- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065246290
作品紹介・あらすじ
灘中学校入試問題にも使われた、日本児童文学者協会賞受賞作『むこう岸』の安田夏菜、書き下ろし最新作!
藤堂ミハイル――堤中学二年。父は日本人、母はロシア人。髪は栗色、瞳は茶系でくっきりとした二重まぶた。そば屋でそばなんか食ってると、「まあっ、日本人みたいにおはし使ってる」と知らないおばさんに騒がれたりする。
山口アビゲイル葉奈――転校生。ルーツはアメリカと日本。モコモコとふくらんだカーリーヘア。肌の色は、ちょっとミルクの入ったコーヒー色。縦にも横にも大きい。日本生まれの日本育ちで、日本語しか話せない。好きなことは……。
すべてが規格外の転校生は、オタク的に「蟲」が大・大・大好き! カミキリムシ、カナヘビ、ワラジムシ、ハエトリグモ……!! 教室のあちこちから上がる悲鳴!!! クラスは騒然!!!!
ミハイルと葉奈、そして科学部の面々は、生物班の活動存続をかけ、学校に「科学的な取り組みの成果」を示さなければならないことになってしまった。ミックスルーツの中学生が繰り広げる、とってもコメディでバイオロジカルな日々をご覧ください!
感想・レビュー・書評
-
そろそろ小学校卒業の6年生向けの本を探して読んでいる本の中の一冊。
日本人の父とロシア人の母を持つ藤堂ミハイルは、日本育ちながらもいかにも白人系の外見と名前から勝手なイメージを持たれたり、不要な注目を集めてきた。中学2年生の今では、目立たず波紋をたてずに地味に生きていこうとしている。入っている部活も「科学部電脳班」と名前だけは格好いいが、特に目的もなくのんびり過ごすメンバーの集まりだ。
そんなミハイルのクラスに新学期の転入生山口アビゲイル葉奈が入ってくる。アメリカ人父と日本人母の間に生まれて、ミルクコーヒー色の肌と、カーリーヘアと、縦にも横にも大きな体を持つが、日本生まれ日本育ち、英語は話せないし好きなものはお茶漬けでスポーツは全くダメ。最初の挨拶で「好きなものは『蟲』です!!」と言った葉奈は初日から完全に周囲から浮いてしまう。昆虫の「虫」ではない、虫三つの『蟲』。爬虫類、両生類、甲殻類も含む小さな生き物全般のこと。
葉奈は学校に生物部がないと知るとその立ち上げを訴え、ミハイルたちの「科学部」の一部の「科学部生物班」として1人で活動することになった。
葉奈が学校にせっせと持ち込むカナヘビやワラジムシ、ハエトリグモは、全生徒の悲鳴を呼び、理科室は魔界扱い。ミハイル達「科学部電脳班」も変な目で見られてしまう!?
周りが騒げば騒ぐほど自分のやりたいことを押し通す葉奈は、浮いているどころかほとんどいじめの対象になっている。
最初は避けていた「科学部電脳班」のメンバーだが、キラキラした眼で蟲たちへの情熱を語る葉奈の姿に興味を持つようになる。
しかし多くの蟲を持ち込む1人だけの部活動には、生徒や親たちからの苦情が相次ぐ。そして学校から科学部存続の条件として「『科学部』だと言うなら、科学的な取り組みをすること」と言われてしまう。科学部「電脳班」は、「生物班」(葉奈だけ)に協力して生物研究のテーマを決め、研究成果をレポート提出することになった!
