猫弁と鉄の女

著者 :
  • 講談社
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065237700

作品紹介・あらすじ

累計40万部突破、大人気「猫弁」シリーズ!

冴えない容貌、天才的な頭脳……自分のことは後回しで人の幸せを第一に考える稀代のお人好し弁護士、百瀬太郎。
婚約者である大福亜子との間にとうとう進展が……!?

今日も変わらず奇妙な事件を引き寄せる百瀬。
迷子のサモエドを追いかけて依頼人からの預かりもの(カメレオン)を喫茶店に忘れ(出入り禁止となる)、サモエドを一時的に預かることになった老婦人の庭からは埋蔵金が……!

今回の物語で、もうひとりの主人公とも言えるのが、二世議員の宇野勝子――通称「鉄の女」。
東京の花粉一掃を公約に、もえぎ村の杉林伐採を掲げるが、その行方は……。

宇野勝子、その対抗馬の桃川いずみ、サモエドを預かることになった小高トモエ、そしていよいよ出産する春美、百瀬顔負けの真っすぐさで仕事に取り組む亜子……彼女たちからは「人生いろいろ」という当たり前のことを教えられ、ぽかぽかとした勇気をもらえます。

今まで「猫弁」を読んだことがない人でも大丈夫!
今作からでもお楽しみいただける、そんな優しくあたたかい作品です。

感想・レビュー・書評

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  • 〈猫弁〉シリーズ第七作。

    迷い犬のサモエドを一時預かりをしている独り暮らしの婦人・小高トモエ。彼女の家の庭からサモエドが掘り出したのは何と、千両箱。
    二世議員の宇野勝子が選挙に向けて打ち出した公約は何と、花粉症対策のために杉を刈り尽くすこと。
    もえぎ村には伝説の木こり・森林蔵(通称もりりん)がいて山の管理をしているが、その姿を見た者はいない。

    今回も様々な案件が交差し、次第に一ヵ所へ集約されていく過程が楽しい。
    あれとこれがこんな風に繋がるのか、と感心しながら読めた。

    大山さんの作品にはくせ者はいても嫌な人は出てこないので安心して読める。
    ただ百瀬の過労とそれに見合わない貧乏振りは気になっている。しかし亜子がそこに気遣いをしてくれたのは嬉しい。

    シリーズで言えば、まずは百瀬と亜子の気持ちがグッと近付いたのが良かった。これまでもほのぼのしていて良かったが、婚約者というよりは婚約ごっこをしているような二人だったのでこのまま永遠に関係が進まないのかと心配していた。これからは今までとは違う二人が見られるかも知れない。

    春美は無事に出産、前作からレギュラーメンバーになった直は勉学とアパートの大家代行と百瀬の事務所アルバイトと忙しくも充実した日々を過ごしているようだ。
    事務所の野呂と七重は百瀬の人の好さに呆れつつ小言を言いつつ見守ってくれている。

    何よりも三度目の正直で百瀬は母親と再会出来た。たった三十分だけの短い再会だったが、百瀬はある重大な発見をする。母親の見方が変わりそうだ。

    このシリーズを読んでいくと、様々な難しいトラブルや問題も知恵を集めて柔軟に考えることの大切さを改めて思う。

    ※シリーズ作品一覧
    (★はレビュー登録あり)
    ①「猫弁~天才百瀬とやっかいな依頼人たち」
    ②「猫弁と透明人間」
    ③「猫弁と指輪物語」
    ④「猫弁と少女探偵」
    ⑤「猫弁と魔女裁判」
    ⑥「猫弁と星の王子」★
    ⑦ 本作 ★

