中国の歴史11 巨龍の胎動 毛沢東vs.鄧小平 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065230954

作品紹介・あらすじ

「中国の歴史・全12巻」の学術文庫版、第11巻は、様々な試練を乗り越え中華人民共和国を成立させた建国の父・毛沢東と、経済大国への改革開放路線を敷いた鄧小平の二人を軸に激動の中国現代史を辿る。
1921年の中国共産党結成に参加した毛は、非主流を歩み十数年後の長征中に漸く主導権を掌握する。抗日戦争後は国民党の蒋介石に挑戦、文化大革命では紅衛兵を動員し政敵・劉少奇を追放した。継続革命論者でその政治手法は敵を見据えてからどう打倒するか戦略を練る「軍事芸術」とも言われる。
一方、毛の忠実な部下だった鄧は、黒い猫でも白い猫でも鼠を捕る猫は良いとした「黒猫白猫論」を説いたリアリスト。文革と不倒翁・周恩来の逝去後に二度も失脚したがいずれも復活。毛沢東夫人の江青ら文革「四人組」逮捕後の再復活後は改革開放路線に邁進して経済大国の道を切り拓く。変わりゆく状況を的確に判断し次々と最適の選択をする「政治芸術」の人とも評される。この対照的な二人の生涯を縦糸にして清朝末期から中華民国成立、日本の侵略、国共内戦、1949年の中華人民共和国建国宣言を経て朝鮮戦争、中ソ対立、プロレタリア文化大革命などの激動を丹念に描いた渾身の力作。文庫化にあたり、習近平時代を加筆。〔原本:2004年11月、講談社刊〕

目次
はじめに 「中華民族の偉大な復興」
第一章 毛沢東と鄧小平
第二章 エリート革命から人民戦争へ
第三章 揺れる新国家建設
第四章 中国独自の社会主義への挑戦
第五章 プロレタリア文化大革命
第六章 革命と近代化の確執
第七章 改革開放・近代化へ邁進
第八章 大国化する中国の光と影
第九章 ポスト毛沢東と鄧小平の中国
第一〇章 習近平の時代と世界への挑戦

学術文庫版のあとがき
主要人物略伝
歴史キーワード解説
参考文献
年表
索引

感想・レビュー・書評

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  • 2021/8/7
    中華人民共和国の成立~現在まで。
    格差不平等、特権階級を無くすことを目指した筈の社会主義国家が、結局一部の特権階級によって運営されているという事実。中華人民共和国の歴史は、お偉方が思想を都合良く解釈して国民に押しつけてきた歴史に思えてきた。

  •  毛沢東と鄧小平の2大巨頭の台頭、権力掌握そしてその後の基盤強化、後継者への移譲という動きを中心に記載しており、かなり詳細な100年近い中国共産党史ともいうべき内容。1949年の建国後の反右派闘争、大躍進政策、文化大革命という大きな歴史がいずれも毛沢東のリーダーシップのもとに発動され、鄧小平はその中で尖兵を務めさせられたり、その後は修復に当たったという歴史。国共内戦の勝利、中ソ論争から中ソ対決、ニクソン訪中から米中国交までの流れなど、これまで今一つ私には理由不明だった点が極めてクリアに納得できたように思う。毛の個性、中華ナショナリズム、そしてプライドから出てきたことが良く理解できる。鄧小平の時代の毛時代から、華国鋒時代を経ての権力移行過程が実に面白かった。毛自身が語っていたという「実事求是」が華を退ける上でのキーワードだったのだ!ただし、鄧小平は経済の民主化による改革を進めたが、政治改革には冷淡だったことが、反右派闘争時代に遡って説明され、天安門事件への対応も納得できるものだった。
    そして今の習近平時代と鄧時代の違いの説明までが書き足されている。毛・鄧・習の3人を中国史の王朝の皇帝に例える最終章の説明は全くその通りだと思った。そして著者は習が最後の皇帝になることを期待を込めて予想するのだが…。台湾、そして香港の最近の動きまで詳細に書き足している充実した現代史だった。

    最後にP378から引用する。中国を理解する上で実に的確な説明である。
    「一党体制」といっても、かつてのような階級、 イデオロギーを前面に押し出した「革命政党」としてではなく、「政治的統合と安定の役割」、「社会の多様な利害の調整」などを果たす「執政政党」へと変化したのである。言い換 えるなら、近代化を推進する牽引車、政治安定の保証者としての「権威主義的政治体制」 こそが、現在の「一党体制」の本質なのである。

