- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065225301
作品紹介・あらすじ
人類は、分断と災厄を超えて、さらなる高みへと進化していける――。
壮大なスケールで描かれるサピエンスの全史と未来への指針。
コロナ禍の暗い時代の前途を照らす、過去からの光明。
現代の困難を乗り越える鍵はここにあった!
伝説の東大講義、待望の書籍化。
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[目次]
第1章 すべてを進化の相の下に見る
第2章 進化の複数のメカニズム
第3章 全体の眺望を得る
第4章 人間の位置をつかむ
第5章 人類進化の歴史
第6章 複雑化の果てに意識は生まれる
第7章 人類の共同思考の始まり
第8章 進化論とキリスト教の「調和」
第9章 「超人間」とは誰か
第10章 「ホモ・プログレッシヴス」が未来を拓く
第11章 終末の切迫と人類の大分岐
第12章 全人類の共同事業
解説 立花隆と東大講義「人間の現在」(緑慎也)
感想・レビュー・書評
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元ゼミ生が語る、立花隆の「伝説の東大講義」をいま読み直す意味( 緑 慎也) | 現代新書 | 講談社
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/80053詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古生物学者であり、イエズス会神父でもあったテイヤール・ド・シャルダン。その進化論について解説された良著。地圏という無生物の物質世界、生物圏という生物による物質世界。地球はこの二つで網羅はできず、非物質世界が存在する。これが精神圏。ヌースフィアとも呼ばれるが、ユヴァルノアハラリのいうサピエンスが生きる共同幻想に通ずる思想だ。人類の進化と共にこの精神圏は広がり、やがて超人類が誕生する。ホモ・プログレッシヴス。
超人類とは何か。一人一人の人類が精神圏ではよりエレメント化し、つまり構成単位になり、必要に応じて複合化する事で目的を遂げる世界。サピエンスが集団で外敵から身を守る結集行動と変わらぬ気がするが、より精神圏で流動化する。これはある意味では資本主義世界を乗り越えて、VR世界や、分散型自立組織DAO、クラウドファンディング、ウィキペディアのようなシステムの進化を予見するものにも見えるし、現代では見えていない更なる仮想結集を予感させる思想でもある。
思想は正しく進化の方向を示している。1980年代末以降に活躍した思想家としては、素晴らしい洞察力。少し逸れるが、ニコライ・フョードロフの肉体の不死についても本著で触れられていた。高額だし、フョードロフの関連図書は手に入り難そうなので有り難かった。 -
サピエンスブームの中で出た昔の講演録。いろいろ興味深いが、難解。
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進化論を未来へ拡張し、人類は超人間へ進化するという、テイヤール・ド・シャルダンの思想(著作「現象としての人間」)を解説していく。たとえば時空計算尺の紹介など、随所で立花隆一流の脱線が入って講義っぽい。元の著作を読むよりわかりやすくて面白いだろう。
複雑性(要素の数で表現)が増していくと意識が目覚めていき、臨界点を過ぎれば意識(自分が知っていることを知る=内省的自意識)が誕生すると言っていて、これは、意識の定義として聞いたことがある説の元になっているかも。
この大ジャンプを、生命の誕生と同様に捉えて,物質圏→生命圏→精神圏という進化のモデルを提示する。そして進化はここで止まらず、多数の脳が組織化、総合化されていくような過程が進行中という。プラネタリーな意識(環境問題)、機械との共進化(AI)など現代を予言したような描写も。
人間から一歩進んだ彼ら「ホモ・プログレッシヴス」はすでに(19世紀から!)あちこちに現れていて彼らどうしはすぐにわかるので接触しているとか。そのような中二病的な仮説を昔語り合ったりしてたっけ。
そして、遠い将来、地球、宇宙の死を考えると、一貫性のある見通しを与える唯一絶対の説として、「世界のあらゆる意識要素が心的な宇宙の中心(意識の極)に向かって収斂」し、「心的にプラネットを離脱しオメガ点に到達」する(p344)という。これはパウロの終末論を基にしていると立花は考察する。そういう関係の有無にかかわらず、シャルダンの思想はひとつの宗教のように見える。最先端の科学のちょっと先に宗教がある。これはパウロの時代も、その昔も、そうだったのかもしれない。
ハラリの「ホモ・デウス」といろいろそっくりな点がある。複雑性に意識が宿るとか、ビッグデータに人類が一体化するとか。ハラリはシャルダンに影響を受けている、あるいは下敷きにしているのかも。過去のことを調べることにより、過去から現在への変化を未来に延長することで未来予測をするというハラリの基本アイデアも共通している。 -
「知の巨人」とまでいわれる立花隆の「伝説の講義」というので、楽しみにして読んだのだが、フランスのイエズス会神父であり古生物学者であるテイヤール・ド・シャルダンの思想に沿った自然、生物、人類についての進化論の解説だった。
人間社会の進化の先にある「超人間」とか神との合一というのは観念的でよくわからない。
ハード・コアSFで結末が妙に哲学的になるものがあるが、それに似た読了感を持った。 -
難しい内容で理解しきれなかったけれど、幅広い知識でワクワクしました。もっといろんな分野のことを知りたいと思いました。
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先日、亡くなられた立花隆さん。1996年に東大で行われた講義をもとにした、人類の進化論についての1冊を読んでみた。
本書をブクログに登録するにあたり、さて、ジャンルを何にすべきか迷った。哲学?生物学?神学?歴史学?どれも含まれているので、結局、科学ということにした。立花隆が語る、サピエンス全史というところがより近いと思う。
テイヤール・ド・シャルダンという古生物学者にて司祭という人の思想を紹介しながら、人類の未来を説く。人類は思索する力を持つことで、エントロピーの法則に逆らい、その知は究極まで多様化の方向へ向かう。最期に待っている「超人間」のあたりになると、かなりSFチックな感じはしてしまうのだが、あらゆる方向から多面的に説かれると、なるほどと思わされてしまう。
講義録なので、きっちりとまとまった構成には必ずしもなってはいない印象だが、氏の膨大な知識と熱は十分に伝わってくる作品。 -
テイヤール・ド・シャルダンの進化論についての論述が主なテーマである。単なる生物の進化でなく、物質→生命→人類への3段階の進化を説く。
無限大の宇宙と、無限小の原子の世界、人間は単にその中間にある取るに足らないちっぽけな存在ではなく、複雑化という進化の過程では、その極に、ある存在である。 -
東大教養学部で行われた「人間の現在」の講義を元にした講義録ということであるが、この本では講義では30分ほどの言及であったはずの、ティヤール・ド・シャルダンの超人間に関する説明で後半は占められている。
面白い発想であるとは思うが、この部分はもっと少なくてよかった。 -
この本で書かれている進化についての考え方は、初めて知りました。とても興味深く読めました。
そして、この本が1996年の大学の講義録であることやその考え方を提示したテイヤール・ドシャルダンが20世紀前半の人であることに驚きました。