  • 好き、の一冊。

    このシリーズはほんと好き。
    物語の登場人物、誰もが好き。もうこの世界に自分も置いてもらいたくなる、それぐらい好き。

    今作はその気持ちが終始溢れっぱなし。

    迷子の犬からの出会い、埋蔵金、議員選挙、杉林伐採、亜子との関係、母との面会、と盛りだくさんながらも全てが風呂敷が畳まれていくようなストーリー展開でお見事。

    誰もがきちんと自分の居心地の良い場所を得ていく様は自然の理に従うような感覚で心地良い。 

    姫を迎えにくる王子さまは果たして何で迎えに来るのかな、馬車の変わりは何かな、次作の展開を想像するだけで幸せ。

  • 猫弁新シリーズ2作目ですね。
    正直な弁護士百瀬と婚約者のまっすぐな婚活アドバイザー亜子の心揺さぶれる物語。
    大山さんの作品にはいつもほんわかさせられながらも、人生の機知と人情の深さを感じられます。そして涙も、ついもらい泣きしてしまいます。今回も最後のページでやられました。
    前作で登場した直ちゃんも浪人生として大活躍。亜子の親友の春美も一役かっています。
    今回は二世議員の宇野勝子の二回目の選挙をめぐる事件に巻き込まれての騒動劇。
    登場人物の妙と人間模様にハラハラドキドキで楽しく優しく読了してしまいました。
    百瀬と亜子の婚約騒動も引き続き、次回作がとても気になります。

  • リードもつけずに、大型犬と歩く老婦人。
    心配になった百瀬は、そのあとを追うが……。

    シリーズ第7作。

    ポチと小高さんのおだやかな日々に、ほっこり。
    花粉症対策を公約にした二世議員、宇野勝子のまっすぐさも、さわやか。

    さまざまなエピソードが収束していく展開も、おもしろかった。

    最後の母娘には、じーんとくる。

    そして、もどかしかったふたりの関係が、ついにおおきく動き出す。

    口下手な猫弁の、亜子への思いが伝わる行動の数々に、胸が熱くなる。
    次作が楽しみな終わり方。

  • 何だろう、結局何も解決していないのに、満足した気持ちで読み終われる。それって、自分が見付けた夢に向かって前向きに進もうとする強い意思と意欲が、ほのぼのとした物語の展開の中でも、しっかり伝わってくるからかな。猫弁シリーズ、ずっと続いてほしいな。

  • 猫弁第2シリーズの第二弾。
    伝説の木こりはロマンに溢れているし、花粉症対策は現実的!
    サモエドかわいい。

    猫弁こと、百瀬太郎が、またまた厄介なものを預かるところから始まる。
    迷い犬のサモエドをポチと名付けて飼う事になった、一人暮らしの老婦人・小高トモエ。
    選挙公約に「花粉症撲滅」を掲げ、杉を伐採しようとする、衆議院議員の宇野勝子。
    勝子が試験的に杉の伐採をするために土地を買い取った「もえぎ村」には、イケメン村長の恩田が居り、滅多に姿を表さない伝説の木こり・森林蔵が存在した。

    それぞれ別のところで流れていたお話は、いつの間にか合わさって大河になる。
    アルプスの少女的な牧歌的ラストは光に溢れて・・・
    しかし!
    なんとも「後日」を想像してやまない、いや、やめられないではありませんか?!
    いや、主人公・百瀬と婚約者の大福亜子のことではない。
    あの二人はゆっくりとしか進まないし、ゆっくりだけど必ず進む。
    気になるのはもえぎ村のその後である。
    こっからネタバレ!