  • 中国史を通史で駆け足で学んだものの、三体でも言及されていた文革など近現代の歴史でまだまだ理解できていないことも多かった。そんな中、毛沢東、鄧小平らを中心とするここ100年以内の歴史の流れがわかりやすくまとまっていてとても理解しやすかった。今の習近平体制に変わってからの解説も読みたいと思っていたので、コロナ禍の状況まで追記されアップデートされたこの本がぴったりだった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/768190

  • 近現代中国を作り上げ牽引した毛沢東と鄧小平を反逆者と逆境者として表現している。毛沢東はその人生において常に反逆を志向していた、またその類まれな戦略家軍事指揮官としての才能は常に迫る具体的な現実の敵を打ち倒す際にはいかんなく効果を発揮したが、建国後の富国強兵と行った抽象的な建設事業においては権威の壁により現実を把握できずに大躍進政策の失敗につながった。鄧小平は長い逆境生活の中で常に現実を見つめ、長い間毛沢東の忠実な部下だったが建国後の失政を受けて徐々に距離を置き、政権の安定を常に志向していく。
    建国時からの最高指導者毛沢東は、理想的ユートピアな社会主義国家中国を志向し、ソ連とも対立を辞さず、第三世界の先兵を自負していった。大躍進政策の失敗により、劉少奇・鄧小平ら実権派が資本主義的経済の立て直しを図っていると、文化大革命によって権力を奪い返した。その際に利用した紅衛兵や林彪も切り捨てることで絶対的権力を確立する。中央集権の皇帝として振る舞った。
    毛沢東の忠実な部下としてキャリアを積んできた後継者鄧小平だが、毛沢東死亡後には政権に舞い戻り最高指導者としての皇帝的地位を確立する。先富論や黒猫白猫論によって地方分権を推し進め、改革開放政策によって政治より経済優先の政策を摂った。また対外的には韜光養晦政策により極力摩擦を避けた。しかし、国内においては第二次天安門事件では武力で民衆弾圧を行い、政治の安定性を何より重視した。
    二人の後を襲った習近平も、自己の皇帝化を図っている。経済成長とともに噴出してきた格差や腐敗に対して、対応を迫られている。米国覇権体制に対して挑戦し、一帯一路で違う覇権を確立しようとしているが、周辺国からの警戒は強い。

  • 毛沢東は反逆の英雄、すなわち日本軍と国民党を倒し、天下を取ったあとも、敵対者(と彼が見定めた者)に対し凄まじい闘争を仕掛け続けた人生、という解釈は成程と感じた。この軍事的芸術家の大向うに、苛烈な権力争いを凌ぎ切った鄧小平を政治的芸術家とする図式も同じく。中共による統一後も暫く、大規模な混乱と粛清が起こった点は、かつての王朝にも見られる事象ながら、総括はまだこの先になりそう。近未来の超大国だけに、近現代史だけでも書くべき要素が多すぎて、一冊では足りなかったのが実感。政治面の記述が主なのも本書の特徴。

  • 東2法経図・6F開架:B1/1/2661/K

  •  中国がGDPでアメリカを抜き去るのは時間の問題となっています。日本が抜かれたのは2010年ですが、現在では日本が500兆円で中国は1400兆円なのです。
     この本はそんな中国がどうしてできたのか教えてくれるすごい本でした。500頁もある本ですが面白いのでノートをとりながら一週間で読み終えました。中国を知らないと日本もわからない。そして何よりも現在の世界の動きが分からない。
     この本は「中国の歴史 全12巻」の11巻目なのですが、私は12巻の「日本にとっての中国とは何か」という本が気になってこれから読み始めました。そうしたら11巻が気になって、読んだというわけです♪
     もともと2004年に発刊された本ですが、2021年の文庫化にあたり加筆されたので習近平のことも載っているし、コロナ禍にも触れています。価値ある1650円でした。

  • 読了。

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著者プロフィール

早稲田大名誉教授。1947年生まれ。
早稲田大学卒業、一橋大学大学院博士課程修了。社会学博士。外務省専門調査員として北京日本大使館勤務、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授等を歴任。
専門は、中国政治、東アジア国際関係論。
著書『中華人民共和国史 新版』(岩波新書)、『中国政治の社会態制』(岩波書店)、『「中国共産党」論』(NHK出版新書)、『日中対立』(ちくま新書)ほか多数。

「2021年 『中国のロジックと欧米思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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