- Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065236147
作品紹介・あらすじ
小説家の夫と妻は、住み慣れた家からの引っ越しを考え始めた。長いつきあいの友人たちやまわりの人々、日々の暮らしの中でふと抱く静かで深い感情、失って気づく愛着、交錯する記憶。かけがえのない時間を描く、著者4年ぶりの長編小説。
「どこまでも伸びる一日。そして過ぎてみれば、たった一日。」(本書より)
感想・レビュー・書評
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日常が気負いなく温もりのある言葉で書かれている。八年住んだ部屋の大屋さんとの思い出とか仲間とのあれこれとか。大きな事件があるわけではないけれど読んでいて心地よく、自分自身とも重なるところもあったりして、頭の中にすっと入ってくる。
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とてもよかった。
この小説を読んでいる時、小説の中で流れている時間が自分の中にも流れこんでくるような不思議な感じがした。読んでいた時間のことを後から愛着を持って眺めることができる、そんなお話だった。 -
日記のような、そうでないような
視点がいくつも変わって
その中で長い一日があって
みんなといつまでも
飲みながらしゃべっていたい
オオゼキで買い物したい
目が覚めても温かい布団の中で
家の中で夫が立てる音を聞きながら
温まっていたい
ということを
温かい布団の中で思いながら読了
自分でも今、日記を書いている
本当に残したかったことは
日々起こるできごとはもちろんだけど
こんなふうに
それに伴って考えたことだ
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著者自身のエッセイのような物語。
淡々とした日常の中で、一人称になったり、夫になったり、はたまた妻になり・・・といろいろ支点が変わっていくところが面白くもあり、慣れると違和感なく読み進め、なんだか居心地がよくなってくる。
涙とはこんな形で流されることもあるんだ・・・なんだか素直で純粋な人たちだなと思うし、こんな涙を流してみたいものだ。
最近、自分の感情がストップしてることを思い知らされた気分。 -
『どこまでも伸びる一日。そして過ぎてみれば、たった一日。』
この言葉がすてきだな。
そして茄子の輝きもそうだけど、あるワンシーンを美しく書くなぁ_φ(・_・
2021/7/25 ☆4.3 -
この本を読んでいると、自分の頭の中の会話に敏感になる。一つのものを見て、連想に連想が広がって気が付いたら最初見ていたものとは全然違うことを考えていることがよくあるけど、この本はそんな旅を一緒にしているような時間。滝口さんの本は初めて読んだけど、他にも読んでみたい。毎日の中で自分がたくさん思う色々なこと、その積み重ねで毎日はできている。なんでもない描写に胸が締め付けられるような文章がいくつもあって、見つけるたびに本の耳を折っている。「ここはためになる!」じゃなくて、こんなふうに胸がキュっとしたところの本の耳を折るのは、なんだかずいぶん久しぶりのことのような気がする。
登場人物のどの気持ちもそれぞれ個性的で、でもどれも作者(滝口さん=夫)の考えでもありそうで、語り手が自在に変わっていくのが面白い。朗読している声が色々な人の声で聞こえてきそうな本だった。 -
何気ない一日のあれこれも、こうして淡々とめぐっていくときちんとドラマみたくなるのだなぁ。
しずかに、わすれないように…。 -
主人公:夫、妻、と友人何名かが出てくる話。変わってるのは主人公はほぼ"夫"という表現で、妻も"妻"。それぞれが自分のことを語る時も夫といい妻という。
全体が、日常の生活の中で起こったことを心の中でふと思ったり考えたりしたことが綴られ、他人に言うつもりで考えたけど、実際にいうわけはないセリフとか、そういうことがずっと語られる。
夫婦の今の家の生活、友人の家に集まった時の話、その時の友人の感情について思うこと。
そして、実際にあった事のように綴られるこの話は、もともとエッセイとして連載し始め、それが小説に変わっていったらしい。そこに出てくる友人の窓目くんと妻が、出版物として自分が出た時にどう思うか、ということも描かれていく
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私(=滝口)の視点で語る私の日常が、私が想像する他者の心情へ、そして私ではない別の私の視点へとシームレスに移動する。
容易に変容し分裂する私は、どこにでも居られる。歴史からとりこぼされ忘れられる時間の中でも。そのことが、喪失を慰めるように温かい。