    森林蔵の「意中の人」「一人で立つ女」とは?
    勝子が月に一度、「山を学ぶため」山小屋に泊まるというのは?
    林蔵の『杉を学べ』『山に来るか?』という問いかけは「嫁に来ないか」と訳せないだろうか。

    今まで代々の森林蔵がもえぎ村の杉林を手入れしてきたが、今のところ林蔵には跡継ぎがいない。
    時代が変われば、村の在り方も変わるだろう。
    これからは段々と行政に任せて行くのだろうか。
    林蔵は、新しい考え方の持ち主らしいし、案外、子供の頃に縁があった村長の恩田が、林蔵の意思を引き継いでいくのかもしれない。

    ーーーーーーーーーー
    前作から登場の正水直(まさみず なお)ちゃんがレギュラーになって、若々しい風が吹く。
    宇野さんの秘書だった、カメレオン佐々木が意外にいい味を出している。
    多くの小説では、いい人として登場することの少ない、政治家やお金持ちやカリスマ占い師も、この作品では皆いい人として描かれている。
    気持ちの良いことです。
    百瀬がやっとお母さんに面会できたのも良かった。
    離れていても、忘れているようでいても、母の心の中にはいつも我が子が住んでいる。

  • シリーズ7作目。
    今回も猫弁始め、登場人物皆の心の清らかさや優しさにほっこりした。
    宇野カツさんの花粉症対策や活動も今後どうなっていくか楽しみ。

    百瀬と亜子はようやく一緒に住めることになりそうで良かった。

  • 最高です。歴代猫弁の中でも最高です!
    ラスト付近の百瀬のお母さんとのくだりも、宇野カツさんのお母さんとのくだりも感動です。こんなに読む人を幸せにする本って、他にはありません。
    ああ、そして早く続刊が読みたいです。

  • 様々な依頼人の要求を、ジグゾーパズルの散らばったピースを一つ一つ確実に埋めていき、一つの作品を完成させるようなシリーズ。
    今回も面白くて、最後のピースがカチッとハマって気持ちよかったです。
    今まであまり感情には表していなかった、猫弁のお母さんへの気持ち、亜子への想い、そして、やっと少し進展した亜子と猫弁の距離に胸があたたかくなりました。
    この二人のじれったさも読んでいて楽しい。
    亜子が悩む姿が少し不憫にも思える。
    次巻が今からとても楽しみ。

  •  異次元の頭脳のキレを見せる人権派天才弁護士・百瀬太郎の活躍を描く。

     東京大学在学中に司法試験に合格。首席で卒業した百瀬の選んだ職種は弁護士。
     だがたまたま扱った世田谷猫事件を円満解決に導いたことで、世間から「猫弁」と認識されてしまった百瀬に持ち込まれる依頼の多くがペット(特に猫)に絡む問題。

     それがどんな依頼であろうと誠実に取り組む百瀬は、今日もペット絡みの案件解決に奔走するのだった。シリーズ7作目。(第2部2作目)

          * * * * *

     冒頭から作者の仕込みが炸裂!
     プロローグは百瀬太郎小学校4年生時の思い出で、「犬」に因んだ臨時教師のエピソード。続いて大型犬サモエドが、さらにはカメレオンまで登場し、猫弁事務所の居候が増えるかもしれないと、ハラハラさせる序盤。実に見事な掴みです。
     おまけに、これらは伏線として後で重要な意味を持つのだから、さすが大山淳子さんです。

     ただ、意表をつく展開で読後の満足度が高いというのがこのシリーズのウリなのですが、今回は少し勝手が違いました。
     百瀬の扱う案件に亜子を別の方面から絡ませようとしたため、展開に強引な印象が拭えませんでした。

     それでもエピローグのメデタシメデタシ感は爽やかな味わいを残してくれたし、何より百瀬と亜子の結婚問題の進展は喜ばしい限り。
     だからご祝儀も兼ねて☆5つの評価にしました。

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著者プロフィール

東京都出身。2006年、『三日月夜話』で城戸賞入選。2008年、『通夜女』で函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリ。2011年、『猫弁~死体の身代金~』にて第三回TBS・講談社ドラマ原作大賞を受賞しデビュー、TBSでドラマ化もされた。著書に『赤い靴』、『通夜女』などがあり、「猫弁」「あずかりやさん」など発行部数が数十万部を超える人気シリーズを持つ。

「2022年 『犬小屋アットホーム!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大山淳子の作品

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