===
日本と別の国の両親を持つが日本育ちで日本の考えを持つのに「〇〇が得意っぽい」と決めつけられたり、自分の考えや振る舞いをいちいち「お前は普通の日本人ぽいよね」と言われたりすることへの疎外感。
中学生の部活動の考え方。「生物にエサをやるだけなら小学生の係。科学とは、物事の本質についてこうではないかと考え、その考えが正しいかどうかテータや論理を使って検証する行為のことです。自分たちでできますか」と言われて「自分たちはもうガキじゃないんで、やります!」という意地。
哲学的なややこしいロシアのことわざや、生物科学の豆知識も面白かったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白かった!子供向きというよりは、ローティーンを中心に、大人も楽しめる作品です。字が大きくて、老眼フレンドリーではある。悩める中学生、藤堂ミハイルのクラスと科学部に蟲屋の転校生、山口アビゲイル葉奈がはいってくることによって、悩ましくもキラキラしい中学生活が紡がれる。ミヤマカミキリ、カナヘビ、ワラジムシ、ハエトリグモ、ボウフラ、アカスジキンカメムシ、ミジンコ。だらだらとコンピューターの前で時間を潰していた科学部に生物班をつくり、活動をみとめてもらうために、研究発表することになる。
この山口さんにとっても共感を覚えますねぇ。とても素晴らしい。
刺さったところはといいますと
私の大好きなジャンピングスパイダーを生物班で飼育しはじめて、電脳班の生徒が見にきた時
>”奈々花が平尾先輩からルーペをひったくった。
「相手はクモですよ。そんなものキモいに決まっ・・・、えっ?」
目を見はっている。
「なにこれ・・・。かわいい・・・」”
可愛さとか、可愛いと感じるか感じないとかって、
実は、どうってない理由やったりしたり、
外部からの刷り込みや、
同調圧力だったりするもんですし、
最近よくいわれるのは、親が異常に昆虫を差別する子供は
昆虫をみようともせずに、嫌う傾向にある、というのがよく言われますな。
最近、自然科学系の蟲屋なんかが、よく両親や近しい大人が子供の興味の対象を問答無用で否定しないようにという、啓発を行っているのを目にします。
あとは、たくさんでてくるミハイルのロシアのことわざが面白かった。
”猫はいつもバター祭りなわけではない。”
人間万事塞翁が馬、
バターでヒャッハーな猫も、明日はどうなるか、、
ていうか、バター祭りて、、(あはは)
ちx〜る祭りみたいな感じか(あはは)
みんな悩んで大きくなるんですわ。
そして、大人になる前に、
いろんな耐性を身につけるわけですな。-
jubeさんこんにちは。
これから中学校に上がる小学生向けの本を探していまして、こちらの本をjubeさんのレビューで知り、読んでみまし...jubeさんこんにちは。
これから中学校に上がる小学生向けの本を探していまして、こちらの本をjubeさんのレビューで知り、読んでみました。
蟲の話もおもしろいし、勢いもあるし、先入観とか、「自分たちもうガキじゃありません!」という気持ちとか。
良い本を紹介いただきありがとうございます(^o^)2022/03/05 -
淳水堂さん、おはようございます。
今頃コメントに気付いて申し訳ないです!!
好いた本を好いてもらえるのって、とても嬉しいです。
コメン...淳水堂さん、おはようございます。
今頃コメントに気付いて申し訳ないです!!
好いた本を好いてもらえるのって、とても嬉しいです。
コメントありがとうございます!!2022/05/16 -
jubeさん
いえいえ、返信ありがとうございます。
「セカイを科学せよ」は、今年の「夏の課題図書 中学生の部」に選ばれてますね。
読者...jubeさん
いえいえ、返信ありがとうございます。
「セカイを科学せよ」は、今年の「夏の課題図書 中学生の部」に選ばれてますね。
読者増えそうですね。
https://www.dokusyokansoubun.jp/books.html#42022/05/17
-
-
2022中学生 課題図書。外国人に間違えられる見た目のせいで嫌な思いをした為、目立たないようにしている男の子のクラスに転校してきた、見た目がアフリカ系の葉奈。蟲に夢中の葉奈にクラスも科学部電脳班のメンバーも面食らうが、真っ直ぐな葉奈にだんだん考えが変わっていく。差別と区別は違う、そうだなぁ、この本面白かったなぁ。
-
理科部の生徒に読ませたい❗️深く考えさせられるところとお腹を抱えて笑ってしまうところと、本当にいい塩梅でした。小学生高学年でも十分わかる内容。大人から子どもまで幅広く読まれる作品。
-
新刊本の棚より。白人ルーツの少年、黒人ルーツの転校生の少女などいわゆるハーフ(というのはあれなので、ダブル、ミックス)の登場人物が出てくる。私はむしは苦手なのでちょっとだめな描写もあり。
-
藤堂ミハイルは日本人の父、ロシア人の母を持つミックスルーツの中学2年生
「おまえって、ガイジンだろ」
「ガイジンじゃないっ」
白人系の外国人に見える外見がコンプレックスになり、目立たないように生きている──俺ってナニモノなんだ?
