する専門家がどれだけ有り難く心強いことか。
本書の中にえん罪がなくならないのは、国民の間に悪いやつを捕まえて、早くよそへやって欲しいという願望があるのではないか、それが1つのえん罪を生むことがあっても犯人を逃さないで欲しい、という思いにつながっているのではないかとの趣旨の記述がある。問われてハッとしたが、一方的な検察批判、裁判所批判だけでは収まらない恐ろしさ、根の深さを感じた。 -
前著が面白かったので、本著も読んでみた。
カルロス・ゴーン事件が気になったので、メディアが報道しない裏側が書かれていて面白かった。 -
ファイル①②と、2冊構成になっており、ページ数もそれなりあるが、平易な文章で読み易かった。
内容も素人の私には、新鮮だった。
大津事件の伝統もあり、漠然と日本の司法に対して、ある程度の信頼感を抱いていたが、全くの幻影だと悟った。
有罪率を上げる為、証拠の捏造、改竄を厭わない検察。検察や、マスコミの印象操作に踊らされ、公正な判断が出来ない裁判官。著しく冤罪のリスクが大きい日本の司法制度。
徴用工を巡る、政治や世論に阿る韓国の裁判所の判決を見て、何て遅れてるんだと感じていたが、日本の司法制度も同様で、明治以来全く進歩していない。
カルロス・ゴーンの事件、ロス疑惑についても、マスコミの報道をそのまま信じてはいけないと思った。鈴木宗男や小沢一郎に対するイメージも変わった。 -
一巻に続き、読み始めたら最後。ずっと読んでいたくなる。読者に「真実を知りたい」と思わせる一冊。