そのクラスに転校してきた山口アビゲイル葉奈は父がアメリカ人、母が日本人のミックスルーツ
“見た目はまるっきりアフリカン”だが日本語しか話せず運動神経もゼロの葉奈は「好きなものは……ムシです」と自己紹介し、クラスの空気が変わる
その葉奈が学校に持って来たのがカミキリムシ
ミハイルたちやる気のない科学部電脳班の隣で生物班として「蟲」の世話を始めると……
「ハーフ」「ダブル」「ガイジン」「オーベー」「外国にもルーツがある国際児童」「日本人みたい」「外国ルーツの人」「普通の日本人」「日本的な人」
偏見の中で出自に悩み生き方に自信が持てないミハイルと葉奈
「……だから本質を追究することがたいせつなんです!」
科学部の面々と部の存続をかけた活動を通してミハイルがたどりついた心境は
──犬が吠え、風が伝える。それでもキャラバンは進む──ロシアのことわざ
《ミックスルーツの中学生2人が巻き起こすバイオロジカル・コメディ》──帯の紹介文
『むこう岸』で第59回日本児童文学者協会賞(2019年度)を受賞した安田夏菜の最新書き下ろし意欲作、2021年10月刊
蟲と科学をモチーフにマイノリティに視点をあてた部活成長物語、文句なしにおもしろい
カナヘビ、ワラジムシ、ボウフラ、ハエトリグモ、そしてミジンコ
“ムシ”と聞いただけでムシズの走る人も蟲がかわいく思えてくるに違いない -
3.5
読みやすく毒の少ないお話。
本質をとらえろというのはそーだと思う -
第68回(2022年度)青少年読書感想文課題図書
中学生の部
内容:「すべてが規格外の転校生は「蟲」が大・大・大好き!!日露にルーツを持つミハイルは、日米にルーツを持つ転校生・葉奈と科学部で一緒になり……。ミックスルーツの中学生たちが繰り広げるバイオロジカルコメディ!」
【選定理由】
男女2人の主人公の対比が際立ち、物語の展開が面白い。外国人への偏見の描き方が紋切り型でなく、科学部を舞台とした活動は科学の視点からも興味深く、さまざまな視点から感想文が書ける。 -
課題図書をおっさんが借りてしまい、読もうと
思った人の邪魔をしているかもしれん(´・ω・`)
自分ってなに?悩み・拘り思春期を過ごす感覚
本書をよんで思い出し・・・昔すぎてわからん
ので想像してみました、読みやすい良書です -
これは名作。
構成は、ほぼ完璧といっていいと思う。ミックスルーツの主人公、人との違い、人種、種。なぜしつこいほどに界門綱目科属種を繰り返してきたのか…最後の「種」の話に集約される。
私たちは、「哺乳綱霊長目ヒト科ヒト属ホモ・サピエンス種」であり、かつてヒト属にいた北京原人・ジャワ原人・ネアンデルタール人は絶滅している。チンパンジー属は2種、オラウータン属は3種。DNA解析の結果、肌の違いがあろうが同じ種だということが科学的に証明されている。
はなは我が道を行くタイプだけど、科学部電脳班の協力があったからこそ父の愛(たぶん)に気づいた訳だし、電子機器への偏見からも抜け出せた。
ミハイルもはなも、交流し、理解することで世界が自分を深く理解し、解放していっている。
「目立つのはしょうがない、人一倍非難されるのもしょうがない」とも取れることを言われて以来、目立たないように生きてきたミハイル。
「偏見なんてなくならないんだから」「みんな悩んでることはあるよ」なんて、なんて意味のない言葉なのか。
そして、愛や気持ちだけでは結果を残せない。目に見える形にして残せるのが科学。
良質な多様性YA作品でした。